スーパーコアゲーマーがクリエイターに突撃! 椿姫彩菜のゲームの話

タレントでコアゲーマーとしても知られる椿姫彩菜さんが、ゲームクリエイターの皆さんに“ならでは”の視点で切り込む連載企画。椿姫さんが注目するゲームのクリエイター、旬なクリエイターに対談形式でお話を聞いていきます。椿姫さんのゲーマー側に立った突っ込みに、クリエイターはどう応えるのか? どんなぶっちゃけトークが展開されるのか? 注目です。

  1. ファミ通.com>
  2. 企画・連載>
  3. スーパーコアゲーマーがクリエイターに突撃! 椿姫彩菜のゲームの話>
  4. “椿姫彩菜のゲームの話”第9回 名越稔洋氏にセガのゲーセン事情からプライベートまでを直撃

“椿姫彩菜のゲームの話”第9回 名越稔洋氏にセガのゲーセン事情からプライベートまでを直撃

2014-08-25 22:00:00

椿姫 名越さんにお話を伺う最後の回では、私が個人的に気になることをバンバン聞いちゃおうと思います! まずは……アーケードゲームが大好きなんですけど、最近のアーケードゲームってきびしい状況じゃないですか? そんな中でセガさんはまだアーケードにこだわっていらっしゃると思うんですが、実際問題景気はどうなんでしょう?
名越 難しいですね(笑)。そもそも「ゲームセンターに行かなければハイエンドなゲームで遊べない」っていう時代は終わってしまっているので、トーンダウンしているのは間違いないんです。とはいえ、「アーケードゲームじゃなきゃ!」というものも確実にあるはずなんだけど、それを形にして提案しきれていないといのが現実なのかな。
椿姫 大型筐体くらいですもんね。でも、対戦格闘とかは楽しいんですよ!
名越 アーケードゲームはそういうコミュニティーと密接に関係している部分があるのはわかっているんです。でも、人にアピールするなら動画をアップすればいい時代になっちゃったし(笑)。
椿姫 それはそうなんですよね。
名越 ネットを介して不特定多数から言葉ももらえるし、それはかつてゲームセンターに行っていたのに匹敵する楽しさだと思うんですよ。これに一度触れちゃったら、ゲームセンターに行く動機がなかなか生まれないというのも理解できる。そういう意味で彩菜ちゃんはレアだよね(笑)。
椿姫 なにをおっしゃるんですか! そんな時代に逆らって格闘ゲームをリリースしてくれるセガさんは、ホントにありがたいし、がんばってほしいんです!(笑)
名越 べつに時代に逆らってるわけじゃないんだけど(笑)。少なからず、彩菜ちゃんみたいなニーズがあることはわかっていたからリリースした。でもまあ、ゲームセンターに人が帰ってくるほどの仕事だったかと言えば……そこまでではなかったかもね(苦笑)。
椿姫 そんなことないですって!
名越 もちろん、いまでもゲームセンターに来てくれているお客さんが満足できるものを現場は一所懸命考えているし、楽しんでもらえるように継続してがんばっていきたい。あとは……もしかしたらこれまでのゲームセンターから少し進化しないといけない時期なのかもしれないな、とは思います。
椿姫 ほうほう。
名越 “何をしにゲームセンターに行くのか”という部分も含めて、そう遠くない未来に違う提案をしたいですね。「もはやこれはゲームセンターじゃないよ!」っていうものにはならないと思うんですけど。
椿姫 おお! なんだか水面下でアレコレ動いていらっしゃるんですね?
名越 一応、社内にはゲームセンターの今後について考えているところもありますよ。
椿姫 そうなんですね! すごく楽しみにしています!! あと、気になっていたのは、名越さんて『ヒーローバンク』も手掛けていらっしゃいますよね? 
名越 そうそう。

