今年3月にスクウェア・エニックスを退社したことを明らかにした、市村龍太郎氏。

 数多のゲームでプロデューサーを務めた市村氏だが、2023年5月29日にNetEase Gamesとの協力で新会社“ピンクル”を設立したことを発表した。

『DQIX』の黄金タッグが完全新作を開発! 元スクウェア・エニックスの市村龍太郎氏が新会社“ピンクル”を設立。新たな道への展望を語る【独占インタビュー】

 『ドラゴンクエスト』シリーズをはじめ、意欲的なタイトルを輩出してきた市村氏の、新たなクリエイティブの“舞台”となるピンクル。その設立までの経緯と、ピンクルですでに着手しているという作品の展望をたっぷりと語っていただいた。

『DQIX』の黄金タッグが完全新作を開発! 元スクウェア・エニックスの市村龍太郎氏が新会社“ピンクル”を設立。新たな道への展望を語る【独占インタビュー】

 そして、もうひとつ。このインタビューでは、シナリオ制作を手掛けるストーリーノートの藤澤仁氏に同席していただいた。その理由は、市村氏がプロデューサー、藤澤氏がディレクターを務め、ピンクルとストーリーノートが協力して新作を開発しているからである。

『DQIX』の黄金タッグが完全新作を開発! 元スクウェア・エニックスの市村龍太郎氏が新会社“ピンクル”を設立。新たな道への展望を語る【独占インタビュー】

 2009年にスクウェア・エニックスより発売された『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』以来、14年ぶりとなるタッグが生み出すゲーム。これを聞いて気にならない人はいないだろう。

 市村氏率いるピンクルは、どのようなエンターテインメントで世界を楽しくさせてくれるのだろうか。この独占インタビューを読んで、ともに期待に胸を膨らませていただきたい。

(聞き手:ファミ通グループ代表 林克彦)

市村龍太郎(いちむら・りゅうたろう)

スクウェア・エニックスにて『ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君』、『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』などの「ドラゴンクエスト」シリーズ、アーケード向けの『超速変形ジャイロゼッター』やスマートフォン向けの『星のドラゴンクエスト』など、数多くの作品でプロデューサーを担当。“ドラゴンクエスト30周年プロジェクト”統括プロデューサーやアニメ『ドラゴンクエスト ダイの大冒険』のエグゼクティブプロデューサーを務めるなど、幅広いメディア展開で活躍。2023年3月をもって、2000年から務めていたスクウェア・エニックスを退社した。

藤澤仁(ふじさわ・じん)

『ドラゴンクエストVII エデンの戦士たち』、『ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君』など『ドラゴンクエスト』シリーズのシナリオに携わり、『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』でディレクターを、『ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン』(Ver.1)ではディレクターとメインシナリオライターを務めた。2018年にスクウェア・エニックスを退社後、シナリオ制作会社であるストーリーノートを設立。ミクシィにて次世代エンターテインメントの室長に就任、小説を執筆するなど幅広い分野で活躍している。

50歳までの3年間を見据えて選んだ独立という“道”

――市村さんがスクウェア・エニックスを退社されてから初のインタビューになりますね。よろしくお願いします。まずは退社の理由と経緯をお聞かせください。

市村きっかけとしては、今年(2023年)で47歳になるというところで、“これからの人生で心残りのないようなゲームを何本作ることができるだろうか”と意識するようになったことがあります。

 売れるゲームを作ることも大事ですが、自分が死ぬときに「作りたいゲームを作りきった」と思えるだろうか、と。1本のゲームを作るのに3年から4年以上はかかることを考えると、いまの状況のままでは指折り数えるほどのゲームしか作れないんですよね。作りたいものを作って後悔しないために、退社という道を選びました。

――50歳という節目のタイミングではなかった。

市村20代、30代と10年単位でキャリアパスを意識してきたので、じつは50代で独立することは考えていました。そこを踏まえて40代は自分のスキルを磨いていこうと思っていたのですが、想像以上に時代の流れが早くて、自分の動きも会社の動きも変わっていく中で、50歳になるまでの3年間をいまのままで過ごしていいのかと考えながら、この1年を過ごしていました。

 スクウェア・エニックスではディビジョンディレクターという事業部長的な立場で10本くらいのタイトルを動かしていて、ゲーム作りの環境やポジションに不満を感じたことはありませんでした。ただ、手掛けている未発表のタイトルが50歳になったときに発売される未来と、50歳になるまでの3年間で自分が作りたいゲームを2、3本立ち上げられる未来があったとして、どちらがおもしろいか。そう考えたときに、事業部長として会社ですべきこととのズレを感じるようになっていったんです。

