みずから歩くことで領地を広げ、武将を集め、国を富ます……。GPSにより、『信長の野望』ならではの“遊び”をリアルに体験できる位置情報ゲーム『信長の野望 出陣』が発表され、話題になっている。領地の拡大を楽しみつつ、健康と教養も同時に身につくという期待の一作に込めた思いを、コーエーテクモゲームスの開発陣に直撃インタビュー!

 長年にわたり『信長の野望』シリーズを開発してきた小笠原賢一氏と、位置情報ゲームとの融合を模索した菊地啓介氏に、同作の特徴的なポイントをたっぷり語っていただいた。

小笠原賢一(おがさわら けんいち)

コーエーテクモゲームス 常務執行役員 プロデューサー

菊地啓介(きくち けいすけ)

コーエーテクモゲームス 執行役員 midasブランド長 開発プロデューサー

『信長の野望 出陣』とは?

――『信長の野望 出陣』とはどういったゲームなのか、詳細のご説明をお願いします。

菊地本作はスマートフォン端末のGPSを使う位置情報ゲームで、“スマホ越しに広がる戦国世界”を体験できる点が特徴的なタイトルです。従来作では画面の中だけで展開していた戦国世界が実際のマップとリンクすることで、これまでにない新鮮なゲームプレイを楽しんでいただけるようになっています。

 もともと『信長の野望』シリーズは、さまざまな行動を通して国力を高めて、領地を広げていくことが楽しいゲームですが、本作は内政から領民との交流、武将の登用・強化、合戦まで、すべての要素が“歩く”ことに起因するシステムになっているので、そうした点に注目していただけますと幸いです。

――位置情報ゲームとして、本作を開発されることになった経緯を教えてください。

菊地今回の企画が動き出す前から、社内でGPSを使った歴史ゲームのアイデアは出ていました。私自身が新たなアプリを開発する“midas”ブランドに所属し、会社の経営方針の“成長ジャンルへの挑戦。新たな技術を楽しさにつなげて、新しいエンタメを創造する”に沿って、「コーエーテクモにしか生み出せない歴史×位置情報ゲームを作り出そう」と本格的に動き出すことになりました。

 企画を進めれば進めるほど「歴史を扱ったコンテンツと位置情報ゲームは親和性が高い」と感じました。その際、せっかく『信長の野望』のIP(知的財産)が使えるのであれば、スピンオフではなく、がっつり本編に絡んだタイトルにしたいと思い、長年にわたって同シリーズを手掛けてきた小笠原と相談して。より満足感のあるタイトルに仕上げるために“シブサワ・コウ”ブランドと協業する形で、開発に踏み切ることになりました。

『信長の野望 出陣』インタビュー。スマホを通してリアルな“戦国体験”が楽しめる! シリーズ初の位置情報ゲームに込めたこだわりを開発陣に直撃
『信長の野望 出陣』インタビュー。スマホを通してリアルな“戦国体験”が楽しめる! シリーズ初の位置情報ゲームに込めたこだわりを開発陣に直撃

『信長の野望』の根本的な楽しさを“歩く”ことで体感

――具体的に、どういったゲームプレイが楽しめるのでしょう?

菊地ゲームを立ち上げるとマップが表示されますが、実際の何丁目というような区画に合わせて領地が細かく割り振られているので、まずは区画ごとに設けられた拠点まで、直接歩いて近付きます。そうして拠点を攻略すると、その区画を自分の領地にできるので、そうやってコツコツ領地を広げていくのが、本作の基本的な遊びかたになります。歩く過程では領民と接して資金や兵糧を増やしたり、武将と交流することで友好度を高めたりなど、実際に歩くことで、少しずつ国力が強くなっていく感覚を楽しんでいただける作品になっています。

