ユービーアイソフト大阪スタジオへ潜入取材! スタジオマネージャーに聞く、日本スタジオの成り立ちとグローバルな開発体制

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ユービーアイソフト大阪スタジオへ潜入取材! スタジオマネージャーに聞く、日本スタジオの成り立ちとグローバルな開発体制
 パリやモントリオールを始め、サンフランシスコ、シンガポールなど世界各国に自社の開発スタジオを持つユービーアイソフト。あまり知られていないが、じつは日本の大阪にも開発スタジオが存在している。その名も"Ubisoft Osaka"。大阪スタジオはどのような現場なのか、潜入取材で調査してみた。

 Ubisoft Osakaではこれまで『South Park: The Fractured But Whole』や『Petz』といった海外向けタイトルの開発を行ってきた。現在は、2024年6月7日より日本国内でもサービス開始予定の演奏学習用ソフト『Rocksmith+』の開発をメインに手掛けている。
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 そんな大阪スタジオの成り立ちや開発体制について、スタジオマネージャーの小保田宏幸氏にお話をうかがった。
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小保田宏幸こぼたひろゆき

Ubisoft Osaka スタジオマネージャー

日本のスタジオから世界へ“楽しい”を届ける

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[:NOLINK:]『Rocksmith+』[/:NOLINK:]を開発中とのことで、各スタッフのデスクにはギターなどの楽器が。

――小保田さんの簡単な経歴を教えてください。

小保田
1994年にナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)に入社して、エンジニアとして、『ソウルキャリバー』シリーズや『ミスタードリラー』などの開発に携わりました。その後にナムコアメリカへ出向し、『スプラッターハウス』や『鉄拳』などに関わっていました。 そんな折に、 現地で縁がありましてUbisoft San Franciscoに入社することになりました。サンフランシスコではリードエンジニアとして『South Park:The Fractured but Whole』を開発し、5年ほど前にこの大阪スタジオに配属となりました。

――Ubisoft Osakaはどのような経緯で設立されたのでしょうか。

小保田
Ubisoft Osakaの前身はデジタルキッズという開発会社でして、 名古屋と大阪に拠点を構えておりましたが、16年ほど前にその会社をUbisoftが買収し、Ubisoft Nagoyaが生まれました。Ubisoft NagoyaはUbisoft San Franciscoとともに『Petz』などのタイトルを開発していましたが、その後、名古屋拠点をクローズして大阪に全員を集めることになりまして、会社名もUbisoft Osakaに変更し、現在のUbisoft Osakaになりました。

――Ubisoft Osakaは日本でリリースされていないタイトルに関わってこられたので、日本にユービーアイソフトのスタジオがあるというと、驚く方もきっと多いと思います。

小保田
はい、 日本の業界の人に「ユービーアイソフトに勤めています」と自己紹介すると、皆さん驚かれます(笑)。Ubisoft Osakaは設立の経緯からも、Ubisoft San Franciscoと非常に深い絆があり、現在では大阪、サンフランシスコ、シドニーとのあいだで兄弟関係を構築して、国を越えたチームを作って働くことが多いですね。 じつは私のボスはサンフランシスコにいます(笑)。

――スタッフ数はどれくらいですか?

小保田
現在90名くらいの社員がいて、外部の協力スタッフを含めると合計100名ほどになります。プロデューサー、プロジェクトマネージャー、 エンジニア、 ゲームデザイナー、UI/UXデザイナー、 アーティストなどのチームに加え、ミュージックコンテンツ制作に特化したチームなどで構成されています。スタッフの半数以上が海外出身の方で、フランス語を話す方がいちばん多いですね。北米、中南米、ヨーロッパ、アジアなど、世界中から人材が集まっています。

 社内のコミュニケーションは、話す人どうしでさまざまですが、メインは英語になっていますね。英語、フランス語、日本語でバイリンガルの方が多いです。うちに入ってくる日本の方は、海外と仕事をしたい人が多いので、語学に興味がある方が自然と集まってくるのでしょうね。

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過去に『ウォッチドッグス』シリーズなどに携わったアートディレクターのシドニー氏。

――中途採用の方が多いのでしょうか?

小保田
ほかの会社から来られる方もいますし、ユービーアイソフトの別のスタジオから異動してくる方も多いですね。 それでもUbisoft Osakaでは2年連続で新卒採用を行っています。それは、世界で活躍できる日本の若い方を育てたいという気持ちが大きいことが理由です。ただ、ポジション採用という限定された採用枠がつねにある中で、学生の方々に1年前から内定を出すのは我々にとっては挑戦でもあります。

 地元の大学や専門学校と協力させていただき、インターンを受け入れたりしながら、人材の長期的なポテンシャルをじっくりと見極め、プロセスを踏んで、そのうえで正式に内定を出させていただくような取り組みを行っています。年に1名は採用できるといいな、と。

――なるほど、さまざまな国籍、年齢、経歴の方々が集まっていますね。スタジオ間で人材の行き来もあるとのことでしたが?

