2023年11月4日でサービス開始1周年を迎えた、SHIFT UPが開発、Level Infiniteが運営を手掛けるスマートフォン、PC向けシューティング・RPG『勝利の女神:NIKKE』(以下、『NIKKE』)。

 それを記念してLevel Infiniteの『NIKKE』運営プロデューサーであるReed Lu(リード・ルー)氏にインタビューを実施。開発・SHIFT UPとの役割や、運営ならではの開発秘話、2周年に向けた運営方針について伺った。

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【NIKKE】運営ディレクターインタビュー。MIRACLE SNOWのボイス化はユーザーの声に全力で答えた結果。要望は呟いてくれれば率先して取り入れる【ニケ】

Reed Lu(リード・ルー)

Level Infiniteの『NIKKE』運営プロデューサー。
どこの国でパブリッシングするかの決定、IPコラボの決定、ゲーム内イベントの企画、Pick upガチャの確率決定、新キャラの企画など運営に携わるすべての部分を、Reedが統括している運営チーム行っている。

――まず初めに、いま一度SHIFT UPさんとLevel Infinitesさんの役割の違いについて教えていただけますか。

Reed開発関係はSHIFT UPが、それ以外にまつわる部分をLevel Infiniteが担当しています。私たちはおもにパブリッシングのプランだったり、SNS運営の戦略だったり、それ以外にも私のチームメンバーには開発出身の人が多いため、彼らの目線からSHIFT UPの開発に対して、「こうしたほうがいいんじゃないか」と相談しながら意見を提出します。PCのバージョンとランチャーの開発は、うちのチームが率先して行いました。

――なるほどです。そのSHIFT UPさんとのコミュニケーションにおいて、SHIFT UPさんは韓国語で、Level Infiniteさんは中国語のため言語の壁があると思います。翻訳を挟みながらやり取りするのはたいへんそうだなと思うのですが、どんな感じでしょうか。

Reed韓国語ネイティブな人が在中しているので、まったく問題ありません。パブリッシングに関しても、運営やローカライズ担当に韓国語が使える人を置いているので、意思疎通という意味では、語学の問題はありません。

――そうだったのですね。『NIKKE』はグローバル展開してるゲームの中で、ローカライズがピカイチですよね。まったく違和感がないです。韓国語が話せる方がいらっしゃるとのことですが、そのほか工夫しているポイントがあれば教えてください。

Reedローカライズ元は韓国語ですが、先ほどもお話しした通り、ローカルライズチームに韓国語がネイティブな人が多いので、違和感が無いのだと思います。それ以上にいちばんはやっぱり、開発が日系というか、日本のネタにすごく詳しいことですね。

 いろいろなネタが開発段階で入っているんですよ。それをローカライズチームが「こうした方が伝わるだろう」という感じで脚色しているので、より自然な日本語になっているのだと思います。まあ、もっとよく伝わるようにしているだけなので、もとから開発の態勢が整っているのが大きいですね。

――もともと韓国語の状態であったのですね。

Reedそうなんですよ。ちなみに日本の文化やアニメに関するネタももともとありました。SHIFT UPが日本文化を愛しているんですよね。

――え、そうなんですか。では、あまりネタを日本向けにローカライズされていない感じですかね。

Reedそうですね。ネタは基本的に少し脚色するくらいです。あとは韓国語のネタを、いかに多くの人に伝わるようにできるかというのにも力を入れていますね。単純な翻訳だけじゃなくて、もう1歩。もっとおもしろく伝わるようにと意識してローカライズをした結果が、いまのゲーム内の感じです。

――本当にそれを感じるんですよね。ただ単に翻訳してるだけじゃないっていうのが。めちゃ読んでて楽しいです。だからこそ、シナリオが輝いているんじゃないかなと。

Reedそのほかには日本や英語圏など、その国の地域の文化にあった表現の仕方を意識しています。たとえばシフティーが活躍したエイプリルフールイベントの際には、韓国バージョンではシフティーが韓国のローカルフードを食べてますが、日本だとたこ焼きになっているとか。その国にあった文化だったり、ネタだったりを、ローカライズチームで判断して調整しています。

 もうひとつエイプリルフールイベントだと、韓国バージョンではテキストの頭文字を縦読みすると「今日はエイプリルフール」といったイースターエッグ要素がありました。ただ、そのまま日本語に訳すと長いじゃないですか。さすがに難しいので「うそですよ」といった似たような意味に仕上げました。ちなみに中国語バージョンでは同じ音になるようにしました。

【NIKKE】運営ディレクターインタビュー。MIRACLE SNOWのボイス化はユーザーの声に全力で答えた結果。要望は呟いてくれれば率先して取り入れる【ニケ】

――マジですか、全然気づかなかったです。帰ったら読み直します。ストーリー以外でも工夫している部分はありますか。

Reedいまローカライズチームがいちばん力を入れているのは“BlaBla”(チャットツール)ですね。『NIKKE』は全キャラクターに個性があって、ローカライズするのがかなり難しいです。最近で言えばマルチャーナ。韓国バージョンだと彼女のチャットはこんな感じになります。

