スクウェア・エニックスの人気RPG『ファイナルファンタジー』シリーズから、ドットのグラフィックやサウンドを新たに作り直し、“究極の2Dリマスター”版としてシリーズ初期の作品を蘇らせる『ファイナルファンタジー ピクセルリマスター』シリーズ(以下、『FF ピクセルリマスター』)。

 すでに配信中のスマホ、PC(Steam)向けに加え、2023年4月20日には『FF ピクセルリマスター』のNintendo Switch版(以下、Switch)、プレイステーション4版(以下、PS4)が発売される。SwitchとPS4の家庭用ゲーム機版『FF ピクセルリマスター』には、ドット風のピクセルフォントへの切り替え機能や、ゲームブースト機能などに加えて、さらに細かな調整が加えられているのが特徴だ。

 本記事では、ゲームブースト機能などの追加機能を使用して『FFII』と『FFV』のPS4版のプレイレビューをお届けする。なお、より詳しい変更点(これでも一部とのこと)は、下記インタビュー記事をチェックしてほしい。

『FFピクセルリマスター』の基本機能

 『FF』~『FFVI』までのナンバリングタイトルをリマスターした『FF ピクセルリマスター』には、基本機能として“オート倍速バトル”が存在し、うまく扱えばテンポよくバトルを進められる。

 また、ダッシュ移動や細かな操作回りの最適化もされており、オリジナル版の雰囲気を再現しつつも、『FF ピクセルリマスター』ならではの遊びやすさを実現。各タイトル細かな変更点があるが、概ねオリジナル版の魅力はそのままに『FF』6作品を遊べるのが、『FF ピクセルリマスター』だ。

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前回選んだコマンドを自動でくり返す+倍速でバトルが進むので、サクサク戦闘が進められる。

オリジナル版BGMを搭載

 『FF ピクセルリマスター』はオリジナル版の作曲を手掛けた、植松伸夫氏が全曲監修を務めたアレンジBGMを採用しているのが特徴。スマホ、PC版はアレンジ楽曲のみの採用となっていたが、Switch、PS4版にはオリジナル音源のBGMが追加されている。

 筆者はスマホ、PC版の際に全タイトルをクリアーまで遊んで、アレンジ楽曲もこれはこれでアリとファンながらに楽しんでいた。「そうそう、豪華にしたらこういう曲だよね」というものや、「こういう方向性なのかあ!」と驚く曲なども存在し、それらはプレイヤーそれぞれの感じかたによるだろうし、初めて聞く人にとってはとくに気にならない部分だと思う。

 今回のレビューに合わせてオリジナル音源で遊んでみたところ、やはりオリジナル版BGMもすごくいい。今回遊んだ『FFII』はファミリーコンピュータの音源ゆえに、ちょっとだけゲーム画面と合わない部分もあるが、全体的には豪華になったゲーム画面ともマッチしている。『FFV』はスーパーファミコン音源ゆえに、イメージとバッチリ。

 アレンジ版はアレンジ版でいいのだが、やはりオリジナル音源はまるで実家に帰ってきたかのような安心感が味わえるのが魅力。ゲーム中、メニュー画面のコンフィグからいつでもシームレスに切り替えられるので、気分で切り換えながら楽しむのもアリだろう。

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ドット風のピクセルフォント

 追加要素のピクセルフォントは、BGMの切り換えと同じくコンフィグ画面から、ドット風のピクセルフォントを選択できるようになった。フォント設定をクラシックに変更すると、文字がドット風のピクセルフォントになる。なお、ゲーム中のコンフィグ画面から切り換えられるが、若干のロード時間を挟む。

 スマホ、PC版から採用されていたフォントは綺麗で見やすいフォントで、筆者としてはとくに気にしていなかった。が、今回追加されたピクセルフォントを遊んでみると、これはたしかにイイ。

 文字がドット風になったことにより、ゲーム全体がドット調になり、より統一感のあるゲーム画面で遊べるようになった印象だ。ただ、文字の視認性や読みやすさといった部分は、デフォルトのフォントのほうが優れているかも(あくまで誤差くらいだと思うが)。とはいえこれも好みの問題だろう。

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“のばら”もドットフォントに。
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記号なども使える。
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漢字もたんまり使用可能。そのアピールのためにバッツを“刃亜津”にしてみたり。

ゲームブースト機能が便利!

