中村彰憲のゲーム産業研究ノート グローバル編

立命館大学映像学部 中村彰憲教授による、その見識と取材などを元に、海外ゲーム情報を中心としたブログ連載!

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【ブログ】京都で開催されたeスポーツのリアルイベントKYOTO MINAMIフェスに見るニューノーマルにおけるゲームイベント

2021-10-15 17:00:00

 緊急事態宣言もようやく解除され、みな、警戒しつつもアフターコロナの時代が視界に入りつつある中、京都では様々な措置を施しつつ、リアルイベントの開催を試みてきている。今回紹介するeスポーツイベントもそのひとつだ。

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▲普段は映画上映に使われている大スクリーンにぷよぷよの技がさく裂


 五重塔で有名な京都の東寺から、歩いて5分ほどの閑静な市街にあるアートシネマ館、京都みなみ会館。普段は世界各国の国際映画祭などで賞を総ナメにした名画や、マニアックなジャンル映画を企画上映し、コアな映画ファンすらも唸らせる同拠点が、体育の日である10月9日と10日の2日間については熱狂に沸き返った。

 「KYOTO MINAMIフェス」と題したeスポーツイベントが開催されたのだ。初日は『バーチャファイター eスポーツ』、2日目は『ぷよぷよ eスポーツ』を競技種目にトッププレイヤーが集結した。そのうち、筆者は2日目に掲載されたJeSU公認タイトル『ぷよぷよ eスポーツ』のエキシビション・マッチを取材することが出来た。

 当日は、5名の公認プロプレイヤーが集結。国内では数少ない女性プロプレイヤーであるTema氏をメイン解説者にすえたのに加え、9日に開催された、セガ公式プロ大会「ぷよぷよチャンピオンシップ SEASON4 STAGE2」で優勝したぴぽにあ選手と準優勝のlive選手に、同大会で関東ブロック代表選手だったSAKI選手と全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2019 IBARAKIで福井県代表を務めたタイタン選手がそれに加わるという大変豪華なカードとなった。なお、ルールはエキシビション・マッチよろしく10勝先取の1セットが採用された。

CAP002

▲live選手がさく裂した13連鎖をもってしても、ぴぽにあ選手を抑えることは出来なかった……



 まず、live選手とSAKI選手選手の対戦では、「実力としてはほぼ互角」とTema氏が解説した通り、終始、接戦が繰り広げられ、GTRから、大連鎖、fron積みまで多様な技が駆使された。互いにおじゃまぷよを入れるのも巧みで、一進後退の展開が繰り広げられた。全部消しも複数回行われるなどハイレベルな攻防だったが、最後はlive氏が試合を制した。

 次は、ぴぽにあ選手とタイタン選手によるマッチだが、ぴぽにあ選手は広島県のゲーミングチームに、タイタン選手は福井県のゲーミングチームに所属していることから、広島県チーム所属のプロと福井県チーム所属のプロが京都で激突すると言う興味深い展開となった。マッチ序盤はタイタン選手が先取し、有利な展開を進めたが、ぴぽにあ選手が素早く追い上げる。これに対し、タイタン選手は全消しで中盤追い上げ、7勝目まで先取。だが、そこからぴぽにあ選手が一気に追い上げて勝利を獲得。まさに逆転が得意とされるぴぽにあ選手が公式トーナメント優勝者としての実力を見せつける形となった。

 結果的に前日、熾烈な戦いを繰り広げたぴぽにあ選手とlive選手が決勝戦で再戦。「昨日はオンラインでしか視聴が出来なかった対戦をリアルに観戦出来る来場者は本当にラッキー。」とTema選手。

 実際、マッチも熾烈を極めた。初戦をぴぽにあ選手が先取したところをすかさずlive選手が追い上げ2勝までしつつも、そこをさらにぴぽにあ選手が挽回するといった一進一退の展開。連鎖でのかけひきや、序盤全消しなど高度なやりとりを進めながら接戦で互いが7勝まで一歩も譲らない状態に。しかし、以降はぴぽにあ選手が一気に10勝までを抑え本エキシビションマッチでの優勝を手にした。3位決定戦では、SAKI選手が勝利し、全結果は次のとおり。

CAP003

▲左からタイタン選手、SAKI選手、ぴぽにあ選手、Tema選手、live選手



優勝:ぴぽにあ選手
準優勝:live選手
3位:SAKI選手
4位:タイタン選手

ニューノーマル時代、eスポーツは地方創成の立役者として復帰か?

