セガとColorful Paletteが贈るiOS/Android向けリズム&アドベンチャーゲーム『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』(プロセカ)が、2023年9月30日をもってサービス開始から3周年を迎えようとしている。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】同じ夢に向かって走るビビバスの物語を振り返る。まぶしいほどの青春の先に見えた壁は高すぎて【後編】

 音楽ゲームとしても、そして練りに練られた物語を堪能するノベルゲームとしても評価が高い『プロセカ』は、この3年の間に膨大な数のシナリオを各ユニットごとに配信してきた。

 “Leo/need”、“MORE MORE JUMP!”、“Vivid BAD SQUAD”、“ワンダーランズ×ショウタイム”、“25時、ナイトコードで。”。

 個性豊かなキャラクターたちの人となりと、その歩みを掘り下げるシナリオは、メインストーリー以外にも“キーストーリー”という形で各ユニットそれぞれ20本(!)も実装。それが、3周年を目前に控えた2023年夏の提供を持ってひと区切りとなり、いよいよ10月からは各キャラが“進級”となって“キーストーリー・第二幕”が始まるのである。

 そんなタイミングだからこそ、このとてつもない量の『プロセカ』のシナリオをここで一度収束し、歴史を整理しようと思った。

 全メインストーリーと、全キーストーリーのあらすじをまとめ、それぞれについての筆者の考察と感想を交えて、ずっと『プロセカ』を追いかけてきた熱い読者にも、進級を機に改めてこのセカイに入ってこようと思っているルーキーにも刺さる永久保存版の記事をここに刻もう。

 この、“【プロセカ3周年記念特集】ユニットごとの全シナリオまとめ!”を読めば、『プロセカ』が歩んできた道筋がすべてわかる。

 MORE MORE JUMP!(モモジャン)編に続く3回目の今回は……Vivid BAD SQUAD(後編)だ!

※この記事はセガ/Colorful Paletteの提供でお送りいたします。

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キーストーリー:“Legend still vivid”

あらすじ

 こはね、みのり、志歩の3人は大の仲良し。その3人でいつものようにランチを楽しんでいたとき、それぞれのユニットの練習方法の話題になった。

 そのとき、メンバー間でイメージを共有できると効率が上がる……という話になるものの、こはねは、自分たちが目指しているRAD WEEKENDの景色を見たことがないことに改めて気づいた。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】同じ夢に向かって走るビビバスの物語を振り返る。まぶしいほどの青春の先に見えた壁は高すぎて【後編】

 しかしRAD WEEKENDは撮影禁止だったため、映像は残っていない。本当に一夜限りの伝説だったのだ。「これじゃあイメージの共有は無理かな」とあきらめかけていたとき、その当事者であった大河から、「RAD WEEKENDが行われたライブハウスを見せてやろう」と提案される。

キーストーリー:“Legend still vivid”を読んで

 この“Legend still vivid”から、ビビバスの群像劇はとてつもない加速を見せていく。それまで、他のユニットと比べれば順風満帆に見えていた彼らが、まさかこれほどの波に翻弄される日が来るとは……!

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】同じ夢に向かって走るビビバスの物語を振り返る。まぶしいほどの青春の先に見えた壁は高すぎて【後編】

 ここまでのメインストーリーとキーストーリーにおいて、もっとも重要なキーワードになっているのは間違いなく“RAD WEEKEND”だろう。ビビッドストリートで行われた、一夜限りの伝説のイベント。これに、中学生だった彰人と杏が魅せられた瞬間に時計が動き始めて、冬弥、こはねを巻き込んだ物語が展開されるのだから。

 そう、ビビバスのストーリーは典型的な青春物語なのだ。夢を抱いた若者たちがさまざまな壁にぶつかりながらも、お互いを鼓舞し、高め合って、彼方にある高みに到達しようと足掻き続ける。

 その、まったく見えていなかった高み……つまりRAD WEEKENDがどういうものだったのかが、このキーストーリーから徐々に判明していくのだ。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】同じ夢に向かって走るビビバスの物語を振り返る。まぶしいほどの青春の先に見えた壁は高すぎて【後編】

 正直、読者にしてみても、「RAD WEEKENDはすごかった! 伝説だ!」といくら彰人や杏が力説しても、抽象的すぎて想像ができなかったと思う。でも、ナゼあえてボカしたような説明しかされてこなかったのかが……ようやくわかるときがくるのだ。

