クロスレビュー
太正十二年の日本の首都を舞台に、主人公である帝国華撃団隊長・大神一郎や真宮寺さくらをはじめとする華撃団員たちと悪の秘密組織・黒之巣会との戦いを主題として、華撃団員たちの成長を描いたドラマチックアドベンチャーゲーム。
後にシリーズ化され、セガサターン、ドリームキャストといったハードでは、セガの看板タイトルとして開発された。
ゲームシステムは、テキストでストーリーが展開していくアドベンチャーパートと、悪の組織・黒之巣会との戦闘を展開していく戦略型シミュレーションパートの二種に分かれている。
強くアニメを意識しており、一話、二話と言った感じの小話に分けられ進んでいくようになっているほか、アドベンチャーパートやシミュレーションパートの合間や、各話の終わりに短いアニメーション演出がある。また、一般的なテレビアニメのそれと同様に、次の章(話)の予告映像が流れる。
その他にもアニメや漫画だけでなく、大正浪漫やロボットもの、戦隊ヒーロー、スチームパンクといった様々なジャンル、文化の影響を感じさせる内容になっており、非常に中身の濃いものとなっている。
ゲームの根幹となるのは「恋愛アドベンチャー」となる要素で、帝国華撃団の隊長・大神一郎を操作し真宮寺さくら、神崎すみれ、アイリス、マリア・タチバナといった帝国華撃団の隊員である女性たちと交流を深め、恋愛的関係に発展させていくのが一番重要な要素となる。アドベンチャーパート中たびたび現れる行動選択を、その話の流れを読み、女性たちの心理をくみ取った選択をすることによってパラメータを上昇させることで、後に進むシミュレーションパートを優位に進めていくことが出来る。
ただ、あくまで恋愛「的」関係であり、最終的に目指すのは女性たちとの交流を深め恋愛関係に持ち込むことではなく、悪の組織を倒し、舞台である帝都の平和を取り戻すということ。そこは間違えてはいけない。
ゲームシステムは非常に良く出来ている。若干シミュレーションパートが長いことを除けば非常にテンポがよく、プレイしやすい。
昨今で度々憂いられているアニメーションだとかの映像、ムービー演出も、極めて最小限に抑えながら、最大限に魅せる演出になっており、ゲームそのものを邪魔しない。アニメという要素を非常にうまく取り込んでおり、ゲームとアニメそれぞれが邪魔し合わず綺麗に一つになっている。未だアニメというのがあまりゲームに持ち込まれていなかった時代に、ここまで見事に一体化させたというのが、このゲームで一番高く評価できるところだと、個人的には思う。
プレイしての感想は、まず一番に「世界観設定が非常に面白いな」と思った。
舞台は太正(大正)時代の日本で、その舞台背景は江戸時代……と、日本の歴史を題材としている。一方で、桃色、黄色、赤色、緑色、紫色といった多彩な色を使用した、光武と呼ばれる、悪の組織と戦うために戦闘機は、サイバーパンク的且つ戦隊ヒーローチックで、シミュレーションパートもそれを強く意識した戦略性の高いつくり。そしてきわめつけが、数多くの美少女キャラクターとの恋愛アドベンチャーと、アニメーション演出。「詰め込みすぎ」と言っていいほどに色々な要素を含ませている。それでありながら、ちゃんと一つの作品として綺麗に統合され、全く無駄がない。
そして、貪欲なまでに持ち込んだ要素を、ちゃんとゲーム内で生かしている。とりあえず持ち込んでみたはいいけど設定上だけで実際には全くの蛇足…ということがない。
最大の魅力であるアニメも、今では若干古臭い絵柄にも感じられるが、演出面では全く劣っていないと言ってよい。アニメ好きの誰もが「良い!」と言える出来で、アニメが好きと言う人なら、それだけでもやってみる価値がある。
現在やる場合にもセガサターン、ドリームキャストと言ったセガハードを無理に購入せずとも、PlayStasion2やPlayStasionPortableなどでリメイクや移植が発表されているため、比較的簡単にプレイすることが出来る。
十数年前の名作(ドラマチック)アドベンチャーゲームとして、是非興味のある方にはプレイして頂きたい。
帝国華撃団花組の隊長大神一郎となって、隊員である少女たちとアドベンチャーパートで仲良くなったり、シミュレーションパートで彼女たちを率いて悪と戦ったりします。
サクラ大戦の偉いところは、制作の方向性が一貫していること。
技術力、システム、アイディア、ボリューム、音楽、労力、あらゆるものが高いレベルで、勧善懲悪の熱血ロボット物にラブコメをからめたベタなアニメ的展開を楽しませるためだけに注ぎ込まれる。
その徹底ぶりゆえに、毎回さらわれるお姫様に感情移入できなくても楽しめるアクションゲームとは異なり、「ノリ」の好き嫌いでプレイヤーを選んでしまいますが。
ヒロインたちもステレオタイプではあっても、「お約束のどこが悪い」とばかりに開き直って作り込まれているため、逆説的なオリジナリティと魅力にあふれています。
システム上の特徴は、イベント中に現れる制限時間付きの選択肢LIPSと、アドベンチャーパートとシミュレーションパートの相互作用。
アドベンチャーパートで好感度の高い隊員は、戦闘時のパラメーターが著しく上昇したり、プレイヤーキャラクターとの合体攻撃を使用可能になったりする一方、戦闘中にも好感度が上下するイベントが頻発します。
好感度の低い隊員も、能力が基本値を下回ることがないのは、シミュレーションとしてのやり応えよりも、魅せることを優先した方向性を示す一例でしょう。
戦術シミュレーションとしても恋愛ゲームとしても戦略性は低いですが、アドベンチャーパートはもちろん、シミュレーションパートにも多量に仕掛けられたイベントを網羅するためには、相当なやりこみが必要です。
キャラクターや世界観さえお気に召せば、たっぷり楽しめる娯楽大作となっています。
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