フランスのゲームスタジオDONTNODが開発し、スクウェア・エニックスからリリースされたアドベンチャーゲーム『Life is Strange(ライフ イズ ストレンジ)』はスピンオフ作品も含め世界で高い評価を受け、日本でも多くのゲームファンを魅了してきた。

 2020年3月26日には『ライフ イズ ストレンジ 2』がプレイステーション4やXbox One、PC(Steam)で発売。それから約3年を経た2023年5月2日、待望のNintendo Switch(ニンテンドースイッチ)版が配信された。

 本稿では、Switch版の発売を記念し、『ライフ イズ ストレンジ 2』の主人公ショーンを演じた浜田洋平さん、ショーンの弟ダニエル役の松本沙羅さん、ダニエルの友だちとして強い印象を残したクリス役の佐藤みゆ希さん、そして日本語版ローカライズ・ディレクターである加藤敏之氏に自身が演じたキャラクターの印象や、ボイス収録の思い出、作品の印象的なシーン、キャスティングした決め手など、『ライフ イズ ストレンジ』シリーズに関するさまざまなお話を伺った。

 なお、『ライフ イズ ストレンジ 2』のSwitch版と同日には『ライフ イズ ストレンジ リマスター コレクション』(※『ライフ イズ ストレンジ』とその前日譚となる『ライフ イズ ストレンジ ビフォア ザ ストーム』のリマスター版をセットしにした商品)も配信されたので、本シリーズを未体験の方は、この機会にぜひ一度プレイしてみてほしい。

※本記事には一部『ライフ イズ ストレンジ』や『ライフ イズ ストレンジ 2』のネタバレがありますので、ご注意ください。

『ライフ イズ ストレンジ』シリーズファミ通特設サイト

浜田洋平(はまだ ようへい)

ショーン役。
5月9日生まれ。神奈川県出身。アーツビジョン所属。
おもな出演作品は、アニメ『エリートジャック!!』(野口秀一朗)、アニメ『NOBLESSE -ノブレス-』(加瀬学)、ゲーム『Summer Pockets』(加納天善)、ゲーム『白猫プロジェクト』(サリム・クーパー)など。

松本沙羅(まつもと さら)

ダニエル役。
5月25日生まれ。千葉県出身。ケンユウオフィス所属。
おもな出演作品は、アニメ『うる星やつら』[2022年版](アヤ)、アニメ『半妖の夜叉姫』(日暮とわ)、ゲーム『ヘブンバーンズレッド』(月城最中)、ゲーム『ポケモンマスターズEX』(マイ)など。

佐藤みゆ希(さとう みゆき)

クリス役。
10月24日生まれ。神奈川県出身。ケンユウオフィス所属。
おもな出演作品は、アニメ『君と僕。』(佐藤茉咲)、アニメ『Gのレコンギスタ』(アネッテソラ)、ゲーム『ファイナルファンタジーXV』(幼少ノクト)、ゲーム『SEKIRO』(九郎)など。

加藤敏之(かとう としゆき)

『ライフ イズ ストレンジ2』ローカライズ・ディレクター。
『ライフ イズ ストレンジ』シリーズでは、『The Awesome Adventures of Captain Spirit(オーサム・アドベンチャーズ・オブ・キャプテン・スピリット)』や『ライフ イズ ストレンジ トゥルーカラーズ』でもローカライズ・ディレクターを務める。
※この記事が公開されているタイミングでは、スクウェア・エニックスをご退職されている、とのこと。

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DONTNODの開発陣も絶賛したキャスティング。起用の決め手は?

――日本語版『ライフ イズ ストレンジ 2』の発売から3年以上が経ち、待望のNintendo Switch(ニンテンドースイッチ)版がリリースされることとなりました。まずは、DONTNODの開発陣も絶賛していたキャスティングはどのように決まったのかを教えてください。

加藤作品ごとにプロセスは異なると思うのですが、本作の場合は、翻訳や声優事務所さんとのやり取り、レコーディングなどを行うローカライズベンダーさんといっしょに進めていきました。

 まずは、こちらからキャラクターの情報やどんな声がいいかをローカライズベンダーさんに伝え、キャラクターごとに複数の候補を挙げていただきます。

 そのリストをもとに、各事務所さんサイトなどでサンプルボイスを聞いて、いいと思った声優さんにお願いする、といった流れですね。

――DONTNODの開発陣も「(日本語版は)声質がキャラクターとピッタリだ!」と絶賛されていましたが、浜田さん、松本さん、佐藤さんを起用した決め手は何だったのでしょうか。

松本ドキドキしますね。

佐藤大丈夫かな(笑)。

加藤浜田さんにお願いした理由は、もう単純に声の雰囲気が兄のショーンにピッタリ合っていたから、です。

 ショーンは最初から最後まで、どんな状況になっても弟のことを思い続ける優しいお兄ちゃんですよね。声を聞いた瞬間、そのキャラクター性を体現するような声だと思いましたし、チームメンバーに聞いても満場一致で「浜田さんがいい!」となりました。

浜田ありがとうございます!

加藤一方、弟のダニエルに関しては、彼の持つ生意気さとかわいさ、そのギリギリのラインを狙いたいと思って松本さんにお願いしました。

 『ライフ イズ ストレンジ 2』という作品を好きになれるかどうかは、ダニエルを大切に思えるか、好きになれるかがいちばん大きいと思うんです。でも、ゲーム内でダニエルはめちゃくちゃ生意気じゃないですか(笑)。

――たしかに。「何でこんなに反抗するんだよ」と思うこともありました(笑)。選択してきた行動によっては、後半になるとかなり反抗心をむき出しにする場面もありますからね。

加藤そんな状況を乗り越えられるくらい、かわいく思える必要があると思ったんです。でも、かわいすぎると今度は生意気なシーンに合わなくなってしまうので、バランスを見つつもかわいい部分を強調したかったんです。そういう目線で見たときに、松本さんは英語版のダニエルとは少し異なる雰囲気の声なんですけど、思い切ってダニエルをお願いしました。

浜田英語版でダニエルを演じられているのは子役さんなんですよね?

