クラウドファンディングは大成功、そして2022年大好評に終わった邪神ちゃんテンが“大邪神ちゃん展”として3月24日から開催されるなど、相変わらずさまざまなニュースに事欠かない『邪神ちゃんドロップキック』。

『邪神ちゃんドロップキック』は“ネットミームになる”ことを目指している。合成音声化の理由は栗田穣崇氏(ニコニコ代表)がなれるくらいなら邪神ちゃんもなれそうだったから
初開催となる公式公認の“邪神ちゃんオンリーイベント”には初回なのに41サークルが参加する。かなり熱量高めである。

 今度は何をしてくれるのかと思いきや、予想の斜め上……いや、最早どうして!? と聞きたくなるような展開に。そう、熱心な邪教徒(※)の皆さんはご存知だと思うが、合成音声ソフト“VOICEPEAK 邪神ちゃん”になって登場したのだ。

※邪教徒:『邪神ちゃんドロップキック』の熱心なファンのこと。

 これはさすがに理由を聞かねばなるまい。それに『邪神ちゃん』はどこへ向かっているのか。いや、これは毎回気になってはいるのだが……。おなじみの栁瀬プロデューサーにお話を聞かせていただいた。

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『邪神ちゃん』はどこへ向かうのか

 “VOICEPEAK 邪神ちゃん”が生まれた経緯をはじめ、これから『邪神ちゃん』が目指していく方向性など、気になる部分をアレコレ聞いてみた。

――最初に“VOICEPEAK 邪神ちゃん”を作った理由をお聞かせください。

 まず背景として、我々は邪神ちゃんを3ヶ月のテレビ放送で終わってしまう作品にしたくなく、ずっと続くコンテンツにしたいと考えています。

 邪教徒の皆さま(邪神ちゃんファンの呼称)もそのために1.15億円もクラウドファンディングで応援をしてくれました。

 とはいえ、1クール製作するのに3億円もかかるアニメを毎年作っていくなんてことはとうていできませんので、数年に一度のアニメとアニメの間にもコンテンツが生まれてくる仕組みを作ることが我々にとって大きなテーマとなっています。

『邪神ちゃんドロップキック』は“ネットミームになる”ことを目指している。合成音声化の理由は栗田穣崇氏(ニコニコ代表)がなれるくらいなら邪神ちゃんもなれそうだったから

――そのために『邪神ちゃん』は本当にいろいろなことに挑戦していますよね。

 はい。この課題を解決するために、最初にやり始めたのは“切り抜き映像の合法化”です。

 当初は違法アップロードされたアニメ邪神ちゃんの切り抜きが何百万回も再生されていることがとても悔しかったのですが、これだけ自発的にコンテンツが生まれてくるなんてすごいことだなと思うようになり、KADOKAWAさんに相談してアップローダーさんと広告収入を折半する仕組みを導入しました。

 また、この動きをさらに加速させるため、ニコニコ動画さんと“邪神ちゃんMAD投稿祭2022”を開催したりもしました。この結果、施策を開始してから5ヵ月で、約1300万回が邪神ちゃん公式チャンネルの外で再生され、作品の延命に役立っています。

『邪神ちゃんドロップキック』は“ネットミームになる”ことを目指している。合成音声化の理由は栗田穣崇氏(ニコニコ代表)がなれるくらいなら邪神ちゃんもなれそうだったから
2022年8月19日~ 9月11日に開催された公式公認のMAD動画投稿企画。

――おお、しっかり作品が長続きする結果につながっているんですね。

 そうですね。つぎに、ウェブ広告によく出てくる“まちがったピンを抜いたりした結果いつも酷い目に遭う騎士みたいなキャラ”を見たとき、邪神ちゃんもこんなふうになりたいなあと思いました。

 その結果生まれたのが『救え!邪神ちゃんドロップキック』というハイパーカジュアルゲームなのですが、このゲームが大変人気で、1円も広告費を使っていないのに初登場App Store / Google Playパズルランキング1位になりました。

 いまは宣伝費を使ってそれっぽい動画広告をどんどん発信しているので、アニメ邪神ちゃんのことは知らないけど“なんかいつも酷い目に遭ってる下半身蛇の女の子”の認知度はじわじわ高まっていっていると思います。

『邪神ちゃんドロップキック』は“ネットミームになる”ことを目指している。合成音声化の理由は栗田穣崇氏(ニコニコ代表)がなれるくらいなら邪神ちゃんもなれそうだったから
『救え!邪神ちゃんドロップキック』では(恐らく)とくに意味のない鉄球などが邪神ちゃんを襲う!

――はい。周囲でもなんか下半身蛇の女の子が酷い目にあっているという話はたまに聞きます。

 最後に現在取り組んでいるのがファンの皆さまが自ら邪神ちゃんのコンテンツを生み出すことができる環境作りで、その一環が“クラウドファンディングリターンとしてのIP使用許諾”であり、“邪神ちゃんオンリーイベント(邪神ちゃんの同人誌即売会)”の開催であり、今回の“VOICEPEAK 邪神ちゃん”、“公式2D、3Dモデル”の提供です。

 合成音声については長らく注目をしていたのですがある日、栗田さん(ニコニコ代表)がボイスロイドになるということを聞いて「栗田さんがなれるくらいなら邪神ちゃんもなれる」と思い(※)、合成音声の大先輩、東北ずん子のプロデューサーさんに相談して今回の商品を企画しました。

 いまはその流れで“邪神ちゃんVOICEPEAKコンテスト~邪神ちゃんを喋らせるんですの~”というUGCの活性化の施策にも取り組んでいます。

※編注:アニメ『邪神ちゃんドロップキック』の宣伝プロデューサーである栁瀬氏とニコニコ動画の代表を務める栗田氏は旧知の仲。

『邪神ちゃんドロップキック』は“ネットミームになる”ことを目指している。合成音声化の理由は栗田穣崇氏(ニコニコ代表)がなれるくらいなら邪神ちゃんもなれそうだったから
邪神ちゃんの合成音声ソフト“VOICEPEAK 邪神ちゃん”は無料体験版が配信中。製品版は3月30日発売。

――合成音声になった理由がまさかすぎて笑っています。最終的に邪神ちゃんはどこに向かっているんでしょう?

 よく「邪神ちゃんはどこに向かっているのか?」と問われることがありますが行き先は明確で、なんだか知らないけど見たことがあるという存在になること、言い換えるなら「ネットミームになる」ことを目指しています。

 昔とは異なり、配信サービスを使えばいつでもアニメは視聴できるわけですから、テレビ放送期間にこだわらず何かのきっかけで動画のおすすめ欄に表示されて「あ、これ前から気になってた」と思ってもらえれば、それはもうずっと続く作品になっていると言えるのではないかなと思います。