セガとColorful Paletteが贈るiOS/Android向けリズム&アドベンチャーゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』(プロセカ)が、2023年9月30日をもってサービス開始から3周年を迎えようとしている。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】笑顔と感動を届けるワンダショの物語を振り返る。小さな舞台から始まった物語はいくつものカーテンコールを経てハッピーエンドへ向かう【後編】

 音楽ゲームとしても、そして練りに練られた物語を堪能するノベルゲームとしても評価が高い『プロセカ』は、この3年の間に膨大な数のシナリオを各ユニットごとに配信してきた。

 “Leo/need”、“MORE MORE JUMP!”、“Vivid BAD SQUAD”、“ワンダーランズ×ショウタイム”、“25時、ナイトコードで。”。

 個性豊かなキャラクターたちの人となりと、その歩みを掘り下げるシナリオは、メインストーリー以外にも“キーストーリー”という形で各ユニットそれぞれ20本(!)も実装。それが、3周年を目前に控えた2023年夏の提供を持ってひと区切りとなり、いよいよ10月からは各キャラが“進級”となって“キーストーリー・第二幕”が始まるのである。

 そんなタイミングだからこそ、このとてつもない量の『プロセカ』のシナリオをここで一度収束し、歴史を整理しようと思った。

 全メインストーリーと、全キーストーリーのあらすじをまとめ、それぞれについての筆者の考察と感想を交えて、ずっと『プロセカ』を追いかけてきた熱い読者にも、進級を機に改めてこのセカイに入ってこようと思っているルーキーにも刺さる永久保存版の記事をここに刻もう。

 この、“【プロセカ3周年記念特集】ユニットごとの全シナリオまとめ!”を読めば、『プロセカ』が歩んできた道筋がすべてわかる。

 Vivid BAD SQUAD(ビビバス)編に続く4回目の今回は……ワンダーランズ×ショウタイム(後編)をお届けしよう。

※この記事はセガ/Colorful Paletteの提供でお送りいたします。

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キーストーリー:“まばゆい光のステージで”

あらすじ

 アメリカのテーマパークで見た本場のショーに、ひとかたならぬ衝撃を受けた司。自分には圧倒的に演技力が足りない……ということを痛感し、いままで以上に練習に熱が入っていた。

 そんなとき、つぎの宣伝公演の場所として音楽堂が選ばれたことを知る。ここでは音楽堂ならではの備品を使った演出ができるということで、演目の候補として『ピアノ弾きのトルペ』が浮上した。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】笑顔と感動を届けるワンダショの物語を振り返る。小さな舞台から始まった物語はいくつものカーテンコールを経てハッピーエンドへ向かう【後編】

 ピアノをたしなむ司にはぴったりの演目だと思われたが、類は、「トルペと司は真逆の性格をしている」ことを理由に難色を示す。それでも司は、「世界のスターを目指す以上、どんな役も演じられなければならない!」と言って、『ピアノ弾きのトルペ』に挑戦すると意気込む。

 しかし、司は苦戦する。類が指摘した通り、共通点が見られないトルペという役を前にして。そんなとき、司は偶然出会った冬弥を咲希がバイトをしているカフェに誘い、いっしょに台本を読んでトルペという役について掘り下げていく。

 そして……司は思い出すのだ。病気がちだった咲希といっしょに、ピアノの練習をした幼き日のことを。入退院を繰り返す咲希を想って、空を見上げた日のことを――。

 完璧に役をつかんだ司は自分とは正反対の性格であるトルペを演じ切り、役者としての新境地を開くのであった。

キーストーリー:“まばゆい光のステージで”を読んで

 司が舞台俳優としての殻を破る、きっかけの物語が展開する。そういう意味では、ワンダショ全体を見ても非常に重要なイベントストーリーというわけだ。

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 司の魅力はなんといっても、見る者を惹きつけてやまない存在感と快活さ、そして寝た子をも叩き起こして笑顔にしてしまう天性のスター性であろう。実際、類もそれを十分に理解して、そんな彼のイメージに合う演目を選び、演出を付け続けてきた。