加藤そうなんです。英語版はどちらかと言うと生意気成分が強い声なんですよ。それはそれで良さもあるんですけど、日本語版は少し変えたかったという感じですね。

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ショーン(声:浜田洋平)[画面右]
 主人公。16歳。メキシコ系アメリカ人二世。シアトルの郊外で父と弟の3人で暮らしていたが、事件をきっかけ弟のダニエルを連れて父の実家があるメキシコを目指す旅に出る。弟を守り、手本となるように努めるが……。

ダニエル(声:松本沙羅)[画面左]
 ショーンの弟。9歳。人を信じやすく、とくに兄を慕っている。事件をきっかけに、念じるだけで物体を動かす、いわゆるテレキネシスの能力が発現。力は次第に強くなっていくが、完全に制御できるわけではなく、その危険性にも気付いていない。

加藤そしてショーン、ダニエル、クリスでの3人で言うと、キャスティングがいちばん難しかったのはクリスです。

 クリスはふつうの幼い男の子なんですけど、家庭環境が複雑で、内に秘めているものもあって、ヒーローを演じたりもするので、幼い中にも芯を感じられるような声が必要だったんです。

――それはなかなか難度の高い要求ですね。それを演じられるのが佐藤さんだったと。

加藤はい。じつは、佐藤さんはもともと別キャラクターの候補に挙がっていたんです。エピソード1のガソリンスタンドの外にいる家族の女の子役です。

浜田あのちょっと生意気な娘さんですね(笑)。

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加藤はい(笑)。クリス役の選定が難航して悩んでいたときに佐藤さんの声を聞いて「この人がクリスだ!」と思ったんです。そこでローカライズベンダーさんに「佐藤さんにお願いしたいです」と伝えたところ、大丈夫ということだったので、そのままお願いすることになりました。

佐藤光栄です。ありがとうございます。

――ちなみに、クリスが主人公となる『The Awesome Adventures of Captain Spirit(オーサム・アドベンチャーズ・オブ・キャプテン・スピリット)』(※)は『ライフ イズ ストレンジ 2』のエピソード0のような位置付けで、本編に先駆けて無料配信されましたが、収録自体も先行していたのでしょうか。

加藤収録したのは発売日よりずっと前のことなので記憶が曖昧ですが……(笑)、でも『キャプテン・スピリット』の台本翻訳をいちばん最初にやった記憶があるので、たぶんそうだったと思います。違ったらごめんなさい! ちなみに本編はエピソード1から順番に収録していきました。

※Switch版は『The Awesome Adventures of Captain Spirit』の配信の予定はありません。PS4版やSteam版では配信中。

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クリス(声:佐藤みゆ希)
 明るく、繊細で、想像力豊かな9歳の少年。2年前に母親を亡くし、オレゴン州の田舎町ビーバー・クリークで父親とふたり暮らし。自身で考えたスーパーヒーロー“キャプテン・スピリット”になりきり、宿敵マントロイドを倒すための冒険に夢中になっている。

選択によってキャラクターの行動が変化しても芯の部分は変わらず

――演じてみて、自身が演じられているキャラクターについてはどんな印象を持ちましたか?

松本私は姉がいるので、弟のダニエルには親近感しかありませんでした。精神科医の名越康文先生が『ライフ イズ ストレンジ 2』をプレイしながら分析される動画がYouTubeで公開されているじゃないですか。

加藤“ゲームさんぽ”の動画ですね。

松本はい(笑)。その中で、ショーンとダニエルはそれぞれ別のものを大切にしていて、ショーンは自分が大事だと思うことを教えるんですけど、ダニエルはそっちじゃなくて自分が大切にしているものを(ショーンにも)大事にしてほしくて、意思疎通が上手くできないというお話が出てくるんですよね。

 それから、ダニエルがよくショーンに「約束して」と言うんですけど、その気持ちが妹としてすごくよくわかるんです。まだ幼いダニエルは、物事を自分中心に判断してしまうので、ショーンに諫められることもしばしばありますが、(自分の意向に沿うような)約束さえしておけば、何か納得できないことがあっても「でも約束したじゃん!」って言い返せる。私も同じようなことを姉に言っていて、ゲーム画面を見ながら「それ、それ!」みたいに共感して。ダニエルの幼いなりに変化する心情や、行動を起こす理由にはすごく親近感が持てました。

 あと、キャンプ場でキャシディとショーンが近づくところは、演じていてもプレイしていてもキツかったです(笑)。

【ネタバレ注意】『ライフ イズ ストレンジ2』Switch版発売記念インタビュー。全セリフを聞いた人はいないかも!? 声優3人と加藤敏之ローカライズDに本作の魅力と収録時のエピソードを訊いた
【ネタバレ注意】『ライフ イズ ストレンジ2』Switch版発売記念インタビュー。全セリフを聞いた人はいないかも!? 声優3人と加藤敏之ローカライズDに本作の魅力と収録時のエピソードを訊いた
キャシディ(声:足立由夏さん)
旅をしている女性。ひとつの場所にとどまることを嫌うが、一方で責任感も強い。アコースティックギターを弾きながら、よく歌を歌っている。違法農園でショーンたちといっしょに働く仕事仲間。

加藤ダニエルはキャシディのことが嫌いですもんね(笑)。ショーンがキャシディにばっかり構っちゃうから。

松本そうなんですよ(笑)。あそこはプレイしているときも、収録中はショーンに対してイライラしていたな、というのを思い出していました。

――弟や妹としては、兄や姉に構ってもらいたい、という気持ちになるんですかね? 作中ではダニエルがわがままを言う場面もありますが、松本さん自身はお姉さんに対して、困らせてしまったなと振り返ることはありましたか?

