22周年を迎えた『FF11』について藤戸洋司P/Dへインタビュー。ビシージが高レベル向けのコンテンツに調整決定!

byオポネ菊池

by大部美智子

22周年を迎えた『FF11』について藤戸洋司P/Dへインタビュー。ビシージが高レベル向けのコンテンツに調整決定!
 2024年5月16日に運営22周年を迎えた、スクウェア・エニックスのオンラインRPG『ファイナルファンタジーXI』(以下、『FFXI』)。2023年3月に藤戸洋司氏がプロデューサー兼ディレクターに就任し、まさに“藤戸体制”となってから1年あまりが経過した。今回のインタビューでは、藤戸氏とこの1年を振り返るとともに、2024年度の『FFXI』の運営方針について聞いていく。
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藤戸洋司ふじとようじ

『FFXI』プロデューサー兼ディレクター。初期からの開発メンバーとして、チャットやリンクシェル、ストレージ関連などのシステムまわり、チョコボ育成など、生活系コンテンツを中心に幅広く開発に関わる。2016年にディレクターに就任。2023年3月よりプロデューサーも兼任している。

プロデューサー1年目は想像以上に多忙だった

――2023年3月にプロデューサー兼ディレクターに就任されましたが、プロデューサーを兼任することによる業務量の変化はいかがでしたか?

藤戸
 ディレクターのほかにプロデューサーが兼務になったとはいえ、業務自体はとくに難度が上がったとは思っていません。ただ、社内稟議の手続きであったり、関係各所へ連絡をしたりという細かい業務がこれまでの作業にプラスされていて、一時的にかなり忙しくなる瞬間は何度かありました。チームに人がたくさんいれば「ちょっとお願い!」と負荷を分散させることもできるのですが、そうもいきませんので。

――人員の最適化もさらに進められたそうですね。

藤戸
 はい。スタッフのキャリアのことも考え、ほとんどのメンバーが兼務という形になり、すでに『FFXI』以外のプロジェクトで業務にあたっていたり、技術を吸収したりしています。そして兼務のメンバーがほかのプロジェクトで忙しいタイミングでは、彼らが持っていたタスクを現『FFXI』専任メンバーで引き受けることになるのですが、その許容量にも限界があります。ときには自分がサポートに回らないといけないこともあり、そこがどうしても物理的に仕事が増えている部分ですね。

――単に業務量が増えただけでなく、チーム内のリソースが足りないところへのサポートもされていたと。

藤戸
 ほかにも2023年度は展示イベント“ヴァナ・ディールの秘蔵展”や、“朗読劇 FFXI 異聞のウタイビト”といった社外の施策もけっこうありました。イベントの実務部分は主催の企業に一任していましたが、社内の手続きや根回しは自分が動かないと進まないので、そういうところはプロデューサーとしての仕事がたくさん増えたと思います。
――プロデューサー1年目にして、結果的にいろいろと重なってしまいましたね。

藤戸
 むしろここで何も進められないと「プロデューサーが変わってから動きがないし、『FFXI』は終わってしまうのか?」というような印象を与えかねず、それは自分の望むところではありません。「『FFXI』を盛り上げたい。自分の気力が続く限りは全部対応しよう」と、やり切った結果ではあります。

2024年度内にビシージをテコ入れ

――2023年のゲーム内の動きとしては、新シナリオとして展開してきた『蝕世のエンブリオ』が無事完結を迎え、プライムウェポンの最終強化、ハイエンドのプレイヤーに向けたマスタートライアルの実装など、話題にはこと欠かなかった印象です。これらは計画通りだったのでしょうか?

藤戸
 どのコンテンツも突発的に作っているわけではなく、企画から実装まで年単位で計画を進めているものがほとんどです。2023年度に実装されたものは、突発的な提案から生まれた“桃色輪舞曲”を除いて2022年度の段階で計画されていますし、その通りに進めて翌年に形として出てきた、ということですね。この話の流れだと「じゃあ2024年度はどうなるの?」ということになりますが、規模は縮小したとしても、ちょっとずつ出していくつもりで動いています。

――今後の企画や実装計画について、現時点でお話しいただけることはありますか?

