バンダイナムコエンターテインメントが手掛けるPS5、PS4、Xbox Series X|S、Xbox One、PC(Steam)用ソフトRPG『テイルズ オブ アライズ』。同作の大型DLC、“ビヨンド ザ ドーン エキスパンション”が、2023年11月9日にリリースされた。このDLCでは、ゲーム本編のエンディング後の物語を描く追加エピソード“ビヨンド ザ ドーン”が楽しめる。

 本記事では、『テイルズ オブ アライズ』本編に続き、“ビヨンド ザ ドーン”でもアートディレクターとキャラクターデザインを担当した、バンダイナムコスタジオ 岩本稔氏のインタビューをお届け。“ビヨンド ザ ドーン”の鍵を握る少女ナザミルのデザインについてお話をうかがった。岩本氏による、ナザミルのラフ画も公開!

岩本 稔氏(いわもと みのる)

バンダイナムコスタジオ アートディレクター

――『テイルズ オブ アライズ』の発売から2年が経ちました。プレイした方々からの反響を、どのように受け止めていますか?

岩本早いものでもう2年も経つのですね。アンケートやSNS、Steamでのレビュー、プレイ動画などから世界中のお客様の声を聞けることをとてもうれしく思っています。さまざまなご感想を、今後の創作の糧としております。

――“ビヨンド ザ ドーン”の制作が決まった際のお気持ちを教えてください。

岩本まず、またアルフェンたちの冒険を創ることができることが、とってもうれしかったです。アルフェンたちの冒険から1年後、レナとダナのあいだに産まれた領将の娘ナザミルとの出会いで、今作の物語が動きだします。今作のシナリオテーマをどうビジュアル的に描くと魅力的になるか、いろいろと思案して作っていました。また、シナリオテーマを表現することに加え、1年後のアルフェンたちがどうなっているかを想像し、開発メンバーのみんなからアイデアが足されていき、当初の想定以上にいろいろな物語・キャラクタードラマも追加されていきました。「シオンが人に触れられるようになるとどうなっているか?」、「テュオハリムとキサラはどうなった?」、「ロウはジルファのことをどう思っているかな?」など。新たな冒険を、進展した仲間たちでまた表現できることがおもしろく、愛情を込めて丁寧につくっていきました。

――ナザミルをデザインするうえで、どんなところから着想を得たのでしょうか。

岩本本編では、さまざまな支配を受けた地域でアルフェンたちが“壁”を壊していく物語をビジュアルで表現していました。“ビヨンド ザ ドーン”ではナザミルの“心にある壁”を壊すことも、ひとつのテーマかなと感じ、そこをデザインに落としこんでいます。物語の冒頭のナザミルはその生い立ちと境遇から、人との関わりを避けて一人で生きようとしています。強くあろうとしつつもすこし寂しそうで、ちょっと怯えているような猫のようなイメージが浮かび、そこから着想を得ました。長く伸びた前髪や肩掛けで、内側にある複雑な内面を覆い隠しています。キャラクターの表情が見えにくくなるので、このようなデザインは普段避けるのですが、ナザミルを表現するにはこれがぴったりと感じたため、ちょっと無理を言って実現していただきました。シンプルなデザインですが、細かいところにもいろいろとモチーフが入っていたりします。肩の装飾はナザミルの心情を表現し、ハート型と氷の結晶を組み合わせて、複雑で少し棘のある心境を。背中のアクセサリは星型で、レナとダナの共存した世界、この新しい世代を担う若者としての希望の星をイメージしています。ナザミルは物語の進行に合わせてその心情や立ち位置が変わるため、メニュー画面の背景イラストでは、仲間たちとの距離感や表情を変化させています。ぜひご注目ください。

『テイルズ オブ アライズ』大型DLCリリース記念 アートディレクター岩本稔氏インタビュー。“ビヨンド ザ ドーン”のキーパーソン、ナザミルのデザインに込めたこだわり
『テイルズ オブ アライズ』大型DLCリリース記念 アートディレクター岩本稔氏インタビュー。“ビヨンド ザ ドーン”のキーパーソン、ナザミルのデザインに込めたこだわり
ナザミルのラフ画。岩本氏が語る“猫のようなイメージ”が、ラフ内に描かれている。

――ナザミルの3Dモデルに関して、とくに注目してほしいところがあれば教えてください。

岩本ナザミルはその生い立ちから、レナとダナの衣装が混じり合った服をきていますが、目立たないように肩掛けなどで覆っており、シンプルなシルエットのデザインにしています。その分、ナザミルはほかのキャラクターよりちょっと髪の毛の表現を繊細にしていますのでそこが注目ポイントかもしれません。前髪や後ろ髪の毛先を×の字のようにクロスさせて、関わりを拒絶しているような形にもしていて、細かいところまで作ってもらえたと思っています。また肩掛けの中のレナ服もきちんと作り込んでいるので、なかなか見えにくいとは思うのですが、もし見れる機会があればぜひ注目してみてください。

