PLAIONより、プレイステーション5、Xbox Series X|S、PC用ソフト『THE CHANT(ザ・チャント)』の日本国内版が2023年3月30日に発売された。

 本作は人里離れた絶海の孤島を舞台に、カルト教団の儀式に巻き込まれた主人公が現実とは思えない不気味な相手と対峙する、アクションと謎解きが楽しめる王道のホラーアクションアドベンチャーとなっている。

 本記事ではそんな『THE CHANT(ザ・チャント)』のプレイレビューをお届けしていく。

『THE CHANT(ザ・チャント)』レビュー。カルト教団の陰謀に塩をぶっかけて立ち向かう!アクションバトルがしっかり楽しめるホラーアドベンチャー
※本記事はPLAIONの提供でお届けしています。
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信じられるのは自分だけ? 絶海の孤島でくり広げられるカルト教団の悪夢

 本作の主人公は、過去に深いトラウマを抱えている女性ジェス。ランニングの最中に川に浮かぶ水死体の幻覚を見たり、自分を非難する幻聴に苛まれていた彼女は、友人のキムに誘われてスピリチュアル・リトリートという活動に参加することを決める。

『THE CHANT(ザ・チャント)』レビュー。カルト教団の陰謀に塩をぶっかけて立ち向かう!アクションバトルがしっかり楽しめるホラーアドベンチャー
『THE CHANT(ザ・チャント)』レビュー。カルト教団の陰謀に塩をぶっかけて立ち向かう!アクションバトルがしっかり楽しめるホラーアドベンチャー

 この活動を行っているのが“プリズムの科学”という団体で、いわゆるカルト教団だ。服装は白一色、靴を履くのは禁止で土足で過ごすなど独自のルールを敷いており、序盤から怪しい雰囲気を隠そうともしない。

 この団体の長である導師タイラーもいかにもなうさん臭さがあるキャラで、参加したジェスを歓迎してスピリチュアルな旅へと誘う。参加者全員がアットホームな雰囲気でジェスを歓迎してくれるのだが、絶妙な居心地の悪さを感じるのが妙にリアルだ。

『THE CHANT(ザ・チャント)』レビュー。カルト教団の陰謀に塩をぶっかけて立ち向かう!アクションバトルがしっかり楽しめるホラーアドベンチャー

 参加者も中々クセが強く、タイラーの右腕として活動するハンナや実家との確執を抱えるソニー、薬を敵視する傾向にあるマヤと、それぞれ心に闇を抱えている。

 序盤に全員に挨拶をして回るシーンがあるのだが、ジェスが薬学業界で働いていると知った瞬間、動物実験を全否定して肯定を求めてきたマヤの姿を見て微妙な緊張感が奔った。会話はできるのに話が通じない絶妙な雰囲気や距離の詰めかたなど、気圧されるキャラの造形が素晴らしい。

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 参加者との交流を通してジェスは疑いを持ちつつも、その日の夜にはさっそく儀式が行われることに。“神聖なお茶で第三の目を開く”、“魂から流れ出る闇を感じる”とスピリチュアルな発言満載で儀式が始まるのだが、ここで異変が発生。

 周囲の景色が赤く染まり、巨大な花の怪物も現れてこの世とは思えない景色が広がる中、友人のキムが突然発狂して逃げ出して儀式は中途半端に終わってしまう。気絶してしまったジェスは目を覚ますと、どこまでが現実かわからないまま、行方の分からなくなってしまったキムを探して島を探索する……というのが冒頭の流れだ。

『THE CHANT(ザ・チャント)』レビュー。カルト教団の陰謀に塩をぶっかけて立ち向かう!アクションバトルがしっかり楽しめるホラーアドベンチャー
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 ストーリーではいくつかの目的のために島の各地を巡ることになるのだが、その道中では異形の怪物たちと遭遇することになる。シンプルにクリーチャーと戦闘するだけでなく、ジェスの精神を追い詰める仕掛けも多く盛り込まれているのが本作の特徴と言えるだろう。

 ステージにはいくつかプリズムの壁で覆われた“闇”のエリアがあるのだが、ここに入るとジェスに語り掛けるようにさまざまな声が聞こえてくる。キムやマヤなどリトリート参加者の怒りや悲しみ、そしてジェス自身のトラウマまで闇の中で呼び起こされ、じわじわと精神的ダメージを負わせてくるのだ。

 ジェスにしか見えない幻覚なのか、それとも現実に起こっていることなのか。半ば疑心暗鬼になりながら、ストーリーは進んでいく。

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ジェスが苦手な虫が集合体となり襲いかかることも。登場するクリーチャーも非常に不気味だ。

 儀式をきっかけにキムだけでなくほかの参加者たちの様子もおかしくなり、誰を頼っていいのか、信じられるか分からない孤独な戦いになるのもストーリーの見どころだ。脅威から逃れるためにやったジェスの行いが非難されることもあり、ただジェスが幻覚を見ているだけなのでは? と不安に駆られるようなシーンもあった。