松本いま考えると甘やかしてもらっていたのかな、と思うことはあります。姉とは年が離れているので、きっと我慢してくれていたことや言わないでおいてくれたことがあるんだろうなと思います。

――佐藤さんはクリスの印象はいかがでしたか?

佐藤クリスはとくに超能力もないふつうの男の子なんですけど、家庭環境がちょっと複雑(母親が亡くなり、父はその寂しさからかお酒に逃げがち)で、でもそれを自力で乗り越えていく強さも持っているんですよね。『キャプテン・スピリット』でも描かれていましたけど、クリスは想像力がすごく豊かで、自分の世界をワーっと作り出していく、キラキラ感みたいなものを表現しようと思いました。

――健気に生きていますよね……。

佐藤お父さんがクリスにつらく当たった後に謝ることもあるんですけど、それに対して「大丈夫だよ」と言ってあげられる優しさや強さがあって。内気な印象もあるんですけど、優しい芯もある強い子という印象でした。

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――ショーンはいかがでしょう?

浜田ショーンは16歳の少年で、事件が起きるまでは弱い子だったと思うんです。でも、父親が亡くなってしまったことで、ダニエルの兄であり、同時に保護者でもあろうとする。そうやって自分の弱さを押し殺してダニエルの世話をしながら過酷な旅を続けるうちに、強さも併せ持つ若者になったのだと思います。

――そんなショーンを演じるうえで何か意識したことはありますか?

浜田『ライフ イズ ストレンジ』シリーズの特徴でもありますが、プレイヤーの選択によって行動が変化して、まわりの出来事も変わっていくじゃないですか。なので、「ショーンはこういう人間なんだ」というのは安易に決めつけないようにしました。Aを選ぶショーンもいればBの道に進むショーンもいるので、そこは注意しました。

――たしかに、選択によっていろいろなショーンがいるので、幅広いですよね。そういう意味では、選択肢によってキャラクターが変化していくゲームの収録は難しくないですか?

浜田難しくはありますね。ただ、どの選択をするにしても、根本にある感情や動機は同じであることが多いんですよね。なので、自分の中でそこさえ捉えていれば、どの道を選んだショーンであっても、違和感や矛盾なく演じられるだろうなと思って、ショーンの根本の部分は大事にして台本を読んでいました。

松本私もダニエルを演じるうえで「カッチリとこうだ」というのはなるべく決めないようにしていました。余白というか解釈の余地を残すというか。

 先ほど加藤さんもおっしゃっていましたけど、ダニエルは英語版と日本語版で雰囲気をちょっと変えているんですよね。でも、なるべく英語版のダニエルがやっているお芝居の軸はちゃんと受け継ぎたかったので、生意気さや弟らしさ、そのバランスを上手く取っていきたいと思っていました。いま振り返ると、各シーンでダニエルの感情にすごくのめり込んでいたなと思います。

佐藤クリスは複雑な環境にいるんですけど、希望は捨てないんですよね。だから、演じるうえでも暗くなりすぎないように、自分がお父さんを更生させるとまでは言わないまでも、いいほうに導いていけたらいいな、という希望を持ち続けて演じさせていただきました。

原音のニュアンスを汲み取りながら演じる海外産ゲームならではの難しさ

――そんなクリスは本編ではダニエルと出会い、友だちになります。ですが、選択によっては衝撃的な展開を迎えることもありますが、そうした出来事が起きると知ったときはどう思われましたか?

佐藤あのシーンはセリフがなかったので、衝撃的な展開があるとは知らなかったんです。台本だけ見ていたときは、ダニエルと遊んで、いつの間にかいなくなっちゃったな、くらいの感じだと思っていたんです。

 私が自分でプレイしたときも、さほど大きな出来事は起こらなかったので「ほかの選択をしたらどうなるんだろう?」と思ってほかの人のプレイ動画を見たときに「こんな可能性もあったんだ!」とビックリしました。

加藤でも、最初のプレイでそっちのルート(クリスに衝撃的な出来事が起きないルート)に進められたのはすごいですね。あそこに至るまでの選択って難しいと思うんです。よかれと思った選択が……みたいなことになりますし。

佐藤私はクリスの性格を考えて、最初から現実をきちんと伝えたので、回避できたようです(笑)。

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――先ほど『キャプテン・スピリット』の収録が先行していたというお話がありましたが、本編の収録はどのように進んだのでしょうか。海外では数ヵ月おきにエピソードが配信されていましたが、収録もそのペースで?

加藤翻訳するのにも時間がかかるので、収録期間はエピソードごとに分かれていました。収録と収録のあいだが空いていたので、そういう意味でも演じるのは難しかったのかなと思います。

浜田エピソードごとに時間が空いてもキャラクターが離れることはなかったですね。ただ、ゲーム内で空白の期間があるじゃないですか?

――エピソードが変わると季節も変わってたりしますし、数日間の出来事ではない、ですよね。

浜田どちらかと言うと、あれからどのくらい時間が経って、ふたりがどうまわりの環境にどう馴染んだのか、ゲーム内の時間経過を汲むのが難しかったですね。

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松本エピソード5まで収録するのにたしか半年くらいかかったと思うんですけど、その間はずっと『ライフ イズ ストレンジ 2』が中心でしたから、収録が空いているときも、海外の方の実況動画を見て、ここはこういう風な映像になっているんだなとか、この先は見たいけどやめておこうかな、みたいな(笑)、予習する時間がありましたし、本当にずっと作品のことを考えていました。

――本作は海外作品の日本語版ということで、洋画の吹き替えに近いイメージなのかなと思うのですが、収録時に難しさを感じることはありましたか?