――歩く動機づけがしっかりされていますね。

菊地とはいえ、ふだんの生活で歩ける範囲には限りがあるので、ある程度ゲームを進めていただくと、“遠征”も可能になります。こちらの機能を使えば、離れた区画に部隊を送って攻略したり、旅行で出かけた先で新しく領地を作り、そこから少しずつ領土を広げていく……といった遊びかたもできます。

『信長の野望 出陣』インタビュー。スマホを通してリアルな“戦国体験”が楽しめる! シリーズ初の位置情報ゲームに込めたこだわりを開発陣に直撃
『信長の野望 出陣』インタビュー。スマホを通してリアルな“戦国体験”が楽しめる! シリーズ初の位置情報ゲームに込めたこだわりを開発陣に直撃

――本作ならではの“新しい体験”について、詳しくお聞きしたいです。

菊地先ほども触れましたが、今回は、武将集め、内政、領地拡大といった、『信長の野望』シリーズの根本的な楽しさがそのまま、“歩く”という行為に紐づいているのが最大の特徴になります。“歩いて目的地に行く”というのは、能動的にゲームに関与すること。自分が歩くことでゲームサイクルが回り、領地も少しずつ広がっていくのが楽しい……と思っていただける作りになっているので、シリーズをやり込んでこられた方ほど、そういった点に新鮮味を感じていただけるのではないでしょうか。

『信長の野望 出陣』インタビュー。スマホを通してリアルな“戦国体験”が楽しめる! シリーズ初の位置情報ゲームに込めたこだわりを開発陣に直撃
『信長の野望 出陣』インタビュー。スマホを通してリアルな“戦国体験”が楽しめる! シリーズ初の位置情報ゲームに込めたこだわりを開発陣に直撃

――実際に身体を動かすことで、みずから領地を拡大している感覚が味わえるわけですね。

菊地そして何より、ゲームプレイの舞台となるのが、自分たちがよく知っている“実在する地理・地形”であるところも、本作を説明するうえで欠かせない特徴のひとつです。実際に城郭や合戦の跡地まで足を運び、そこで本作を立ち上げていただくことで、より密接に歴史を感じることができます。こうした“日常と歴史とゲームの一体感”は、ほかのゲームでは味わえない要素ですし、プレイすることで歴史の知識が身につくだけでなく、健康にもなれる。そうした日常を豊かにできる点も、本作ならではの体験だと考えています。

『信長の野望 出陣』インタビュー。スマホを通してリアルな“戦国体験”が楽しめる! シリーズ初の位置情報ゲームに込めたこだわりを開発陣に直撃
執行役員 midasブランド長 開発プロデューサー・菊地啓介氏

小笠原自身の生活や行動とリンクしてゲームプレイが進んでいく感覚は、新鮮なものとして受け取ってもらえるのではないかと期待しています。お城や神社仏閣、武将にゆかりの地など、歴史好きの方なら、そういった場所にレジャーで出かけられることが多いと思うので、そうしたときに本作を立ち上げて、ゲームの中の世界と見比べながらプレイを楽しんでいただけますと幸いです。きっと、余暇を楽しく過ごす時間と『信長の野望』の世界がリンクして、さらなる喜びを感じていただけると思います。

――お出かけの際の、お供としても重宝されそうですね。

小笠原ちなみに、これまで手掛けてきたパッケージ版『信長の野望』は、全国を統一することが目的であり、自身にとって有利な形になるよう進行するプレイスタイルが一般的でした。ですが本作は、日常生活における通勤通学のルートであったり、散歩のコース、旅行で出かけた先など、好きな場所で遊んでいただいて、プレイヤーの皆様それぞれの生活・人生に深く寄り添う形での進行が可能になっています。このように自由なスタイルで、戦国時代というエンターテインメントを体験していただけるところも、『信長の野望 出陣』ならではの楽しみかたになります。

『信長の野望 出陣』インタビュー。スマホを通してリアルな“戦国体験”が楽しめる! シリーズ初の位置情報ゲームに込めたこだわりを開発陣に直撃
常務執行役員 プロデューサー・小笠原賢一氏

登場武将や本作ならではの要素を深掘り

――本作には“全国統一”以外の形で、何らかのゴールが設定されているのでしょうか?