 ジェス自身のトラウマ、儀式参加者の抱える闇など、さまざまな要因が折り重なって不安を増長するストーリーはホラーゲーム好きなら必見だ。ホラー一辺倒というわけではなく、アクション要素も強いので適度に怖くて、戦いも楽しみたいという人はとくにハマるだろう。

『THE CHANT(ザ・チャント)』レビュー。カルト教団の陰謀に塩をぶっかけて立ち向かう!アクションバトルがしっかり楽しめるホラーアドベンチャー
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限られたリソースを使ってクリーチャーに挑む緊張感のあるバトル

 続いて、アクション要素についても詳しく紹介していこう。本作では島の中を探索しながらストーリーを進めていくことになり、バトルだけでなくアイテム収集なども重要になってくる。

 戦う相手は肥大化した異形のカエルなどの動物をはじめ、奇妙な花、そして人型の敵も登場。いずれも気味の悪いデザインで、悪夢を見ているような世界観に浸れる。

『THE CHANT(ザ・チャント)』レビュー。カルト教団の陰謀に塩をぶっかけて立ち向かう!アクションバトルがしっかり楽しめるホラーアドベンチャー
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 こういったゲームだと銃を使って戦うイメージが強いが、本作の武器はかなり特殊でスピリチュアル全振りだ。使える武器はセージなどの植物を束にして燃やしたスティック、塩やオイルなど人間相手にはほぼ通用しないであろう物ばかり。

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 使う武器に反してアクション要素自体は強く、悪霊を払う精神攻撃ではなくガッツリ物理攻撃。プレイステーション5版の場合、R2で弱攻撃のコンボ、R2長押しで強攻撃をくり出し虫や花を殴りまくる。心地いい打撃感と手応えがあり、戦闘で退屈することはなかった。

 ちなみに武器はいずれも耐久度、使用回数が設定されており、何度が使用すると壊れてしまう。限られたリソースの中でどのように立ち回るかも攻略のポイントだ。すべての敵を倒すと武器不足に陥りがちなので、ときには逃げることも大切になるだろう。

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 使える武器は全部で6種類あり、近接攻撃が3つ、投擲武器が3つに分かれている。投擲は塩やオイル、火炎オイルを投げて敵にダメージを与えるか、その場に設置してトラップとして活用することも可能。

 使用時はR1を押すと前方に投擲して、塩であれば敵の強攻撃を妨害、オイルはスロー効果、火炎オイルは爆発とそれぞれ異なる効果を発揮してくれる。いちばん強力なのは火炎オイルだが入手頻度が少ないため、オイルや塩をぶっかけるのがメインの攻撃方法。

 近接武器と投擲武器を組み合わせたコンボも強力で、近接攻撃3回、塩を投げて怯ませる、もう一回近接攻撃、また塩とスピーディーに連鎖して相手を完封することもできた。武器が豊富に使える際には、優位に立ちやすい戦闘バランスだ。とくに塩は簡単に入手できるわりに使い勝手がいいので、最初から終盤まで愛用していた。

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火炎オイルはまとまっている敵を一撃で葬り去れる便利な武器だが、使える回数が少ない。

 投擲武器はあるものの基本は近接攻撃なので、敵の攻撃をかわすための回避アクションも欠かせない。ときには集団戦になるため四方から襲い掛かる攻撃をすべて回避する必要があるが、本作の回避は非常にやさしい設計なのでアクションが得意ではない人も安心だ。

 回避はスティックを傾けながらボタンを押すと横ステップ、バックステップなどができ、回避アクション中はダメージを受けない。また、回避ボタンを2回押すと緊急回避で大きく後ろに下がれるため、攻撃が来ると思ったら回避ボタンを押せばほぼ確実に逃げられる。

 緊急回避は尻もちをついて少し起き上がるのに時間はかかるが、それによって追撃を受けてダメージを受けることもほぼナシ。不意打ちやムリをして攻撃しない限り回避は簡単で、シビアなタイミング、いわゆるフレーム回避に必死になる必要はなかった。

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攻撃されると思ったら横や後ろに下がって回避。
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心配なときはボタン2回押しで後ろに大きく下がれるので、ほぼ確実に回避が可能。

 また、武器を使ったアクション以外に、魂ゲージ(いわゆるMP)を消費することで特殊な力も扱える。こちらはストーリー進行に応じてレパートリーが増えていき、最初は周辺の敵の動きを遅くするステイシスが発動可能。

 ストーリーが進むと敵を拘束する能力や、周辺に岩のとげを出す“結晶化”など攻撃特化の能力も使えるようになり、攻略の幅が広がっていく。武器と違っていつでも使えるわけではないが、強力な効果なのでピンチを切り抜けるのに一役買ってくれる。

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 以上の要素でバトルは進めていくのだが、回避が簡単と紹介した通り、戦闘自体の難易度はさほど高くない。そこに緊張感を持たせるのが、前述した武器の耐久度とアイテム収集の要素だ。