佐藤『キャプテン・スピリット』について言うと、クリスが持っているおもちゃのキャラクターがたくさん出てくるんですよね。私が収録したときは、日本語のセリフと英語のセリフが書いてある台本と、英語の音声を使っての収録だったので、映像はありませんでした。なので、誰かと誰かがしゃべっているけど、「いま、どのおもちゃがしゃべっているんだろう?」ってわからなくなることもありました(笑)。

――たしかに、ごっこ遊びみたいなシーンはセリフだけ見ても状況を把握しづらそうですね(笑)。

佐藤ごっこ遊びと現実があいまいなところもあって、そういう部分も含め、想像力を膨らませながら演じたのは、おもしろかったです。ない引き出しをたくさん開けて(笑)。ここは加藤さんともすごく話し合いました。

加藤佐藤さんが本気で演じ分けてしまうと上手すぎるので、「いかにも子どもが演じているように声色や演技のレベルを落としてください」などといったオーダーはけっこうさせていただきました。ただ、パワーベアとノクタリウスというおもちゃを戦わせるシーンがあって、そのシーンは「ちょっと上手すぎるかな……?」と思ったのですが、悩んだ末にあえてそのまま残しました。そのシーンは佐藤さんの演技のおかげでメチャクチャおもしろくなったのと、悩んでいるときに改めて英語版を確認してみて、英語版も声色をうまく変えているなと感じたので、大丈夫かなと。

 同じように、演技のレベルを調整させていただいた部分で言うと、エピソード1の最後、バスに乗るシーンで、ダニエルがショーンにお話を聞かせてほしいと頼むところがあります。最初に読んでもらったときは、さすがにすごく上手いんですよね。でも、ショーンは「お父さんみたいに上手くないぞ」と言ってから話し出すんですよ。それを考えると、上手すぎるのはちょっと違うなと思い、演じかたを調整していただきました。

浜田あそこはナレーション調になってもダメなので、原音に近い生感みたいなものを濃くするように意識しました。

松本あそこはすごくエモいですよね。BGMも相まってすごくよかったです。

加藤エピソード2から、おもにゲームのスタート直後に兄弟オオカミの話が挟まるようになるんですけど、それぞれでまた語りかたが違っているんですよね。

浜田その前後にあった出来事やテンション感を汲んで、というのがありましたからね。エピソード4で差別を受けた直後はショーン自身も傷ついているので、そういう部分も意識しながら読んでいました。

【ネタバレ注意】『ライフ イズ ストレンジ2』Switch版発売記念インタビュー。全セリフを聞いた人はいないかも!? 声優3人と加藤敏之ローカライズDに本作の魅力と収録時のエピソードを訊いた

――では、収録時の苦労について松本さんはいかがですか?

松本私は『ライフ イズ ストレンジ 2』の収録のしかたが、ドラマの吹き替えやアニメの収録の仕方とは少し違っていたので、最初はそれに慣れていなかったことでの緊張や不安もありました。

 みゆ希さんがおっしゃったみたいに、台本には日本語と英語があって、英語の音声を聞いて、その音声データの波形の尺に合わせてお芝居をするというやりかただったんです。「原音と日本語で尺が何%くらいズレても大丈夫です」といったことも書いてあるんですが、ふだん海外の映画やドラマの吹き替えをさせていただくときは、映像を見ながら並行してお芝居をするので、最初はちょっと戸惑いましたね。

加藤ゲームのシステム上、原音と同じ尺じゃないとダメなセリフ、原音より多少長さが変わってもいいセリフなどがあって、とくに前者のセリフはたいへんだったと思います。

――たしかに、それは難しそうですね。ゲームでは音声の波形を使った収録は割りとポピュラーなのでしょうか?

加藤自分の感覚の話になりますが、ゲームのローカライズ版制作においては、ポピュラーだと思います。まずは演技の参考に英語の音声が流れて、その数秒後に日本でセリフを言ってもらう、という流れですね。波形も見えるようになっているので、それも参考にしながら演技をしてもらいます。英語の原音を事前にお渡しできない場合は、「英語がああういう感じなら、日本語はこういう感じで」というのを瞬時に考えて吹き替えていただくので、演者さんの瞬発力も必要なので、演じるほうはかなり苦労されたと思います。

浜田参考の映像がない場合は、本当に何度も原音を聞いて、たとえば遠くに声を掛けているのかとか相手との距離感を計ったり、こんな動作をしながら言っているのかな、みたいなことも想像したりしながら演じていました。そういう意味ではたいへんさはあったかもしれないですね。

――英語とのニュアンスを日本語の演技に変換するのも難しそうですね。

浜田そのあたりは加藤さんやローカライズを担当してくださった方が、上手く調整してくださったのもあって、あまりやり難さは感じませんでした。そこはありがたかったですね。

松本収録をしていくうちに「日本語ではこうしたほうが伝わるな?」とか、「ショーンをイラッとさせるならこういう言いかたがいいな」とか、だんだん余裕は出てきました(笑)。

――そのほか、収録時に何か印象的だったことはありますか?

佐藤たくさんのセリフを収録するなか、翻訳的には正しいけれど、「日常ではあまりこうは言わないよね」という違和感のあるセリフが混ざっていると、加藤さんがすぐにセリフを調整してくださったので、すごく心強かったですね。

加藤全部ではないですけど、セリフがあるテキストに関しては、けっこうな割合を自分で翻訳していましたからね。翻訳するときに「ここはちょっと長いかも……」と思うこともあるので、収まらなかったらこうしよう、とか代替案を考えている場合もあるんです。それもあって臨機応変にできたかな、と。ちなみに、すぐ思いつかないときはそのセリフを一旦飛ばして、収録の休憩中に修正案を考えたりすることもあります。

佐藤おかげで日本語版としてすごくクオリティーが高いものになっているのではないかと思います。クリスやダニエルの子どもチームは、「子どもだったらこうは言わないんじゃないか」みたいなことも相談させていただきましたし。