――自分が本当にやりたいこと、チャレンジしたいことについて深く考えた1年だったのですね。

市村事業部長としては、プロデューサーからの視点だけではなく会社全体のことも考えないといけない。その中で“いち個人として、50歳になるまではやりたいことを我慢したほうがいいだろうか。早く着手しないと時代の流れについていけなくなるのでは?”と感じてきて。

 もちろん会社に残って、いちプロデューサーに戻ってやりたいことをやるという選択肢もあったのですが、去年の夏くらいからすべての可能性を探るために“退社するという選択もありだな”と考えるようになりました。

――長年にわたっていろいろなIPに携わってきて、とくに『ドラゴンクエスト』(以下、『DQ』)シリーズには深く関わっていて愛着も深かったと思うのですが、そこの折り合いは?

市村私が28歳のときに『DQVIII』が、32歳のときに『DQIX』が発売されたのですが、成功を収めたタイトルにその若さでプロデューサーとして携わらせていただいたのは、自分にとって大きな財産となりました。

 ただ、こんな大きなチャンスはこれからの世代が体験すべきだと考え、ナンバリングタイトルの制作から外れることを決めたんです。私は『DQ』がさらに10年、20年と続いていくためにも新しいユーザー……とくにお子さんや海外のユーザーに興味を持ってもらえるよう、ゲームだけではなくマンガやアニメも含めたメディアミックス展開などの施策を構築する道を選びました。そこから『ダイの大冒険』のTVアニメのリメイクなども手掛けたのですが、放映が終わったことでひと段落したことも大きいですね。

 いまは『DQ』関連タイトルをプロデュースできる人材も豊富ですし、“自分じゃなくてもいいんじゃないか”と思えたこともあります。けっして愛着がなくなったということはありません。

――ちなみに、退社を決めたときは堀井(堀井雄二氏。『DQ』シリーズの生みの親であるゲームデザイナー)さんとはどういったお話をされましたか?

市村堀井さんは私にとって人生の師匠なので、いちばん最初に退社すること、独立して会社を設立することを報告させていただきました。

 正直な気持ちをお話させていただいたら、「おめでとう!」と力強くおっしゃっていただきまして、うれしかったですね。堀井さんとはいまでも定期的にお食事をしたりと、個人的な縁は続いているので、とても心強いです。

『DQIX』の黄金タッグが完全新作を開発! 元スクウェア・エニックスの市村龍太郎氏が新会社“ピンクル”を設立。新たな道への展望を語る【独占インタビュー】

NetEase Gamesとともに新しいエンタメを生み出す“ピンクル”

――「おめでとう!」という言葉、とてもうれしいですね。では、これからの市村さんについてお話を聞かせてください。

市村はい、NetEase Gamesから出資をいただいて会社を作ることを決めました。ゲーム開発スタジオではなく、ゲーム開発もするエンターテインメントプロデュース会社です。

 ゲームに限らず、マンガや映像、演劇などのエンタメ全般を企画・プロデュースするプロフェッショナル集団という形ですね。

――市村さんの経験をフルに活かした会社ですね。立ち上げまでの経緯は?

市村独立という道を考え始めたころ、偶然にもNetEase Gamesの方と知り合いを通してよく話をする仲になっていました。当時はそこまで具体的なプランを考えていなかったのですが、自分の中で独立するイメージが固まってきたときにお話して、自分が望む環境を整えていただけたのがNetEase Gamesさんでした。

――具体的にはどのような話をされたのですか?

市村“世界ではこんなエンタメが来るのでは? これができたら世界中のユーザーが楽しんでくれるのでは?”という、簡単には実現できないであろう自分なりの構想やアイデアに、NetEase Gamesさんが興味を持ってくれたんです。

 ゲーム開発にはお金だけでなく、たくさんの知見とリソースが必要になります。独立した後、本当の意味でゲーム作りに集中できる環境をどうしたら作れるのかを考えたとき、NetEase Gamesさんから十分な支援をいただけるということで、グループに参画する形で会社を設立することを選びました。

