『シャニマス』川口莉奈さんインタビュー（斑鳩ルカ役）。「“私の隣りにはルカがいてくれているから大丈夫”という気持ちで、ステージに臨みました」

　2023年4月24日に5周年を迎える、アイドル育成＆ライブ対戦ゲーム『アイドルマスター シャイニーカラーズ』（以下、『シャニマス』）。それを記念して、斑鳩ルカ役の川口莉奈さんにインタビューを実施。ライバルアイドルとして活動していたルカが283プロに加入することになった心境や演じる際に意識していること、5thライブの思い出などを伺った。

――ルカ役が決まる前から、『アイマス』シリーズのことはご存じでしたか？

川口私はもともと『デレステ』（※）をすごくやり込んでいました。じつはノクチルのオーディションも受けていて、そのときダメだったこともあり、『シャニマス』は少し触ったりする程度でした。

――ちなみに『デレステ』で好きなアイドルはいますか？

川口メアリー・コクランちゃんとイヴ・サンタクロースちゃんですね。それから、神崎蘭子ちゃんもめちゃめちゃ好きです。

――なるほど。『デレステ』を始められたキッカケは何だったのですか？

川口音ゲーが好きだったこともあり、『デレステ』を遊び始めました。アイドルたちがすごくかわいくて、最初は蘭子ちゃんが好きになりました。ファッションだったり、雰囲気だったりが私の好きな感じだったので。そこからいろいろな子を見ているうちに、メアリーちゃんやイヴちゃんが好きになりました。

――そんな中、受けたルカのオーディションはいかがでしたか？

川口オーディションのときにマネージャーさんから、ルカに加えて、（緋田）美琴さんと（七草）にちかちゃんの資料も同時にいただいて、「川口はルカ役を受けて」と言われました。確かにファッションや見た目などは、ルカに似ているところがありましたが、声質だったり、いままで演じてきたキャラクターだったりは、ルカに通じるものがまったくなくて。これまではどちらかというと、にちかちゃんみたいな子が多くて、ルカは私の中で新しいタイプの引き出しを開くような感覚だったので、正直自信はなかったです。でも、私の中で「絶対に受かりたい」という気持ちがあったので、私の持てるすべての要素をぶつけていこうと思って、見た目を寄せたりしました。服装もかなり奇抜で、エクステも付けていましたし、ネイルやメイクもガンガン決めて、オーディション会場に行きました。

――手ごたえはいかがでしたか？

川口じつは、スタジオオーディションの質疑応答の際に音響監督さんから「歌やセリフのときに無理して声を出していませんか？」と質問を受けました。おそらく、私のふだんの声とは少し違う声の出しかたをしていたのですが、私の中では声を作ってはいたものの本当に無理はしていなかったので、「無理してないです」と答えました。それともうひとつ「身長は何センチですか？」と聞かれたときは「あっ、きた……」と思いましたね。というのも、ルカの身長は161センチなのですが、私は144センチしかなくて。『シャニマス』のライブなどを拝見させていただいた限り、皆さんのアイドルたちに対する解像度だったり、プロデューサーさんがライブを見たときの“ここにアイドルがいる”という感覚といいますか、世界観を大切にされていることは重々伝わっていたので、「ヤバい……」と思って。「大丈夫です。身長は低いですが、厚底を履き慣れているので、安心してください」と答えたのですが、どちらも必死過ぎるように見えたかなと終わった後は不安でした。

――そんなオーディションを経て、合格と聞いたときはどんなお気持ちでしたか？

川口頭が真っ白でしたね。じつは事務所の会議室に打ち合わせと呼ばれて行ったところ、美琴役の山根綺さんがいらっしゃって。「私たち怒られるのかな？」と話していたら、マネージャーさんとデスクさんが大きな紙袋を抱えながら入ってきて、その中からお花とともに台本を渡されて、サプライズで合格を聞かされたんです。山根さんは泣いていらっしゃって、私もいま思い返せば涙が出そうなくらい感動したのですが、そのときは本当に頭が真っ白になってしまって呆然としていたら、マネージャーさんから「泣かないかい！」とツッコまれました（笑）。でも、家に帰ってから号泣しました。

――2年前に山根さんにインタビューさせていただいたときにも、同じような話をされていましたが、川口さんもいっしょだったんですね。そして、ルカを演じていくことになるわけですが、演じるにあたって意識されている部分を教えていただけますか？

川口ルカは、感情の起伏が激しい女の子なのですが、「……」だったり、「──」だったり、息遣いやニュアンスで見せることが多いんですよ。そういう演技をするうえで、私たちが生活している際には声に出さないような感情もしっかりプロデューサーさんに伝わるようにしないといけないので、セリフとして声を入れるのですが、そこをいかに不自然にならないようにしつつ、ルカの感情も込められるように意識しています。そこが収録の度にぶつかる壁といいますか、難しいポイントでもありますね。

