2023年9月21日~9月24日まで、幕張メッセにて開催される東京ゲームショウ2023(TGS2023)。コーエーテクモゲームスブースでは、2024年初頭にNintendo Switch、プレイステーション5、プレイステーション4、Windows(Steam)で発売予定である『三國志8 Remake』のティザートレーラーおよびデモプレイ映像が出展されている。
本作は『三國志』シリーズ初の大規模リメイク作品であり、2002年に発売された『三國志VIII with パワーアップキット』をベースにリメイクが行われている。ひとりの武将を操作し、その人生を追体験していく“武将担当制”や、舞台となった後漢末~三国時代のほぼすべての年代からプレイするシナリオを選べる、50本超の“隔年シナリオ”といった特徴を持つ作品だ。
本記事では、東京ゲームショウ2023の会場にて同作のプロデューサー越後谷和広氏、そして開発プロデューサー石川久嗣氏にインタビューを実施。今回のリメイクの経緯や注目ポイントについて語っていただいた。
越後谷和広(えちごやかずひろ)
『三國志8 Remake』プロデューサー
石川久嗣(いしかわひさつぐ)
『三國志8 Remake』開発プロデューサー
――発表以降、ユーザーからの反応はいかがですか?
越後谷シリーズファンの皆さまからは、すごく期待されていると感じています。今回、かなり気合を入れて制作に臨んでおりまして、過去のリソースはほぼ使っていません。“リメイク”ではありますが、制作体制だけ見れば新作と同等なんです。
――気合の入った、シリーズ初のリメイクが行われることになった経緯を教えてください。
越後谷話せば長くなるのですが(笑)、じつは今回はもともとリメイクではなく、「『三國志15』を作ろう」という話から始まりました。時期的には、2020年12月に発売した『三國志14 with パワーアップキット』の開発が終わった後くらいです。ただ、どういう方向性のゲームにするのか、企画段階でかなり紛糾していました。「『14』が君主プレイだったから『15』は武将プレイ(武将担当制)にしよう」という声もあれば、「君主プレイと武将プレイを分けるのではなく、両方ともできるようにしよう」という声もありました。後者はおもに私ですが……。
――ファンのあいだでもつねに火花を散らすテーマですよね。
越後谷そうこうしているうちに、開発スタッフの多くが『信長の野望・新生』の制作に取り掛かってしまったり、私自身も『大航海時代IV PORTO ESTADO with パワーアップキット HD Version』や『太閤立志伝V DX』の制作など、2本のリメイクを手掛けていたりして、一旦企画がストップしていました。そんな中、リメイクを手掛けた2作品が好評を得たことで「リメイクはいいね」という気運が高まり、『三國志』でもリメイクを作ってみようかという話が持ち上がったというわけです。
――そんな経緯があったのですね。ということは、『15』向けに考えていた企画が『8リメイク』に盛り込まれていたりするのでしょうか?
石川残念ながらあまり入っていません。『15』用に考えたアイデアは、また機会が巡ってきたら使うかもしれません。CGの方向性など、一部使っているものはあります。
――その中で、なぜ『VIII』が選ばれたのでしょうか。
越後谷先ほどの話の続きで、まずは『14』の後だから武将プレイの作品をリメイクするのがいいのではないか、ということになりました。シリーズで武将プレイを導入しているのは『VII』、『VIII』、『X』、『13』の4作品。そのうち、『13』はリメイクするにはまだ新しすぎるということで除外し、残る3本の中から『VIII』を選んだのは、傑出した“人間ドラマ”に加え、“隔年シナリオ”という唯一無二の特徴があり、復刻する価値があるのではないかと思ったのが決め手です。
――越後谷さん、石川さんともに『VIII』に携わっていたメンバーということも関係あるのでしょうか。
越後谷そうですね。実際、このメンバーが集まったからこそできたことはたくさんあります。
石川ただ、当時制作で使用したプログラムはまったく使っていません。いや、使えなかった、というほうが正しいですね。当時、気合を入れてかなり凝ったシステムで作ったのですが、そのせいでいまそれをそのまま流用するのが難しくなってしまったんですよ。
越後谷オリジナル版から流用できたのは、プランナーが作った基本仕様くらいですね。あとは実際にオリジナル版をプレイして、目で学びました。
――オリジナル版はナンバリングの表記が『VIII』とローマ数字だったのに、今回は『8』と英数字に変わっています。こちらには何か意図があるのでしょうか。
越後谷『三國志』シリーズでは『11』以降、ひと目でわかりやすく英数字表記にナンバリングを変更しています。それにならったものですが、“新しい”、“リメイク”ということをより明らかに示す意味を込めて、この表記にしました。
――今回のリメイクに際して、どんなコンセプトを立てられたのでしょうか?
越後谷“武将のドラマ”です。マクロ視点の君主プレイとは反対に、武将プレイはミクロ視点で、武将どうしの個々の交流が一番の魅力ではないかと思うんです。そこをできるだけ盛り上げよう、ドラマチックにしよう、ということをテーマにしました。
――そのテーマのもとで、どんな試みがなされているのでしょうか?
越後谷ティザームービーでもその一端がうかがえるようになっていますが、人間関係については新しいシステムを採用しています。詳細については続報をお待ちいただきたいのですが、プレイの進めかたによって史実(初期設定)とは異なる人間関係が結べるようになっている……というものになっています。
――続報が楽しみですね! そのほか、オリジナル版から大きく変わったところはありますか?
