エレクトロニック・アーツのサッカーゲーム最新作『EA SPORTS FC 24』。FIFAシリーズの後継として登場する本作の詳細なプレゼンテーションを受け、プレイステーション5でプレβ版デモもプレイしたので、その内容をご紹介しよう。

 なお本作のメインとなる対応プラットフォームはプレイステーション5/Xbox Series X|S/PC。また一部機能は対応しないものの、プレイステーション4/Xbox One/Nintendo Switch版も発売される。

ピッチでのゲームプレイ上での進化

Hypermotionが進化+走行タイプが7種類に拡大

 今作では、実際にピッチ上で行われる試合から全選手の動きをスキャンし、ディープラーニングを通じてリアルな試合中のモーションをゲーム内で再現するHypermotionテクノロジーが進化。

 従来のHypermotionでは全体をスキャンするために選手がモーションキャプチャー用のマーカーつきのスーツを着てプレイしなければいけなかったのだが、今回の“HypermotionV”ではスーツなしで空間全体を3Dスキャンできるようになったのだという。(※今回のバージョンについている「V」とは空間的に扱えるという「ボリューメトリック」のVを意味する。またプレイ中の指の動きなどは別途グローブをつけてキャプチャーしているらしい)

 これにより肘や膝、手首などの細かい動きまで一連の試合中のアクションとしてスキャン可能になり、たとえばチャンピオンズリーグでのハーランドのジャンピングアウトサイドボレー(対ボルシア・ドルトムント戦)のようなアクロバティックな動きや、大きなストライド(歩幅)からのシュートなど、より複雑なモーションの再現が可能になったとのこと。

EA SPORTS FC 24
ハーランドのジャンピングアウトサイドボレー。実物の映像と見比べてみて欲しい。

 そしてランニングフォームなども選手ごとの特徴を再現し、たとえばマンチェスター・シティの選手ではハーランドとフォーデンとグリーリッシュでは腕の振り方などがちゃんと異なるそう。

 また「爆発的に加速する」とか「最高速への到達は遅いが着実にスピードアップしていく」といったプレイヤーの走行タイプを決める“AcceleRATE”もバージョン2.0となり、従来の3タイプから7タイプに拡張されている。

プレイヤー特性がOptaによる分析で強化

 世界的なデータ分析機関のOptaによる協力で、これまでのプレイヤー特性が”プレイスタイル”に強化。ユニークなフリックなどが可能な“トリックスター”や、強力なヘディングシュートを放てる“パワーヘッダー”など34種類のプレイスタイルが登場する。

 特に前作と異なる部分を挙げるとすれば、プレイスタイルには一部の選手のみが持つ“+”バージョンが存在するというところだろう。キャリアモードやカードの成長要素がついたUltimate Team(後述)にも大きく関わってきそうだ。

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ヴィニシウスがどんなプレイスタイルを持っているのか気になる。スピードドリブラー+とトリックスターとかだろうか?

プレシジョンパスや新ドリブルなどの新アクションがアツい! シュートの反応も高速に

 新しいアクションでは、マニュアルパス系の「プレシジョンパス」が追加されている。これは指定したスペースに向けて正確にボールを蹴り出せるパスで、フォワードやウィングが走り出した先にスルーパス的に出したり、プレスをかわすようにロブパスを通したり、いろいろと使い勝手がよさそう。

 ちなみにボタンの入力中はどういうコースで蹴るかのガイドが出るので(※)、「このスペースに出したい!」というアイデアを直感的に実現できるのがいい。ちょっと巻いて蹴るプレシジョンスワーブグラウンドパスが綺麗に決まった時はファンタジスタ気分だ。(※FIFAトレーナー機能のパスの軌跡の表示と似ているが別項目。設定でオフにすることもできる)

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プレシジョンパスは普通のスルーパスと異なり、自分のプレイヤーがギリ追いつきそうな所&相手ディフェンスがギリ届かなそうなコースで出せるので、ヴィニシウスなどがラインの裏に入り込もうとしている時は大胆に狙っていきたいところ。

 入力はドリブンパス系の操作になっており、デモをプレイしたPS5版で操作設定がNEWの場合は以下のようなコマンドになる。

  • プレシジョングラウンドパス (R1+△+左スティックでパスを出したい方向を入力)
  • プレシジョンスワーブグラウンドパス(L2+R1+△+左スティック)
  • プレシジョンロブパス (R1+◯+左スティック)

 なおR1+△がプレシジョングラウンドパスになった代わりに、前作でこのコマンドを使っていたドリブンスルーパスがL1+R1+△に割り当てられている。(以前はドリブンロブスルーパスのコマンドだった)

 もうひとつの新アクションは“コントロールドスプリントドリブル”(R1ホールド)で、これはジョグとスプリントの中間のスピードで体の近くにボールを置いてドリブルするもの。

 使い方としては、ゴール前で抜け出した時にこれに切り替えて最後の詰めに備えるという感じ。コントロールシュートにスムーズに移行しやすい入力になっているので、結構使いやすい。

 そのほか、ボタン入力が完了してからシュートを撃つまでの反応の高速化が図られていたり、攻守の接触プレイをより自然かつエキサイティングなものにするような処理(オフェンスが軽い当たりを粘ってドリブルを継続したり、逆にディフェンスがスライディングでボールをきっちり奪ったり)も入っているそう。

選手などのグラフィックも進化

 直接試合内容に関わらないグラフィック面では、まずプレイヤーのモデルが“SAPIEN”テクノロジーによるものに更新。これは、選手個人の筋肉や体型の特徴をより細かく再現するもの。これによって僧帽筋や大胸筋の張り具合などが変わってくるそう。