Legend still vivid【プロセカ公式】

  • 書き下ろし楽曲:『Flyer!』(作詞・作曲:Chinozo)

キーストーリー:“THE POWER OF UNITY”

あらすじ

 残されていたRAD WEEKENDの映像を見て、これ以上ないほどの刺激を得たビビバスの4人は、ついに自分たちの主催イベントを開催することを決める。

 同じく、RAD WEEKENDを超えたいと思っている仲間を集めてイベントを行うことで、新しい何かが見えるのでは……と判断したからだ。

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 そのメンバーとして選ばれたのは、かつてSTAY GOLDでビビバスに苦杯をなめさせたことがあるEVERの面々、実力者・遠野新、そして持ち前の根性でビビバスに食らいついて来る三田洸太郎。

 これ以上ないメンバーが集まり、より気合の入る彰人だったが、中心人物のひとりである新の様子がおかしいことに気づく。

 新は大河に言われた「街を見ろ」という言葉の意味がわからず、行き詰っていた。かつていっしょにRAD WEEKENDを超えるために活動をしながら、事故でその夢を断たれてしまった相棒のためにも1歩でも前に進みたいのに――。

 胸襟を開く仲になったビビバスとその仲間たちは、互いの想いをぶつけ合う。「あの夜を、超えるぞ!」という彰人を起爆剤に、このメンバーでの最初のイベント“Break”を成功させるのである。

キーストーリー:“THE POWER OF UNITY”を読んで

 ビビバスに文字通りの同志ができ、RAD WEEKENDに向けて一気に駆け上がっていく……という、いわゆる“助走”のシーンが描かれている。

 ビビバスはもともとが違うチームの集合体なので、こうやって他のグループと合同で事を成していく……ということにまったく抵抗がないようだ。そしてそれは、彼らにとって大きな武器になるに違いない。

 というのも、社会人になっても部の統廃合とか、下手をすると会社の合併でそれまでライバルだった編集部(やけに具体的だが)といっしょになる……なんてことも起こり得るわけで。そのとき、いかに柔軟かつ効果的に立ち回れるかによって、その後の成長が大きく違ってくる。

 そういう意味でも、ここでRAD WEEKENDを最終目標としたイベントを、ライバルたちといっしょに作り上げていこうとしたビビバスの立ち回りは“ベスト”と言えるのではなかろうか。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】同じ夢に向かって走るビビバスの物語を振り返る。まぶしいほどの青春の先に見えた壁は高すぎて【後編】

 そして、このあたりから徐々に存在感を増していくのが新と颯真のふたりだ。夢を断たれてしまった相棒のために奮闘する新と、おもに冬弥の才能開花に繋がる重要な役割を担う颯真の存在なくして、この後のビビバスのキーストーリーは語れないかもしれないと思う。

 とはいえ、すべてが順風満帆に進むわけもない。

THE POWER OF UNITY【プロセカ公式】

  • 書き下ろし楽曲:『月光』(作詞・作曲:キタニタツヤ/はるまきごはん)

キーストーリー:“The Vivid Old Tale”

あらすじ

 自分たちのイベントをプロデュースしながら、並行してRAD WEEKENDに近づくためのヒントを探しているビビバスの4人。その日はリンの提案で、もう一度RAD WEEKENDの映像をみんなで鑑賞してみることになった。

 そこで改めて、このライブの中心として圧倒的な存在感を放っている“凪”のパフォーマンスに魅せられていく。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】同じ夢に向かって走るビビバスの物語を振り返る。まぶしいほどの青春の先に見えた壁は高すぎて【後編】

 その凪がどんな人だったのかを知れれば、RAD WEEKENDの神髄に近づけるかも……というこはねのひと言で、生まれたときから面倒を見てもらってきた杏が思い出話を始める。「凪さんは本当に、いつだってかっこよかったんだよ」と語り始めた、その内容はなんと杏の“失踪譚”。

 街の人たちに頼られるとNOと言えない謙や凪は、歌の特訓をしてやるという杏との約束を幾度となく破ってしまった。

 それにショックを受けた杏は、建設中の工事現場に隠れてしまう。ひとりで怖くなり、泣きそうになっていた杏を見つけてくれたのは、ほかならぬ凪。そこで杏は凪から、どれだけこの街を愛しているのかを聞かされるのであった。

キーストーリー:“The Vivid Old Tale”を読んで

 いよいよ、RAD WEEKENDの“真の中心人物”である凪のことが語られるストーリー。この展開を待ちに待っていた人は、筆者以外にもたくさんいるはずだ。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】同じ夢に向かって走るビビバスの物語を振り返る。まぶしいほどの青春の先に見えた壁は高すぎて【後編】

