スクウェア・エニックスよりNintendo Switch(ニンテンドースイッチ)、プレイステーション5、プレイステーション4、Xbox Series X|S、Xbox One、およびPC向けに発売中の高圧洗浄シミュレーション『パワーウォッシュ シミュレーター』。同作の無料DLC第2弾“ミッドガル特別依頼”が2023年3月3日に配信された。
本稿では、“ミッドガル特別依頼”配信記念として、『ファイナルファンタジーVII』(以下、『FFVII』)をリアルタイムで遊んだオッサン編集者ふたりによるプレイリポートをお届け。先日公開した先行レビューと併せて読んでいただければ幸いだ。
『FFVII』世界のしがない労働者になりきれるリアリティー
異空間に連れて行かれたような勢いで時間を奪われるため、しばらく自己規制していた『パワーウォッシュ シミュレーター』ですが、『FFVII』の世界でウォッシュできるとあれば、さすがにプレイしないわけにはいきません。仕方がないので封印を解かせてもらいます。しばらく仕事が滞ったらごめんよ、編集部のみんな。
というわけなので、筆者はすでに本作は100時間以上プレイ済み。すべてのアイテムを購入済みという状態でのプレイなので、強力な装備で有無を言わせずピッカピカにしてやることにしましょう。
最初の依頼は、“ハーディ=デイトナ&神羅sA-37式自動3輪”。クラウドたちがミッドガルを脱出する際に乗っていたアレです。原作でも非常に印象的な場面で使われたマシン。よく知っているつもりでしたが、いざ細部までピカピカにしていこうとすると、いろいろと新鮮な発見があります。へー、このバイクのシートはベヒーモスの革張りだったのかー、とかね。
また、洗浄作業を進めていると、ちょくちょく依頼主からのメッセージが入ってくるのも楽しいところ。“ハーディ=デイトナ&神羅sA-37式自動3輪”の依頼の場合は、都市開発部門統括のリーブがお仕事の説明をしてくれます。
さらにこのメッセージがけっこう饒舌で、ハイデッカーや宝条博士についての情報を教えてくれたりして、ファンなら思わずニヤリとしてしまいます。
そういった、ファン心をくすぐる仕掛けもさることながら、このDLCのプレイ感覚が独特なのが、本当に『FFVII』の世界で労働している感じになれるところなんです。『FFVII』関連作品は大好きでほとんどプレイしているし、どれも全部楽しいんですが、やっぱりプレイしている自分はクラウドみたいなカッコいいヒーローではないわけで(当たり前)。
でも、社畜精神に富んだ自分としては、清掃員としてひたすら清掃という労働作業を続けていると、そこに得も言われぬリアリティーが感じられてくるんですよ。
さらには、「こうやって神羅の仕事を受けて生計を立てている人がいっぱいいるんだろうなぁ」なんて思えてきて、「神羅って悪辣非道な企業だと思っていたけど、じつは立派な会社じゃないか、ありがてえありがてえ……」なんて気持ちになってきました。
そんな危うく神羅信者になりそうだった心は、“セブンスヘブン”清掃の依頼で、汚れといっしょにキレイに払拭できました。このお仕事の依頼主はティファ。原作でもおなじみのセブンスヘブンを清掃していくわけですが、ちょくちょくティファが言葉をかけてくれます。彼女のメッセージを読んでいくうちに、神羅の闇の部分がいろいろと思い出されてきました。そもそも立派な会社はスラムにプレートを落としたりしないもんな。危うく洗脳されるところだった、危ない危ない……。
というわけで、大好きな作品の世界に清掃作業員という形で入り込めるというのは、単なるコラボという枠を超えてかなり革新的な試みなのではないかと思います。ちなみに筆者は、『シアトリズム ファイナルバーライン』と並行して遊んでいます。これ、気分が超盛り上がるのでおすすめですよ。
(Text by 阿部ピロシ)
まさか『パワーウォッシュ シミュレーター』で『FFVII』の新たな発見があるとは
“ミッドガル特別依頼”では、リーブやハイデッカー、ティファといった『FFVII』のお馴染みのキャラクターからの仕事の依頼を受け、ハーディ=デイトナやガードスコーピオン、セブンスヘブンなどを洗浄していくことになる。
最初のステージはリーブの依頼で神羅ビル1階の展示ルームでハーディ=デイトナと神羅sA-37式自動3輪を洗浄。
「少々思わしくない状態で倉庫から見つかった」(リーブ談)というハーディ=デイトナと神羅sA-37式自動3輪は、たしかに汚れでぐっちゃりもっさりとしており、見た人が悲鳴をあげそうなくらい汚れまくっている。
そんなハーディ=デイトナと神羅sA-37式自動3輪に高圧な水を浴びせると、汚れは吹き飛び、すぐにキレイなボディーの一部が見えてくる。高圧洗浄だけでここまでピカピカになるのはさすがゲームといったところ。さらに洗浄を続けて、ボディのピカピカ部分がどんどん広がっていく様は何とも言えない快感だ。
