“INZONE(インゾーン)”は、ソニーが展開する“かつてない没入感と勝利”をビジョンとして掲げるゲーミングギアだ。『ファイナルファンタジー』(以下、『FF』)シリーズの制作に数多く携わってきたスクウェア・エニックスの北瀬佳範氏に、ゲーミングモニター“INZONE M9”およびゲーミングヘッドセット“INZONE H9”の魅力を語っていただいた。

※本記事は『INZONE』の提供でお送りします。

北瀬佳範(きたせよしのり)

『FFVII』リメイクプロジェクトプロデューサー。『聖剣伝説 ~FF外伝~』や『ロマンシング サ・ガ』の開発を経て、『FF』シリーズには『FFV』から参加。『FFVI』で初めてディレクターを務め、続く『FFVII』でもディレクターを担う。以降、多数のシリーズ作で、ディレクターやプロデューサーとして制作を統括。

“奥行きのある絵作り”へのこだわり

――まずは、北瀬さんの制作者としてのキャリアを通して、ゲーム作りにおけるこだわりを教えてください。

 もともと私がゲーム業界に入ったころは、3DCGなんてものはなくて、2Dのドットですべてを表現する時代でした。一方、映像の世界という意味では、実写映画などの“奥行きのある絵作り”はすでにあったわけです。

 私自身、学生時代に映像制作をしていたりとか、どうしても映画や映像の世界に興味があったので、ゲームのグラフィックス制作にあたっていちばん気にしていたのは、「いかにしてゲームならではの奥行き感や臨場感、立体感を表現していくか」ということでした。

――北瀬さんのこだわりとして奥行き感や臨場感、立体感というキーワードをいただきました。このこだわりは『FF』シリーズではどのように表現してきたのでしょうか。

 『FF』シリーズで言えば、当時ディレクターを担当した『FFVI』なんかはそういう工夫が入っていますね。キャラクターなどのグラフィックス素材はすべて2Dで出来上がってくるのですが、その中でも遠景にキャラクターがいて、手前の扉が閉まる演出ですとか、カメラの手前と奥を使った演出を取り入れることで、そうしたこだわりを実現していました。

 プロデューサーを務めるような最近の作品では、僕自身が映像に口を出すということはなくなってきています。10年以上前になりますが、『FFXIII』のころには、現場の映像ディレクターやクリエイターのカメラワークや空間の表現の仕方に優れたセンスを感じるようになりました。「ああ、こういう世代が出てきたんだな」と思いました。

 とは言え、3DCGが当たり前に使われるようになった現在でも、絵作りや演出を見る際はつねに奥行き感や臨場感、立体感を意識してチェックしますね。

『ファイナルファンタジー』シリーズを手掛ける北瀬佳範氏がINZONEの魅力を語る。ゲームクリエイターの意図した絵や音をユーザーに届けてくれるデバイス「高い没入感で“いいセフィロス”を見てもらいたい」

“ソニーのゲーミングブランド”への期待

――今回ソニーのゲーミングブランドのINZONE製品を使っていただきましたが、そもそもソニーのゲーミングブランドと聞いてどのようなイメージを抱かれていましたか。

 ソニーブランドからゲーム向けのモニターやオーディオデバイスが出ると伺ったときは、プレイステーション5との親和性のよさに期待しました。以前からもそうですが、現在の我々のチームは『FFVII リメイク』や『クライシス コア -FFVII- リユニオン』など、プレイステーション5をターゲットにした作品を制作しています。

 コンシューマーハードでゲームをリリースする際のもっともよいところは、ひとつのハードウェア、ひとつのスペックに対してパフォーマンスを追い込んでいけるところです。スペックなどが人によって違うPCなどとは違い、こちらの意図した絵や音をユーザーの方々に届けやすくなるということですね。

 デザイナーたちがゲームの映像を詰めていくにあたっては、基準となるマスモニ(マスターモニター)を決めて、そこに合わせて調整をかけていくという方法を採ります。その基準を決めるときに「ソニーからINZONEのようなゲーミングモニターやヘッドセットが出ている」ことは大きいと思います。

 「これがプレイステーション5として理想とする絵や音なんだ」というリファレンスが実際にあるのは、制作側として非常にやりやすいというか、安心感がありますよね。

世界からキャラクターまで、一貫して奥行き感・立体感を体感できる

――まずはINZONE M9の第一印象を教えてください 。

 外観に関しては、白を基調としていたり、特徴的なデザインであったり、プレイステーション5との親和性はやっぱりありますよね。私自身がモニター付近にいくらかケーブル類をまとめていたりするので、3点支持で専有面積があまり広くない、それでいて安定している3脚式のスタンドはうれしいです。 スタンドの奥行きが少しあるのは気になりましたが、使用中に揺れたり、ずれたりしないことの安心感の方が強く感じました。

『ファイナルファンタジー』シリーズを手掛ける北瀬佳範氏がINZONEの魅力を語る。ゲームクリエイターの意図した絵や音をユーザーに届けてくれるデバイス「高い没入感で“いいセフィロス”を見てもらいたい」