菊地全国を統一してもクリアーにはならない形を想定しています。日本中をクルマで巡って、すべての区画を塗りつぶすなど、よほどのことをしない限り、全国統一には数年はかかる計算ですが、その先も継続して遊んでいただけるように、随時コンテンツを追加していく予定です。

――ほかのプレイヤーやCPUが操作する敵国に攻め込まれて、領地を奪われることもあるのでしょうか?

菊地基本的にひとりでプレイしていただいて、コツコツ領地を広げていく感覚を楽しんでもらうことが前提なので、領地が奪われることはありません。ちなみに、各区画には内政施設があり、領地を増やすたびにLv上限が上がり、施設が強化されていきます。足軽の訓練所を強化したい場合、その施設がある区画を集中的に攻めるといった進行の仕方も可能です。

『信長の野望 出陣』インタビュー。スマホを通してリアルな“戦国体験”が楽しめる! シリーズ初の位置情報ゲームに込めたこだわりを開発陣に直撃
『信長の野望 出陣』インタビュー。スマホを通してリアルな“戦国体験”が楽しめる! シリーズ初の位置情報ゲームに込めたこだわりを開発陣に直撃

――武将は何人くらい登場するのかも気になります。

菊地本編には2000人を超す武将が登場しますが、最初は数は絞って、1キャラ1キャラを大切にしながらイベントなどと併せて、少しずつ拡張する形で増やしていければと考えています。

――ローンチのタイミングでは、どこまで遊ぶことができるのでしょう?

菊地先ほどもお話した通り、“歩いて領地を広げる。武将を集めて育てる。内政で国を豊かにする”……といった、『信長の野望』における基本的な要素は、すべて遊んでいただけるようになっています。そのうえで、各武将に焦点を当てた期間限定イベントを開催したり、実際に歩いた歩数に応じて何らかのプラスが得られたりと、歩くことが楽しくなる要素も多数、盛り込む予定です。また、全国各地の名所を訪れると、そこでしか登用できないご当地武将が登場したり、プレイヤーどうしが協力して大規模な戦闘をくり広げたり、といった要素も実装していきたいですね。

『信長の野望 出陣』インタビュー。スマホを通してリアルな“戦国体験”が楽しめる! シリーズ初の位置情報ゲームに込めたこだわりを開発陣に直撃
『信長の野望 出陣』インタビュー。スマホを通してリアルな“戦国体験”が楽しめる! シリーズ初の位置情報ゲームに込めたこだわりを開発陣に直撃

――ユーザーからも「あの武将を追加して」や、「この城をゲーム内スポットに加えてほしい」といった声がたくさん届きそうですね。

小笠原そういったご意見をたくさんいただけるよう、大勢の方に楽しんでいただける形でリリースしたいと考えています。実際に調べてみたところ、有名・無名を問わず、日本中のいたるところに史跡があって、一説によると、その数は10万個を超えるそうでして……。ローンチ後の様子を見つつ、新しい要素は随時、アップデートで追加していきますので、こちらもご期待ください。

クローズドβテストも実施!

――現在、参加者を募集されているクローズドβテスト(CBT)について。実施される意図と、こちらのバージョンで体験できる内容を教えてください。

菊地詳しくは募集要項をご確認いただきたいのですが、ざっくりお話ししますと、当社としても位置情報ゲームの開発は初の試みですので、「その技術テストとゲームサイクルのテストをしっかりやりたい」というのがいちばんの理由です。それと、歩いて領地を広げていくゲームですので、ユーザーさんのお住まいや周辺の環境によって、プレイスタイルは大きく変わってくることが予想されます。テストプレイを通してどのような遊びかたをされるのかを確認し、そのデータをもとに改善点を洗い出し、サービスインまでに反映させることが目的です。コレクション要素や、ユーザーどうしで競う要素はプレイできませんが、歩いて領地を広げる、武将を集める、内政で国を強くするといった基本のゲームサイクルは触れますので、『信長の野望』のプリミティブな楽しさはしっかり体験していただけるのではないかと。