ところで、このハーディ=デイトナと神羅sA-37式自動3輪は『クライシス コア -FFVII- 』のころにはすでにキレイな状態で展示されていた。ということは、リーブからの依頼は『FFVII』本編の数年前だったのかな? なんて想像してみたり。
もちろん、“ミッドガル特別依頼”が『FFVII』と地続きの世界(正史)というのは考えづらく、あくまで『パワーウォッシュ シミュレーター』の世界観をもとにしたミッドガルという前提ではあるけれど、プレイヤーはまるでミッドガルの掃除屋のひとりとしてザックスやクラウドたちと同じ時代を過ごしていたミッドガルの住人気分を味わえるのだ。
あのガードスコーピオンを舐めまわすように掃除できるのは本作だけ
ハーディ=デイトナ&神羅sA-37式自動3輪のつぎの依頼は、その仕事っぷりを聞きつけたハイデッカーから。依頼はガードスコーピオンの洗浄だ。
ガードスコーピオンといえば、壱番魔晄炉に登場する『FFVII』最初のボス。臨場感が増した『FFVII リメイク』ではさらに迫力が増し、多彩な攻撃も駆使してくるため苦戦した人も多いのでは? そんなガードスコーピオンを間近で落ち着いてじっくりと見る機会は本編ではないので、本作での依頼はある意味貴重。各部位の名称も知ることができてなかなか有意義な仕事だ。
ただ、いつ99式小型ミサイルやテイルレーザーが発射されるかドキドキしてしまうのは自分だけだろうか(発射されることはないとわかっていても)。構造が複雑なため水流が当たりづらい部分も多く、洗浄にかなり苦労が伴う。洗い逃しがないかさまざまな角度からチェックしながら進めるといいだろう。
ちなみに、“ミッドガル特別依頼”では、クラウドたちと対峙する前のガードスコーピオンを洗浄することになるようだ。自分がピカピカにしたガードスコーピオンがクラウドたちを襲うと考えると複雑な気分だが、自分は掃除屋。依頼された仕事をまっとうすればいいのだ。
天国とは程遠い荒みっぷりのセブンスヘブン
ガードスコーピオンの後はティファからの依頼でセブンスヘブンを掃除することに。中に入ってみると……廃墟と見紛うほどの汚れっぷり。
ティファさん曰く(メッセージをもらうと、とたんに親近感が湧いて“さん”付け)、ドン・コルネオ一味が嫌がらせのために注文した料理を床や壁にぶちまけて行ったらしいけれど……。その汚れっぷりは一日二日のものとは思えず、もしかしてティファさんって掃除が絶望的に苦手なのでは……? だが、汚れていればいるほど掃除のし甲斐があるというもの。そういう意味では、やはりここはヘブン(天国)だ。
机の上にはバレットのマシンガンが無造作に置かれていたり、クラウドのバスターソードがカウンターに立てかけられていたり、物騒極まりないなぁ。しかも、かなり汚れていますね。なんなら、武器も洗浄しましょうか?
え? ティファさんは神羅が魔晄エネルギーを供給するのは大衆を支配するためだとおっしゃる? しかも、このままエネルギーを吸い上げ続けたら星は死んでしまうと……。アバランチはそんな神羅を止めようとしているんですね? ご苦労様です。いえ、私は掃除のことでいっぱいいっぱいで難しいことはさっぱりで……。
あ、これから壱番街で仕事の準備ですか。後はお任せください。
なんと、最後はクラウドさんがチェックしてくださる?
(自分がキレイにしたガードスコーピオンとクラウドさんが戦うことになる未来が見える……)
いえ、なんでもありません。承知しました。では、ティファさん、行ってらっしゃい。お気をつけて――。
……と、思わずティファのメッセージにミッドガルの凄腕掃除屋気分で一人芝居をしてしまうほどのめり込める“ミッドガル特別依頼”。
『FFVII』のキャラクターは登場せず(メッセージのみ)、耳に馴染んだ音楽もかからない。ただただノズルから吐き出される水の音だけが聞こえるストイックな作品だが、それが没入感を高め、気づけばガードスコーピオンやセブンスヘブンをピッカピカにしてしまうのだ。
ステージは今回紹介したハーディ=デイトナ&神羅sA-37式自動3輪、ガードスコーピオン、セブンスヘブンの3つ以外に、“魔晄炉のジオラマ”、“エアバスター”と『FFVII』らしさを味わえるものが用意されている。
“ミッドガル特別依頼”のプレイにはとくに条件はなく、『パワーウォッシュ シミュレーター』未プレイの人もすぐにミッドガルの掃除を始めることができる。『FFVII』ファンの方は“ミッドガル特別依頼”を通じて『パワーウォッシュ シミュレーター』の魅力にぜひ触れてもらいたい。
(Text by 杉原貴宏)