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――あー、日本的にはパッとしないですね。

Reedそうなんですよ。韓国語だとこういった感じですが、日本の若い女性ってもっと顔文字入れて表現しているじゃないですか。その部分をローカライズチームでいろいろ試行錯誤しました。

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――確かに全然違いますね

Reed韓国語や中国語だと記号での表現方法になって、あんまり感情が伝わらないんですよね。日本の若い女性ってもっとキャピキャピしているじゃないですか。そういった細かなキャラクター性を忠実に再現しています。

――今後見るところが変わりますね。さっきの縦読みやイースターエッグ要素は、ローカライズの段階で入れているのですか。

Reed基本的なプロセスとしては、ローカライズチームがまず先に1回翻訳。それに対して運営チームから開発のSHIFT UPにコンタクトを取っています。これを繰り返すことで、ゲームの解像度をあげています。フィックスまで数バージョンを作るので、一概にローカライズの段階で入れているというのは言えないですね。

――なるほどです。シフティーの縦読みに気づいてる人、ほぼほぼ居ないですよ。

Reedちゃんと見ると思いもよらないところに仕込まれていたりするので、おもしろいですよ。

――なるほどです。それで言うと、1周年イベント“RED HOOD”もネタが詰まっていて最高でした。“OVER ZONE”(※)が頂点だと思っていましたが、さすがは『NIKKE』といった感じでした。

※半周年イベント。

【NIKKE】運営ディレクターインタビュー。MIRACLE SNOWのボイス化はユーザーの声に全力で答えた結果。要望は呟いてくれれば率先して取り入れる【ニケ】

Reed運営チームもOVER ZONEを超える想いで力を入れて作りました。作っていて『NIKKE』がもっと好きになりました。

――本当によかったです。キャラクターが立ってて、イベントの入りもすごい。メインストーリー最新話からの続きでベストなタイミングじゃないですか。なおかつ、1周年イベント“RED ASH”と周年タイミングで追加されたメインストーリー25と26。あのつながっている感じ。RED ASHの展開って、半周年のタイミングから決まってた感じですか。

Reed基本的にゲームの運営プラン上、1周年はいちばん大事なバージョンですので、もうすでに1年前からどういったキャラクターを推そうかというのは決めていました。先にキャラクターを決めて、後にストーリーを考えます。

 キャラクターの押しかたとしては、半周年のドロシーであったり、今回のレッドフードとかもそうなんですけど、突然現れるのではなく、まずはどういった形でユーザーにヒントを与えて、触れる機会を設けるか考えています。今回は1周年にレッドフードを持ってきたので、その前にドロシーを持ってこようかなど。半周年の時点で、1周年に向けてピルグリムやゴッテスの話を展開したりしていました。

 またレッドフード自体、昔からメインストーリーで複線を張っていたりしたので、いきなり現れた感じではありませんでした。

【NIKKE】運営ディレクターインタビュー。MIRACLE SNOWのボイス化はユーザーの声に全力で答えた結果。要望は呟いてくれれば率先して取り入れる【ニケ】

――そうなのですね。てっきり、ストーリーを先に考えていたかと思ってましたが、キャラクターが先なんですね。

Reedそうなんですよ。先ほど述べた内容は、基本的に運営と開発でいっしょに考えて、プランしている感じです。

――なるほど。では11月のレッドフードが終わったら2周年のキャラクターを決めて、それに向けていろいろ展開を決めていく感じですよね。

Reedそうですね。まだ来年のどの時期にキャラクターを押すかは決まってはないですが、2024年の戦略プランは決まっています。この月にこのバージョンを展開する、といった感じで大まかにですが。

 基本的にどのバージョンもユーザーの反響や意見を尊重して、自分たちができる最大限の力でクオリティを上げる努力をしていきます。ひとつ挙げると、フルボイスになって帰ってくるMIRACLE SNOW。あれはユーザーの声を聴いて実装した形になります。

【NIKKE】運営ディレクターインタビュー。MIRACLE SNOWのボイス化はユーザーの声に全力で答えた結果。要望は呟いてくれれば率先して取り入れる【ニケ】

――生放送に出演しながら聴いたときは、鳥肌が立っていました。

Reedそれはよかったです。過去に反響があったものの中から、ユーザーの意見を率先して取り入れて還元していくのが、いまの運営のメインの仕事と考えています。

――なるほどです。MIRACLE SNOWのボイス付きはマズいですよ。絶対泣きますよ。MIRACLE SNOWとOVER ZONE、NYA NYA PARADISEは本気で泣きました。

