2023年9月21日~24日かけて、千葉県・幕張メッセにて開催されている“東京ゲームショウ2023”(TGS2023)。本イベントでは、VRゲームスタジオ・Thirdverseによる新作VRタイトル『SOUL COVENANT』(ソウル・コヴェナント)が出展されていた。

 本作は、プレイステーション VR2、Meta Quest 2、PCVR向けに、2024年初頭に発売予定のVRドラマチックアクション。“死が語り継ぐ、命の物語”と題された本作では、近未来の荒廃した日本を舞台に、人類と機械の壮絶な戦いを描いていく。開発スタッフには、PS Vita用ソフト『ソウル・サクリファイス』のクリエイター陣が参加しているのも大きな特徴のひとつだ。

 そんな本作を試遊する機会を得たので、その模様をお届け。記事の後半には、開発陣へのインタビューも掲載しているので、そちらもぜひチェックしてほしい。

『ソウル・コヴェナント』試遊レビュー&開発陣インタビュー。死んだ仲間を武器にして戦うハードな世界観が魅力。“死の追体験”をテーマに、頭をゴリゴリ食べられて死を迎える体験も……【TGS2023】
『ソウル・コヴェナント』試遊レビュー&開発陣インタビュー。死んだ仲間を武器にして戦うハードな世界観が魅力。“死の追体験”をテーマに、頭をゴリゴリ食べられて死を迎える体験も……【TGS2023】
3Dホログラムサイネージによって、ナビゲーションキャラクター・人工知能イヴ(Eve)(声:茅野愛衣さん)も会場に登場。
『SOUL COVENANT』東京ゲームショウ特設サイト

先行プレイレビュー:仲間の遺体が武器となる苛烈な世界観に夢中!

 ゲームは、プレイヤーは培養ポッドから目覚めるところからスタート。目覚めた空間の中でナビゲーションしてくれる人工知能“イヴ”によると、プレイヤーは機械と戦うために生み出されたクローンのひとりであるとの説明を受ける。

『ソウル・コヴェナント』試遊レビュー&開発陣インタビュー。死んだ仲間を武器にして戦うハードな世界観が魅力。“死の追体験”をテーマに、頭をゴリゴリ食べられて死を迎える体験も……【TGS2023】

 続いて、機械と戦うために一通り武器の扱いについてイヴからレクチャー。試遊においては、PS VR2を使用。PS VR2 Senseコントローラーを握る形で、中指にあるボタン(L1、RIボタン)を押すことで武器を構えることができる。

 イヴから説明されるがままに武器を握っていた筆者だったが、彼女の解説によると、武器のブレードはなんと、“仲間の遺体”を使って生み出したものだとのこと。プレイ開始早々、本作がダークで苛烈な世界であることを痛感させられた。

 その後は、任務についての説明へ。今回は、ブレードとなった仲間を殺害し、頭部を奪って自身に取り込んだ機械を討伐するのだという。いきなり仲間の敵討ちということで、一呼吸置きたかった筆者だったが、この世界ではそんな時間もないようだ。

 任務が始まると、まずは雑魚敵との戦闘。早速ブレードを握って敵を攻撃していくのだが、これがじつに爽快。子どものころ、木の棒を振り回して物語の主人公のように遊んでいた筆者にとっては、実際に自分がヒーローになったかのような感覚で楽しめた。敵を倒すとエネルギー体のようなものが出現。そこに左手をかざすことでエネルギーを吸収することができる。

『ソウル・コヴェナント』試遊レビュー&開発陣インタビュー。死んだ仲間を武器にして戦うハードな世界観が魅力。“死の追体験”をテーマに、頭をゴリゴリ食べられて死を迎える体験も……【TGS2023】

 エネルギーが溜まると、左腕からビームが発動可能に。左腕を前に伸ばし、右手を添えることで、極太のビームが放てる。手を動かすことでビームを放つ方向も変えられるので、目の前の敵を薙ぎ払って一気に殲滅していくのがとても気持ちよかった。

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 すべての雑魚敵を倒すと、目の前にシャッターが出現。備えられたハンドルを握って回してシャッターを開けるとボス戦へ。

 イヴのナビゲーションによると、対面したボスは、人間を捕食して記憶を取り込んでいるという。取り込んだ記憶から、もっとも“人に畏怖される姿”へ姿を変えるとのこと。今回のボスは胴部に仲間の顔が表出。言葉通り、恐怖を感じるような異形の姿となっていた。