 それは、ワンダショが短期間のうちに階段を駆け上がるための手段として、「これしかない!」と言えるほどの“最善手”だったのだと思う。

 しかし、宣伝大使に選ばれるほどの成功を収めたこのとき、その階段の踊り場に来てしまっていることをもっとも理解していたのは、当の司だったのではあるまいか。いま以上の高みを目指すのならば、凝り固まったイメージにすがっているわけにはいかない。殻を破れないなら、自分はそこまでの役者で終わってしまう……と。

 じつは司は、表面的には直情的なイノシシタイプのように見えるが、誰よりも冷静に自分というものを見つめ、意識改革を進めたいと思う繊細な心の持ち主なんだと思う。それが垣間見える、素敵なイベントストーリーだ。

まばゆい光のステージで【プロセカ公式】

  • 書き下ろし楽曲:『88☆彡』(作詞:まらしぃ、作曲:まらしぃ、堀江晶太(kemu))

キーストーリー:“絶体絶命!?アイランドパニック!”

あらすじ

 つぎの宣伝公演の場所として選ばれたのは、沖縄のホール。そしてそこまで「宣伝大使としてがんばっているご褒美」として、えむ兄のひとりである晶介(鳳グループの専務)が、「新調したばかりのクルーザーで連れて行ってやる」と思わぬ提案をする。

 沸き立つワンダショの面々だったが、あろうことか嵐に巻き込まれて無人島に座礁してしまう。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】笑顔と感動を届けるワンダショの物語を振り返る。小さな舞台から始まった物語はいくつものカーテンコールを経てハッピーエンドへ向かう【後編】

 救助が来るまで無人島で過ごさねばならない……と知り、食糧の調達に向かう4人。しかし、そこで野生のサルたちに襲われて、せっかく手に入れたバナナを奪われてしまい……!

 なんとかしてバナナを奪還せんと、ワンダショの面々は得意の“演技”で素早いサルをおびき寄せ、ついにはバナナを奪い返すことに成功するのだ。とはいえ、食糧をすべて取り上げてしまってはかわいそうだと、他で手に入れていた木の実をサルに分けてあげることに。すると、これに感激したサルたちは、自分たちの備蓄の食糧をお礼として持ってきてくれたのである。

 こうして、遭難中とは思えないほど豪華な夕食となり、ホッとしたワンダショの4人は宣伝公演の思い出話を始める。そして、それぞれの夢を語り合ったのちに彼らは気づくのだ。「4人が夢を叶えるときは、みんな違う舞台に立っている」と。

 コミカルなストーリーから一転、焚火を囲みながら出てきた話は、彼らの華々しい未来の夢と、それに付随してやってきてしまうであろう“別れの予感”。賑やかで楽しい彼らの時間は、じつはそれほど長くない……ということが、このストーリーを経て表面化するのである。

キーストーリー:“絶体絶命!?アイランドパニック!”を読んで

 いきなりの暗転+遭難という、衝撃度と言う点においては比肩するものがないほどの幕開け……。一瞬、「なるほど。これがワンダショのつぎの演目の一部か」と思ってしまうが、じつは本当に遭難していると知って二度驚かされるのである(苦笑)。

 言ってみれば閑話休題的な、ハチャメチャな物語が展開するんだけど……!

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】笑顔と感動を届けるワンダショの物語を振り返る。小さな舞台から始まった物語はいくつものカーテンコールを経てハッピーエンドへ向かう【後編】

 じつはこの、つかみどころのない箸休めのようなストーリーの後半で、今後のワンダショが直面する“避けられないターニングポイント”のヒントが語られている。

 そう……。ここまで読んできた読者は皆、心のどこかで思っていたはずなのだ。

 「ワンダショって……最終的にはどうなっちゃうの?」

 と。

 他のユニットと比べても圧倒的に元気で明るくて、悩みなんてひとつもないように思わせてきたワンダショだが、冷静に考えれば、彼らは高校生であり、違う夢を抱えた者たちの集まりである……ということに気づく。できることなら、このまま目をそらし続けたかった厳然たる事実に、ついに切り込むときが来てしまうのである。

絶体絶命!?アイランドパニック!【プロセカ公式】

キーストーリー:“カーテンコールに惜別を”

あらすじ

 ステージの小道具を準備しながら、「これからもこうやって、みんなとショーをやれたら」としみじみと思う類。しかし心のどこかで、別れの予感も感じ始めていた。そんなときに告げられた、宣伝大使の終了。

