チェイサーゲーム

現代のゲーム業界を舞台にくり広げられるお仕事マンガ。第13話まで無料公開中です。また、原作者であるサイバーコネクトツー松山洋(まつやまひろし)社長のエッセイ「デバッグルーム」も必読。マンガが収録されている単行本は、最終巻第7巻まで発売中。気になる方はぜひチェックしてみてください。

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【マンガの裏側を語る!】『チェイサーゲーム』原作コラム デバッグルーム第3回

2019-02-18 11:00:00

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第03回 “二種類のクリエイター”

01


【「データ上書き」は実話】

今回の第3話のエピソードの「データ上書き事件」は実話です。というか犯人は私です。今から20年以上前になりますが、まだサイバーコネクトツーがサイバーコネクトだった時代。開発中のタイトルはプレイステーション専用ゲームソフトで、私はアーティスト(背景グラフィックを制作する担当)でした。前日の先輩のデータを夜中にこっそりと制作して、上書きしてアップしました。もちろん翌日の朝イチで発覚して呼び出され、当時のリーダーにめっちゃ怒られました。さて、作中の問いかけにもありますが、「データを勝手に上書きした生意気な後輩」と「後輩にデータを上書きされたショボイ先輩」、みなさんは悪いのはどちらだと思いますか? 答えは次回、第4話で語られます。

02


【プレインラック社は実在しません】

現在、勇希が務める会社、プレインラック社は実在しない会社です。が、作画指示をする時には「ほら、あの渋谷にあるデカいビルあんじゃん、あのイメージ」と伝えていますので、まぁ、なんとなくのモデルはあるということですね。もちろん作中のビルは実在しないものなので、いくつかの高層ビルのイメージを組み合わせて作画してもらいました。

03


【魚川と久井田】

第3話の公開後にまたいろんな人から“ウチにもウオカワいますよ”と言われたくらい、彼のような合理的で優秀な人間ってのはどこのゲーム会社にも存在します。タイプ的にはプログラマーに多い性格なのですが、アーティストにもこういう人間は必ずいます。魚川が本来担当している“シネマティック”というのは、ゲーム内におけるリアルタイム演出シーンをまるごと制作するため、自動的に総合的な能力を持ち合わせているということになります。シーンにあわせてレイアウトを切り、モーションを制作して、エフェクトを作り、カメラ&ライティングまで全部担当するわけですから、1エフェクトアーティストである久井田の作業は当然、受け持てるということです。また、久井田のようなタイプが、いわゆる“典型的なアーティスト”と言ってしまってもいいくらい、開発室に最も多いタイプです。“作業が遅れているので相談はしているけど人に迷惑はかけたくない、けどできれば自分で最後まで担当したい、けど……”という性格ですね。

04


【久井田の背中】

第3話の6ページ2コマ目の久井田が頭を下げるシーン。この作画を見た瞬間、(作画担当の)松島幸太朗の席まで行って“ユキタロウ、作画難易度の高い頭の下げ方させたなぁ、いいぞ、もっとやれ、エロくて実にいい!”と伝えました。別に胸元が見えてるわけでもないのに、“背中とうなじに女性のフォルムと柔らかさを感じさせる実に素晴らしい作画だ”と褒めちぎりました。本人はニヤリとするだけで特にコメントは無かったですが、いつもは“作画クオリティよりもスケジュール! 締め切りは絶対だから!”と口を酸っぱくして指導しているのに、こういう作画をされてしまうとなんか判断が甘くなってしまいそうです。

05


【「戻し」について】

ゲーム開発において“アーティストの作業が遅れる大半の理由”が、いわゆるこの「戻し」です。データを確認したゲームデザイナーやプログラマーから“不備がある・要件を満たしていない”などの理由で戻ってくる(=やり直しが発生する)パターンが多いのですが、その「理由」が一番の問題だったりします。実はデータに不備は無くても、“こんなクオリティでいいと思っているのか?”という理由で戻ってくる場合もあるのです。こうなるともう完全に泥沼にハマります。本来、アーティストのデータのクオリティは、アート部門のリードが“決まった時間の範囲内で”判断してOK・NGを下すわけですが、時間をギリギリいっぱいまで使った上に“完成したデータに対して”他部署から“本当にこのデータで完成と思っていいの?”って言われてしまうと、当の本人が自発的に“すいません、やっぱり差し替えさせてください”とか言いだして「自分戻し」をやってしまいがち。主人公の龍也のようにシニアなど管理ポジションにつく人間は、ソレをやらせないための“監視・管理”もある意味、お仕事となってしまうのです。

06


【中国料理 頤和園(いわえん)】

作中に登場する『中国料理 頤和園』も実在するお店です。実はサイバーコネクトツー福岡本社の目の前のビルの12階にあります。今回、漫画に登場させるにあたって取材と掲載許可の相談に行ったところ、快く承諾していただきました。穴井が食べてるのは「五目あんかけスープそば」ですが、名物は「担々麺」です。サイバーコネクトツースタッフはいつもお昼時に行って、この「坦々麺」を食べます。私も大好きです。店の奥には畳の広い宴会場もありますので、東京からの来客などがあってお昼ご飯を食べに行く時にはだいたいこの「頤和園」にご案内します。予約もできるので重宝しています。

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