ウクライナ拠点のゲームスタジオFrogwaresによる推理アドベンチャーゲーム『Sherlock Holmes The Awakened』のPC版デモをプレイしたので、その内容をご紹介しよう。
本作はシャーロック・ホームズを主人公とする推理ゲームシリーズの2007年作品をリメイクしたもの。日本語にも対応し、プレイステーション5/プレイステーション4/Xbox Series X|S/Xbox One/Nintendo Switch/PCで2023年第1四半期に配信予定となっている。
ホームズ×クトゥルフものの初期作を近作のシステムでリメイク
オリジナルの2007年版『Sherlock Holmes: The Awakened』は、H.P. ラヴクラフトのクトゥルフものに影響を受けた作品。とある失踪事件を追うことになったホームズは、手掛かりを求めてスイスやアメリカのニューオーリンズへと運ぶうち、その背後で糸を引く“古き神”を信仰するカルト教団に迫っていく。
2008年に一度リマスター化されている本作だが、今作はそのフルリメイクという形になり、ホームズ自身もシリーズ最新作『シャーロック・ホームズ チャプター・ワン』版の若いシャーロックに。同作のエンディングでジョン・ワトソンと出会ったのちの比較的若い2人の冒険になっている。
若ワトソンが登場。セリフやミッションも洗練された自然なものに
今回のデモは、ロンドンで取り掛かった事件のさらなる手掛かりを求めてスイスの“エーデルワイス精神病院”に潜入するというパートを体験できた。プレイするにあたってオリジナルの方も一応チェックしてから挑んだのだが、最序盤から結構違いがあるのに驚いた。しかもそれがなかなかいい感じなのだ。
この章のオープニングは“ワトソンが視察という名目で院長のガイギャックス教授に会う→そこに変装したホームズがやってきてふたりでひと芝居うつ→ホームズが隔離部屋にブチ込まれる”という流れなのだが、大枠はオリジナルに沿っているものの、いきなり細かい所がかなり違う。
たとえばセリフは“チャプター・ワン”テイストで書き直されていて、若いホームズのノリが多少軽いのは好みもあるかと思うが、テンポが早い分、“ホームズ&ワトソンがひと芝居うつ”というコミカルな展開にはうってつけだ。
またキャラの設定やミッションも、全体が洗練されたものになっている。たとえば患者のマウリツィオはとあるミッションのための説明的なセリフを長々と喋る人物だったのだが、リメイクではそのエリアの序盤のミッション自体がもっと自然な流れのものに整理され、マウリツィオ本人はミッションの説明役として一度お役御免となったかわりに、“自分がとある有名人だと思っている患者”という舞台設定を補強する役回りに。
面白いところでは、ガイギャックスが男性から女性に変わっていたりも。ガイギャックスは院長という立場を活かしてなかなか黒いことをやっている人物なのだが、ワトソンに表向き丁寧に対応していたかと思ったら新たな獲物(ホームズ)を見つけた途端にガラッと雰囲気が冷たく変わるのがなかなか怖い。
というわけで変にオリジナル版に固執せず、現代のゲームとしてきっちりリメイクされている印象。もちろん、カットシーンの顔などのアニメーションのレベルが格段に上がっていることは言うまでもない。
謎解きのためのギミックはチャプター・ワンスタイルに
さて謎解きの仕組みの方はというと、『シャーロック・ホームズ:罪と罰』から“チャプター・ワン”まで通じる近作のスタイルを踏襲している。
基本的な流れは、探索して手掛かりを集め、“記憶の宮殿”(マインドパレス)で手がかりを組み合わせて新たな仮説や問題の解決法を導き出すというもの。
その過程で使うテクとして、現場検証で残された証拠から当時の様子を再構築したり特定のトピックに絞って細かい不審点を見つける“集中モード”、証拠を突きつけながら聞き込みをする尋問シーン、(デモの範囲では出てこなかったが)外見のちょっとした傷などから人物像をつかむプロファイリングなども出てくる。
ちなみにデフォルト難度ではアシスト機能が充実しており、記憶の宮殿で手掛かりの組み合わせなどを間違えても、どこが合ってたかやどこが間違ってたかを教えてくれる。なのでシリーズ初見の人はアシストを利用しながら本作の推理システムを掴んでいけばいいし、勝手のわかっている名探偵諸氏は難度を上げてプレイすればよい。
純然たる事件推理モノというよりも“冒険感”が増している印象
なおシリーズ初のオープンワールドゲームだったチャプター・ワンとは違う点として、今回は“罪と罰”や『シャーロック・ホームズ 悪魔の娘』などと同系統の章立てごとにエリアが変わっていく形式であることが挙げられるだろう(※海外誌でオープンワールド式と紹介しているものを散見したが、これは間違い)。
しかしこれについては、『Sherlock Holmes The Awakened』自体が世界各地を転々としながら大いなる陰謀に迫っていく冒険がテーマなので仕方なしといったところ(どっちみちエリアごとにマップを分けざるをえない)。
一方で今回のデモの範囲が潜入ミッションということもあってか、単発の事件を解決していく推理モノの雰囲気よりも、もっと一般的なアドベンチャーゲームらしく大きな目的に向かって突き進んで冒険している感じがあった。
製品版では周囲の環境がグニャ―っと曲がるサイケデリックなシーン演出なんかもあるようだし、細かいところでは解錠パズルが復活していたりもして、なかなか楽しいことになりそうだ。本来はゲーム開発どころではない過酷な状況で開発が続けられている本作だが、なんとか無事に完成するのを祈りたい。