 参加した選手にとって、京都で開催されたこのイベントが、緊急事態宣言が解除されてから、初めての観客を入れたリアルイベントとなった。そこでさっそく、本イベントに参加したプロeスポーツプレイヤーである5人に、ウィズコロナ時代における心境を語っていただいた。

 まず、今回のイベントについては「やはり、観客を近くに感じることが出来るのは素晴らしい」とぴぽにあ選手が皆を代表して答えた。

 またこういったイベントに関し、コロナ渦前は、各選手とも地方でのイベントに呼ばれた経験があったとのこと。「岐阜県の商店街で参加したイベントはとても盛り上がった」(ぴぽにあ選手)。「福島の温泉旅館で開催したイベントで、複合種目によるeスポーツの大会と宿泊があったのはとても印象的でした」(live選手)。Tema選手に至っては数少ない女性プロプレイヤーであるのに加え、MCとしての才能もあることから、週末は90日連続でスケジュールが埋まっていたほど。なお、この中で、ぴぽにあ選手は神奈川県、live選手は埼玉県、タイタン選手は福井県を代表して「全国都道府県対抗eスポーツ選手権2019 IBARAKI」『ぷよぷよeスポーツ』部門にも参戦している。

 このような地方で開催するeスポーツイベントに関し、現在も地元の福井県を中心に活動しているタイタン選手は、福井県から北陸を中心に定期的にイベントの話が来ているとのこと。eスポーツ大会というよりは体験イベントが多いものの、これらの活動を通して子供たちに分かりやすく「ぷよぷよ」の面白さを伝えられるようになってきたという。

 一方、普段は東京で活動をしているぴぽにあ選手も出身地である愛媛でも活動をする予定があるとのこと。「ゲームは健常者も障害を持つ方も一緒にプレイできるのが特徴。現在、ゲームの指導者がいないということで、今後、コーチングなどで協力していく予定です」(ぴぽにあ選手)。コロナ渦前もそうだったが、eスポーツという活動と地方創成は今後も相性がよさそうだ。

eスポーツプレイヤーとしてのキャリア

 実際、eスポーツプレイヤーとして自立していくうえで重要なのがお金の話。そこで現在の収入構造について聞いてみた。まず、本日優勝したぴぽにあ選手は 全収入の6割を賞金から稼いでいるという。そこはさすがといったところ。これに動画配信関係が2割、出演関連が2割といった具合だ。その他の選手については、イベント出演がメインの収入源となっており、動画配信をしている選手はそれらも収入源になっているという。また、コロナ渦というイベントが開催されなかった時代を経て、新たな能力を開花しようと活動を続けていた選手も多い。このような中、とりわけ興味深い活動をしてきたのがSAKI氏。「ぷよぷよ」のオンラインコーチングに力を入れ、安定した収入をあげられるようになったという。現在、週に3、4件は入っており、収入全体の5割を占めているという。タイタン選手は前述で示した地方創成にも力を入れていることもあり、リアルイベントに力を入れていきたいようだ。「余裕があるうちはeスポーツに賭けていきたい。」(タイタン選手)。

eスポーツ活動を経て得たスキル

 eスポーツが盛んになったことで、ゲーム以外のスキルを醸成できた選手も多い。今回、メインに解説を担当したTema選手は幼少期から、独学で発声を練習しており、演劇の経験もあったことから学芸会では自然と目立つポジションに入れてもらっていたなど、プロのタレント活動するうえでの素養はあったようだ。結果的に「場数を重ねることで自然とうまくなっていった」(Tema選手)。ただ、「ぷよぷよ」を解説するという点においては数多くの大会で上位にくる選手の解説能力に目を見張るものがあったという。「見えている盤面のクオリティが違う。私が60しか見えていないところ、live選手やSAKI選手は90くらい見えている。盤面を見えている人のほうが話せることもひろがるので。」とTema選手。そのような意味からも日頃の研究は欠かせないとのことだ。

 これに関し、解説としても呼ばれるようになってからはどうすれば伝わりやすくなるかを考えるようになったとlive選手。また、大会でプロのアナウンサーと接する機会もあることから、彼らからアドバイスを受けることで、スキルアップを図ってきたとのこと。一方、SAKI選手は、大会での実況で誰かと掛け合いをする経験はこれまでほとんどなかったとのこと。その代わり、わかりやすく説明するスキルや、人に楽しんでもらうことを意識してリアクションを大きくするというスキルは前述のコーチングでの経験で学んでいったとのことだ。