 というのも、やっぱりここまでの話だと、「RAD WEEKENDはスゴかった!」と言われるだけで、それが具体的にどういうものだったのかまったくわからず、気持ちが宙ぶらりんのままだったから。

 他のユニットと比較することはナンセンスだと思いながらも、プロを目指しているLeo/need、アイドルの道を突き進むMORE MORE JUMP!のようなパキッとした目標があるほうが読み手も感情移入しやすいので、ビビバスに関しても、「早くRAD WEEKENDのことを詳しく教えてよ!!」と思ってやまなかったのである。

 その端緒として、まずは凪のことが語られるわけだけど……!

 男勝り……とはまた違う、独特な存在感。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】同じ夢に向かって走るビビバスの物語を振り返る。まぶしいほどの青春の先に見えた壁は高すぎて【後編】

 ときに厳しく、そしてどこまでも優しい凪の性格は、時が時なら“傑物”と称されていたに違いない。

 それが、まさか……。

 あんなことになるなんて……。

 (以下、つぎのイベントストーリーに続く)

The Vivid Old Tale【プロセカ公式】

  • 書き下ろし楽曲:『街』(作詞・作曲:jon-YAKITORY)

キーストーリー:“Walk on and on”

あらすじ

 2回目のイベントに向けて、着々と準備を進めるビビバスとその仲間たち。ただ闇雲に歌うだけでは進歩がないと言うことで、つぎはそれぞれが統一されたテーマのもとに作った新曲を披露しよう、ということになった。

 そのテーマは、“静と動”。ビビバスの楽曲制作は彰人と杏が担当しているので、冬弥とこはねはサポートに回ることになったものの……ふたりとも、自分が戦力になれていないのではと思い悩む。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】同じ夢に向かって走るビビバスの物語を振り返る。まぶしいほどの青春の先に見えた壁は高すぎて【後編】

 そんなとき、冬弥は新の相棒である颯真が楽曲制作にも一家言持っていると聞かされる。すぐに颯真の入院先を訪ね、作曲のコツを訪ねる冬弥。颯真もノリ気で、「作りかけのトラックを作る手伝いをしてもらいながら、教えられることはすべて教える」と言ってくれた。

 同じころにこはねもKAITOの協力を得て、自分なりの方法で作曲の道を歩み始めたのであった。

キーストーリー:“Walk on and on”を読んで

 複数人のグループなんだから、作曲なんていう特殊な作業は適材適所で任せてしまえばいいのに……と思ってしまいそうだけど、そうできないのがビビバスの面々。

 とくに、冬弥とこはねは優しい性格が影響してか、良くも悪くも自分を下にしてしまう傾向があるように思う。あれだけ歌がうまくて、パフォーマンスもできるのなら椅子にふんぞり返っていても誰も文句は言わないと思うのに、ひとつも丸投げすることなく、「自分にできることはないのか?」と走り続けるのだ。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】同じ夢に向かって走るビビバスの物語を振り返る。まぶしいほどの青春の先に見えた壁は高すぎて【後編】

 そんなふたりは、たびたびストリートのセカイにあるMEIKOの店で顔を合わせる。この描写、たとえば杏×冬弥、こはね×彰人がほとんどないことを考えると、やはり似たポジションにいるものどうしの引力で引かれ合っているんだろうな……と考える。

 そのやり取りから打開策や、新しいヒントが生まれることがたびたびあるので、本当にこのふたりはいい関係(変な意味じゃなく)なんだと思うわ。

 ここから怒涛の展開が待っているビビバスのイベントストーリーの中にあって、この“Walk on and on”は閑話休題的な意味も持っていたんだと思う。

 だって、ここからは、もう……!