l_52e8713e23ee8

椿姫 『ヒーローバンク』はどんな経緯で名越さんが手掛けることになったんですか?
名越 『ヒーローバンク』を提案されて「おもしろそうな企画だな」とは思ったんですよ。だけど、俺自身のキャリアで子ども向けをヒットさせたっていう経験はないし、セガとしても『甲虫王者ムシキング』とか『オシャレ魔女ラブandベリー』くらいしか子ども向けのヒット経験がない。だから、最初は客観的に「おもしろそうだけどやらないだろう」くらいに思ってたんですよ。
椿姫 ほほー! そんな感じだったんですか。
名越 ただ、やっぱり会社って、定期的に何らかのチャレンジは必要になる。そんなときにできそうなことを見渡したら『ヒーローバンク』がうってつけだったんです。もちろん、『ヒーローバンク』の企画にゴーを出すまでにはものすごい議論があったんだけど、結果的に全社規模で「腹をくくってやろう」ということになった。リスクはあるけど、やってやれないことはないっていう判断でね。
椿姫 でも、キッズ向けって……何がヒットするかわからなくないですか?
名越 ものすごく難しいね(苦笑)。『ヒーローバンク』って、いまはゲーム以外は比較的好調なんですよ。ホントはゲームが売れてほしいんだけど。でも、外堀りは少しずつ埋まってきているので、2年とかそういう長いスパンで、じっくり腰を据えて育てていきたいと思っています。そういう意味でキッズ向けの仕事って、長期スパンだしお金もかかるしで、ものすごく腹をくくってないとできないものなんだな、って思いましたね。ふつうのゲームタイトルの感覚でやったら、恐ろしすぎてできないですよ(笑)
椿姫 でも、そのお仕事も『龍が如く 維新!』と並行してやっていたんですよね?
名越 そうそう、だからその時期は過去最高クラスにたいへんだったかも。とくに『ヒーローバンク』は新規タイトルっていうのはもちろん、メディアミックス展開もあるものだったから。あとは、会社内での俺の立場も変わったこともあって、経営者としてのシンドさが加わった部分もあったかな。
椿姫 経営者になってたいへんなのはどんなところですか?
名越 たいへんなことしかないよ!(笑)。いままでは自分の目の届く範囲でいろいろなものを作っていて、それに対する責任と結果を背負っていたワケ。でも、経営者になると、自分が作っていないものも、自分が作ったものと極めて近い結果を出せるようにしなきゃいけない。これは本当に難しくて……いまだに悩んでますよ(苦笑)。
椿姫 クリエーターとして、もっとゲームを作りたいっていう気持ちもあるんじゃないですか?
名越 ないと言えばウソになるけど、会社全体の商品のクオリティーを上げるという道を選んでしまった以上、やるしかない。
椿姫 ちなみに、役員としての最終的な判断って、やっぱりゲームクリエーターとしての気質みたいなものが出ちゃうものなんですか?
名越 俺はまずクリエーターとしての判断を下して、それが経営者としての判断でもある、と置き換えるようにしています。そうじゃないと、俺がやる意味がないと思うし。たとえば70%のデキのものをタイムリーなときに出すか、少し後になっても100%のものを出すかって、結局はクリエーターとしての判断だと思うんですよ。ま、どちらにしても社内で怒られるんだけど、俺が現役のときは誰かが怒られてくれていたわけだから(笑)。その代わりを俺がすることになったんだって割り切るようにしてますね。
椿姫 理想の上司じゃないですか(笑)。経営といえば、セガさんはアトラスさんも吸収しましたよね? 今後コラボみたいなものはあるんでしょうか?
名越 吸収はしたけど、アトラスブランドに対してはすごくリスペクトがあるんですよ。だから、ブランドとしてアトラスは残してもらったし、セガと混ざることによって変わってしまうことはむしろマイナスだと思った。当然“セガ×アトラス”というものに対して、お客さんの期待があることはわかっているんです。ですが……それはもう少し先でいいかな、と思っています。最初は“セガ+アトラス”という形で進めていって、互いの理解が深まったときにできるコラボをやっていければいいんじゃないかな? っていう。いまもお互いに情報を交換していたりするんだけど、ひとつひとつに驚きや発見があったりして勉強しあえている感じです。
椿姫 いずれコラボする、という可能性はゼロじゃなさそうですね?
名越 ゼロではないけど、安易な、リスキーなコラボを進めるつもりはないかな。“プロモーションの一要素として”とかじゃなく、コラボしたことによってワクワクするようなものが見えてこないとやるつもりはないですよ。だから、やると決めたらしっかりしたものを作ることになるんじゃないかと思います。それは近々ではないだろうけど……さすがに5年とかは待ってもらえないと思うので、近い未来には何かをやりたいですね。
椿姫 なるほど! 期待しています!! そうそう、あとは名越さんのプライベートも聞いておかなきゃ!