浜田自分たちの意見を汲んでくださるので、本当にみんなでひとつのものを協力して作っている感覚がありましたよね。

加藤こちらとしても意見を言ってもらったほうがありがたいんですよ。「ちょっと違うな」と思いながらセリフを読んでもらうと、それがセリフに乗ってしまうこともありますし、乗らなかったとしても、こちらが申し訳ない気持ちになりますからね。

 あるとき、浜田さんと松本さんの収録タイミングが同じ日に重なったとき、松本さんが浜田さんの収録をご覧になっていたときがあって。浜田さんが一度セリフを言った後に、ちょっと違うと思ったのか「もう一回、、別のニュアンスでやってみてもいいですか?」とおっしゃって。それを見た松本さんが、「そういうの言っていいんだ!」と小声でおっしゃっていたのがすごく印象に残っています(笑)。

浜田大丈夫ですか? 「このお兄ちゃん文句多くないか!?」みたいになっていませんでした?(笑)

佐藤お兄ちゃんの背中を見て弟は成長していくんですね(笑)。

松本浜田さんの収録を見られたのはうれしかったです。お兄ちゃんカッコいいなって(笑)。

――ゲームの音声はひとりずつ収録されることが多いようですが、相手役の声を生で聴くと、何か印象が変わったりします?

浜田お互いの声を聞けると、またイメージも変わってきますよね?

松本そうですね。そのとき聞けたのはちょっとだけなんですけど、安心感が湧きました(笑)。

加藤掛け合いの相手が先に収録を終わらせていれば、状況によってはその音声を流してからセリフを録る、擬似的な掛け合いみたいなこともできるんですけど、事前に録った音声がない場合は相手がいない無音の状態、あるいは英語の音声を流すしかないんですよね。

浜田日常会話はそこまで難しくはないんですけど、言い合いみたいな場面だとお互いのテンション感がわからないんですよね。そこはディレクターの加藤さんに状況をうかがいながら、演じていきました。

加藤音声収録のディレクターさんやエンジニアさんにお願いして、声優さんに演じていただいた直後に音声を組み合わせて確認をする、なんてこともしますね。それで大丈夫ならそのまま進めますし、ちょっと違うなとなれば別の機会で録り直して、みたいな流れになります。

印象に残っているセリフは?

――本作は選択による分岐が多く、それぞれで反応も違ったりしますので、せっかく収録したのに聞き逃がされているセリフ、シーンはけっこうありそうなのは、なんとももったいないですね。

加藤そうなんですよ。単純にひとつの選択肢で分かれるだけじゃなくて、過去にこれを選んでいたからこの分岐になる、みたいなこともありますし。シーンや選択肢単位はもちろん、セリフ1行単位で分岐している場合もありますからね。本当に100%の音声を聞いた人は、多分いないんじゃないかくらいのレベルだと思います。

松本そういうチェッカーがほしいですよね。このセリフは聞いた、これはまだ、みたいな(笑)。

――そんな膨大なセリフの中で、印象に残っているセリフやシーンはありますか?

浜田僕はスペイン語で歌を歌ったんですけど、あれはがんばったのでぜひ聴いてもらいたいです。

加藤エピソード4でスペイン語の『きらきら星』を歌うシーンですね。あれはけっこう練習しましたか?

浜田メチャクチャ原音を聴き込みました。でも現場では「もっとこうしてください」と言われ、用意していたプランが崩れて冷や汗をかきながら歌いました(笑)。発音がわからなかったので、全部カタカナにしてもらいましたよね。

加藤プリントアウトしたものを持って行ったのを覚えています。あれはたいへんでしたね。

浜田「台本では“ル”と書いてありますが、“ゥ”のニュアンスです」みたいなのがあって、そういう部分での苦労もありました(笑)。

【ネタバレ注意】『ライフ イズ ストレンジ2』Switch版発売記念インタビュー。全セリフを聞いた人はいないかも!? 声優3人と加藤敏之ローカライズDに本作の魅力と収録時のエピソードを訊いた
陽気に歌うシーンではなく、人種差別主義者に無理矢理スペイン語の歌を歌わされる屈辱のシーン。

松本私はクレーンゲームのシーンが好きですね。

――エピソード1のガソリンスタンドの売店ですか?

松本はい。最初にやったときは取れるまで何回も遊んでしまって、ショーンも「もう1回やればいける」って煽るものだからずっとやっていた思い出があります。

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浜田でも、なかなか取れないんですよね(笑)。

佐藤すごくお金かかるし(笑)。

松本そう! そうなるとキャンプ用品を盗むしかないかな……みたいになってしまって(笑)。

 あとは、これもエピソード1なんですけど、ダニエルとショーンがモーテルに泊まったときに、お父さんがいたころのクリスマスの動画をスマホで見るじゃないですか。ショーンがあの動画を見ているシーンは、何回やっても泣いてしまいます。

佐藤あそこは泣いちゃいますよね。

浜田めっちゃいいシーンなのに、プレイ動画とかだとみんなすぐスマホを投げ捨てちゃうんですよね(笑)。

松本けっこう長いシーンですからね(笑)。

加藤最後のお父さんのセリフが泣けるポイントじゃないですか? ぜひそこまで見てほしいですよね。

佐藤私が好きなシーンは本当に最後の場面なんですけど、ショーンがあまりいいお兄ちゃんではなかったときに言う「散々しくじってごめんな… 俺なりに頑張った」ってセリフがあって、それがもう、うわーってなっちゃいます。あのセリフがたまらなく好きですね。

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浜田僕は特定のシーンではないんですけど、ロードムービー的なゲームなので、ショーンとダニエルは本当にいろいろな人、いろいろな生きかたと出会うんですよね。社会規範や倫理観を大事にしている人もいれば、そこに縛られずに生きている人もいて。プレイしているうちに、どれが正しい生きかたなのか、正しい生きかたって本当にあるのか、などと考えるようになるんですよね。