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道中のいたるところにアイテムがあるので、拾いつつ進んでいく。

 使用する武器や回復アイテムはすべて探索して入手する形式なのだが、アイテムを取り逃すと途端に敵との戦闘が難しくなる。武器はいずれもふたつの素材を使ってクラフトすることになるため、素材をひとつ取り逃すだけでも武器の数が減ってしまう。武器がないときは敵から逃げたり、できる限り消耗を抑えるためまとめて撃破を狙うなどリソース管理が重要になるのもおもしろい。

 しっかり探さないと見落としがちなアイテムもあり、運が悪いと武器数0になることも……。ふたつの素材を組み合わせる関係上、片方の素材だけずっと見つからず武器が作れない事態も茶飯事だ。

『THE CHANT(ザ・チャント)』レビュー。カルト教団の陰謀に塩をぶっかけて立ち向かう!アクションバトルがしっかり楽しめるホラーアドベンチャー
あるあるだと思うのだが、片方の素材だけどこを探しても見つからなかったりする。

 ちなみに、いちおう武器や魂ゲージがなくても対抗手段はあり、相手を前に突き出して怯ませるアクションが存在する。基本的には相手をどかして逃げるための行動だが、わずかながらにダメージを与えることも可能だ。

 筆者はプレイ時、武器がすべてなくなってしまい、仕方なしに相手を壁に押し込むフィジカルバトルをすることがあった。一体倒すだけでもそこそこ時間がかかるためオススメはしないが、武器を失っても詰むことはないのでご安心を。

 本作の難易度は改宗者(ストーリー)、指導者(均衡)、賢者(難しい)に分類されるので、リソース管理をせずガッツリ戦いを楽しみたい人は改宗者を選ぶとよさそうだ。指導者でもすべての敵を相手にしていると武器がなくなる絶妙なバランスなので、緊張感を楽しみたいなら指導者や賢者でプレイしよう。

>>>画像:[022.jpg]
画像解説:クリーチャー相手にひたすら手を突き出してどつくジェス。武器節約に意外と有効かも?

『THE CHANT(ザ・チャント)』レビュー。カルト教団の陰謀に塩をぶっかけて立ち向かう!アクションバトルがしっかり楽しめるホラーアドベンチャー
クリーチャー相手にひたすら手を突き出してどつくジェス。武器節約に意外と有効かも?

戦闘とホラーがバランスよく楽しめる良作!

 カルト教団の不気味さを体感できるストーリーや、手応えのあるバトルが味わえる『THE CHANT(ザ・チャント)』は、ステージデザインや世界観の作り込みも魅力的だった。

 人がいない鉱山集落、かつてべつの教団が使っていた施設など、狭いように見えて意外とロケーション豊富な島を探索する際は絶妙な恐ろしさを感じられる。つねに夜に移動することになるのはもちろん、カルトな行いの痕跡も各地に残っておりひたすら気味が悪い。

『THE CHANT(ザ・チャント)』レビュー。カルト教団の陰謀に塩をぶっかけて立ち向かう!アクションバトルがしっかり楽しめるホラーアドベンチャー
『THE CHANT(ザ・チャント)』レビュー。カルト教団の陰謀に塩をぶっかけて立ち向かう!アクションバトルがしっかり楽しめるホラーアドベンチャー

 武器などのアイテム以外にも、ステージ各所には文書や日記、映像記録などが残っておりこれを読むことでより深くストーリーを知ることができる。タイラーの目的や資金集めのやり口なども文書として残っているため、読めば読むほど「うわぁ……」という感想が出てくること間違いナシ。

 登場する敵について詳しく考察された“動物寓話集”など、プレイヤーとしても他人事ではない資料も残っているため、これらを読みながら進めるとよりストーリーを楽しめるだろう。

『THE CHANT(ザ・チャント)』レビュー。カルト教団の陰謀に塩をぶっかけて立ち向かう!アクションバトルがしっかり楽しめるホラーアドベンチャー
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 不死身の敵、何度倒しても蘇ってくる虫の集合体など、ホラーゲームのお約束な敵ももちろん登場。とくに倒しても蘇る虫の集合体はジェスのトラウマを抉る存在で、登場するといい意味で最悪な気分に浸れる。倒しても復活するため戦うだけ損で、しかも一定のエリアまでひたすら追いかけてくるという、プレイヤーにもトラウマを与えてきそうな敵のデザインは見事だ。

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 アイテム収集要素やエンディング分岐はあるが、一周プレイするにはほどよいボリュームになっているため、ホラーゲームが好きな人は触れてみてはいかがだろうか。

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『THE CHANT(ザ・チャント)』

  • プラットフォーム:プレイステーション5、Xbox Series X|S、PC
  • 発売日:2023年3月30日発売
  • 発売元:PLAION
  • 開発元:Brass Token Studio
  • 価格:各5478円[税込]
  • ジャンル:アクション・アドベンチャー
  • 対象年齢:CERO/15歳以上対象
  • 備考:Xbox Series X|S、PC版はダウンロード専売
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