3

名越 えー(笑)。
椿姫 名越さん、お休みの日は何をされているんですか?
名越 買い物をしてるか……寝てますね(笑)。
椿姫 やっぱり洋服とか?
名越 洋服は多いかな。お店に行ったりネットで買ったり。どちらかといえば、ネットは買い逃したものを探すことのほうが多いかなあ。
椿姫 ネットで洋服を買うのって、サイズとかの面で怖くないですか?
名越 各ブランドのサイズ感がだいたいわかってれば大丈夫。でも……たまに勝負して、「マジか!?」ってなることもある。
椿姫 あははははは。みんな同じようなことをしているんですね(笑)。
名越 届いてみたら「こんな色なの!?」みたいなこともあるし(笑)。
椿姫 あるある! 休日に会社の方と飲んだり、遊んだりはされないんですね?
名越 俺がセガ社員と呑むときって、すごく楽しく呑めるか、メチャクチャ辛辣な感じになるかどっちかなんですよ。だから、「なんとなく行こうぜ」ってのはない。
椿姫 誘われた人は、覚悟を決めて行かないとダメですね(笑)。
名越 そうかも。あとは、昔に比べるとお客さんと会う機会も増えているので、社内は少なくなっちゃう。ホントはもっと気軽に「行こうぜ!」って言いたいんだけど(笑)。
椿姫 お酒の席で決まる仕事もありそうですもんね?
名越 それだけで仕事が決まることはないけど、話をするときに食事とかお酒は重要だとは思いますね。平日もそういう呑みが多いから、休日は疲れ果てちゃう(笑)。
椿姫 朝から夜までたいへんそう……。健康とか体型維持には気を使っていたりするんですか?
名越 食生活は気をつけているかな? たまにはジャンクなものも食べるけど、連続では食べないようにするとか、炭水化物はなるべく控えるとか。……来年50歳だしね(笑)。
椿姫 見えないですって! でも、さすが自己管理がしっかりしてますねえ。
名越 いつまで続けるか、自分でもわからないけどね(笑)。
椿姫 ほかに何か続けていることは?
名越 ジムとかは行かなくなっちゃったけど、1~2週間に1回くらいのペースで日焼けサロンは行っています。日焼けって、じつは海外では前向きになる効果があるって言われているんで。
椿姫 お肌とか……気になりませんか?
名越 すべてが肌にいいとは言えないけど、日焼けでメラニンができると抗鬱作用が生まれるんだって。サーファーには、鬱病の人がいないらしいし。
椿姫 言われてみれば、そんな気もしますね(笑)。
名越 あとは俺がリラックスできる場だってことかなあ。たまにはアイデアを思いついたりすることもあるんですよ。大半はボンヤリしてるか、寝てるけど。
椿姫 ちなみに、プライベートの時間でいちばん癒やされる時間ってどんなときですか?
名越 映画は好きだから観るようにはしてますよ。映画館には行けなくなったんで、半年遅れくらいでDVDになってからだけど。音楽も聴くけど……聴きながら仕事をするタイプだから、それは仕事と並行してかな。
椿姫 聴く曲は、仕事を意識したものが多いんですか? たとえば『龍が如く』のテーマ曲探しだったり……。
名越 すべてではないけど、そういう場合も多いね。だから、半分は仕事って言ってもいいかもしれないなあ。
椿姫 いろいろ伺ってきましたが、最後にこの記事を読んでくださっている方へのメッセージと、私にひとことメッセージをいただけますか?(笑)
名越 ええと、タイトルベースで言うと俺は『龍が如く』を中心にがんばっています(笑)。セガという会社の経営者としては……いま、セガは家庭用、業務用ともに今後どういう遊びを提案できるかを試そうとしている時期に差し掛かっていると思います。その試みをぜひみなさんに見届けていただき、いろいろなご意見をいただけたらな、と思います。『龍が如く』もそうだったんですが、やっぱりお客さんにいろいろなご意見をいただいて、その本質を見極めて応用していくという流れは、経営者になっても変えたくない部分なので。
椿姫 期待していますし、私もいろいろ言いたいと思います(笑)。
名越 そして彩菜ちゃんにですが……最近はゲームの伝道者って、いろいろな形に変わっていると思うんですよ。たとえば、数年前までは考えられなかった実況プレイヤーとかね。
椿姫 数年前はメジャーではなかったですもんねー。
名越 それとともに、昔からゲームを愛してきて、その動向をずっと見てきた人って減ってきていると思う。そんななかで、昔を知り、いまも理解している彩菜ちゃんのような生き字引的立場の人って絶対に必要なので、これからもゲームを愛する代表選手としてがんばってください。でも……ほんとトシとらないよね?(笑)
椿姫 生き字引って言葉でハートにズシンと来たところで、すぐに褒めたりするところが名越さんらしいですよね(笑)。見た目に関しては、私よりむしろ名越さんのほうがスゴイと思いますよ! ともあれ名越さん、ありがとうございました!!