小保田
はい。ユービーアイソフトにはインターナショナルモビリティという考えかたがありまして、スタジオや部署の異動に対して希望が出せるんですよ。異動元と異動先のニーズがマッチすれば、希望が通ることも多いですね。私の場合は、サンフランシスコにいたのですが、大阪から要請があってこちらに来ました(笑)。社内にはサンフランシスコのほか、モントリオールやドイツ、北欧などのスタジオから異動してきた方もいます。

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勤続5年(銅)、10年(銀)、15年(金)の節目に贈られるラビッツのトロフィー。

――世界各国にスタジオや拠点がありますよね。打ち合わせなどがたいへんそうです。

小保田
うちの場合で言うと、サンフランシスコの夕方が日本の朝なので、両者間で少しオーバーラップする時間があり、そこで会議を行って向こうの作業を引き継ぎつつ、今度はブカレストからQA/QCチーム(品質管理)の報告を受けたりして……と、時差をうまく使って地球全体で効率よく作業する感じですね(笑)。

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開発QA(品質管理)のスタッフは、仕事を続けているうちに自然と楽器が上達したそう!

――ユービーアイソフトの特色や、ほかの会社とは異なる特徴的な点はありますか?

小保田
ユービーアイソフト全体では内製のエンジンをグローバルで活用している点が非常に大きな特色です。外資らしい点を挙げるとしたら、プロジェクトの工程管理を専任でマネージメントする人材を各チームを置いているところはひとつの特徴かなと思います。

 たとえば、エンジニアやゲームデザイナーの方が、なんだかんだタスクマネージメントや情報の橋渡し役をやってしまう会社もあるかと思いますが、うちの場合はそれはもったいない。専門性がある人は専門性を発揮できるところに注力してほしいという考えなんですね。

 別の点で特徴的なのは、ゲーム作りにおいて世界観・ゲームの方向性を非常に大切にしつつも個人のクリエイティビティーも大事にしている点だと思います。『アサシン クリード』のような大きなタイトルになると、とくにその傾向は顕著になります。ディレクターがゲームの方向性や世界観をゲームコンセプトのピラーや世界観をビジュアルのイメージという形でしっかりとチーム全体に浸透させることで、個々の開発者やスタッフがひとつの方向を見ながら、自律的に動ける形ができていると思います。

 ですので、誰かの指示を待つことなく、自分の意志でチームに貢献することができる。「あなたはこういうことをやる人ですよ」というジョブ型で、役割がある程度明確でありながら、それぞれの個性を生かしてクリエイティビティーに溢れたものが多く生み出せているのではないかと感じています。これはユービーアイソフトの各スタジオで共通した考えだと思います。

――Ubisoft Osakaは現在『Rocksmith+』をメインに開発していますが、演奏学習ソフトということで、楽器がたくさんあったりとオフィスの雰囲気も独特ですね。

小保田
そうなんですよ。『Rocksmith+』は初期段階から大阪も開発に参加していて、ライブサービスのタイトルなので運営にも携わっています。ゲームを作ってきた人たちのほかに、音楽のプロも加わっていて非常にユニークな開発現場です。キャピタルさん(下の写真を参照)は、音楽博士号をお持ちで音楽教授であった方ですし、ふだんは音楽教室で講師をしている方もいますね。

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学習用ビデオを制作するチームも。キャピタル氏はYoutubeチャンネルを持ち、テレビ出演もする有名人。


小保田
ほかにも『Rocksmith+』内で観られる映像コンテンツを専門に作る人もいます。『Rocksmith+』はまさにこのチームのバランスをそのまま持った作品ともいえます。ゲームに寄せすぎると単なるリズムゲームになってしまうし、学習に寄せすぎてもとっつきにくいものになってしまう。いろいろな人の意見をぶつけ合わせて作らなければいけない点は難しくもありながらおもしろいですし、それが開発のうえで重要なポイントになっています。

 さまざまな個性と役割を持った人たちが意見を出し合いながら何かを完成させていくところもユービーアイソフトらしさのひとつだと考えています。ワールドワイドで展開する作品では、さまざまな地域の人の意見やクリエイティブを参考にしないといけません。ワールドワイドで開発しているからこそ、世界で受け入れられるゲームができる、そんな図式がユービーアイソフトにはあるのではと個人的に思っています。

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譜面制作はイチからの手作業。耳コピや採譜には高い技術と集中力が要求される。

――今後は日本が中心となって発信していくタイトルが出てくることに期待したいです!

小保田
ぜひともそうしたいですね。現在『Rocksmith+』では開発の大部分に関わらせていただいておりますが、ほかの作品では部分的にしか関わることができておらず、ユービーアイソフトの中ではまだまだ小規模なスタジオです。

 まずはサンフランシスコと協力してAAAタイトルの開発のもっと大きな部分を任せていただけるようになって、そのほかのさまざまな国際的プロジェクトに参加しながら人材の育成にも力を入れていきたいです。そして、ユービーアイソフトが日本に求めているものもきっとあると思います。いつかは日本がリードして発信するタイトルというのも目指したいですね。
※この記事は週刊ファミ通2024年5月9・16日合併号(No.1847/2024年4月25日発売)掲載内容を再編したものです。“週刊ファミ通2024年5月9・16日合併号”を購入する (Amazon.co.jp)“ユービーアイソフト”関連商品をAmazonで検索する [2024年5月24日23時30分修正] 一部表記を追記いたしました。
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