 さらなる新要素として、ゲームの手助けをしてくれるゲームブースト機能が追加された。まず敵のエンカウントをオン/オフで切り換えられる。「あ~ここ、エンカウント面倒で戦いたくないなあ」なんて場面ではオフにしてしまえば、絶対に敵とエンカウントせずマップを移動できるのが超快適。

 また、取得経験値やギルなどを、0倍~4倍のあいだで細かく倍率設定を調整することが可能。4倍にしちゃえばガンガンレベルアップするので、冒険がサクサク進められる。ギルもたんまりもらえるので、装備や魔法の購入に困ることはないだろう。

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 ゲームごとの要素にも対応しており、『FFII』は経験値レベルアップ制ではないので、武器熟練度、魔法熟練度の上がりやすさを変更できる。また能力値アップも4倍などに設定でき、パラメーター上昇時に一気に強くなれるため、育成がたいへんな『FFII』をスムーズに進められる。

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能力値上昇で一気に魔力などが+4などされ、超カンタンに育成できる。

 『FFV』ではアビリティポイントの倍率を変えられるため、超高速でジョブレベルがアップ。もともとアビリティポイントは取得数がかなり少なかったので、サクサクとジョブマスターになれそうだ。

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 もちろん、このブースト機能を使いすぎるとゲームそのものの楽しさは、やはり損なわれてしまう。ボスはただ攻撃しているだけでも倒せてしまうし、戦略性もほとんどない。たとえば『FFII』のストーリーだけ知りたい、『FFV』は遊んだことがないけれども雰囲気だけ知っておきたい。そういったプレイスタイルでもいい人たちには、うってつけの要素だ。

 また、レベル上げやジョブレベル上げだけは短時間で済ませたい、という人にも使えるだろう。倍率は細かく変更できるので、ちょっと有利な状況にしたければ経験値2倍などで進めるというのも手。このあたりはプレイヤーのさじ加減で調整できる。

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ウイングラプター戦までにレベルが上がりすぎて、翼を閉じるギミックがないまま撃破。
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セイレーンもギミックを見ずに撃破。おまけにアビリティポイント大量。ちょっとチートじみているので、プレイヤーの判断が重要になるだろう。

ほかにも細かいところがブラッシュアップ

 大きな追加・変更点はこのあたりで、ほかにもさまざまな調整点が存在。たとえば『FFII』の装備には、隠しステータスだった魔法干渉値が表示されるようになった。魔法干渉値が高いほど魔法の効果が下がってしまう要素で、それがゲーム内からでも視認できるようになったのはありがたいところ。

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 ほかにも『FFV』で言えば、メニュー画面の魔法リストに魔法レベルが追加されたり(オリジナル版にあった要素)、ジョブリストにジョブ名が表示されるなど細かく仕様が変わっている。とくにジョブ名は、たしかにあったほうが初心者プレイヤーには選びやすそうに見えた。

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 ほかにも開発陣こだわりの変更点が下記記事で一部語られているので、ぜひチェックしてみてほしい。

 ちなみにBGMやゲームブースト機能は大きな要素だが、スマホ、PC版を買った人がもう一度購入して遊び直すほどのものではないと感じた。また、スマホ、PC版にも今回の要素を追加する検討はしているそうなので、あせって買い直す必要はないかも(検討している理由も、上記記事で語られている)。

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モンスター図鑑に、バトル機能が追加されている。簡易コロシアム的な要素で、いつでも敵とバトル可能だ。
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 これから『FF ピクセルリマスター』を遊ぶ人には、今回のSwitch版、PS4版がもってこい。とくにゲームブースト機能はサクッと『FF』6作品をクリアーしたい人には、かなり便利な要素。もう一度遊び直してみたい人や、初めて『FF』初期6作品に触れる人は、ぜひ購入してみてほしい。