 しかしそれはネガティブな意味ではなく、宣伝が功を奏してフェニランの観客数が増えてきたことを受けての判断だった。

 代わりに経営陣が企画したのが、他のパークとの人材交流だ。その一環として、国内最大のテーマパーク“アークランド”のキャストといっしょにショーをやってほしいと告げられる。

 やってきたスター“玄武旭”を中心としたアークランドのキャストたちの実力は、抜きん出ていた。しかも、志もワンダショに近いものがあると知って司たちは大きな刺激を受ける。そして類は比類なき演出力を買われて、玄武旭に「俺たちといっしょにやらないか」と理外のスカウトを受けるのだった。

 夢への最短距離を選ぶのか、それともワンダショの仲間を選ぶのか。

 究極の二択に思い悩む類だったが、最終的にはワンダショを選択するのである。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】笑顔と感動を届けるワンダショの物語を振り返る。小さな舞台から始まった物語はいくつものカーテンコールを経てハッピーエンドへ向かう【後編】

キーストーリー:“カーテンコールに惜別を”を読んで

 アークランドとの人材交流から、ワンダショのまわりに流れていた緩やかな水の流れは、一気に急流と化してしまう。類まれなるセンスで、どんな役も瞬時にこなしてしまう玄武旭に、これ以上ないほどの刺激を受ける司。

 この旭との出会いにより、司はまたひとつ、演者としての階段を上る。そして類に至っては、大規模劇団の全員が自分の演出を受け入れてくれ、しかもさらによくなるための案まで出してくれるというこれ以上はない環境を見て、ぐらぐらと心が揺らいでくる。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】笑顔と感動を届けるワンダショの物語を振り返る。小さな舞台から始まった物語はいくつものカーテンコールを経てハッピーエンドへ向かう【後編】

 司の求心力に引き寄せられて集まったワンダショの4人だが、それぞれが目指す場所が違う以上、いつか別れのときは来てしまう。しかも、旭の影響で成長のスピードを加速させる司を見るにつけ、それはそう遠いことではないのかもしれない。だったら、まずは自分が……と類が考えたところで、それは致し方のないことだと思う。

 旭にスカウトをされてからの類の葛藤は、読んでいるだけで胸が締め付けられるようだった。夢に続く最短距離を進みたい……と考えるのが人というもの。

 しかも類が描く将来像は決して生半可なものではないので、そこに至るまでのステップを何段飛ばしにもできるであろう旭の誘いは、「これ以上はない!」と断言して間違いないものだったから。

 でも……。

 やっぱり類は、類なんだよな。つねに隣にいてくれた、明るい少年たちと描く未来のほうを選ぶんだから。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】笑顔と感動を届けるワンダショの物語を振り返る。小さな舞台から始まった物語はいくつものカーテンコールを経てハッピーエンドへ向かう【後編】

 実際、こういうことって現実世界でも起こり得るんだよな。それも、それほど珍しくない頻度で……。学生時代の部活やクラス替えはもちろんなんだけど、社会人になってからも、仲のよかったチームが会社の都合で突然解散に……なんてことは日常茶飯事だったりする。

 それと同じようなことが、まもなくワンダショのみんなに降りかかろうとしているわけだ……。

 ここからのイベントストーリーは、まさに急転直下である。楽しくて笑いの絶えなかったワンダショの歩みとのギャップは凄まじいものがあるので、どうか覚悟して読み進めてほしい。

カーテンコールに惜別を【プロセカ公式】

キーストーリー:“新春!獅子舞ロボのお正月ショー!”