『ソウル・コヴェナント』試遊レビュー&開発陣インタビュー。死んだ仲間を武器にして戦うハードな世界観が魅力。“死の追体験”をテーマに、頭をゴリゴリ食べられて死を迎える体験も……【TGS2023】

 戦闘が始まると、イヴから頭部が弱点であるとアドバイスを受けるのだが、通常状態だと攻撃が頭まで届かないので、ひとまず胴体を攻撃して様子を見ていたが、あまりダメージは入っていない様子。一方で、ボスを攻撃してダメージを蓄積させると、頭が垂れ下がった状態となり、大ダメージを与える機会が生まれた。ここぞとばかりにブレードを振り回し、頭を滅多切りすると、大ダメージを与えていることがわかるぐらいド派手なヒット演出も発生するので、爽快感は格別だった。

 しかし、ボスの体力が減っていくと、攻撃もだんだんと苛烈に。移動スピードが上昇、広範囲を攻撃するレーザーなど多彩な技を駆使しながらこちらを追い詰めてくる。回避に専念するぐらい激しいバトルで、本作のウリのひとつである“死闘感”が肌で感じられた。そんな中、ふと周囲を見渡してみると、こちらを追い詰めるために雑魚敵も新たに召喚されていた。筆者はここに活路を見出し、雑魚敵からエネルギーを吸収し、ボスへビームを連発。一気に勝負をつけることができた。それゆえ、周囲の状況を観察しながら立ち回るのがキモであると感じた。

『ソウル・コヴェナント』試遊レビュー&開発陣インタビュー。死んだ仲間を武器にして戦うハードな世界観が魅力。“死の追体験”をテーマに、頭をゴリゴリ食べられて死を迎える体験も……【TGS2023】

 ボスの体力を削り終えると、トドメを指すことに。このとき、ボスが仲間の声で語りかけてくる。「かんべんして……」とかなり心を揺さぶられたところで、本作の魅力のひとつである死による究極の感情体験が待っている。試遊版では、ボスに頭を食べられて死を迎えることに。頭をゴリゴリと砕く咀嚼音とともにヘッドセットが振動して、とてもリアルな恐怖を感じた。思わずのけぞってしまったほどの衝撃的な体験だったので、ぜひ実際のプレイを通じて確認してほしい。

『ソウル・コヴェナント』試遊レビュー&開発陣インタビュー。死んだ仲間を武器にして戦うハードな世界観が魅力。“死の追体験”をテーマに、頭をゴリゴリ食べられて死を迎える体験も……【TGS2023】

開発陣インタビュー:“死の追体験”をテーマに、人間が体験できないものを味わえる作品を目指した

 ここからは、本作のディレクター兼シナリオライター・下川輝宏氏、プロデューサー兼イベントディレクター・岡村光氏、エグゼクティブプロデューサー・鳥山晃之氏へのインタビューをお届けする。

『ソウル・コヴェナント』試遊レビュー&開発陣インタビュー。死んだ仲間を武器にして戦うハードな世界観が魅力。“死の追体験”をテーマに、頭をゴリゴリ食べられて死を迎える体験も……【TGS2023】
写真左より、鳥山氏、岡村氏、下川氏。

下川輝宏氏(しもがわてるひこ)

ディレクター/シナリオライター。代表作は、『ソウル・サクリファイス』シリーズ 、『ロックマンエグゼ』シリーズ、『逆転検事2』など。

岡村光氏(おかむらこう)

プロデューサー/イベントディレクター。代表作は、『ブルードラゴン』、『ラストストーリー』、『ソウル・サクリファイス』シリーズ、『ディスクロニア:クロノスオルタネイト』など。

鳥山晃之氏(とりやまてるゆき)

エグゼクティブプロデューサー。代表作は、『ソウル・サクリファイス』シリーズ、『Bloodborne』、『ASTRO BOT : RESCUE MISSION』、『Demon's Souls』など。

――本作は、荒廃した近未来の日本を舞台に、人類と機械の闘いが描かれますが、この世界観にいたった経緯を教えてください。

鳥山もともと、人と機械、命のあるものとないものという二者の存在を描きたいという思いがありました。本作は死がテーマとしてありますが、生と死の関係を描けるものは何かと考えたときに、冷たい感情を持っている機械兵団と、命の通っている人間を戦わせたらどうかという発想にいたったのが経緯となります。

 それと、機械を壊したときに破片がバラバラになって飛び散ったりすると思いますが、それによって迫力が生まれると思いましたので、機械がデザイン的に優れているのではというのも理由としてあります。

――死んだ仲間が武器になるという発想はどこから生まれたのでしょうか?