Walk on and on【プロセカ公式】

キーストーリー:“Find A Way Out”

あらすじ

 2回目のイベントも成功させ、意気上がるビビバスとその仲間たち。いよいよ全員の夢である“RAD WEEKENDを超える”が目の前に見えてきたかに思えた。

 そして、早くも3回目のイベントを企画する中で、新は「つぎは“Crawl Green”でやらないか?」と提案する。杏の父である謙、そして大河、凪のユニットである“RADder”がデビューを果たした“ビビッドストリートの聖地”であり、ソロ時代の彰人が下手を打ったトラウマでもある場所……。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】同じ夢に向かって走るビビバスの物語を振り返る。まぶしいほどの青春の先に見えた壁は高すぎて【後編】

 紐解かれていく、彰人の過去。音楽を始めたばかりで荒ぶっていた彰人は、先輩ミュージシャンの挑発に乗って、実力派しかいないCrawl Greenのステージに立ってしまう。そこで……想像以上の大失敗をしてしまうのだった。

キーストーリー:“Find A Way Out”を読んで

 彰人が音楽に出会ったきっかけと、のめり込んでいく過程が描かれた興味深い内容。その鍵を握っているのはもちろんRAD WEEKENDなわけだが、そこに至るまでの道程と、その後の彰人の歩みも丁寧に描写されていて非常に好感が持てる。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】同じ夢に向かって走るビビバスの物語を振り返る。まぶしいほどの青春の先に見えた壁は高すぎて【後編】

 じつはその流れの中で彰人は杏の存在と、彼女がずっと抱いている「RAD WEEKENDを超えたい!」という夢を知るに至る。

 初めこそ、「そんなこと、できるわけが……」と懐疑的だったが、その覚悟と本気度に自分の気持ちが重なり、「俺も、何もかもを捧げるくらい真剣に音楽に向き合ってやる!」とスイッチが入るのに、さして時間はかからなかった。

 若さとは、わりと簡単に気持ちの松明に火を付けてくれるものだ。でも、その逆もしかりで、移り気で楽しいことがたくさんある若い時期だからこそ、ついた火もあっけなく消えたりする。そんな経験、大人だったら誰もが経験していると思うし、消えてしまった自分の炎を想って遠い目になったりもする。

 でも、彰人はいい意味で“しつこい”性格をしていた。そんな、がむしゃらで邪気のない彰人だからこそ特殊な引力を発生させて、兼や大河という大物をも引き寄せることができたんだろうなぁ……と、この“Find A Way Out”を読んでしみじみと思った。

 このキーストーリーの中で彰人と大河が語り合うのだが、これは特筆したい名シーンだと思う。

「なんかお前、謙みたいなやつだな」

 そう切り出して、大河はかつての謙のことを語り始める。歌い手として先行していた大河に追いつくため、声が枯れるまでがむしゃらに努力していた若き日の謙のことを。それを聞いて、彰人は自分が走り続けてきたことは間違いじゃなかったと気づくのだ。

「これで、オレがやってきたことを信じて、また前に進める」

 彰人のこの台詞、胸に沁みる。

Find A Way Out【プロセカ公式】

キーストーリー:“Kick it up a notch”

あらすじ

 ビビッドストリートの聖地・Crawl Greenでのライブが決定し、しかも大河がイベントに来ると約束してくれて意気上がるビビバス。加えて大河の声掛けにより、謙の来場も決定した。これで凪を除く伝説のアーティストが、ビビバスたちのライブに集うことになったわけだ。

 そんな大河はこはねの稽古の際、「つぎのライブのオープニングアクトは、嬢ちゃんがソロでやってみたらどうだ」と提案する。戸惑うこはねだったが、RAD WEEKENDの凪のソロに影響を受けていたこともあり「やってみたい!」と決意をする。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】同じ夢に向かって走るビビバスの物語を振り返る。まぶしいほどの青春の先に見えた壁は高すぎて【後編】

 そして始まった、ビビバスの3回目の主催イベント。オープニングアクトを務めるのはもちろんこはねだ。そこで彼女は……ついに潜在能力を開花させ、RAD WEEKENDの凪を彷彿とさせる衝撃のパフォーマンスを披露するのである。

キーストーリー:“Kick it up a notch”を読んで

 改めて、眠っていた天才が殻を破って飛び出してくるシーンは……たまらなく心湧きたつものがあるよなーーー!!! ……と、“Kick it up a notch”を読むたびに思う。100の力をふつうの人の限界とするなら、ふとしたきっかけでその“ベースのほう”を150にも、200にもしてしまうのが天才という人種なのだろう。

 限界値のほうを上げられてしまうのだから、凡人はただただポカンとするしかないのだ。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】同じ夢に向かって走るビビバスの物語を振り返る。まぶしいほどの青春の先に見えた壁は高すぎて【後編】

 それほどの恐るべきパワーを持っているのが、こはねという少女なのだと思う。その描き方もまた見事で、RAD WEEKENDの凪のパフォーマンスとオーバーラップさせて見せる演出を目の当たりにしたときは、身体じゅうが粟立って仕方がなかったよ。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】同じ夢に向かって走るビビバスの物語を振り返る。まぶしいほどの青春の先に見えた壁は高すぎて【後編】

