Blizzard Entertainmentから、2023年6月6日(火)発売の『ディアブロ IV』。アーリーアクセスは6月2日(金)から開始となった。

 リリースを直前に控えた2023年5月末に、『ディアブロ』シリーズのゼネラルマネージャーであるロッド・ファーガソン氏と、アソシエイト・ゲームディレクターであるジョセフ・ピエピオラ氏に、日本のメディア合同によるグループインタビューが実施された。

 今回の記事では、本作の緻密なゲームデザインについてなど、さまざまな要素が判明したインタビューの模様をお伝えしていく。

 なお、ファミ通.comではゲームディレクターを務めたジョー・シェリー氏への個別インタビューやシリーズの物語を楽しむための記事も掲載している。こちらも一読してほしい。

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『ディアブロ 4』ロッド・ファーガソン氏にインタビュー。ダークな物語は世界の主流へ。レベル差があっても協力でき、理論上はワールドボスに1対1でも勝てるゲーム構造の秘密
『ディアブロ 4』ロッド・ファーガソン氏にインタビュー。ダークな物語は世界の主流へ。レベル差があっても協力でき、理論上はワールドボスに1対1でも勝てるゲーム構造の秘密

ロッド・ファーガソン

Blizzard Entertainmentで『ディアブロ』フランチャイズのエグゼクティブプロデューサーおよび代表を務め、注目が集まる『ディアブロ IV』、『ディアブロ II リザレクテッド』、『ディアブロ イモータル』を含む『ディアブロ』に関連するすべての作品を監督している。文中ではロッド。

ジョセフ・ピエピオラ

Blizzard Entertainmentで『ディアブロ IV』開発チームのアソシエイトゲームディレクターを担当。新機能、バグ修正、およびその他のさまざまなアップデートの責任者を担う。『ファイナルファンタジー』や『ペルソナ』シリーズなどのJRPGをとくに好み、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』にも強い情熱を抱く。文中ではジョセフ。

新たな時代の姿と、失われない『ディアブロ』らしさ

――発売を迎えるにあたり、現在の心境を教えてください。

ロッド発売日が近づくにつれて、興奮して眠れない日々が続いています。『ディアブロ IV』が発表されたのは2019年頃。4年近く前です。自分が好きでプレイしてきたゲームの開発に関われるというまれなケースのなか、楽しんで開発をしてきました。

 自分たちが楽しんで開発してきた本作をプレイヤーの皆さんが楽しむ様子が早く見たいと、発売前から待ちきれませんでした。各媒体からのレビューやスコアなども届いており、それらをニヤニヤしつつ見たりもしていましたね。

――数多のハック&スラッシュ(ハクスラ)ゲームのなかで、本作『ディアブロ IV』がとくに優れていると考える点を教えてください。

ジョセフ『ディアブロ IV』は『ディアブロ』シリーズの作品として、長い歴史を内包しています。各ナンバリングタイトルのなかで培ってきた魅力を、まとめて『ディアブロ IV』で表現できた利点はとても大きい。

 たとえば初代『ディアブロ』からは、非常にダークなファンタジーであり、閉所恐怖症の発作すら起こすかもしれないダンジョンに潜っていくゲームプレイ体験を取り入れています。

 『ディアブロ II』からはビルドのシステムやアイテムを探してキャラクターを強化していくというコアなプレイ体験をより強化して取り入れ、『ディアブロ III』からはアクションと戦闘の気持ちよさを抜き出しました。過去3作の集大成と言ってもいいと考えています。

 また、今作では“プレイヤーチョイス”、プレイヤーが自由に遊べる点にもフィーチャーしており、ファンタジーの世界をどっぷりと楽しんでいただけると思います。

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――初代『ディアブロ』から25年以上が経ち、ゲーム業界も変化しました。『ディアブロ IV』の開発にあたり、初代開発のころからのスタンスの変化はあったのでしょうか。

ロッド初代『ディアブロ』はとてもダークな作りになっています。悪魔を題材にしているなど、当時を考えると自分の親にこのゲームをプレイしているのを隠すレベルの作品だったようにも思えます。

 そこから25年経ったいま、ダークなトーンのコンテンツはメインストリームにもなってきており、例としては『ウォーキング・デッド』や『ゲーム・オブ・スローンズ』といったダークな世界観の作品が一般に受け入れられています。そういったことを踏まえると、根本にある暗黒の部分に回帰していまの世に送り出せると考えました。