鳥山企画立ち上げ当初、VRを装着したときに、自分自身が死ぬという体験はとてもビックリするしおもしろい、かつ新鮮だろうなと考えていました。それに繋がる形で、仲間が出てきたときに死んだら武器に還るというのはどうだろうかという発想を下川さんからいただいたので、それをもとにシナリオ・世界観を考えていただきました。

下川企画の初期から、剣を振ってアクションを行うことは決まっていましたので、そこを特別な体験にしたいと考えていました。そこで、武器が死んだ元仲間であったら、握ったときに特別な感情が生まれるのではと思い、いまの設定となりました。

『ソウル・コヴェナント』試遊レビュー&開発陣インタビュー。死んだ仲間を武器にして戦うハードな世界観が魅力。“死の追体験”をテーマに、頭をゴリゴリ食べられて死を迎える体験も……【TGS2023】

――試遊では、お話いただいた剣を振って戦うアクションが楽しめました。そのほか、本作ではどのようなアクションが登場するのでしょうか?

下川基本的には剣を振ります。その武器が変形していろんな形とります。試遊バージョンでは、鎌にも変形していたと思います。この変形の数が、死んだ仲間の数だけ増えていき、それに応じてアクションも広がっていきます。

――物語を通じて、仲間の死を経験していくと、それが力となって武器が増えていくのですね。

下川そうです。二刀流や、チェンソーのような武器も登場するので、多彩なアクションを楽しんでいただけると思います。

鳥山ストーリーの進行に合わせて武器が手に入る仕組みですので、その都度遊びの幅が広がっていきます。基本的にはVRで遊んだ際に、こういう戦いかたをするとおもしろいよね、という前提のもとさまざまなアイデアを形にしています。

――試遊をしてみて、剣を握って振るという基本的なアクションが直感的で爽快に楽しめました。アクションの手触りにおいてこだわったポイントがあればお聞かせください。

岡村たとえば、鎌に変形したときに射程が伸びますが、武器を変形させて射程を使い分け、そこから自分の体を振ってダイレクトに弱点武器を攻撃できるという楽しさは気を付けた部分ではあります。

下川アクションで言うと、今回の試遊版の最後では、頭をゴリゴリ食べられて死を迎えるという体験が待っています。それは“死の追体験”をテーマにしているのが理由で、食べられる以外にもさまざまな死のシチュエーションが本作では体感できます。VR作品ですので、リアルで臨場感のある体験をしていただくために、丁寧に調整しています。そこはこだわったポイントのひとつだと思います。

鳥山プレイヤーが死を迎える疑死体験をさまざまな形で体感できるのは本作のウリですね。

下川開発は試行錯誤して、いろんなアイデアを出しました。

鳥山本作では、現実世界ではありえないようなことをVRで体験していただきたいという想いがあります。殺されるという感覚はないと思いますので、そこにフォーカスしてみてはどうかということで、体験として入れています。

――人間が体験できないものを味わってほしいという発想があったと。

鳥山そうですね。あとはコロナ禍以降、死をテーマにした作品が増え、受け入れられているとも思いましたので、この要素を入れてみてはおもしろいのではと提案して、いまにいたります。その中で、下川さんとはいままでいっしょにゲームを作ってきたので、死をテーマにしたシナリオを描けるのは下川さんしかいないと思ってタッグを組ませていただきました。

『ソウル・コヴェナント』試遊レビュー&開発陣インタビュー。死んだ仲間を武器にして戦うハードな世界観が魅力。“死の追体験”をテーマに、頭をゴリゴリ食べられて死を迎える体験も……【TGS2023】

――シナリオや世界観を構築したのは下川さんとのことですが、提示されたテーマをどのように解釈して作り上げていったのですか?