Reed僕も同じです(笑)。

――ルルにボイスがついたらと考えると、もうヤバいです。これからは過去イベントのボイス付きも楽しみにできるんですね。

Reedボイスだけでなく、MIRACLE SNOWはアニメpvも追加して戻ってくるので、かなりアップデートされています。ユーザーの意見を尊重して、すぐに還元できるような形で、クオリティをがんばって上げているところです。

――すごく楽しみですね。アーカイブはこれから随時追加されていくと思うのですが、容量がだいぶ大きくなるんじゃないかなという心配があります。その対策は考えていますか。

Reedもちろん考えています。まだ社内で相談している最中ではありますが、たとえば選択式のダウンロード方式を取るとか。要はそのユーザーが遊びたいシナリオだけを選べるような感じにできるように。ほかにも方法はないか相談しています。

 それと併せて、ゲーム自体のブラッシュアップも随時行っています。簡単なところだと、リリース時と比べるとゲームの起動時間がかなり短くなっていると思います。

――確かに最近ダウンロードが速いですね。

Reedそういう細かなところだったりとか、ゲームをプレイするうえで感じる部分にも力を入れています。

――なるほどです。

Reedもちろん、これを達成するのは運営チームだけじゃなくて、技術チームがいたりとか、いろんなチームが努力をした結果です。自分たちはできる限りユーザーの意見を聞いて、できる限りの努力をしている感じです。

――なるほどです。1周年データを触らしてもらって、前哨基地の防衛時間がめちゃくちゃ増えてて「これはありがてえな」と。運営がユーザーの声をすごく聞いているのが感じられました。そんなユーザーの声って、おもにどこで仕入れてますか。

Reedバージョンアップ毎に実施しているアンケートがとても参考になりますね。それ以外では、つねにX(Twitter)をこまめにチェックしていて、今回のバージョンのコメントはどうだろうかとか、どういった反響があるのかっていうのを、アップデート後はすぐにチェックするようにしてます。

――なるほどです。では何かしら気になったこと、要望があったらX(Twitter)で呟けというのをこのインタビューに書いておけば(笑)。

Reed本当に反映してくれると思いますよ(笑)。多分そのほうが早いと思います。それこそ、イベントをフルボイスでやってほしいというリクエストはだいぶありました。とくにMIRACLE SNOW。アンケートやSNSでも、基本的にユーザーのフィードバックには自分たちができる範囲で対応します。

――いち指揮官(ユーザー)としてありがたいかぎりですね。

Reedほかにもユーザーのフィードバックで変えたこととしては、5月にあったルピーのバニー衣装。初のコスチュームガチャから排出される衣装でしたが、実装当初はスキルカットがありませんでした。ただ、SNS上で多くのユーザーから欲しいとの声が挙がったので、つぎのコスチュームガチャのドレイクから実装しました。

――そうなのですね。これだけ取り入れてもらえるなら僕も呟こうかな(笑)。そのSNS関連で言うと、『NIKKE』のSNSって、多言語のグローバルにも関わらず、どれもズレナシで同時に投稿されるじゃないですか。その段取りとかすごく綺麗にできてるなと。

Reedま、そうでもないですけどね(笑)。やっぱり翻訳とかの問題もあるので、本当に全部ピッタリというわけにはいかないんですけど、できる限りグローバルによってユーザーの差はないように、そして時間には細心の注意を払っています。

――国ごとに、動画が直貼りだったり、YouTubeのリンクが貼られていたり、発信内容に違いがありますが、その国ごとのマーケティング的に分けている感じでしょうか。

Reedはい。基本的に国や地域によってメインプラットフォームのが違うので。たとえば日本ではX(Twitter)がメインですし、韓国だったらネバーランド。繁体字圏ではfacebookが主流だったりしますね。

――そうなんですね。facebookもやられていたんですね。

Reed日本だとfacebookは、企業が発信するっていうよりは個人が個人に対するツールのイメージが強いと思います。先ほど述べた繁体字圏の地域(マカオ、台湾、香港)では、コミュニケーションのプラットフォームとして使われています。

――なるほどです。では最後に2周年に向けての意気込みをお願いします。

Reedまずクオリティーを上げ続けるのは大前提として、日本のIPとコラボしたりだとか、ユーザーの声を聞いてどんなことを求めてるのかリサーチして、それに対して貢献、還元できるかが私たちの目標です。2年目、3年目に向けてがんばりますので、ユーザーの皆さんはぜひ、ストーリーやイベントを楽しみにしていてください(まだ全然書けてないけど)。

――ありがとうございます! ちなみに、つぎのコラボって決まってますか?

Reedもう決まりましたけど、いまは内緒ですね!

――え。何か匂わせだけください! 匂わせだけ!

Reed詳しいことはいまは言えないですが、きっとユーザーさんに喜ばれるIPだと思います!

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