ジョセフ『ディアブロ IV』ではストーリーを見せることに注力しています。『ディアブロ』シリーズでは初代から天使と悪魔の戦いという構図を取り入れてきましたが、今作でそこがついに大々的にフィーチャーされます。

 本シリーズの歴史のなかで名前だけは出ていたものの、ゲームに出てくることはなかったサンクチュアリの創造主“リリス”と“イナリウス”という二大キャラクターがストーリーの主軸。天使と悪魔の戦いへと、いい意味で巻き込まれながらストーリー展開を楽しめると思います。

 もちろんプレイヤーの視点からも見られますし、イナリウスとリリスがなぜこういう行動に出たのかという、各個人の視点からもストーリーが展開していきます。本作の大きな目玉ですので、ダークながらも美しい『ディアブロ』の世界観をぜひご覧ください。

『ディアブロ 4』ロッド・ファーガソン氏にインタビュー。ダークな物語は世界の主流へ。レベル差があっても協力でき、理論上はワールドボスに1対1でも勝てるゲーム構造の秘密

ロッド25年前のゲーム制作現場と比べると、もっとも大きな変化はライブサービス(運営型)ゲームになった点にあると思います。現代のライブサービスのゲーム制作では、発売がスタートライン。発売後のDay1パッチやつぎのアップデート、つぎの拡張パックなど、つねに何かしら動き続ける状態になり、チームも必然的に大きくなりました。この大きくなったチームをどう継続させていくのか、どう回していくのかと考える点も、ゲーム作りに変化をもたらしていますね。

――シリーズで初めてオープンワールドを導入したことで、『ディアブロ』が持つ魅力が損なわれるなどの心配はありましたか? また、逆に引き立てられた魅力がありましたら教えてください。

ジョセフいままでの『ディアブロ』シリーズの多くのタイトルでは、展開が一本道でした。今回はオープンワールドを導入することによりプレイヤーに選択肢を示すことをコアにしているため、あまりやりすぎると従来のプレイヤーに違和感を与えてしまうかもしれません。この部分のバランスについてはかなり注意しながら制作しました。

 また、『ディアブロ』のゲームプレイの根本にあるのは一本道のゲーム体験ではなく、モンスターを倒して強いアイテムを手に入れて、自身をより強くしていくというゲーム体験だと考えています。この体験をオープンワールドでもしっかりと楽しめるようにすることもまた、大切な点であると考えています。

『ディアブロ 4』ロッド・ファーガソン氏にインタビュー。ダークな物語は世界の主流へ。レベル差があっても協力でき、理論上はワールドボスに1対1でも勝てるゲーム構造の秘密

ジョセフこれまでの『ディアブロ』プレイヤーの傾向を見ると、どれだけ早く敵を倒し、どれだけ早くアイテムを掘れるかといった効率化を重視するプレイ傾向も多かったかと思います。この傾向をよりナチュラルに、ゲームプレイに盛り込みたいとも考えました。

 たとえば、ひとりのプレイヤーが何体もサブキャラクターを作る場合、同じことをくり返させるのはやめたいと考えました。“リリスの祭壇”などの遺跡を最初に発見したときの喜びは大きいとは思いますが、違うキャラクターで同じような探索をくり返すのがおもしろいかというと、それは違うでしょう。『ディアブロ IV』では、ふたり目以降のキャラクターだと、すでに発見、解放済みになっているコンテンツも多いです。

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全プレイヤーが楽しめる配慮とゲーム構造

――エリア内のモンスターのレベルはプレイヤーに応じて変化しますよね。同じ場所にレベル差のあるプレイヤーが集まる場合、モンスターのレベルはどうなるのでしょうか。

ジョセフ仮に、レベル10のプレイヤーがレベル50のプレイヤーと同時に街の外に出るとします。この場合、外にいるモンスターはレベル50のプレイヤーから見るとレベル50ですが、レベル10のプレイヤーから見るとレベル10となります。