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ハーランドのゴツみもリアルに。

 そしてプレイヤーのユニフォームがGPUシミュレーションで変形するようになり、ユニフォームの皺などの描写が行われるように。またGTAO(Ground Truth Ambient Occlusion)を採用し、選手だけでなくスタンドなども含めたスタジアム全体の陰影描写がより写実的になる。

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ユニフォームの皺はプレイ中はほぼ見えないが、リプレイ時などの描写がよりリアルになる。
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ドルトムントの本拠地、ジグナル・イドゥナ・パルク。選手だけでなくスタンドの明暗も写実的に。

 試合に少し関係する部分だと、最近のハイテク化されたサッカー中継のように、両チームのシュート数の違いや疲れているプレイヤーなどのデータ表示がフィールド上にオーバーレイ表示されることも。試合状況がわかるので個人的には楽しい昨日だが、余計な表示をシャットダウンして試合に集中したい人はオフにできる。

 またイエローやレッドの提示の際に審判のボディカメラ視点に切り替わる演出が入ったり、ハーフタイムや試合後の画面も背景でロッカールームの様子などが見られるようになるなどの演出の強化や、ユーザーインターフェースのシンプル化(FIFAシリーズの昔の作品のように、メニューの各項目が縦に並ぶ)も行われる。

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試合前やハーフタイム、試合後などの演出も強化されている。

各モードの新要素・変更点

Ultimate Team

  • チャレンジをクリアーすることで選手カードが強化される成長要素が登場
    • 例えばレーティング69のムココ(ドルトムント)が77、そして85へと進化する
    • プレイスタイルが強化される選手もいる。ヴァン・ダイクをCMにしてパワーヘッダー+をつけるといった進化も可能
  • アイコンプレイヤーから、すべてのチームメートの所属リーグに対してケミストリーが発生するように(※これまではリーグ分のケミストリーがつかなかったため)
  • 女子選手が登場。ヌクンクとサム・カー(いずれもチェルシー)など、同じチームの男子女子でのケミストリーも発生する
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ブラジル女子サッカー界が誇る女王、マルタ。オンラインプレゼン中、ブラジルメディアの人が「マルタをUltimate Teamに入れて勝ちまくるぜー」と盛り上がっていた。
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チェルシーとチェルシー女子でもクラブのケミストリーが発生するのはちょっと面白い。

キャリアモード

  • マネージャーキャリア
    • ティキタカやゲーゲンプレッシングなどの7種類のチームスタイルを設定できるように
    • コーチを雇う要素が追加。アタッカー・中盤・ディフェンス・ゴールキーパーの4ジャンルがあり、コーチの知識がピッチにいる選手のレーティングをブーストしたり、選手の成長を促したりする
    • 試合に向けた準備の要素が強化。トレーニングプラン、試合前レポート、試合前練習の3要素で構成される
      • 試合前レポートには相手チームのフォーメーション、戦術、長所と短所、キープレイヤーなどが示される
      • 試合前練習ではドリルをプレイすることで一時的なプレイスタイルを獲得できる。これによりプレスが厳しい相手に対してプレスをかいくぐるドリブルを手に入れて対処するといったことを狙える
    • 試合シミュレーションに観戦モードが登場。サイドラインなどのカメラからリアルタイムの試合を見られる
    • 優勝時のバスパレードなどの演出も強化
  • プレイヤーキャリア
    • プレイヤーキャリアにエージェントの要素が登場。
      • 移籍の目標にするチームを設定可能に。それぞれどういう選手が求められているのか、契約を得るためにどんな成績を残せばいいのかなどが見られる
    • プレイヤーの成長システムもプレイスタイルが重要に
    • 自分の選手にフォーカスするカメラを追加
    • バロンドール授賞式などの演出を強化
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今季からレアル・マドリーでプレイするベリンガム。彼のように移籍でどうキャリアパスを積んでいくかがプレイヤーキャリアモードの一要素となる。

クラブス&Volta

  • プロクラブモードが、プレイヤーが使っていた略称のクラブスという名前に変更
  • クロスプレイに対応。友達と一緒に遊べることが大事なゲームだったので
  • クラブのリーグシーズンを再構築。勝利または引き分けにより得たポイントで最上位ディビジョンを目指す。
    • 降格はないが、上位チームによるプレイオフはある。プレイオフには引き分けがなくPKで決まる。6週ごとにリーグはリセットされる
  • 強化にはプレイスタイルが関わってくる。スロットにプレイスタイルを選んで能力を形作っていく

新たな時代の幕開けを感じさせる内容

 というわけで本作、あくまでFIFAシリーズの延長上ではあるのだが、“EA SPORTS FC”という新ブランドで再出発するという意気込みを感じられる内容になっていた。

 Q&Aで面白かったのが、FIFAシリーズで従来しばしば指摘されていた「(課金要素で儲かる)Ultimate Teamにばっかり集中して、他がおざなりになっているのではないか」という意見に対して、今回各モードの改良をもって応えたかったと語っていたこと。

 記者はずっとキャリアモードプレイヤーなのだが、今回の新要素はその意志を感じられるし、実際に非常に楽しみな部分。これまでは試合間のマネージメントは練習ドリルを全クリアーした後はほとんど意味がなかったが、相手にどうカウンターするか準備できるのであればやる気も取り組み方も変わってくる。

 最後に、実際に遊んでみてひとつ気になったのが、プレシジョンパスは競技的にプレイする人からはどうなんだろうということ。AIディフェンダーのズレが出来た瞬間を的確につけるので、猛威をふるいそうな気がしないでもない。まぁ強すぎたりしたらパッチで変わっていくものなので、まずはコミュニティの反応が気になるところだ。

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チェルシー女子のサム・カー。
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アトレティコの本拠地シビタス・メトロポリターノ。
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ユーヴェのユヴェントス・スタジアム(アリアンツ・スタジアム)