　それこそ、このあいだ、「……」が連続で続くシーンがあって、ひとつ前の息遣いとまったく同じというわけにはいかないので、計算して少し変化をつけるのですが、やり過ぎてわざとらしくならないよう塩梅は気を付けています。あと、ルカのことを決して、かわいそうな子と思ってほしいわけではないんです。プロデューサーの皆さん側から見ると、いまのルカの置かれている状況は「大丈夫？」と心配になったりすると思うのですが、そういう目だけで見てほしくなくて。そういった壁をルカがどうやって乗り越えていくのかというところを見てほしくて、演技をしているので、壁の奥までしっかり感じていただきたいです。

――そんなルカの魅力はどこにあると感じていますか？

川口いい言いかたをすると、すごく繊細な子なんですよね。まわりから見ると、扱いづらいと思われがちな部分があって、それはネガティブに捉えられてしまうところではあるのですが、私はそこが彼女の魅力だと思っています。それが彼女のパフォーマンスだったり、キャッチコピーにある“現代女子たちの『カミサマ』”というカリスマ性を醸し出す要素のひとつなのかなと。彼女自身が望む形ではなくても、そう見えるというのが、彼女のアイドルとしての魅力だと感じています。おそらく、これから283プロに加入して、ほかのアイドルたちやプロデューサーと関わることで、どんどん柔らかくなっていく部分だったりすると思います。ただ、やはり彼女は根が繊細なので、ほかの子がスッと受け止めるようなことも、彼女の中ではものすごく重く受け止めたりして、考え過ぎたり、ひとり歩きしてしまったりすることがありますが、私はそういう彼女の感受性の高さがものすごく魅力なのかなと思っています。

――なるほど。これまでのシナリオの中では、灯織に対してやさしい部分が出ているところもありましたね。

川口そうですね。彼女は面倒見もよくて、自分がいいと思った子に対しては、とても真摯に向き合えるんですよね。灯織を283プロに所属していると知らない、まっさらな目線で見たときにルカにとって灯織はすごくいい子に見えたし、自分と重ね合わせている部分もあったりして。そういう部分では根にあるやさしさと言いますか、面倒見のよさが出ていて、改めて283プロの風野灯織と斑鳩ルカとして仲よくなってほしいなと私は思っています。

――後輩から尊敬されている描写があったり、面倒見のよさみたいなところも今後どうなっていくのか楽しみですね。

川口ルカは20歳で、283プロの中でも年齢が上のポジションになるので、たとえば果穂ちゃんやあさひちゃんのような年齢の低い子たちと、どういう風に接しかたをしていくのか私も気になる部分ではあります。いつかお姉さん感を出してくれるといいなと思っています。

――ルカとしては、ソロ曲の『神様は死んだ、って』を歌われていますが、レコーディングはいかがでしたか？

川口じつは『神様は死んだ、って』を収録するときに、私のところにはルカについての情報があまりない状態だったので、想像しながらレコーディングを行いました。これは私の想像ですが、もしかするとバンダイナムコさんとしては演者の意見も汲み取ろうとしてくださっていたのかなと思っています。だからこそ、ルカが一体どういう気持ちで、どういう状況で歌っているのかということをめちゃくちゃ考えました。ただ、ひとつだけ言われたのが、彼女のファン子や若い子たちが思っているうっぷんだったり、不安に思っていることだったり、自分では表立って言えないようなネガティブな気持ちをスピーカーとして代弁するような気持ちで歌ってほしいと。ですので、私の気持ちを織り交ぜつつも、大衆の意見という部分を意識して歌いました。

――『神様は死んだ、って』は、“THE IDOLM@STER SHINY COLORS Xmas Party -Silent night-”（クリパ）の2日目にサプライズ出演されてのお披露目でしたが、ステージに立たれたときはどういう心境でしたか？