あらすじ

 お正月用の公演を準備するために、年に一度だけ使う獅子舞ロボを引っ張り出してきたワンダショの面々。楽しい演目ができる算段は立ったが、「獅子舞ロボを年に1回しか使ってあげないのはかわいそう」という話になる。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】笑顔と感動を届けるワンダショの物語を振り返る。小さな舞台から始まった物語はいくつものカーテンコールを経てハッピーエンドへ向かう【後編】

 そこで行われることになったのが、元日に実施する“弾丸ショーツアー”だ。えむの姉、ひなたが協力を名乗り出て、車に荷物を積んで各地を回るツアーが挙行されることになったのである。そこで遭遇するのは……! お正月イベントらしい、超豪華な“すべてのユニット”であった。

キーストーリー:“新春!獅子舞ロボのお正月ショー!”を読んで

 このイベントストーリーに関しては……。

 正直、「見てください!」としか書きようがない気がする^^; というのも、概要欄にもちょっとだけ書いたけど、ワンダショに引き寄せられるように登場するゲストたちがあまりにも豪華だから。

 それはLeo/needに始まり、MORE MORE JUMP!、Vivid BAD SQUAD、そしてふだんは家に籠りがちである25時、ナイトコードで。の面々まで現れるのだから恐れ入る。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】笑顔と感動を届けるワンダショの物語を振り返る。小さな舞台から始まった物語はいくつものカーテンコールを経てハッピーエンドへ向かう【後編】
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【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】笑顔と感動を届けるワンダショの物語を振り返る。小さな舞台から始まった物語はいくつものカーテンコールを経てハッピーエンドへ向かう【後編】
【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】笑顔と感動を届けるワンダショの物語を振り返る。小さな舞台から始まった物語はいくつものカーテンコールを経てハッピーエンドへ向かう【後編】

 各ユニットとのコラボが各地で実現する中、司はそこからもさまざまな要素を吸収して、ワンダショの……そして自分の成長につなげようとする貪欲さを見せる。

 風雲急を告げるワンダショ物語の中にあって、ホッとひと息つけるイベントストーリーとして、頻繁に読み返しがしたくなるんだよなー。

新春! 獅子舞ロボのお正月ショー!【プロセカ公式】

キーストーリー:“夢の途中、輝く星たちへ”

あらすじ

 今後の発展のために宣伝公演を復活させてほしいと、経営陣に直談判に来た司。しかし、えむ兄たちからの回答は「No」。目的が達成されている以上、運営に莫大な経費のかかる宣伝公演を続けるわけにはいかない……という判断がくだされたのである。

 そんなとき、司はワンダショの仲間に、演劇のワークショップに通って演技の勉強をしてくると告げる。「がんばってほしい!」と、“このときは”心からの声援を送るえむだったのだが、徐々に胸の中にモヤモヤが渦巻いていく。

 ワークショップで忙しくなった司と共有する時間が減り、えむはいよいよ別れのときが近づいてきていることを実感するのだ。

 それでもえむは、心を決めて笑顔を作る。「みんながあたしの夢を応援してくれた気持ちを、あたしもみんなに返したい」と言って。このとき、えむは晴れやかな表情でしっかりと告げるのだ。「みんなの夢を、いっちばん前の真ん中の席で応援するよ!」と。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】笑顔と感動を届けるワンダショの物語を振り返る。小さな舞台から始まった物語はいくつものカーテンコールを経てハッピーエンドへ向かう【後編】

キーストーリー:“夢の途中、輝く星たちへ”を読んで

 終焉の足音が確実に近づいてきていて、このあたりからワンダショの物語をめくる手が鈍っていった記憶……。筆者だけでなく、ほぼすべての読者はえむの気持ちに感情移入してしまって、「この流れ……どこかで変えられないの!?」と思ったに違いない。

 そう、ワンダショの落日は想像以上に早く訪れようとしていたのだ。それはイコール、演者としての司が、歌姫としての寧々が、演出家としての類が殻を破り、ワンダーステージという小さな枠に収まりきらなくなってしまった証左でもある。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】笑顔と感動を届けるワンダショの物語を振り返る。小さな舞台から始まった物語はいくつものカーテンコールを経てハッピーエンドへ向かう【後編】

 もともと彼らの夢は、フェニランだけに留まらないスケールの大きなものだった。いつかこの場所を飛び出して雄々しい翼を広げるだろうことは……読者だけじゃなく、えむ兄たち(このころから、すっかり悪役の匂いは消えているw)も感じていたこと。

 しかし、えむの夢は……。“フェニランを”笑顔溢れる場所にしたいという限定的なもの。ワンダショのほかの仲間たちとは相いれないもので……。

夢の途中、輝く星たちへ【プロセカ公式】

キーストーリー:“天の果てのフェニックスへ”