 僕自身、社会規範などに従順に、集団からはみ出さないように生きてきた人間なので、本当にいろいろなキャラクターの言葉に考えさせられました。

【ネタバレ注意】『ライフ イズ ストレンジ2』Switch版発売記念インタビュー。全セリフを聞いた人はいないかも!? 声優3人と加藤敏之ローカライズDに本作の魅力と収録時のエピソードを訊いた
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エステバン(声:川端快彰さん)
ショーンとダニエルの父親。プエルト・ロボス出身。シアトルに移住してからは、自動車技師の資格をとり、長年の夢であったガレージを経営している。優しく、息子たちをよく理解し、ユーモアも忘れない、雨の日でも人々を明るくできるような人物。
ブロディ(声:古賀明さん)
その日暮らしの旅をしながら記事を書いているジャーナリスト。前向きで心が広く、困っている人を放ってはおけない性格。ショーンに旅の心構えを教える。
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スティーブン(声:前田弘喜さん)
兄弟の祖父。地域の消防署長を数十年勤めあげて退職。日曜大工や工作を好み、最近は鉄道模型に熱を入れている。
クレア(声:宮沢きよこさん)
兄弟の祖母。手際よく家事をこなし、面倒見がいいが、同時に干渉しすぎる部分も。
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メリル(声:松田健一郎さん)
カリフォルニア州の違法農園の管理者。労働者もわけありのため、厳しい態度で接する。
フィン(声:木島隆一さん)
社会に属さず、仲間とともに勝手気ままに旅をしている放浪者。飄々とした態度でいつも軽口をたたいているが、誰とでも上手くやっていけるような性格で、仲間からは頼りにされている。

前作『ライフ イズ ストレンジ』の究極の選択……どちらを選んだ?

――では、一旦『ライフ イズ ストレンジ 2』の話題から外れますが、皆さんはふだんゲームはプレイされるのですか?

松本私はゲームが好きですね。『侍道』シリーズみたいなアクションものが好きですし、『どうぶつの森』のようなかわいいゲームも好きです。ひとりでコツコツ遊ぶのが好きで、けっこうやり込んじゃいますね。

佐藤私もアクション系のゲームが好きで、最近だと『ELDEN RING』を500時間くらい遊んでいます(笑)。いわゆる死にゲーをよく遊びますけど、『どうぶつの森』みたいなほのぼのしたゲームも好きです。

浜田僕は雑食で、RPGでもアクションでも、ストラテジーも恋愛ゲームも、気になったものは何でも遊びます。『ライフ イズ ストレンジ ビフォア ザ ストーム』でもTRPGを遊ぶシーンがありましたけど、最近はTRPGとかマーダーミステリーとか、人と話しながら遊ぶゲームにハマっています。

――皆さん、ゲームはけっこうプレイされるんですね。であれば、『ライフ イズ ストレンジ』シリーズも遊ばれていると思うのですが、同シリーズの感想も聞かせてください。

松本じつは『ライフ イズ ストレンジ 2』のお話をいただく前から『ライフ イズ ストレンジ』はプレイしていて、すごくおもしろかったので「続編が出るなら絶対に出演したい!」と思っていたんです。

――なんと(笑)。

松本『ライフ イズ ストレンジ 2』のお話をいただいたときはタイトルが伏せられていて、キャラクター設定を見たときに「なんて『ライフ イズ ストレンジ』に似ているんだろう」と思っていたんです(笑)。

加藤当時はコードネームをお伝えして、お声掛けしていたんですよね。

松本そうなんです。現場で「正式タイトルは『ライフ イズ ストレンジ 2』です」と言われたときはもう、「ドッヒャー!」って。目が飛び出るくらいうれしかったです。

――現場で! すごいサプライズですね。そんな松本さんは前作の最後の選択肢ではどちらの決断を下しましたか?

松本最初に選んだのは町を残すほうでした。友を捨てましたね(笑)。

 でもやっぱり罪悪感が生まれて、もう一度遊んで別の選択を……みたいな感じでした。『ライフ イズ ストレンジ』シリーズって各エピソードの最後に、ほかのプレイヤーはどの選択を選んだかの割合が表示されるじゃないですか。あれで自分が少数派だったりすると、「いけないことをしちゃったのかな……」みたいに感じてしまいます。

――たしかに、少数派だったとき、いろいろ考えますよね……。佐藤さんも前作はプレイされましたか?

佐藤発売からしばらく経った後に、まわりからすごくおもしろいよとプッシュされたのをきっかけに遊びました。私は迷わず友を救ったんですけど。

浜田悪い言いかたをすると町の人々を見捨てたんですね(笑)。

佐藤友と町を天秤にかけたときに、「友だ!」ってなって(笑)。

松本究極の二択ですもんね。

佐藤『ライフ イズ ストレンジ』シリーズは本当に選択が難しいですよね。『ライフ イズ ストレンジ 2』も、「う~ん……」と悩みながらプレイしていました。「ショーンに重荷は背負わせたくない。でもどうしよう」みたいな葛藤で、最後は本当に泣きながら選択していましたね。

――どのエンディングを見ても、これが本当の正解だ、と言い切れないのがまた難しいところですよね。

佐藤でも、私が思い描いていたショーンとダニエルの終着点にはたどり着けたような気がしました。1回1回はすごく悩みましたけど、自分の選んだエンディングは満足できましたね。

――浜田さんはいかがですか?

浜田僕も『ライフ イズ ストレンジ』と『ビフォア ザ ストーム』はお仕事のお話をいただく前からプレイしていて、収録前に『ライフ イズ ストレンジ 2』だということに気が付いて、「うわっ!」ってなりました。前作のクロエを事務所の先輩のLynnさんが演じられていて、吹き替えの評判もすごくよかったので、大きなプレッシャーはありましたけど。

松本前作の最後はどちらを選んだんですか?