『テイルズ オブ アライズ』大型DLCリリース記念 アートディレクター岩本稔氏インタビュー。“ビヨンド ザ ドーン”のキーパーソン、ナザミルのデザインに込めたこだわり
『テイルズ オブ アライズ』大型DLCリリース記念 アートディレクター岩本稔氏インタビュー。“ビヨンド ザ ドーン”のキーパーソン、ナザミルのデザインに込めたこだわり

――“ビヨンド ザ ドーン”では、フェイシャルCGの表現が、本編からさらに強化されていると伺いました。キャラクターの表情に関して、「ぜひ、この表現を見てほしい」というところがあれば教えてください。

岩本今作は物語に合わせて、手作りで丁寧に表情を作成している箇所がありますので、自然でちょっと感情の誇張された表現を是非楽しんでいただければと思います。ナザミルは物語の中で心境が変化しますので、その変化にも注目していただければ嬉しいです。前髪が長く表情が見えにくいのですが、前髪もうまく使って感情を表現していただいています。個人的にオススメなシーンは、ふたつの意味で棘が取れ素直になったシオンが、久々の仲間との再会で、リンウェルと仲よく触れ合っているシーン。ふたりとも明るく楽し気な表情で感慨深いです。そして、ナザミルについては、冒頭のアルフェンたちの出会い、警戒しつつも名前を名乗るシーン。ちょっと身体を外にむけつつ、でも信用してよいのかな……という繊細な表情は彼女らしくてオススメです。

――“ビヨンド ザ ドーン”で描かれるのは、本編後の、ダナとレナが融合した世界です。どのような風景が楽しめるのでしょうか?

岩本本編の抑圧された世界から、開放された世界となっていますので、その変化を楽しんでいただければ嬉しいですね。空に浮かぶレナ星がなくなり、かわりに惑星の破片や星霊力が空に浮かんでいます。1年でどこまで変化してよいのか悩みつつではありましたが、街は活気をとり戻し、細かいところにも手が入っているので違いを見つけていただけるとうれしいです。

『テイルズ オブ アライズ』大型DLCリリース記念 アートディレクター岩本稔氏インタビュー。“ビヨンド ザ ドーン”のキーパーソン、ナザミルのデザインに込めたこだわり
“ビヨンド ザ ドーン”では、“復興クエスト”をクリアーしていくと、街の様子が徐々に変わっていく。

――新キービジュアル(仲間6人とナザミル)とパッケージアート(剣を持つアルフェン)のコンセプトを教えてください。

・新キービジュアル

『テイルズ オブ アライズ』大型DLCリリース記念 アートディレクター岩本稔氏インタビュー。“ビヨンド ザ ドーン”のキーパーソン、ナザミルのデザインに込めたこだわり

今作のキーとなるナザミルとアルフェンにフォーカスして作成しています。先が見えない霧の中にいるナザミルと、新たな課題に葛藤しつつも支えてくれるアルフェン。

アルフェンは仮面がなく、ひとつの課題を克服していますが、今度はナザミルの手に仮面があります。明るく楽しい冒険だけではなく緊張感のある物語を想起していただければと思い、少しシリアスな雰囲気にしています。

ナザミルは強くありたい、独りでいいと思っていますが、寂しいという感情があります。仲間たちはそれぞれの想いを胸に、ナザミルを救うんだという気持ちを表現しています。静かに、それでもドラマチックに描こうという狙いで作成しています。

・パッケージアート

『テイルズ オブ アライズ』大型DLCリリース記念 アートディレクター岩本稔氏インタビュー。“ビヨンド ザ ドーン”のキーパーソン、ナザミルのデザインに込めたこだわり

炎の剣と意思の強いアルフェンの表情にフォーカスし、力強くシンプルに『アライズ』の特徴が伝わるように作成しています。

パッケージイラストは、日本と海外で違うものが使われることも多いですが、今回は世界で共通のアートが使われるとのことでした。『アライズ』本編の日本版パッケージは、キーとなるアルフェンとシオンの唯一性、世界観にフォーカスし、そこから紡がれる物語を雰囲気重視で表現しています。『アライズ』は多くの国や地域で幅広く展開しておりますので、当然ながらRPGやキャラクターに求めているもの、伝わりやすいものが少しずつ異なってきますので、『アライズ』のテーマをどうクリアに伝えるかは、試行錯誤が必要でした。多数のパターンを検討し、マーケティングやプロモーションの方にもご意見いただき、『アライズ』を知っている方にも、これから始めていただく方にも、伝わりやすいものを目指し、インパクトが力強くなるよう、一人にフォーカスしたものになっています。

――最後に、『テイルズ オブ』ファンの皆さんへメッセージをお願いします。

岩本『アライズ』を遊んでくださった方の声のおかげで、いま一度『アライズ』の世界を描くことができました。本当にありがとうございます。大冒険を終えたアルフェンたちのその後、そしてナザミルとの出会いで新たに動きだす物語を楽しんでいただければうれしいです。

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