 現状では、iOSとAndroidで5000名様ずつ、計10000名のユーザーさんにご協力いただきたく考えております。ご参加いただいた皆様には、何らかのお礼もさせていただく予定です。実施期間は1週間で、CBT用に“川中島の戦い”を扱ったイベントも実施しますので、興味のある方はぜひ、ご参加いただけますと幸いです。

『信長の野望 出陣』インタビュー。スマホを通してリアルな“戦国体験”が楽しめる! シリーズ初の位置情報ゲームに込めたこだわりを開発陣に直撃
『信長の野望 出陣』インタビュー。スマホを通してリアルな“戦国体験”が楽しめる! シリーズ初の位置情報ゲームに込めたこだわりを開発陣に直撃

――住んでいる地域によって、ゲームプレイに有利不利はあるのでしょうか?

菊地たとえば北海道の場合、ひとつの区画だけで横浜市とほぼ同じ大きさになります。そうなると、隣りの区画の拠点に向かうだけでも一苦労となりますが、現状では、どういったスタイルで遊んでいただけるのかも未知数なので、まずはそこを把握したうえで、できる限り不平等にならないよう、調整させていただくつもりです。

小笠原とはいえ、土地ごとの違いを無視して均一化すると、それはそれで位置情報ゲームとしてのおもしろさを削ぐことになってしまいます。そういった問題点を浮き彫りにして、どのようにカバーするのがベストなのか確認するのも、今回のCBTの狙いになります。

『信長の野望 出陣』インタビュー。スマホを通してリアルな“戦国体験”が楽しめる! シリーズ初の位置情報ゲームに込めたこだわりを開発陣に直撃
『信長の野望 出陣』インタビュー。スマホを通してリアルな“戦国体験”が楽しめる! シリーズ初の位置情報ゲームに込めたこだわりを開発陣に直撃

――貴重なお話、ありがとうございます。それでは最後にファミ通読者に向けて、ひと言ずつメッセージをお願いします。

菊地『信長の野望』としてのおもしろさに加え、“歩く”という新しい体感も楽しめるゲームになっていますので、これまでシリーズ作をやり込んでこられた方でも十分満足していただける一作に仕上がっていると思います。また、シリーズ未プレイの方にとっても、非常に遊びやすい内容になっていますので、「いままで遊んだことはないけど、ずっと興味があった」という方はぜひ、この機会に『信長の野望』シリーズに触れていただけますと幸いです。それと本作は“日常を豊かにする”がキーワードで、歴史や地理など、日本の魅力を深掘りした要素も満載となっています。とにかく拡張性のあるコンテンツですので、さまざまな自治体や企業ともコラボする形で、いろいろ仕掛けていきたいですね。

小笠原位置情報ゲームという、『信長の野望』にとっては初の試みとなるタイトルですが、過去作で培われてきたさまざまな要素がアプリに最適な形でたっぷり詰め込まれています。長年、シリーズ作品を遊んできてくださった皆さんはもちろん、しばらく離れていた方でも、このタイミングでプレイしていただければ、『信長の野望』ってこんな感じで楽しかったよね……と再認識してもらえると思うので、ぜひいちど、手に取っていただけますとありがたいです。これまでの40年間、本シリーズを支えてきてくださった皆さんになら、絶対に満足していただける内容に仕上がっていますし、これからの未来に向けても、無限の魅力が凝縮された一作となっていますので、『信長の野望』の新たな門出を、ぜひいっしょに体験していただけますとうれしいです。

『信長の野望 出陣』インタビュー。スマホを通してリアルな“戦国体験”が楽しめる! シリーズ初の位置情報ゲームに込めたこだわりを開発陣に直撃