あらすじ

 フェニラン経営陣から、フェニックスステージの30周年記念公演に出演してほしい……と“園内コラボ”を提案されたワンダショ。青龍院櫻子を中心に実力者がそろうフェニックスステージとの共演は、さまざまな部分において勉強になるはず。彼らは諸手をあげて、この申し出を受けるのだった。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】笑顔と感動を届けるワンダショの物語を振り返る。小さな舞台から始まった物語はいくつものカーテンコールを経てハッピーエンドへ向かう【後編】

 合同練習が始まり、ワンダショの面々は、フェニックスステージのキャストたちのレベルの高さ……とりわけ青龍院櫻子の絶大な演技力と歌唱力に衝撃を受ける。そんな青龍院の対となる役柄をコンペで選ぶことになり、迷わず立候補する司。

 しかし、レベルが上がってきているとは言え、青龍院がいる高みにはまったく届かない。そんなとき、司がこの世界にのめり込むきっかけとなった俳優の公演が開催されることになる。

 その舞台を見た司は、自分とその俳優との差を改めて見せつけられる。そんな現実からも目を背けず、込み上げる感情をすべて受け止めた司は、おのれの非力さに気が付くのだ。

「どれだけ練習しても……全力を振り絞っても、オレは、周りの人間に劣る」

 と……。

 火の鳥に手が届かないことを悟った司は、憑き物が落ちたかのような会心の演技を見せ、見事、青龍院の相手役を射止めるのである。

キーストーリー:“天の果てのフェニックスへ”を読んで

 『プロセカ』のサブキャラクター……とくに青龍院櫻子とレオニの高木美羽にそこはかとない魅力を感じる筆者にとって、この“天の果てのフェニックスへ”はたまらない内容だった。なぜなら、舞台俳優として抜きん出た実力を持つ青龍院櫻子の凄さが遺憾なく発揮されている内容だから。

 この、圧倒的なまでの能力を持つ青龍院に対し、司がどう出るのかが話のポイント。腐ってしまう……ことはないにしても、打ちのめされて立ち上がることができなくなってしまうのでは……?

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】笑顔と感動を届けるワンダショの物語を振り返る。小さな舞台から始まった物語はいくつものカーテンコールを経てハッピーエンドへ向かう【後編】

 という展開も『プロセカ』のシナリオ陣だったらブチ込んで来る気がして、先を読む手が震えてしまったことをいまでもよく覚えている。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】笑顔と感動を届けるワンダショの物語を振り返る。小さな舞台から始まった物語はいくつものカーテンコールを経てハッピーエンドへ向かう【後編】

 役作りに命を懸ける役者の凄みと、司がひと皮剥けるその瞬間――。とくに後半、つねに自信満々に見える司が自分の非力さ、及ばなさを知って涙を流すシーンは出色である。

 この、“心の挫折”を受け入れてから殻を破るというのもまた、“役者ならでは”という感じがして心に響くんだよな。

天の果てのフェニックスへ【プロセカ公式】

  • 書き下ろし楽曲:『Mr. Showtime』(作詞・作曲:ひとしずく×やま△)

キーストーリー:“カナリアは窮境に歌う”

あらすじ

 フェニックスステージの30周年記念公演に向けて、稽古に熱が入るキャストたち。歌が重要な意味を持つカナリア役を割り当てられた寧々も、ワンダショの歌姫としていままで以上に気合が入るのだった。

 しかし、稽古の際に演出家から、「君の歌は浮いている。クセが抜けない限り、その歌では劇を壊してしまう」と衝撃の指摘をされてしまう。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】笑顔と感動を届けるワンダショの物語を振り返る。小さな舞台から始まった物語はいくつものカーテンコールを経てハッピーエンドへ向かう【後編】

 演技よりも、歌に絶対の自信を持っていた寧々は思いがけないダメ出しにショックを受ける。いくら考えても、稽古をしても、演出家の指摘の意味がわからなかった。そんなとき、思いがけない助け舟を出してくれたのは青龍院櫻子だった。

 歌に関しても圧倒的な実力を示す彼女は、「ある知り合いに話を通しておいたので、訪ねてみるといい」とまさかの申し出。しかもそれは、寧々が尊敬してやまない風祭夕夏であった。