藤戸
 先日放送した公式番組“もぎたて ヴァナ・ディール”でお話しした通り、ビシージ(※)に調整を入れようと思っています。コンテンツ自体はレベル75時代のままなので、それをまずはレベル99のプレイヤーを想定したバランスに調整します。それで問題が起こらなければ、アイテムレベルに対応させ、段階的に敵の強さを引き上げていく予定です。これが直近のコンテンツ調整になりますね。
※ビシージ……拡張データディスク『アトルガンの秘宝』で実装されたコンテンツ。“魔笛”を奪うためにアルザビに侵入してくる蛮族軍と市街戦をくり広げる。
――ビシージはエミネンス・レコードの目標(A.M.A.N.トローブ)になっていることもあり、調整を望む声が多かったように思います。

藤戸
 そうですね。「なかなか始まらない」、「アルザビに駆けつけたらもう終わっていた」といった感じで、参加すること自体がきびしいというフィードバックをいただいていました。また、現状はプレイヤーが強すぎて一瞬で敵を倒してしまう感じでしょうから、「迎撃した」という感覚を味わえるよう、できるだけ手を入れていこうと思っています。

――調整が入ることによって蛮族軍がだいぶ手強くなりそうですが、その一方で五蛇将の強さがどうなるかも気になるところです。

藤戸
 確かにそれは課題ですね……。

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――ビシージはプレイヤーが五蛇将を守りながら戦うという側面もありましたし、捕虜になった彼らを救出するという要素もあったので、そのあたりのアップデートにも期待してしまいます。

藤戸
 新たにクエストを作るというところまではいかないかもしれませんが、五蛇将を強化する何らかの仕組みは作れるかもしれません。現時点では、まだ敵の強さをどのくらいにするかを話し合っているところなので、五蛇将をどうしていくかについては持ち帰らせてください(笑)。

――コンテンツに調整を入れるということで、新たなビシージの報酬も気になるところです。レベル99のプレイヤーが参加する動機となるように、キャパシティポイントやエグゼンプラーポイント(※)が獲得できるとうれしいのですが……。
※キャパシティポイントは3万ポイントたまるごとに、ジョブごとの新たな能力を取得するための成長要素“ジョブポイント”を得られるもの。エグゼンプラーポイントは各ジョブのマスターレベルを上げるための成長要素。マスターレベルが上がるとパラメータやサポートジョブのレベル上限が上昇する。
藤戸
 アイテムレベルのプレイヤーが経験値をもらってもうれしくない、というのは承知しているので、そこは意味のあるポイントをもらえる形にしたほうがいいという話はしています。ですので、ビシージに参加すれば相応の報酬がもらえるように調整します。

――期待が高まります。このビシージの調整以外に、現時点でお話しいただけることはありませんか?

藤戸
 遊びやすさに関しては、これからも手を入れていきたいと思っています。具体的にいまホットな議題としては、ゲームパッドの操作拡張です。この調整は以前フォーラムで要望のあった「“近くのNPCをターゲットする”をゲームパッドの基本機能として起動する」ことを実現するためにスタートしたのですが、『FFXI』では標準的なゲームパッドのボタンはすでに埋まっているのです。ですので、まずはその枠をなんとか増やして、機能の割り当てができるようにすることから検討を始めています。

 例としてPS2コントローラー的な表現でたとえれば、“L1ボタン”をショートカット用に割り当てて、“L1ボタンを押しながら○ボタンを押す”という感じです。どちらのボタンも任意に指定ができます。設定できる機能については、マクロでできることはここではなるべく触れず、キーボードに後れを取っている部分をなくす方向で作っています。今後、要望を吟味の上で追加の機能を検討するつもりです。

――マップをゲームパッドの操作だけで開くことができたら、とても便利そうです。

藤戸
 あとは、まだ検討段階で不確定な部分も多いですが、種族や性別、体の大きさの変更ができないかと考えています。

――これまでの『FFXI』では、一度キャラクターを作成した後の変更は一切できませんでしたから、期待していた人も多そうです。

藤戸
 はい。これまでも「ヒュームからミスラになりたい」、「性別を変えたい」といった要望はありましたが、いよいよ昨今の多様性を尊重する情勢を受けて、種族・性別・体の大きさを変えられるように検討しています。ただ『FFXI』の場合は、種族変更の結果でパラメータが変わる、種族専用装備が着られなくなるなどの問題も発生しますので、“気軽にいつでも種族を変えられる”といったカジュアルな変更は行わない予定です。また有料か、無料かについてもこれから慎重に議論していきます。