浜田僕は町を救う選択をしました。もともと能力がなければクロエは亡くなっていたじゃないですか? その運命を変えて町の人たちを犠牲にしてしまうのは、ひとりで背負うにはあまりにも重いと思ったんです。

――なるほど……。ちなみに、ご自身が出演され、いろいろ知っている状態の『ライフ イズ ストレンジ 2』はプレイされましたか?

浜田主人公ゆえの悲劇なんですが、収録ですべてのストーリーラインを知っちゃって、完全初見プレイが楽しめないので、まだ自分でプレイはしていないんですよ。でも、プレイ動画や配信などはチェックしています。

 『ライフ イズ ストレンジ 2』は、よりいっそう選択の積み重ねがあるので、本当にやり直しが効かないんですよね。「過去は変えられない」みたいな1作目と対極にあるセリフも出てきたりして、そういう部分もおもしろいと思います。

松本私はプレイしました。先ほども言いましたけれど自分が妹なので、ダニエルを演じているときも下の子が起こす行動にすごく共感できる部分があったんです。なのでダニエルの行動原理がすごく腑に落ちてお芝居ができたんですけど、プレイするときはショーンの立場になるじゃないですか。そうしたらまた目線が変わって、ダニエルはこんな無茶なことをしていたのか……「お兄ちゃん、ごめんなさい!」って気分になりました(笑)。収録とは違う目線で楽しめましたね。

加藤そこは松本さんならではの新鮮さですよね。

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『ライフ イズ ストレンジ』シリーズに登場した超能力が使えるなら

――本作はロードムービー的な内容ですが、皆さんはひとり旅には行くほうですか?

浜田行きますね。ひとりになって考える時間は大事だと思うので、環境を変えて自分を見つめ直すというのは、いいキッカケになりますよね。

佐藤国内と国外だったらどっちですか?

浜田英語が話せたら国外に行きたいですけど、喋れないので国内です(笑)。とりあえず箱根あたりで温泉にでも浸かりたい(笑)。

佐藤いいですね温泉。癒される。私もひとり旅行みたいなものは好きで、たまに行ったりします。それこそ箱根とか、ひとりでふらっと。リラックスして「ハ~」ってなっているあいだに帰ってきちゃうので、自分は見つめ直せないんですけど(笑)。

松本行ってみたい場所や見たいものはたくさんあるし、ひとりの時間は絶対にないとダメな人間なんですけど、私は根が寂しがり屋なんですよね(笑)。旅行先で楽しかった思いを共有できないのは、ちょっと寂しいなって思っちゃうんです。行きたいという気持ちはすごくあるんですけど、一歩が踏み出せないまま、ずっと家で台本をシュレッダーにかけています(笑)。

――(笑)。では、『ライフ イズ ストレンジ』シリーズに出てくる超能力、時間を撒き戻す力(『ライフ イズ ストレンジ』)、ものを動かすサイコキネシス(『ライフ イズ ストレンジ 2』)、他人の心をオーラとして感知できる力(『ライフ イズ ストレンジ トゥルー カラーズ』)、このどれかが使えるとしたらどの能力が欲しいですか?

松本これはすごく迷いますね……。巻き戻すってすごく便利だとは思うんですけど、「あのときもっと巻き戻していれば」みたいな後悔もしちゃうと思うんですよね。人の感情が見える力も気疲れしちゃいそうですし。

 そうなるとものを浮かせたり移動させたりする能力がいいかなって。ダニエルの力って、使える機会は多いと思うんですよね。事故現場で大きな障害物をどけるのにも使えるし。福祉系の仕事にも使えるじゃないですか。

佐藤すごい! 私、すごく浅く考えていました(笑)。私も断然、ダニエルですね。荷物が重いときや足がダルいときに「フワ~」って浮かせたいな、くらいにしか考えてなかったですけど(笑)。いまの話を聞いて、自分が浅く考えすぎていたなと。

 時間を巻き戻す力も魅力的ですけど、ちょっと代償が重すぎるんですよね……。

浜田僕はどの能力もいらないです。だって『ライフ イズ ストレンジ』シリーズで超能力を持った子って、みんな不幸になっているじゃないですか(笑)。でも強いてひとつ挙げるのであれば、ダニエルの力がいちばん実害がなくていいのかなと思います。

 ほかの能力は制御できたとしても、興味本位で使って傷ついてしまって、余計な負担を自分にかけてしまうなと思うので、ダニエルのがいちばんいいかなと。

松本本当にちょっとしたことでも巻き戻したいと思うことってあるじゃないですか。疲れたときによくやっちゃうんですけど、アイスを袋から出して、袋じゃなくてアイスのほうをゴミ箱に入れちゃったりとか。

一同 (爆笑)。

松本そういうときは戻したくなっちゃいますね(笑)。

浜田でもバタフライエフェクトがありますから、アイスを戻したことで何かたいへんなことが起きるかもしれないですよ?

松本ああ、それはいやだなあ。

――加藤さんは何がいいですか?

加藤僕もメチャクチャ浅く考えていて、巻き戻す能力を選ぶのが多数派だと思っていました(笑)。

――仕事でミスをしたときに時間を巻き戻せたら、と思うことは多いですよね。誤植をシレッと直したり(笑)。

加藤収録もそうですね。コストやスケジュールの関係でやり直しが効かないこともありますので、もし巻き戻せたら後悔のない仕事ができるんじゃないかと(笑)。

浜田そういう意味で言うと、僕らもそう思うことはありますよね。ディレクターさんからオーケーは出たけど、いまいちな反応だったぞ、みたいなとき(笑)。

佐藤たしかに。そう考えるとすごく魅力的ですね(笑)。

松本欲しくなってきました(笑)。

――急に巻き戻す能力が優勢に(笑)。

【ネタバレ注意】『ライフ イズ ストレンジ2』Switch版発売記念インタビュー。全セリフを聞いた人はいないかも!? 声優3人と加藤敏之ローカライズDに本作の魅力と収録時のエピソードを訊いた

人生の分岐点となった決断は?