――まずはデザインに触れていただきましたが、画質面はいかがでしょうか。

  実際に“INZONE M9”を使って『FFVII リメイク』をプレイしてみたのですが、冒頭の暗い街並みのシーンで描写される路地や建造物の外壁の細かい質感、薄暗がりの中で光を放つ街灯の輝きのコントラストなど、制作陣が意図した世界観に引きずりこまれるような表現力に驚きました。

 暗所でも奥行きのある映像が描写できるというのは、高コントラストな直下型LEDを採用し、HDRにも対応している“INZONE M9”の表現力の大きなメリットであり、効果がてきめんにわかるシーンのひとつだと思います。

――制作時のこだわりがしっかりと描けているということですね、ではその中でも特に印象的だったシーンはどこでしょうか。

 “クラウド”がスラムの宿屋で一夜を過ごして迎えた最初の朝のシーンですね。スラムの街並みとミッドガルを一望するカットがあるのですが、暗い部屋から明るい陽射しのもとに出て行った際の光のコントラストが生み出すハッとするような解放感があるんです。

 さらには遠くのミッドガルのプレートのディティールまで表現されていて奥行き感の表現が素晴らしかったですね。

 もちろん、制作時に意図している演出なのですが、そういうところがしっかりと再現されているわけですね。『FFVII リメイク』はリリースからやや時間が経っているので久々にプレイしたのですが、そういうところに今回改めて気づかされました。

――『FF』シリーズと言えば美しい世界観はもちろんのこと、個性的なキャラクターたちも大きな魅力のひとつだと思います。キャラクターの表現はいかがでしょうか?

 世界観はもちろんですが、キャラクターがどれだけ綺麗に見えるかということも重要です。最近はグラフィックスのクオリティーが上がったことで精緻な描写ができますが、そうなると、たとえばデザイナーは髪の毛の再現にも非常にこだわったりするんです。

 主人公“クラウド”の顔ひとつとっても、肌や鮮やかな金髪の色表現であったり、髪の毛一本一本の細かさが、人物の質感を表現する際に大事になってきます。

『ファイナルファンタジー』シリーズを手掛ける北瀬佳範氏がINZONEの魅力を語る。ゲームクリエイターの意図した絵や音をユーザーに届けてくれるデバイス「高い没入感で“いいセフィロス”を見てもらいたい」

 “INZONE M9”であれば、4Kの緻密な解像度や最大10.7億色の色表示のおかげもあり、しっかりと存在感のあるキャラクター描画ができていると感じました。

 ゲームの世界観から登場するキャラクターに至るまで、一貫して奥行き感・立体感を体感できるモニターだと言っていいと思います。

 ゲーム制作者として表現したかった、ゲームの世界を緻密な描画で余すところなく映し出してくれる、映像美で本当にゲームの世界に入り込んだようなプレイ体験を提供してくれる、そんなモニターだと感じました。

――続いて『クライシス コア -FFVII- リユニオン』でのゲームプレイについてお聞かせください。

 最新作である『クライシス コア -FFVII- リユニオン』についても同じことが言えます。

 過去にプレイステーションポータブルでリリースされたオリジナル版をリメイクした作品なのですが、『FFVII リメイク』でユーザーの方々の期待が高まったこともあって、開発当初の想定よりもクオリティーを引き上げるといった出来事がありました。

『ファイナルファンタジー』シリーズを手掛ける北瀬佳範氏がINZONEの魅力を語る。ゲームクリエイターの意図した絵や音をユーザーに届けてくれるデバイス「高い没入感で“いいセフィロス”を見てもらいたい」

 『FFVII リメイク』のほうが大規模の開発体制ではあるのですが、とくにキャラクター表現に関しては遜色ない状態まで持っていけたと感じています。グラフィックス、音響ともにオリジナル版からは大きくパワーアップしているので、“INZONE M9”でもその美麗さはよく表現されていますね。

 どちらの作品もアクションシーンが多く、高リフレッシュレート表示による画面描画のなめらかさもよく感じられました。

 私自身はストラテジーやRPG系のゲームをプレイする機会が多くて、これまでだと映像のなめらかさよりも解像度の高さを重視しがちだったのですが、実際にゲーム側のフレームレートを変えて試してみると、やはりアクション性が強いタイトルで操作の気持ちよさを感じるなら高フレームレートのほうが親和性が高いと改めて感じています。その点は、今回試してみて認識が変わりましたね。

画面と音がシンクロし、高い没入感を味わえる

『ファイナルファンタジー』シリーズを手掛ける北瀬佳範氏がINZONEの魅力を語る。ゲームクリエイターの意図した絵や音をユーザーに届けてくれるデバイス「高い没入感で“いいセフィロス”を見てもらいたい」

――まずINZONE H9を試したご感想を教えてください。

 ヘッドセットの“INZONE H9”ですが、まずは装着感がいいですよね。重さもそれほどではなく、長時間使っていても疲れないです。日頃もプライベートではそれほど悪くない製品を使っているとは思いますが、実際に試してみたら「ぜんぜん違うんだな」と感じました。