 とはいえ何度も書いてきた通り、明るすぎる光の下には必ず影が落ちるのである。

Kick it up a notch【プロセカ公式】

キーストーリー:“Light Up the Fire”

あらすじ

 過去最高と言っていい盛り上がりを見せた、ビビバスたちによる3回目のイベント。その残響は大河、謙の中からも消えることはなく、レジェンドふたりはそれぞれが“ある決心”をする。それほど、このイベントがもたらした影響は大きかったのだ。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】同じ夢に向かって走るビビバスの物語を振り返る。まぶしいほどの青春の先に見えた壁は高すぎて【後編】

 全米ツアーのためにアメリカに戻る直前。大河はビビバスと、イベントに出演した仲間たち全員を呼び出す。そこで大河は「お前たちのイベントは最高だった」と評価をするも、「でも、いまのままじゃ一生かかってもRAD WEEKENDは超えられない。絶対だ」と険しい表情で突き放してきた。

 大河は戸惑う若者たちに向かって、その理由を説明する。RAD WEEKENDは、なぜ開催されたのか? そして、どんな神通力であれほどの盛り上がりを見せたのか……?

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】同じ夢に向かって走るビビバスの物語を振り返る。まぶしいほどの青春の先に見えた壁は高すぎて【後編】

「お前たちに足りないのは、“想い”。あの夜は、あるひとつの想いでできていた。“このイベントを、あいつの人生の最期にふさわしい最高のもんにしてやろう”っていう想いだ」

 そして明かされる、誰も聞きたくなかった衝撃の事実――。

 RAD WEEKENDは誰あろう、凪への最後のはなむけだった。

 イベント終了後、まもなくして凪はこの世を去り、彼女のたっての希望により“杏にだけ”事実が隠されることになったのである。

キーストーリー:“Light Up the Fire”を読んで

 ビビバスという名の物語が、ひとつの帰結を迎えるあまりにもショッキングなキーストーリー。杏が泣きじゃくるバナーイラストからも、その破壊力の大きさが垣間見える。

 8話構成なのは他のイベントストーリーと変わらないが、各話ともテキスト量が圧倒的に多く、しかもとんでもなく鋭利に突き刺さってくるので、まだ読んでいない人は覚悟を持ってページをめくったほうがいい。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】同じ夢に向かって走るビビバスの物語を振り返る。まぶしいほどの青春の先に見えた壁は高すぎて【後編】

 正直、ここからの2話については、あまり感想を書きたくない。ネタバレ……ってこともあるけど、何と言うか……。まだ読んでいない人に変な先入観を植え付けて、それぞれが感じる無垢なファーストインパクトを濁ったものにしたくないのだ。

 ここまでのビビバスの歩みは、こはね、杏、彰人、冬弥のピュアな想いがあったからこそ、他のユニットの物語とは一線を画す、純粋でちょっとまぶしい青春物語たり得たんだと思う。

 でも、ここからの2話を境に始まるビビバスの第2章は、それほど単純なものにはならねえぞ……という心構えを、読む者に植え付けてくれると思う。なので、まずは自分の目で確かめてほしい。

 ……とはいえ、ちょっとだけ書かせてもらいたい。

 「自分の余命が、残りたったの数ヵ月しかないと知ってしまったとしたら――。果たして凪のように、凛と振舞うことができるだろうか……?」

 “Light Up the Fire”を読んで、真っ先に脳裏をよぎったのはこの疑問だった。そして、答えもすぐに出てきてしまったよ。

 それは、「否」だ。

 もしも自分が凪と同じ立場になったとしたら、そりゃあもう見苦しく暴れ、のたうち回り、趣味も、ゲームも、続けてきたライフワークもすべて頭から吹っ飛んで壮絶なまでに晩節を汚すことになると思う……。

 それなのに凪は、残りの時間だけでなく、自分がいなくなったあとのことまで考えて完璧に立ち回っている。杏の性格を知り尽くし、「きっとあの子は、立ち上がってくれるから」と信じ切っていたからこそ、ここまで思い切ったことをやろうと思ったんだろうな。すげえな。本当に、かっこいいと思うわ。