――モノ作りをするうえで、お金も含めて大事な要素はたくさんありますから。

市村NetEase Gamesさんは、とにかくモノ作りに興味がある会社なんですよ。開発予算の試算を提出しても、お金の話よりもゲームのシステムや世界観の話になる。

 企業として利益は重要ですし、私たちもその点はしっかりと考えていますが、会議ではそこよりも「ゲームをおもしろくするためにどのようなことを考えているのか」、「そこはこうしたほうがおもしろくなるのではないか」という話になる。これはエンタメにとってすごく健全なことですし、何よりも会議が楽しかったんです。ゲームを作る仲間と会話ができているという高揚感があって。

――NetEase Gamesはそもそもゲーム開発が出自ですし、ゲームが大好きなスタッフばかりなんですよね。

市村それはすごく感じました。正直に言うと、NetEase Gamesさんのトップと話して違和感があったら、出資を断るつもりでした。

 でも、おもしろいゲームを作るためなら協力を惜しまないという姿勢を感じましたし、何よりゲームの話を長時間できたのがうれしかった。クリエイターにとってありがたい環境を整えていただけることが理解できたので、今回のような形で独立することを決めました。

――社名も決まっているのですか?

市村はい、決まっています! 会社名は“PinCool, Inc.”です。読みかたは“ピンクル”で、“株式会社ピンクル”となります。“ピン!とくる発想力で、世界を楽しく!”という企業理念から名付けました。

 ゲーム開発スタジオではなくエンターテインメントプロデュース会社であり、いろいろなIPがここから生まれてくるというイメージを持たせたくて、この社名にしました。

――聞いたことのない語感で、かわいらしい響きがします。会社のイメージもつかみやすい気がします。決めるにあたって、かなり悩まれたのではないですか?

市村じつは、30秒くらいで思いついたんです。

――30秒で?

市村ほかにはないシンプルでユニークなものにしたくて、発想力を体現した造語を考えたときに“ピンクル”という名前が本当に“ピン”と来ました(笑)。

 私たちにしか生み出せないエンターテインメントを皆さんにお届けしたいという願いにもふさわしいと思っています。

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ピンクルのロゴマークは、企業理念である「ピン!とくる発想力で、世界を楽しく!」を体現したデザインに。“PinCool”の“i”の部分は発想の閃きを表現しており、同時にエンターテインメント業界において、船を導く灯台の光のような存在でありたいという想いも込められている。

才能溢れる小さな“種”をピンクルが大きな“種”に育てる

――ゲーム開発スタジオではないということですが、スタッフはどのような布陣になるのですか?

市村開発スタッフはほぼいなくて、プランニングやエンジニアリング、グラフィックを担当できるコアメンバーが若干名、加わる予定です。

 現時点では私を含めてプロデューサーがふたりいて、あとは会社業務全般を担当する取締役とプロジェクトマネージャーですね。私たちがブレーンとなって、外の会社さんと協業していくスタイルを考えています。

――少数精鋭でどのようなエンターテインメントを生み出していくのか、そのビジョンをお聞かせください。

市村主業はゲームになります。ただ、コンシューマーなのかモバイル向けなのか、その出口にはこだわっていません。マンガや映像、ライブ、イベントやゲーム大会、グッズなど、さまざまなアウトプットを考え、IPの方向性を定めていろいろ組み合わせていくことで、幅広いIP展開を実現する。これが私たちの役割だと考えています。

 ビジネスとしてIPを構成する方法はひと通り体験し理解しているので、そこが強みですね。いまはウェブトゥーン、動画投稿や配信などでさらに個人の表現の場が広がっていたり、開発ツールの進化でインディーゲームが出やすくなったりと、小さい“種”がたくさん生まれています。そのスピード感やコストもどんどん変化しています。

 そんな才能溢れる小さな“種”を、ピンクルの持つアイデアやノウハウと組み合わせて大きな“種”に育てていく。ここにも大きな需要と可能性があるでしょうし、おもしろいことができそうだと考えています。

――気は早いかもしれないのですが、すでに具体的な案件が進んでいるのでしょうか?

市村じつはゲームの骨子は固まっていて、大規模、中規模、小規模の3タイトルを計画している状況です。大型のタイトルは開発に3~4年くらいかかるもので、小型は1年から1年半くらいでのリリースを目指すものですね。

 3つのラインを同時に走らせている理由ですが、ピンクルとしてNetEase Gamesさんといっしょにゲームを開発するのは初めてなので、まずは小規模のタイトルで開発からリリースまでを体験して、お互いにいいところ悪いところを洗い出していくことが、その先の成功につながるのでは、と考えたからです。

 1年に1本くらいのサイクルでゲームを出すことで、私自身もピンクルのプロデューサーとしての経験値を積み上げていくことも狙っています。

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14年ぶりのタッグが挑むのは誰も見たことのない新しいもの

――3タイトルの開発を同時進行できるのは、外部の会社と協業するピンクルだからこそ成し得ることだと思うのですが、じつは本日は藤澤仁さんにもご同席いただいています。これは、藤澤さんと久しぶりにいっしょにコンシューマーゲームを作る、ということでしょうか?