 殻を破りたい寧々に風祭が課した特訓は、熾烈を極めた。でもそれは、寧々のミュージカル俳優としての才能を認め、さらに先に進めると判断しての“厳しさ”だったのだ。

 そして、風祭の特訓を乗り越えた寧々は、本番で主役を喰うほどの歌声を披露するのであった。

キーストーリー:“カナリアは窮境に歌う”を読んで

 寧々が歌姫として、本当の意味での脱皮を実現する記念碑的なイベントストーリー。青龍院櫻子、そして寧々の憧れであるミュージカル俳優、風祭夕夏のアシストにより、寧々がついに立ちはだかっていた高い壁を越えていくのである。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】笑顔と感動を届けるワンダショの物語を振り返る。小さな舞台から始まった物語はいくつものカーテンコールを経てハッピーエンドへ向かう【後編】

 それにしても、メインストーリーや序盤のイベントストーリーを読んでいたときは、こんなスポコンドラマのような展開がワンダショに用意されているなんて夢にも思っていなかった。

 そういった体育会系の展開はビビバスが担当なのでは……という先入観からそう思ってしまったわけだけど、考えてみればワンダショのこの流れは、当たり前の帰結なのかもしれない。

 だって、技術的にも体力的にも、そしてチームで事を成さねばならないという根本的な設定からしても、ワンダショのようなショーユニットこそ体育会系そのものだったわけだし。

 ライバルの青龍院櫻子の助力と、憧れの人・風祭夕夏の特訓。そんな、これ以上は考えられないほどのサポートを受けた寧々は、本番でついにその才能を開花させる。

 とはいえ、いくら環境が整っていたとしても、それを活かせるかどうかは本人次第。そういう意味で、寧々が持っていた本当の才能ってのは、逆境も、葛藤も、そしてチャンスもすべてものにできる“粘り強さ”なんじゃないかと思った。

カナリアは窮境に歌う【プロセカ公式】

キーストーリー:“あたしたちのハッピーエンド”

あらすじ

 フェニックスステージの30周年記念公演が大成功に終わり、その成果をデータで見せてもらったえむ。劇的な来場者数の増加を喜びながらも、それは司と寧々の成長の賜物だとわかり、「みんなはもうすぐ、広い世界に飛び立っていく」という現実を突きつけられるのである。それはワンダショの解散と、彼らとの別れを意味していた。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】笑顔と感動を届けるワンダショの物語を振り返る。小さな舞台から始まった物語はいくつものカーテンコールを経てハッピーエンドへ向かう【後編】

 それでもえむは、笑顔でお別れを言うために寂しさを表に出すまいとする。一方で類は、ワンダショを解散せず、かつ司や寧々が自由に外の世界で活動するための秘策を持って経営陣に直談判を行う。

 それは、“ワンダショのフリー化”。フェニラン所属の劇団ではなく、フリーの劇団として自由な活動を認めてもらえるよう経営陣に迫ったのである。同時に、えむの説得も行いたいという類。

 経営陣は、すぐにフリー化を認めるわけにはいかないとしながらも、えむの説得は許可してくれた。

 それでもえむは、首を縦には振らなかった。フリーとして旅立つメンバーを、たったひとりフェニランに残って見送るのだという。

 司も、寧々も、類も、もうどうしようもなかった。すべてを受け入れて、ただただ泣くことしかできない。

 そんな、涙にくれる4人のもとに現れたのは、えむのふたりの兄だった。フェニランの社長を務める長兄・慶介はえむに告げるのだ。

「行ってこい」

 と。さらに、次兄の晶介も背中を押す。

「外の世界を見て来いと勧めたのは誰だと思う? ――じいさんだ」

 えむは心を決め、司、寧々、類といっしょに、フリーの劇団となるワンダショで活動していくことを誓うのだった。

キーストーリー:“あたしたちのハッピーエンド”を読んで

 3年にわたって語られてきたワンダショ物語の、ひとつの帰結。

 フェニランを守らなければいけないという使命感に縛られているえむと、フリーとして活動していくことを決めた3人が、ついに別れの時を迎えてしまう……。

 しばらく前から感じていた予感……というか、確信。

 「この4人がバラバラになるなんて、耐えられん!! なんとかしてほしい!!」

 と誰もが感じていながらも、じつは非常にリアリティーに富んだ展開を見せるプロセカのシナリオにおいては、「なんとかならない世界線もあるのかも……?」という恐怖もぬぐいきれなかった。そしてそれは、このキーストーリーの中盤までは“現実”としてワンダショの面々……いや、全プレイヤーにのしかかってくるのである。