――ぜひ、続報を期待して待ちたいと思います。

藤戸
 ほかには『FFXIV』でのコンテンツになりますが、 “エコーズ オブ ヴァナ・ディール”という『FFXI』をモチーフとしたコンテンツが今後実装される予定です。24人でプレイするアライアンスレイドと呼ばれるもので、『FFXI』チームとしても、今年は監修や協力という形で関わっていくことになります。

――キービジュアルには闇の王が描かれていましたね。やはり戦うことになるのでしょうか……?

藤戸
 それはどうでしょう(笑)。『FFXIV』での展開もご期待ください。

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“ヴァナ・バウト”は第1回の反省を受けて、より遊びやすく!

――昨年末に実施された、全ワールドの冒険者を対象にしたゲーム内イベント“ヴァナ・バウト”についておうかがいします。初回ということもありましたが、課題が残る結果となったという印象です。実施した感想と今後の計画についてお聞かせください。

藤戸
 まず、チャレンジ対象となるコンテンツをアンバスケードにしたこと、それに加えてヴァナ・バウトのために用意したエミネンス・レコードをソロでこなそうとするプレイヤーが多かったこともあり、ワールドにもよるのですが、アンバスケードの待ち行列がすごいことになってしまいました。そこは見通すことができず、申しわけなかったと思っています。

――多くの人が参加したという裏返しでもありますが、結果としてコンテンツを詰まらせてしまったと。

藤戸
 そうですね。コンテンツが回転していかないという影響で、全体報酬の獲得条件として設定していた値には到達できそうもないということが早々にわかりました。これは設定値を引き下げることで対処させていただきました。

――あとは、ヴァナ・バウト用のエミネンス・レコードを“目標”としてセットしなければならない点や、それが既存のオファーリストの30枠と共有であるという仕様も、プレイヤーにとっては負担になっていたようです。

藤戸
 その点についても、次回以降は“目標としてセットする”という手順をなくします。期間限定目標と同じように、プレイヤーは意識することなく自動的に目標を受領した状態になります。

――なるほど。たとえばデイリーの目標であれば、その日のぶんをクリアーしたら明日またセットし直す必要はなく、自動的に受領されるわけですね。

藤戸
 そうです。

――これだけでも、だいぶ遊びやすくなりそうです。

藤戸
 ヴァナ・バウトについては、外部のサーバーと連携して全ワールドのポイントを集計する仕組みなど、システムがきちんと機能するかに気を取られすぎて、運用面でミスが出る形になってしまいました。以降は、プレイヤーが目的に合わせて分散するような調整も加える予定です。こうして第1回はいろいろと反省する要素はあったのですが、システム自体はダウンすることなく動作してくれたので、その点はよかったと思います。

――第2回は2024年5月16日の22周年タイミングで実施となりましたが、第3回は計画としてはあるのでしょうか?

藤戸
 このあたりにしよう、という時期は考えてあります。第2回の内容が概ね問題なければ、その内容を変えて実施します。何らかの調整が必要であったとしても、年度内にもう1回実施したいと思っています。

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バトルコンテンツやジョブの調整の可能性はゼロではない

――現役のプレイヤーからは、バトルコンテンツやジョブの調整を望む声が少なからずあると思いますが、このあたりはどういった方針でしょうか。

藤戸
 コンテンツについては、先ほどのビシージがまさに典型的ですが、改良の余地があるものは検討してもいいかも、とは思っています。新しいバトルフィールド戦などもできるならやりたいのですが、バトル担当の兼務状況に依存してしまうので、約束はできないですね。まずはビシージから手を入れていき、ほかにも手がつけられそうだったらいろいろ考えていきたいと思います。

――ジョブについてはいかがでしょう?