市村藤澤さんをお待たせしすぎたかもしれませんが、そういうことです(笑)。

 先ほど説明した3タイトルのうち、大型のタイトルは私がもっとも作りたいゲームなのですが、やはりピンクルにとっても大勝負なので、ゲームデザインを任せられる大事なパートナーとしてのディレクターが必要でした。そう考えたとき、ストーリーノートの藤澤さんにお願いしたいと思って声をかけました。

――藤澤さんが参加すると聞いてシナリオを担当されるのかなと思ったのですが、ディレクターなんですね!

市村そうです。もちろんストーリーノートにシナリオを担当してほしいということもありますが、いちばん信用しているクリエイターである藤澤さんに「ゲームのディレクターをやってほしい」と相談しました。

 ゲームのシステムとシナリオが密接に関係しているので、シナリオライティングとディレクションを合わせた立ち回りができるのは藤澤さんしかいないと。2回くらい断られましたが(笑)。

藤澤『DQVIII』や『DQIX』の開発で市村とはいい意味で感覚が合うことはわかっていましたし、彼が人生の大切な局面において自分に声をかけてくれたという思いは伝わったので、熟考の末ではありますが「ディレクターを務める」と決めました。

 ストーリーノートは基本的にシナリオを専門としている会社ですが、ゲームのシナリオはプランニングと不可分なところがあるので、プランナー的な視点を持つスタッフも社内に多数います。プランナーとシナリオライターの両方を会社として担当できるのであれば、私個人はディレクターとして市村と作る環境を築けるだろうと。

――だいぶ悩まれたのですね。

藤澤まあ、『DQIX』のときに自分をディレクターに引き上げてくれた市村の前で言うべきことではないかもしれませんが、じつはディレクターという役割は得意ではないという思いがあって、ずっとシナリオライターに専念したかったんです。

 事実、『DQ』のディレクターを辞してからは大型タイトルのディレクターをやることもなかったので、今回の話も気が引けていました。ですが、先ほどの経緯もありますし、“きっとこれが人生最後の戦いだろう”と覚悟を決めて引き受けることにしました。

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――『DQIX』のときと近しい関係性で今回のゲームは作られるということですよね。

市村そうですね……14年ぶりのタッグになりますね(笑)。

――この布陣には、やはりファンの期待も大いに高まると思います。どこまで聞いていいのかはわからないのですが……RPGですか?

市村突っ込んできますねえ(笑)。言えるところまでで。企画概要を私が考えて、藤澤さんと組み立てている最中ではありますが、RPG的な部分もあるけれど単純なRPGではありません。やはりピンクルなので、ピンとくるような仕掛けがある、ほかにはない特徴があるゲームになっています。

 シナリオと企画が濃厚につながっているゲームシステムで、ディレクションも合わせてすべての要素が切り離せないからこそ、藤澤さんとストーリーノートさんにお願いしたかった。言ってしまえば、藤澤さんにしかできないゲームなので、もう引き受けてもらうしかありませんでした。「藤澤仁に断られたら企画を捨てる」くらいの気持ちでしたから。それに、難度が高い企画を実現できる力が藤澤さんにはあるとわかっていましたので。

――藤澤さんの当て書きに近い企画だったんですね。藤澤さんは企画をみたときにどう思われましたか?

藤澤スタートの時点ではまだ抽象的で、解釈の幅が広い内容ではあったので、いまも企画の解像度を上げている最中ではありますが、“誰も見たことのない新しいものを作りたい”という想いが込められていることは伝わってきました。

 私も『予言者育成学園 Fortune Tellers Academy』(※1)を手掛けた人間なので、誰も見たことのないことに挑戦するという意気込みには共感しました。

※1:2016年からスクウェア・エニックスより配信されたスマートフォン向けのゲームアプリ。現実の出来事を“予言”するシステムが話題に。藤澤氏はストーリーとゲームデザインを担当。

市村「おもしろそうだと思った」とは言わないの?(笑)