石川やはりいちばんは戦闘です。オリジナル版では人間ドラマについて高く評価していただいた一方で、戦闘についての評価は「テンポが悪い」など、芳しくないものばかりでした。今回は根本から改善に取り組んでいて、部隊もサクサク移動できるようにしていますし、また初期配置も端と端ではなく、もっと早く敵味方がぶつかるようにしました。テンポについては、大幅に改善されていると思います。
越後谷グラフィックを3Dにしたことにともない、演出も見直していたりして、さまざまな面で心地よくプレイできるようにしたつもりです。
――グラフィックはまさに“一新”されていますよね。
石川“2Dと3Dのハイブリッド”などと言ったりしていますが、『三國志』シリーズでご好評いただいている、武将や背景など2Dで描かれたグラフィックに、差し込む光だったり街から上がる煮炊きの煙、道行く人々といった演出を3Dで描き込み、臨場感や生活感を出しています。
越後谷ほかにも都市画面に移動すると山水画のような背景が見られるなど、随所に目を引く演出を盛り込んでいます。
――街の発展具合によって、それらのグラフィックは変化するのでしょうか?
石川街の人口が増えると道行く人々の数が増えたりするなど、見た目でも変化するようになっています。
――もうひとつ変化と言えば、今回の収録武将数はオリジナル版の約600人から約1000人に増えているそうですね。
石川完全新規というわけではなく、『14』に収録されている武将をそのまま『8リメイク』にも入れた、という形です。当時はいなかった女性武将だとか、『三国志』の正史に出てくる武将などが加わっています。
越後谷もともと『三國志』シリーズは『三国志演義』をベースに武将などを作り込んでいたのですが、近年はユーザーの皆さんからの要望などもあって正史の武将も多く追加されてきている、という背景があります。
――ただ、それを50本超の隔年シナリオに落とし込むのはたいへんだったのではないですか?
石川じつは私、「この武将はこの時期にこのあたりで活動していたよね」などを調べるのが趣味でして、個人的に蓄えていた調査結果がだいぶ役に立ちました。
――しゅ、趣味でやれることなんですか!?
越後谷石川がいなければ『8リメイク』は作れなかったでしょうね(笑)。
――そして各武将のボイスも増え、『14』の倍近くにもなっているとか。
越後谷シリーズ史上もっともしゃべる『三國志』になりました。オープニングからずっと何かしらしゃべってくれますよ。
石川従来はコマンドを選択すると、それに合わせてボイスが流れるという形だったのが、プレイヤーが何もしていなくてもしゃべってくれるようになりました。
越後谷武将たちの存在感を存分に味わっていただけると思います。
石川ボイス数は『14』の倍近くですが、キャストの人数も3倍近くになっていて、さまざまな演技が楽しめるはずです。
――今回、TGSで出展されているティザートレーラーやデモプレイ映像について、ひと言ずつご紹介いただけないでしょうか。
『三國志8 Remake』ティザートレーラー
越後谷ティザートレーラーは、全体的に各要素を“ちょい見せ”しているのですが、『VIII』をプレイしたことのある人なら「あれ? こんな要素あったっけ?」となるようなものを最後にねじ込んでみました。
石川デモプレイ映像は、TGS会場のみの公開で動画サイトで一般公開をしていないのですが、とくに戦闘が変わったことがよくわかる内容になっています。
越後谷じつはプレイアブル出展も検討していたのですが、発売までできる限りシナリオデータを公開したくなかったので、あえて控えさせていただきました。皆さん、そこがいちばん楽しみにしているポイントだと思われますので……。
――『三國志』、そして『三国志』ファンなら真っ先にチェックしたいはずですよね。気持ちはわかります。
越後谷ですから、開発が進んでいないとかそういう理由ではないのでご安心ください(笑)。
――安心しました(笑)。われわれは実際に会場でムービーを観たのですが、内政でも戦闘でも武将どうしのコンボのような演出が観られました。これは新要素なのでしょうか?
越後谷じつはそうなんです。内政でも戦闘でも“連携”の要素を盛り込みました。詳細については続報でお伝えする予定ですが、その活用次第でゲーム進行の速度も変わってくると思います。
石川今回、せっかく1000人もの武将をプレイできるのですから、何度遊んでも楽しめるようにドラマのバリエーションだったり、テンポだったり、さまざまな工夫を盛り込んでいます。これはそのうちのひとつということです。
――今後の情報公開の予定など決まっていたら、教えてください。
越後谷人間ドラマだったり戦闘など、このあと数回に分けて情報をお出ししていく予定です。期待していてください。
――では、最後に発売を楽しみにしているファンの皆さんへメッセージをお願いします。
越後谷タイトルこそ『三國志8 Remake』ですが、『三國志15』のつもりで作っています。相当気合の入った内容になっているので、楽しみにお待ちください。
石川オリジナルは20年以上前のゲームなので、よくも悪くもシンプルな作りになっています。『VIII』のファンだった方はもちろん、新たにプレイされるという方や、近年の手が込んだシステムに難しさを感じていた方でも楽しんでいただけると思います。変わったこと、変わらないこと、それぞれに期待していただければうれしいです。