 ふたりが同時にこのモンスターにダメージを与えると、レベル相当のダメージが入りますが、見た目上は割合で表現されます。つまり、レベル10のプレイヤーが攻撃してHPの25%相当のダメージを与えたとすると、レベル50のプレイヤーから見てもモンスターのHPは25%減少し、逆でも同じです。このふたりの視点からすると、ほぼ同じレベルのプレイヤー同士でモンスターと戦っている感覚になるかと思います。

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ジョセフなぜこのような調整にしたかといいますと、従来の『ディアブロ』とはフォーカスするポイントが異なるからです。これまでは孤独感や単独での冒険の楽しみが重要でした。今作ではオープンワールドのマルチプレイを導入したことで、ほかのプレイヤーの足を引っ張っていると思われないという点も大事にしています。

 ほかのMMOタイトルなどでは、レベルの高いプレイヤーといっしょになると敵が一掃されて何もできないといった状況が起こりかねませんが、本作ではそうはなりません。孤独感や閉鎖感のあるゲームプレイのなかでも、ほかのプレイヤーに出会うことが少しうれしいハプニングに感じてもらえるかと思います。

ロッドプレイヤーに合わせて周りのモンスターのレベルを調整するスケーリングは、マルチプレイを皆さんに楽しんでいただきたいという観点からも重要です。(一般的なオンラインゲームで)フレンドや世界中のプレイヤーと遊ぼうとしても、レベルが離れていたりプレイしているエリアが違ったりするとどうしようもない。『ディアブロ IV』ではそういったことが一切なくなります。

 ふつうのRPGでは、ゲームが進行したら最初のスタート地点付近に戻る意味がないという状況になりがちです。オープンワールドを作っている以上、どんなにレベルが上がったとしても、世界各地すべてに行く理由がある、行くことで楽しめるというゲームプレイにしたいと考えました。

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ロッドひとつ重要な点として、すべての敵やエリアがレベルスケーリングの対象になっているわけではありません。ワールドのティアを上げるために挑む“キャップストーンダンジョン”や一部コンテンツはレベルが一定です。これらはプレイヤーに挑戦してもらうコンテンツですので、レベルによって難易度が変化することはありません。

――ハック&スラッシュのタイトルをプレイしたことがないプレイヤーが『ディアブロ IV』から遊ぶにあたり、配慮した点を教えてください。

ジョセフ開発の初期から、どんなゲーム経験を積んできたプレイヤーでもゲームプレイに入りやすいベース作りを心掛けてきました。ハクスラの初心者であってもすんなりと理解できるというのが、もともとの目標点でもあります。

 そのためには、ストーリーやゲーム全体の流れを通じてプレイヤーに新たな情報を提供し、学習していってもらうのが大前提です。ソーサラーを例に挙げると、最初は火の玉を撃つシンプルなスキルを使い、レベルが上がることによって新しい可能性、新しいスキルが解放されていきます。徐々にプレイヤーに新しい可能性を見せつつ、少しずつ学んでいけるゲームプレイを根本として制作を進めました。

――たしかに、プロローグではほぼ何もできない状態でしたが、終わると同時にスキルが覚えられるようになって一気に世界が広がった気がしました。

ジョセフただ、これをあまりにやりすぎてしまうと、もともと『ディアブロ』シリーズやハクスラに慣れているプレイヤーからすると物足りなく感じるでしょう。バランスには気を付けたいですね。

ロッド『ディアブロ』のフランチャイズは25年以上の長い歴史を持ち、そのなかでナンバリングの4作目ということで、一般的なプレイヤーからは「1~3をプレイしていないと楽しめない」と思われるかもしれません。しかし実際はそのようなことはなく、時系列もきれいに分かれているので、本作から入ったとしてもストーリーの100%を楽しんでいただけるものになっています。

 同時に、これまでの『ディアブロ』シリーズとまったくまったく別の世界というわけでもありません。たとえば、メインキャラクターのひとりに“ロラス”がいますが、彼は『3』から登場しているキャラクター。こうした要素は昔からのプレイヤーにも楽しんでもらえるかと思います。

『ディアブロ 4』ロッド・ファーガソン氏にインタビュー。ダークな物語は世界の主流へ。レベル差があっても協力でき、理論上はワールドボスに1対1でも勝てるゲーム構造の秘密

ロッドまた、洞窟で目覚めた後にオープンワールドに放たれて「自由に楽しんでください」と言われても、何をしていいのかわからないプレイヤーもいるかと思います。そこで本作では、レベル1から5まではほぼ計算済みの作りになっていると考えてください。