 あらすじにも書いたが、救世主はえむ兄たちなんだけど、彼らが現れてくれるまで、自分の心をどこに持って行っていいかわからずに、年甲斐もなくオロオロとしてしまったよ。泣きじゃくりながら、

 「笑顔でお別れがしたいのに!」

 というえむを見て、「泣くなよ!! 矛盾してるじゃん!!(泣)」なんて、何度リアルに声を荒らげて叫んでしまったことか……。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】笑顔と感動を届けるワンダショの物語を振り返る。小さな舞台から始まった物語はいくつものカーテンコールを経てハッピーエンドへ向かう【後編】

 ひとつ、ぶっちゃけたことを書くと。

 『プロセカ』は、メインストーリーにもイベントストーリーにも、確実に泣ける話がいくつも用意されている。それだけ、このゲームに登場するキャラクターは感情移入しやすいように、練りに練って作られているってこと。

 その中にあって、個人的にもっとも泣かされたイベントストーリーが、この“あたしたちのハッピーエンド”だった。それも、涙が頬を伝う……というシミジミと泣くそれではなく、ポロポロと涙が零れ落ちて自分で驚いてしまう……ってレベルで泣かされてしまったのである。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】笑顔と感動を届けるワンダショの物語を振り返る。小さな舞台から始まった物語はいくつものカーテンコールを経てハッピーエンドへ向かう【後編】

 こんなにハッキリと泣いたのって、いつ以来だろう……。

 それすらわからぬほど、ボロボロにさせられてしまった。本当に、『プロセカ』のストーリーはすばらしいわ。

あたしたちのハッピーエンド【プロセカ公式】

ワンダーランズ×ショウタイムの物語を読んで

 ワンダショの物語をここまでおもしろく、感動的なものに仕立て上げている最大の要因は“ギャップ”にあると思う。

 メインストーリーとイベントストーリーの序盤を読んだ段階では、多くの読者がつぎのように思っていたはずだ。

 「ワンダショって、プロセカにおける元気と笑いの担当だよなww 登場人物も、そういう個性の持ち主だしさww」

 とね。実際、“役者バカ”でひたすら元気でうるさい司、その司に近い性質を持っているえむ、天性のトリックスターである類、引っ込み思案で人見知りの寧々と、個性という点においては、プロセカのユニットの中でも抜きん出ていると思う。あらゆる意味でw

 そんなメンバーのストーリーだからこそ、多くの人が安心しきって読み進めたはずだ。日本人はなんだかんだ、勧善懲悪のハッピーエンドを求める傾向にある(と思う)。

 その点、夢に向かって邁進する若者たちの物語は付け入る隙がないほどの“王道サクセスストーリー”なので、心構えをすることなく、のほほんと読み進められたはずなのだ。

 ……そう、キーストーリー“絶体絶命!?アイランドパニック!”を読むまでは。ここで初めて、多くの読者が、夢から覚めて現実を突きつけられるのである。

 「あれ……? ワンダショってもしかして……最後にバラバラになっちゃうんじゃね……??」

 と……。

 そしてここから、ギャップの嵐が吹き荒れる。物語的な観点ではもちろんなんだけど、猪突猛進な司が繊細な演技に目覚め、引っ込み思案な寧々が殻を破るために積極的な行動に出る。

 つかみどころがなかった類はひとり思い悩み、天真爛漫なえむは笑顔のさよならを決意して塞ぎ込んでしまう……。それまでに植え付けられていたキャラ像はいい意味で読者の中で崩壊し、あとはひたすら、

 「どうなっちゃうんだろう……!?」

 という怒涛の感情に弄ばれるだけに……。

 これだから、ワンダショからは目が離せないのだ。

 スケールの大きな彼らが、これからどんな“人生ショー”を見せてくれるのか、楽しみで仕方がない。

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