藤澤うーん。「変わったことを考えるな」とは思いましたね(笑)。

 いまのストーリーノートで受託するプロジェクトは、だいたいベースとなる世界観やキャラクターがすでにあって、そこにシナリオを描いていくことが多いので、ゲーム開発ではいわば途中乗車のような状況になることが多いです。なので、今回のように本当にゼロから関われて、始発から乗れるようなプロジェクトは興奮しますよね。

市村あまり固めず、ラフな設計図から藤澤さんと形を作っていきたかった。そこで藤澤さんのクリエイターとしての熱を爆発させてほしいと考えていたので。

――いまは企画の解像度を上げているところなのですね。

市村じつはキャラクターデザインをお願いする方も決まっていて、音楽などを含めて開発の大枠はここ2~3週間で決められています。

――すごいスピード感ですね。そうなると、いつぐらいに遊べそうか聞きたくなります(笑)。

市村本当に気が早いですね(笑)。現時点では遊べるようになるまでは3年半から4年くらいはかかるかな、と考えています。

藤澤『DQIX』の感覚で言えば、いまはまだ、「これまでの『DQ』とは違う遊びを実現しよう」と話し合っていたときに近いかもしれません。

――念のためお聞きしますが、NetEase Gamesとストーリーノートがゲームを作るのではなく、ピンクルとストーリーノートがこのプロジェクトにおいてゲームを共同で作るということですよね。

市村そうです。“三顧の礼”みたいに何度も藤澤さんを説得しましたから(笑)。

藤澤市村とはお互いが20代のころに出会ったのですが、堅実に仕事をする印象はあったものの、飛び抜けた才能のようなものを最初から感じたわけではなかったと思います。

 それが、彼が作った『剣神ドラゴンクエスト 甦りし伝説の剣』(※2)を見て、テクノロジーとIPを両立させられる市村のプロデューサーとしての手腕に感銘を受けましたし、その稀有な才能を尊敬したからこそ、今回の仕事も引き受けたんだと思います。

※2:スクウェア・エニックスより2003年に発売された、“ロトの剣”を模したユニットをモニターに向かって振る体感型のゲーム。

市村いいことを言ってくれますね。最初は渋っていたのに(笑)。

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「市村なら変なことをやるだろう」そんな期待に応えていきたい

――AAA級のコンシューマータイトルを、おふたりが中心になって作っていることがわかっただけでも楽しみです。ほかのタイトルに関してはどのようなゲームを考えているのでしょうか。

市村小規模タイトルの企画はできていて、メインのスタッフも決まったので、ショートスパンで開発できる協力会社を探している段階です。RPGではなく、みんなでワイワイと楽しめるゲームになると思います。

 中規模のタイトルは、単純にゲームとはいえないような、新しいエンターテインメントを考えています。インタラクティブ性はありますが、「こんなことをやるの!?」と驚いてもらえるような、世界中が楽しめる企画になっています。開発の規模としては中型なのですが、関わる人はものすごい数になるので、かなり大きなプロジェクトです。

――中規模とは言えないものになりそうですね。

市村いまのピンクルで実現できる規模を考えた結果の3タイトルではありますが、NetEase Gamesさんのサポートも頼りにしています。

 いまは企画を実現するために進むことだけを考えていますが、今回皆さんにピンクル設立をお知らせする前に、ロケットスタートを切ってドライブさせるまでは一気に進めたかったので、めちゃくちゃ忙しかったですね。

――新しいことに挑戦し始めたときは誰しもたいへんですから。

市村たいへんですけれど、楽しいです! 新しいテクノロジーは大好物ですし、新しいデバイスがあればそれをエンタメに昇華したいのは私の性分なので、そういったことにも今後取り組んでいきたいです。

 テクノロジーを遊びにしていく方法を考える会社でもあるので、「新たなテクノロジーはあるけれどもっとみんなに知ってほしい」という方は、ぜひ私たちにお声がけください。NetEase Gamesさんからも十分な環境を用意していただけているので、それらの成果をユーザーの皆さんにしっかりお届けしたいと思っています。

――市村さん率いるピンクルならではのエンターテインメントに期待しています。

市村ありがとうございます! 22年間もスクウェア・エニックスで仕事をさせていただいて、退社するとTwitterで発表したときに、たくさんの反響や応援をいただけたのはとてもうれしかったですし、22年間が報われたと思いました。

 自分のモノ作りへの姿勢は変わらないので、「市村なら変なことをやるだろうな」という期待に応えていきたいです!

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