川口出演の決定を聞いたのが、開催まであまり日がなくて、私にとってもサプライズみたいな感じでした（笑）。正直にお話しすると、少し不安でした。というのも、クリパはバラエティーコーナーもあったり、ふだんのライブとも違って和気あいあいとした楽しい感じのイベントだと聞いたので、その空気を壊してしまわないかなと。このときのルカのサプライズ出演は、283プロのイベントに乱入するという形ではなく、あくまでべつの会場（ライブハウス）でルカがひとりステージに立っている、といった感じだと聞いていたんです。しっかりと明言されていたわけではないので、プロデューサーさんからすると「283プロのイベント楽しかった」と思っているところに、いきなりルカが登場して、その楽しい空気を壊されてしまったことで、ルカにヘイトが向いたり、ネガティブな感情にしてしまわないかと不安がありました。でも、いざステージに立ってみると、皆さんが温かく迎えてくださって。じつは、『神様は死んだ、って』が私にとって初めてのレコーディングで、ステージに立つのもクリパが人生で初めてだったのですが、私はステージにいたことを忘れてしまうんだなと、そのときに知りました。もちろん、ルカの激しいパフォーマンスの影響もあったとは思いますが、ステージ上のことはあんまり覚えていなくて。途中で「もっと振れ」という煽りをしていたのですが、まったく記憶になくて、アーカイブを見直すまで知らなかったので驚きました。本当に無意識だったので、「もっと声出せ」と煽ってなくてよかったとヒヤッとしました（笑）。

――当時はまだ観客の声出しは禁止でしたからね。

川口そうなんです。私は降ろしてくるタイプといいますが、ルカが隣りにいてくれたという感覚がすごくありましたね。皆さんのウルトラオレンジのサイリウムも聖なる夜という雰囲気を醸し出していて、本当にすごいイベントでした。

――終わった直後には楽曲の配信も開始されて、かなり話題になっていましたね。

川口すごくありがたかったです。でも、これがルカの力なんだなと思いました。ルカは人を惹きつけるというか、彼女がそう思っていなくても、ルカの闇の部分や負の感情に魅力を感じる人が多いんだなと。私のSNSにいただいた皆さんの声も、私がいるからではなく、私はあくまでルカを演じている役者なので、ルカへの声として……目線で言うと、私はルカの守護霊みたいな感じで見ていて、このメッセージも私ではなくルカに来ているものと捉えていて、ルカってすごいなと思いました。

――5thライブでも2日目にサプライズで出演されましたが、いかがでしたか？

川口5thライブは出番の前に、ルカの283プロの加入を発表するPVが流れた後に奈落から登場して、『Dye the sky.』を歌うという演出になっていました。ルカのコミュの中で、「ぎゅっとすれば大丈夫」という言葉があって、これはルカのお母さんである八雲なみの行動をルカがずっと覚えていて、それの真似をするというシーンなのですが、私も手をぎゅっと握りしめながら、「私の隣りにはルカがいてくれているから大丈夫」という気持ちで、ステージに臨みました。

――2曲目の『Multicolored Sky』では、ほかの皆さんが客席に手を振ったりしている中、川口さんだけがそうしていなかったのが印象的でした。

川口ルカが283プロに加入することになる経緯も複雑なものなので、まだ自分がこの場にいることを受け入れきれていないというか、そういう心情を抱えながらもプロのアイドルとして仕事はちゃんとするものの、プロデューサーさんの目を見たり、手を振ったりはしないのかなと。やっぱり自分の置かれている状況に困惑していて、まだそういう気持ちにはなれないと思ったので、そういう感情を体現できるように、川口莉奈になり過ぎないようにMCも含めて意識しました。

――なるほど。やはりそういう意図だったのですね。

川口前を向けるかなということをすごく考えていました。たとえば『Multicolored Sky』はすごく前向きな歌詞で、みんなで明るく歌う楽曲ですが、「ルカはこの歌詞をどう捉えるんだろう？」と考えた結果、振り付けとしてみんなで上を見上げるようなところでも、上を見上げられないじゃないかなと思ったので、あえて下を向かせていただいたりもしましたね。

――『Dye the sky.』で川口さんが登場したときは、すごく神秘的な感じがしました。

川口綺麗に演出していただいて、ありがたいなと思っています。

――ほかのキャストさんと同じ白いワンピースでのパフォーマンスでしたが、心境はいかがでしたか？

川口これまでに登場しているルカの衣装はすべて黒なんですよね。イメージカラーも黒に近い色で、そんな彼女が白を着ることによって、いままでの真っ黒な自分を一度まっさらにするという……たぶん半強制ではあったと思うんですけど。彼女がこれを着たいと言って着たわけではなく、283プロに入るという節目を迎えたことによって、新しい人たちと新しいものを作っていく。そして、新しいものを変わるために、一度、白くなって改めて自分の色を模索していこうみたいな……。ルカもあのワンピースを着るというのを自分で決めて着たと思うので、彼女のプロとしての意思というのを感じました。ただ、病んでいるだけの弱い子じゃないんだなと、彼女の芯の強さも感じました。