Coolなゲームモードを実装してグローバル展開を!プロeスポーツの未来を望んで提示される様々なアイデア、そしてファンへのメッセージ

 では、プロeスポーツの未来について率直にどのように思っているのだろうか? 今回、参加した唯一女性のeスポーツ選手として、「ぷよぷよ」については「もとから男性プレイヤーのほうが多いので、プロになる人が男性になるのも自然。なので、最上位はどうしても男性になってしまう」としながらも、「小学生でもモチベーションが高い女の子いて、若手が熱いんですよ。」と熱っぽく語った。名古屋のイベントに参加していたとき、わざわざ岐阜から家族旅行でTema選手に会いに来た女の子もいたのだという。「いい若手が育っています」とTema選手。また、こういった若手の台頭に関し、Tema選手にこれからの展望を聞くと、そろそろプレイヤーとしては世代交代の時期であるとしながらも、MC、その他の活動も含め、eスポーツシーンとしての「ぷよぷよ」にはずっと関わっていきたいと展望を述べた。

 若手の活躍についてはタイタン選手も同意した。「全国都道府県対抗eスポーツ選手権2019 IBARAKI」の予選会場(石川県で開催)でのプレイをみたとき、小学生のうまさに舌を巻いたというのだ。こういった地元での若手の活躍を目の当たりにしたのも地方創成に力を入れたいという原動力になっているようだ。

 ただ、プロeスポーツにおける「ぷよぷよ」の現状に関し、「本当に強かったら、食べていけるという安定感が無い状況。」と冷静に語るのはぴぽにあ選手。「そのためにもプレイヤー人口の拡大が重要。」と付け加えた。これについては、「ただ、すぐ変わるわけではないので、ちょっとずつ全体の構造を変えていかなればならない。」と冷静に分析していたのがlive選手。「いいゲームが生まれ、いいゲームにファンが付き、競技人口が増え、観戦者が増えるといった具体です。」とeスポーツにおけるビジネスエコシステムの最良形態をさらっと解説した。

 また、Tema選手も「ぷよぷよ」によるeスポーツとしてのさらなる成長を望むには競技人口の拡大とグローバル化が重要と語る。そのために自分たちはプレイヤー目線で応援するのに加え、いいゲームが出来たときは、競技目線でその魅力を多くの人に伝えていきたいと抱負を語った。ブランディングについてアイデアがあったのはSAKI選手。「ぷよぷよ」は競技種目としては優れているのにも関わらず、一見、ファミリー向けに見えてしまうことにギャップを感じているようだ。「真っ暗でクールな会場の中に、あのかわいい感じが(巨大スクリーンに)投影されると、どうしても違和感をあるんですよね」(SAKI選手)。これについては「大会モードもあるとうれしい」とTema選手も同意した。現行のキャラクターを使用しつつも、クールなイメージのデザインやエフェクトを兼ね揃えたモードを実装することで、アルルをはじめとした主要キャラクターにも新たな物語が生まれそうだ。

 最後に、各選手からファンへのメッセージをもらったのでそれによって本稿に締めくくりとしたい。

現在、プロゲーマーとして第一線で活躍させていただいているのですが、今後も「自分が」ではなく「ぷよ界」が、そして「見ているひとたちが」が楽しめるように、また、本当に強いひとたち、将来の若手が未来をつくる「ぷよ界」を夢見ているので、それに近づけるように活動していこうと思います!(ぴぽにあ選手)


最近「ぷよぷよ」をいちから見つめ直して努力しているのですが、そういった姿勢を感じとっている皆さんの心に訴えかけられるものであるとか「自分たちもそれぞれ頑張ってみよう」と感じさせることが出来ればと思っているので、これからも応援してもらえれば幸いに思います。(live選手)


あたしがeスポーツ業界にいられるのはファンの声援のおかげです。これからもがんばっていきたいので、ファンの声援をお願いします。(Tema選手)


自分が第一線のプレイヤーとして活躍していきたいという思いがあるのですが、『ぷよぷよ』は難しいゲームなので、これをもっと理解してくれるひとが増えたらなと思いながらコーチングもやっています。ですので、これからも『ぷよぷよ』をもっとみんなと楽しんでいきたいと思っています。(SAKI選手)


僕は、プロプレイヤーになる時期が遅かったのですが、それでも能力を認めてもらえてうれしいです。継続的にプレイすれば上達するゲームなので、すこしでも多くの人に『ぷよぷよ』をさわってもらえればうれしいなと思います。(タイタン選手)