――『ライフ イズ ストレンジ 2』は前作と比べても、選択の積み重ねで物語が変化し、要所で大きな決断も迫られます。ご自身のこれまでを振り返ったときに、あそこが人生の分岐点のひとつだったなと思うことを教えてください。

浜田僕は声優になろうと思ったことですかね。中学生のころに親が離婚し、学校ではいじめを受けて、家にも学校にも自分の居場所がないと思ってしまって、そのときに起こっている問題を全部シャットアウトしたんです。代わりに、明るい未来を夢見ようとしたんですね。いまは“前向きな現実逃避”と言っているんですけど、起こっている問題は無視して、先のことだけを考えるようにしたんです。

 そして当時、心の支えになっていたのがゲームやアニメだったので、声優になることを夢見て、その道に進むことにしました。そのときの思いを行動に起こしていなければ、いまここでインタビューも受けていないですし、ショーンとも出会えていなかったと思います。

――“前向きな現実逃避”という考えかたは新しいですね。参考になる人も多いと思います。

佐藤私も声優になるかどうかが分岐点だったかなと思います。声優の専門学校に通っていたときに、いろいろな事務所さんが学内オーディションを実施してくださったんですけど、私は一社しか受けなかったんです。そこに特待生以上で取っていただけたら花開くかもしれないので、がんばってみようと。その結果としていまここにいるので、そこが大きな選択だったのかなと思っています。

――特待生でなければ声優の道には見切りをつけていたかもしれなかったと?

加藤覚悟がすごいですね。

佐藤目指すのはタダじゃないですか。だから、ズルズルいっちゃう自分が怖いなと思ったんです。その狭き門を突破できないようなら通用しないかもしれない、と思って。そこで集中してがんばったおかげでいまの私がいるのかもしれないな、と思います。

松本私もおふたりと同じで声優という職業を選んだときのことで言うと、高校を卒業した後は声優になると決めていたんですけど、最初は芸術大学の受験を考えていたんです。どんな学校でも声優を目指すんだと決めていて、高校を卒業したらお芝居だけをやりたいと思っていたんです。

 でも受験の直前に、母親から大学に行っても四六時中お芝居ができるわけじゃないと言われて。それなら大学に行く意味はあまりないなと思って、急遽専門学校に行くことにしたんです。「進路を変えるなら絶対にプロになれ」ってお尻を叩かれて入学しました。

 それに加えて、「自分に必要なお金は自分で稼ぎなさい」という親だったんですが、「プロになるための勉強の時間が必要だからアルバイトはしたくない」と言ったらそれも認めてもらって。勇気を出して親に言ってよかったなと思いますし、すごく大きな選択だったなと思います。

――皆さん、いろいろな決断をされてきたんですね……。加藤さんの選択も伺いたいのですが、英語を活かした仕事はいろいろあると思うのですが、なぜゲーム業界に?

加藤英語の勉強のために、オーストラリアにワーキングホリデーで行ってボランティア活動やアルバイトなどをしていたんですけど、イギリスにもワーキングホリデーで行けることになったときに自分のキャリア形成に活かせることをしたいなと思ったんですよね。それなら現地就職だと思って、イギリス入国後に仕事を探し始めました。

 そんなとき、たまたまロックスター・リンカンという会社でローカライズ・テスターを募集しているのを見つけて応募したんです。未経験ではあったのですが、運よく合格することができまして。そこからゲーム業界への扉が開いたので、そこが分岐点だったような気がします。

選択と真剣に向き合うことで自分だけのプレイ体験が得られる作品

――最後に、日本語版が最初に販売されて3年越しのSwitch版リリースとなりますが、ひと言ずつメッセージをお願いします。

松本ゲームの中でいろいろな選択肢があって、「その選択によってどんな結果が待っているんだろう?」とドキドキすると思うんですけど、選択するのを怖がらないでほしいなと思います。ショーンとダニエルの兄弟に出会って、クリスに出会って、ほかのキャラクターたちに出会って、何が起こるのかをまだ知らない状態なのであれば、何も調べずに、ショーンとダニエルを信じてプレイしてくれたらうれしいです。

佐藤先ほど浜田さんもおっしゃっていましたけど、本当にいろいろな人の人生が見られるゲームだと思います。さまざまな価値観の人がいて、それをより身近に体験できると思います。ぜひいろんな人との出会いを楽しんで、最後まで兄弟を導いてくれたらうれしいなと思います。ぜひ楽しんでください。

浜田『ライフ イズ ストレンジ』シリーズの特徴である“ひとつひとつの選択”を大切にしてほしいと思います。外聞や世間体に囚われず、そのときに自分だったらどうするだろうと考えて、ひとつひとつを選んでいっていただければ、自分だけのプレイ体験が得られると思います。

加藤この作品は難しい問題を扱っていることもあって、正直なところ賛否両論のあるゲームだと思います。ただ、好きな人はものすごく好きになる、人生に記録したくなるような作品になると思います。ネットやSNSなどで『ライフ イズ ストレンジ 2』が好きな人たちの意見を見てもらって、これは自分に刺さりそうだな、と思ったらぜひプレイしてみてください。

 また、日本語版『ライフ イズ ストレンジ 2』がリリースされて3年が経ちますが、その間にBLM(ブラック・ライヴズ・マター:人種差別への抗議運動)の活動がニュースに取り上げられたり、そういったことがよりいっそう取り沙汰されるようになりました。そうした問題を踏まえてプレイすると、ゲームの描写がよりよくわかることもあると思います。ですので、プレイした方も改めて遊んでみると、感じることが変わってくるかもしれません。この機会にまた触ってみてください。

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