 そんな凪だったからこそ、ビビッドストリートの古参たちは、自分がウソつきになるという汚名を被ってでも協力しようと思ったんだよなぁ。

 ……と、ちょっとだけ書くつもりが止まらなくなって、かなり核心部分の感想まで書いてしまった。ま、でも、仕方ないよな。

Light Up the Fire【プロセカ公式】

キーストーリー:“On Your Feet”

あらすじ

 大河に実力の差を見せつけられたことにより、あれほど夢と希望に満ちていたグループは完全に空中分解してしまう。「もう、RAD WEEKENDを超えるなんて口が裂けても言えない」がグループを離れていった者の総意で、それはビビバスの面々にも痛いほどよくわかることだった。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】同じ夢に向かって走るビビバスの物語を振り返る。まぶしいほどの青春の先に見えた壁は高すぎて【後編】

 でも……。やられっぱなしで泣き続けるほど、ビビバスの面々はヤワではなかった。「悔しい」という、こはねの心からこぼれた言葉をきっかけに、再び立ち上がる決意をするのである。そして、大河がアメリカに立つその日にビビバスの4人は空港に駆け付けて、世界的なアーティストに宣戦布告するのであった。

キーストーリー:“On Your Feet”を読んで

 先の“Light Up the Fire”の所感でも書いた通り、このイベントストーリーに関しても余計な情報をいっさい入れずに、自分の心のままに受け止めてほしいと思った。

 とはいえ、ビビバス物語を締めくくるキーストーリーなので、ちょっとだけ書かせていただこう。

【プロセカ3周年記念シナリオまとめ】同じ夢に向かって走るビビバスの物語を振り返る。まぶしいほどの青春の先に見えた壁は高すぎて【後編】

 この“On Your Feet”を読んで真っ先に思ったのは、「ビビバスのこれからは、ひと筋縄じゃいかないな」というものだった。“Light Up the Fire”の感想でも同じようなことを綴っているけど、それが確信に変わった……という感じか。

 それまでは、さまざまな葛藤やぶつかり合いはあったものの、比較的順風満帆だったと思えたビビバスの歩み。しかし最後の最後で完膚なきまでに叩きのめされ、ともに戦った戦友たちは散り散りになってしまう。

 「これは本当に、音楽がテーマの物語なのか!?」

 と驚愕するほどの描写で大河と若者たちのバトルを描き切った以上、これからはそれを越えるだけの演出、シナリオを大いに期待したい。きっと、『プロセカ』制作陣は、筆者の想像など軽く超える凄まじいモノを見せてくれるに違いない。

 ビビバスはこれからどこへ向かうのか? RAD WEEKENDを超えるという夢はどうなってしまうのか? そして大河、謙というレジェンドふたりの行動は……?

 進級後のビビバスが直面するであろうさまざまなフラグがバラ撒かれているキーストーリーなので、ビビバス推しの人だけでなく、すべてのプロセカプレイヤーに読んでもらいたいと思う。とくに、あのおとなしかったこはねが悔しさを隠さず、師匠でもある大河に啖呵を切るシーンは必見だ。

On Your Feet【プロセカ公式】

Vivid BAD SQUADの物語を読んで

 冒頭で、「ビビバスのメインストーリーは、“RAD WEEKEND”を中心に展開する少年少女の青春物語である」と書いた。そしてそれは、決して間違った分析ではないと自負しているのだが、イベントストーリーを読了したときに胸に去来したのは、

 「これは……RAD WEEKENDの時代から二代にわたって紡がれている大河ドラマじゃん……!」

 という想いだったよ。……いや、大河おじさんの存在感がヤバいってこととは関係なくね。

 こうした、世代交代を託された若者と、そう簡単に譲るわけにはいかない先駆者とのぶつかり合いって、本当におもしろい。

 王道展開と言ってしまえばそれまでだけど、なぜこの“壁を越えようとする者と、越えさせんとする者”の戦いが王道と呼ばれるのかと言えば、単純にそれが「最高のエンターテインメントたりえるから」だ。

 そういう意味でビビバスの物語はキャラが立ちまくったタレントぞろいで、それが非常によく動いてくれるので、息つく暇がないほどのドラマが展開できるのである。

 ビビバスは、これからどうするのだろう?

 他のユニットと比べて目指すべき相手のスケールが大きすぎて、正直どこから手を付けていくのかまったく想像できない。

 ゆえに、逆説的ではあるけれど、進級後の4人の歩みが楽しみで仕方がない。あの“最強の頑固親父”である大河おじさんを超える(?)ために、彼らがどんなことをやってくるのか? 期待して待ちたいと思う。

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