藤戸
 ジョブに関しては、どれかひとつに手を入れると、そこから連鎖的にすべてのジョブについて何らかの要望が出てくると思っています。ひとつ考えとしてあるのは、いろいろな能力を持つユーティリティジョブが、火力面で不利になっているケースがあって、そこについては手を入れる可能性があります。また、使い勝手が悪く、活躍の場を失っているアビリティについても、多少の調整にはなりますが、改善を検討しています。なお、しつこいようで申し訳ありませんが、あくまで“可能性がある”というレベルのお話になります。

――具体的な話はまだできないと。

藤戸
 そうですね。とは言っても、ジョブ調整に関してはまったくしないつもりもありません。ただ、調整が適切かどうかということはその都度判断していく必要があります。具体的な段階になったら、そのときにお伝えしていこうと思います。

『FFXI』を“残す”ための施策

――細かい話題が続きましたが、最後に2024年の『FFXI』の運営方針や課題をお聞かせください。

藤戸
 自分がプロデューサーになってから一貫して考えていることは、『FFXI』を残す、そしてアーカイブする、ということです。“残す”というのは、本にしたり映像にしたりといろいろな手段はあるのですが、何より“いまのゲームが残っていくこと”がいちばん大事だと思っています。オンラインゲームはサービスが終わってしまうとプレイする手段が一切なくなってしまい、どんなゲームだったのかもおぼろげになっていきます。そうならないためにも、2024年度は本格的にゲームサーバーの入れ替えを行い、プレイヤーの皆さんが安定してヴァナ・ディールで冒険できるようにしていきます。

――プレイヤーとしてはありがたい限りです。運営面での課題や目標のようなものはありますか?

藤戸
 やはりコンテンツを新たにどんどん実装していくというのが難しい状況にあるので、どうやって皆さんの気持ちを盛り上げていくか、あるいはひさびさにヴァナ・ディールに帰ってきたプレイヤーが感覚を取り戻すために何を用意すればいいのか、どういう場所が必要なのか、そうした最新情報に追いつくための施策も考えていかないといけないと思っています。

――プレイヤーの存在があってこその、「『FFXI』を残す」ということでもありますからね。

藤戸
 その通りです。そして、コミュニティの盛り上げ要素として始めた施策のひとつが、ファミ通のオポネ菊池さんと電撃の旅団のおしょうさんがMCを務める“A.M.A.N.とLIVE!”というWeb番組です。正直なところ、プロモーションとしてはお金も労力もかかりますし、効率はあまりよくないかもしれませんが、少なくともいまのヴァナ・ディールを明示的に見せる、こうやって遊ぶ、いまやっているキャンペーンはこれ、というのを大々的にアピールする手段のひとつとして有効性は高いと思っています。

 またストーリーのアーカイブのようなこともあわせてやっているので、「
『FFXI』ってどんなお話だったっけ?」という記憶をたどる番組としても楽しめると思います。第2回も6月15日に放送されますから、ぜひ皆さんに番組を観ていただいて、投稿やコメントなどでいっしょに盛り上げていけたらなと思っています。


――それでは、プレイヤーの皆さんへメッセージをお願いいたします。

藤戸
 最近はいまの『FFXI』を言い表すのに“実家感”という言葉をよく使っています。ですから、今後は劇的な変化というものは基本的にないかもしれませんが、実家の何かが少しずつよくなっていく、という感じは目指したいですね。ひさしぶりに実家に帰ったら、古い掃除機がロボット掃除機になっていた、みたいな(笑)。

――見慣れた場所ではあるけれど、アップデートされていると。

藤戸
 そういった感じで、『FFXI』も運営を重ねるにつれて少しずつ進化している部分があるので、そこを楽しみにしてときどき戻ってきていただけるとうれしいです。そのためにも『FFXI』の維持については力を入れてがんばろうと思っています。いつでも帰ってきてください! そして、いまヴァナ・ディールにいてくださっている皆さんも、ぜひ故郷に帰ってきた仲間を暖かく迎え入れていただけたらと思います。

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5月20日まで“ウェルカムバックキャンペーン”が開催中

 現在『FFXI』では、過去に一度でも製品版のサービスアカウント契約したことがある方が無料でプレイできる“ウェルカムバックキャンペーン”を実施中。また、あわせて22周年を記念した多数のキャンペーンが同時開催されているので、ぜひ公式サイトをチェックしてほしい。

ウェルカムバックキャンペーン
  • キャンペーン期間:2024年5月10日(金)17:00~5月20日(月)17:00まで


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