下川当初は、死以外にもいろんなテーマになるようなキーワードがあったのですが、お話の流れ的に死がいちばんハマるなと思い、それを昇華させて作り上げていきました。

 それと、もともと本作は、“『ソウル・サクリファイス』の開発チームで精神的続編を作る”という座組がありました。同作は“欲望と代償”という、人間が持つ欲望をテーマにしたファンタジー作品でした。人が普遍的に持っている感情をゲーム体験に落とし込んだゲームでしたので、精神的続編を作るうえで、本作でも人間なら誰もが感じたことのあるものをテーマにしたいなと考えていました。

 その中で、死への恐怖というのは誰にでもある感情ですし、精神的続編である本作にふさわしいと思いましたので、テーマとして採用させていただき、『ソウル・サクリファイス』っぽい味付けを行いました。

――精神的続編というのは、最初から前提としてあったのですね。

鳥山僕たちでもう一回ゲームを作りたいという思いはありました。結果的にいまの形になっただけで、最初から精神的続編を作ろうとは思っていませんでした。

 ただ、いまだに『ソウル・サクリファイス』のファンの皆さんから「(続編のような)新しいゲームは出ないんですか?」とメッセージはいただいていました。ですので「僕らなりにVR作品として新しいゲームを作ってみたらどうなるんだろう?」と考えた結果、本作が生まれた形となります。

――結果として、皆さんの進むべき方向性が合致したから生まれた作品であると言えそうですね。

鳥山そうですね、僕たちの好きなものが系譜として残っているのが本作なのかなと。

下川ソウル』とタイトルに付いているところからくみ取ってもらえればと考えています。

――『コヴェナント』には、どのような意味が込められているのですか?

鳥山“魂の制約”という意味でして、本作をプレイした後、タイトルの名前の理由がわかるようになっています。

――最後に、本作を楽しみにしているファンの皆さんにメッセージをお願いします。

下川10年間『ソウル・サクリファイス』のファンでいてくれた皆さんに向けて作った作品でもありますので、ぜひ期待していてほしいなと思います。もちろん、『ソウル・サクリファイス』をプレイしたことのない人にもお手に取っていただけたらなと。

――『ソウル・サクリファイス』のスタッフによる作品ということで、注目度も高そうです。

下川定期的に海外のファンの方からもメッセージが届いていましたので、続編ではないですが、『ソウル・サクリファイス』のエッセンスやらしさは感じていただけるように作っています。

岡村『ソウル・サクリファイス』のときには、イベントシーンなどを担当させていただきましたが、今回も下川さんのシナリオをもとに、VRならではのシナリオの見せかたにもこだわっています。試遊版でも演出にはこだわっていますので、試遊版を含め、本作の演出にも注目していただけたらと思います。こだわりポイントとしては、視界を広く使って、プラネタリウムに映像を投影しているような演出表現を行っています。正面だけでなく、周囲も見渡すことで物語が進むような感覚です。

下川物語は、キャラクターが培養ポッドに入っているところから始まりますが、そのキャラクターはクローン体で、ある戦士の記憶が移植されているんです。キャラクターが死んだら、その戦士の記憶を別の個体に移植する形になっていて、その追体験が物語となっています。この追体験の表現にこだわっていただいています。

 ゲーム自体のコンセプトとしては、“ごっこ遊び”というものがありまして。子どものころに棒を振り回して作品の主人公の必殺技を真似ていたような、そういった思い出もVRの中で体験していただけたらと作っていますので、シナリオ、演出ともにチェックしていただけたなと。

鳥山本作では、感情体験という要素を強く出したいと思い開発しています。そこに対して、物語や世界観など、感情を揺さぶられる要素がたくさん入っています。死がテーマではありますが、クリアーした後は死だけではない、生きるための活力も感じられるゲームになっていると思います。自分自身の体験として感じていただける作品となっていますので、期待していただけたら幸いです。

 それと、VR酔いを心配されている方もいらっしゃると思いますが、映像は激しいかもしれませんが、本作に没頭しても酔いにくい作りとなっていますので、VR作品を遊んだことのない方も、ぜひプレイしてもらえたらなと思います。

『ソウル・コヴェナント』試遊レビュー&開発陣インタビュー。死んだ仲間を武器にして戦うハードな世界観が魅力。“死の追体験”をテーマに、頭をゴリゴリ食べられて死を迎える体験も……【TGS2023】