 また装着した瞬間にノイズキャンセル機能で周囲の音が聞こえなくなって、外界から切り離されたような状態になるのもおもしろい体験でした。あまりこういったタイプのヘッドセットを試したことがなかったので、「あっ」という感動がありましたね。

 ある程度の外音を聞こえる状態にするアンビエントモードの設定もあるのですが、ゲームをする前に気持ちのスイッチが入りますから、私は完全にノイズキャンセルしてしまうほうが好きです。

――INZONE H9でプレイしていて、特に印象的なシーンを教えてください。

 『FFVII リメイク』の冒頭に“魔晄炉(まこうろ)”が爆発して街中がパニック状態になるというシーンが印象的です。実際に“INZONE H9”で音を聴いてみると、右のほうで騒いでいる人がいたり、一方で左のほうでは呻(うめ)いている人がいたり、非常アナウンスが頭上から聞こえてくるなど、混乱した状態というのが音だけでも臨場感をもって伝わってきます。

 ゲームの音響はデザイナーが3Dで設計しているので、定位のいい音響機器を使うことで画面と音がシンクロし、高い没入感を味わえるんです。制作側も意識をしているので、“INZONE H9”の立体音響はこういうシーンでよく活きてくると思います。

――制作側のこだわりがしっかりと表現できているということですね。他にも制作側のこだわりを表現できていたシーンはありますか?

 先に言った通りいまは現場レベルで口を出していることはあまりないのですが、“魔晄炉”に関しては、「巨大な機械が奥底のほうから何かを汲みだしているような“響き”を音で表現してほしい」というようなことは言った覚えがありますね。

 低音の地鳴りのような音が響くことで、巨大な機械が動いているようなことがユーザーに伝えたという想いがあったのですが、そういう部分も“INZONE H9”はしっかり再現してくれています。

 ムービーもそうですが、とくにリアルタイムで街中を走っているほうが、世界の空間や臨場感は感じやすいですね。チームのデザイナーやプランナーはゲーム内の街にリアリティがあるかどうか、生活感や空間の作りかたを非常に重要視しています。

 ゲームなので派手なシーンが注目されがちですが、意外に何気ない街のシーンでじっくりと没入感を味わえると思います。もちろん、爆発音ですとか、『FFVII リメイク』でよく鳴る低音域のサウンドに関しても、 迫力のある音に仕上がっていて、そこについても“INZONE H9”は我々のイメージ通りに表現してくれています。

 音楽については、本作は昔のゲームのように冒頭から1曲1曲を流すと言うより、シチュエーションによってBGMがリニアに遷移していく形式を採用しました。

 楽曲がプレイヤーに与える感情の動きの影響が大きい作品ですし、効果音とバランスを取りながら演出に組み込まれていますので、実際にひとつひとつの音がクリアに聴こえる環境でプレイできるのはすごくよかったです。

――『FF』シリーズ以外のゲームもプレイされたと聞きましたが、いかがでしたか?

 『PUBG: BATTLEGROUNDS』のようなバトロワ系シューターをプレイするときは親和性の高さを感じましたね。

 基本的にはBGMがなく、環境音や銃撃、足音しか聴こえないゲームなので、ひとりで建物の2階に隠れていたら誰かがドアを開けて階段を上がってくるといったシーンでは、抜群の臨場感がありましたし、索敵にも役立ちました。

『ファイナルファンタジー』シリーズを手掛ける北瀬佳範氏がINZONEの魅力を語る。ゲームクリエイターの意図した絵や音をユーザーに届けてくれるデバイス「高い没入感で“いいセフィロス”を見てもらいたい」

高い臨場感と没入感で“いいセフィロス”を楽しんでいただきたい

――ゲーム開発という立場から、INZONE M9とINZONE H9を体験されてどのように感じられましたか?

 “INZONE M9”と“INZONE H9”は、ゲームクリエイターの意図した絵や音をしっかりユーザーの方々に届け、世界やキャラクターの奥行きや臨場感を演出してくれる、ひとつの基準となるようなデバイスだと感じました。

 一方でひとりのゲーマーとしては、世の中にはさまざまなコンソールやPCなど、ゲームをプレイするためのハードと、数々のゲームソフトがあるわけで、それらを上手に使い分けられる汎用性の高さがほしいと感じることもあるだろうと思います。

 INZONEシリーズはスペックの高さはもちろん、設定可能な項目の幅広さや多機能からくる選択肢の多さ、個人への最適化といった点で、そういった目的にも合う製品と言えるのではないでしょうか。

  最新作となる『クライシス コア -FFVII- リユニオン』に関しては、もともと『FFVII』でもっとも存在感のある敵として登場する“セフィロス”がキーパーソンとして登場します。

 しかも、シリーズではほとんどここでしか見られない“いいセフィロス”が見られるわけです。

 キャラクターの表情や髪の毛の質感にこだわることで、“セフィロスがもっとも魅力的に見える作品”になったことがひとつの見どころかと思いますので、そういったところをしっかり表現してくれる“INZONE”シリーズのモニターやヘッドセットでぜひ楽しんでいただきたいですね。