 最初の街にたどり着き、そこからプレイヤーに何を覚えてもらい、何をしてもらうのか。レベル5まではゲームに慣れてエンジンをかけてもらう期間ですね。それ以降はプレイヤー自身が強くなり、サンクチュアリという舞台で生きるために必要なことを学びつつ、楽しんでもらえる作りになっています。

フィードバックへの対応にも前向き。ワールドボスにはソロでも勝てる

――何度かのテストでデータが収集されているかと思いますが、国や地域ごとのフィードバックに違いはありますか? たとえば日本ではどのような意見が多かったのでしょうか。

ジョセフ3回のテストを経て、プレイヤーの皆さんから多くのフィードバックをいただきました。そのほとんどはゲームバランスやレジェンダリーアイテム、ビルドメイキングに対するもので、日本からとくに多かったのはローカライズ関連でした。説明不足に感じるという声も多く、課題として受け止めています。

『ディアブロ 4』ロッド・ファーガソン氏にインタビュー。ダークな物語は世界の主流へ。レベル差があっても協力でき、理論上はワールドボスに1対1でも勝てるゲーム構造の秘密

ジョセフグローバル全体では「難度が高いと感じた」という意見が多かったです。サーバースラムではレベル20の上限が設けられおり、クラスごとの強力なスキルがまだ使用できない状態でした。それらが使えるようになれば、そのクラスの本当の姿が見られるようになります。

 たとえば、バーバリアンは武器マスタリーのシステムが入ってきますし、ネクロマンサーなら死者の書がどんどん解放されていく。これまでのテストで経験したレベル25までのプレイから、がらりとゲームプレイが変わります。リリース後にこれらが解放された状態で、反応やバランスを見ながらパッチでゲームを磨いていきたいと考えています。

――ワールドボス“アシャバ”はテスト段階でも別格の強さを見せてくれましたが、仮にプレイヤーが少数しか集まらなかった場合でも、ワールドボスには勝てるものなのでしょうか。

ジョセフ限りなく難しいですが、1対1であっても勝てます。サーバースラムでのアシャバのレベルは25で、プレイヤーのレベル上限は20。このときはアシャバというボスの圧倒的な強さを体験してほしかったんです。リリース後はこういう強制は発生しませんのでご安心を。

『ディアブロ 4』ロッド・ファーガソン氏にインタビュー。ダークな物語は世界の主流へ。レベル差があっても協力でき、理論上はワールドボスに1対1でも勝てるゲーム構造の秘密

ジョセフただ、このサーバースラムの状態でもソロで勝利したプレイヤーはいたんですよ。リリース後にはアシャバはより高レベルの存在になります。(リリース後に)実際に戦うとなるとプレイヤー側もよりレベルアップしているでしょうし、スキルやシステム、アイテムが解放された状態となりますので、準備が整った状態で挑戦できます。

 テスト段階とは違ってプレイヤーの総数がけた違いになりますので、少人数で戦う状況もまずあり得なくなるでしょう。ただそれでも、しっかり準備すれば1対1でも勝てる設計にはなっています。

ロッド私もテスト中に1日で6回アシャバにチャレンジすることがありました。そのときは8人のパーティーでもかなり難しかったですね。ワールドボスは事前にビルドをよく考え、それでも足りなければダンジョンでより強力なアイテムを獲得してから挑む難度設計になっています。その傾向がサーバースラムの段階から見られたことには満足しています。

――最後に、日本のプレイヤーに向けてメッセージをいただけますか。

ジョセフこのゲームジャンルと『ディアブロ』のフランチャイズは、日本のプレイヤーにそこまで浸透していないフォーマットかと思いますが、ゲームの楽しさという点では絶対的な自信を持っています。日本のプレイヤーが本作をプレイしてどのような反応をしてくれるか、非常に楽しみに思っています。ぜひ手に取って、試してみてください。

ロッドお伝えしてきたとおり、ナンバリングタイトルで『IV』となっていますが、ここからでも入りやすい作りのタイトルとなっています。日本のRPG好きなプレイヤーの皆さんが『ディアブロ』という長い歴史を持つダークファンタジーRPGに、どのような反応をしてくれるのか見てみたいです。ぜひプレイしてみてください。