――283プロに合流すると聞いたときのお気持ちも伺えますか？

川口ルカのことを守っていくぞと思いました。いままでシーズのふたりや灯織ちゃんとのやり取りなどで、「どうしてこんなにこの子は報われないんだろう」と思うくらいに、ルカは悲しい状況に置かれ続けてきたので。彼女にとっては社長も含めて、因縁の事務所である283プロに自分が所属して、プロデュースされるとなったときに、やっぱりひと筋縄ではいかず、紆余曲折あると思いますが、そういうときでも、私だけがルカを守ってあげたいと思いました。

　そういう意味ではある種、マネージャーの感覚に近いのかもしれないです。作中にもルカのマネージャーが登場していますが、彼女に多く言葉を掛けるというよりは、とにかく彼女をそばにいて見守るというスタンスなので、私もルカの考えを尊重して、どういう方向に進んだとしても、絶対に私だけはルカを守っていこうと思っています。

――ちなみに川口さんの中でルカが283プロに加入すると思っていましたか？

川口7割は入らない、3割は入るくらいの感覚でした。そもそもルカに関しては、私だけ特別にいろいろ情報をいただいているというわけではなく、本当に皆さんと同じように新しい収録があるたびに、彼女のことを知っているという状況なんです。

　だからこそ、リアルに心情を追えるので、役者としてはありがたいことではあるのですが、私もわりと直前にプロデュースシナリオの台本をいただいて知って驚きました。入らないんじゃないかなと思っていたからこそ、入ることになって「シーズに合流するの？　でも、シーズはふたりで始まっているし」と私も困惑した部分はありました。

――高山さんに最初から合流するつもりだったのかをお聞きしたところ、どちらの可能性も考えていたということでした。

川口いままで本当にルカは283プロではないということに徹底されていたので、たとえば、わだかまりがとけることがあったとしても、彼女も事務所に入っていてアイドルとしての活動歴も長いので、283プロに入ることはないだろうと思っていたので、ビックリしましたね。でも、そのあたりは公開中の“ジ・エピソード”で描かれているので、まだ読んでいない人はチェックしてみてください。

――ルカの加入が発表された瞬間の会場の反応はいかがでしたか？

川口私は通しリハーサルのときに加入のPVを拝見して、本番ではないのに涙が出そうで、堪えるのに必死でした。うれしいんですけど、それが純度100%の喜びなのかと聞かれると、決してそうではなくて。ここからルカはまた新たな一歩を踏み出さないといけないので、私も不安と喜びの両方の気持ちがありつつ、幸せになってくれたらいいなという想いで、それを支えていこうと思いました。

――すごい歓声が上がっていましたね。

川口そうですね。でも、どんな感想があってもいいと私は思っていて。たとえば、にちかちゃんのことをめちゃくちゃ大好きでプロデュースしている方にとっては、ルカは敵なんですよね。灯織ちゃんのことをすごく一生懸命にプロデュースしている方にとっては、「えっ、そんなことで」とルカのことを怪訝に思う方もいらっしゃると思うんですけど、私はいまルカが100%受け入れられている状況だとは思っていなくて。ただ、その状況を加味したうえで、これから多くの人に283プロの斑鳩ルカとして愛していただけるように、ここは私のがんばりどころでもあるなという気が引き締まる想いです。

――ちなみにルカ以外で好きなアイドルや楽曲はありますか？

川口やっぱり同じ時期に追加されたシーズはとても好きです。私のパーソナルな部分でK-POPが好きなので、ああいう音楽性が自分にハマるというか。あと、アンティーカもめちゃくちゃ好きで私が『シャニマス』を初めてプレイしたときに目がいったのが、幽谷霧子ちゃんでした。私は儚げな女の子と言いますか、「大丈夫？」みたいなこっちが不安になるような女の子が好きなので。

　だから、アイドルで言うと幽谷霧子ちゃん、楽曲で言うとシーズなのですが、知っていけば知っていくほど、どのアイドルもよくて選べなくなってしまいますね。あと、演者さんたちのアイドルへの向き合いかたを今回見せていただいたので、誰が好きとかではなく、みんな好きになりました。そういう意味では、そんな仲間たちの中にルカが入れるのはうれしいなと思いました。

――最後にプロデューサーの皆さんにメッセージをお願いします。

川口プロデューサーさんへのメッセージですか……。正直にお話しすると、いまの段階では自分が「プロデューサーさん」と言うのは違和感があって。だから、5thライブのときもプロデューサーさんという単語をあえて1度も発していないんです。

　ちゃんと私としても斑鳩ルカとしても素直な気持ちでプロデューサーのことをプロデューサーと呼べる日が来るといいなと思いますし、そうなってくれるように私もルカの魅力を皆さんにお伝えできるように役者として努力していき続けたいと思っているので、ぜひ温かい目で見守ってもらえるとうれしいです。