スクウェア・エニックス・グループから発足したグローバルゲームスタジオ“Luminous Productions(ルミナス・プロダクションズ)” が手掛ける大作『FORSPOKEN(フォースポークン)』。

 本作は、最先端のテクノロジーで描き出される美しき異世界アーシアを舞台に、超高速の移動アクション“魔法パルクール” や、多種多彩な魔法を駆使した胸躍る冒険が楽しめるオープンワールド・アクションRPGだ。多くのファンが待望していた本作が、ついに2023年1月24日、プレイステーション5とPCで発売される。

 今回は本作の発売を記念して、開発のキーマンたちにインタビューを実施。特徴的な魔法パルクールやバラエティー豊かな魔法が誕生した経緯や、異世界アーシアと感動的なストーリーに隠された開発秘話などを訊いた。攻略に役立つ情報も教えてもらっているので、本作をプレイする前にひと通りチェックしてほしい。

『FORSPOKEN』(PS5)購入はこちら(Amazon.co.jp)
『FORSPOKEN』インタビュー
『FORSPOKEN』インタビュー

荒牧 岳志氏(あらまき たけし)

【Luminous Productions 『FORSPOKEN』ディレクター】
Luminous Productionsのスタジオヘッドで、ルミナス・エンジンの技術責任者を担当。『FORSPOKEN』ではプリプロダクション段階から、ディレクターとして全体をまとめた。

寺田 武史氏(てらだ たけふみ)

【Luminous Productions 『FORSPOKEN』Coディレクター】
バトルやレベルデザインなどを統括したほか、開発全体の進捗管理などを担当。

光野 雷生氏(みつの らいお)

【Luminous Productions 『FORSPOKEN』クリエイティブプロデューサー】
ストーリーと世界観の構築から携わっており、キャスティングや音楽の発注なども担当。

体験版へのフィードバックを早くも製品版で実装

――待ちに待った発売日がついにやってきますが、現在の率直なお気持ちなどをお聞かせください。

荒牧Luminous Productionsという会社を作ってから、このタイトルを作り続けてきましたが、本当に……いろいろなことがありました(苦笑)。チームのメンバーも諦めずについてきてくれたおかげで、皆様にお届けできる段階まで到達できたのは本当に感慨深いですし、うれしく思っています。

寺田皆様の反応を楽しみに仕事をしていたので、正直、緊張しています、というのが率直な感想なのですが、どんな反応がくるのかすごく楽しみでもありますね。僕自身は、年末年始に家族に遊んでもらうためにPS5と4Kテレビを購入して準備万端です(笑)。

――すごい! 確かに最高の環境で遊んでもらいたくなるタイトルですからね(笑)。光野さんはいかがですか?

光野ドキドキ、ワクワクという感じですね。長かったような、あっという間のような……最初に脚本家と打ち合わせをしたときのことを、いまでも鮮明に覚えているくらいなので、不思議な感覚です。いままでずっと作ってきたものをようやくユーザーの皆様に届けられるというところで、非常に楽しみですね。

――年末には体験版が配信されましたが、プレイヤーからの反響はいかがでしたか?

荒牧バトルは単なる近接だけではなく魔法アクションが主体であるなど、かなり尖った部分が多いゲームでもあります。「想像していたゲームと違う」といった意見も若干はありましたが、多くの方々に、僕らの意図した通りに楽しんでもらえているかなと思っています。

 一方で、「UIが小さい」などのご意見もありましたので、体験版配信後から急いでパッチを作成し、1月17日からパッチを配信しました(※)。

※2023年1月17日に、“FORSPOKEN体験版Patch1.000.001”が配信されている。

寺田UIのほかには、ロックオンカメラがちょっと使いづらいという意見も多かったので、急遽調整しました。また、キーコンフィグを追加してほしいという要望もいただきました。こちらは体験版では実装されていませんでしたが、もともと本編には搭載されています。加えて、体験版自体にもパッチ対応を行い、変更できる項目を追加していますので、ぜひお試しいただければと思います。

――体験版といえば、できることが非常に多くて驚きました。

寺田体験版と言うと、ゲームの序盤がプレイできる内容のものが多いと思いますが、『FORSPOKEN』はできることが非常に多いゲームなので、それらをすぐに見てもらいたかったんです。ですので、ストーリー序盤の導入部分ではなく、けっこう遊べる中盤のところで自由に遊んでいただく形で配信しました。

 そのぶん、チュートリアルがなかったり、説明されない要素があったりもしますが、自分でいろいろ調べて楽しんでくれているユーザーさんも多くて、うれしかったですね。

荒牧ちなみに本編では、ストーリーの進行に応じてやれることが少しずつ増えていきますし、きちんとチュートリアルを入れていますので、体験版で戸惑った方たちもご安心ください。

『FORSPOKEN』インタビュー

ルミナス・エンジンが作り出すオープンワールド

――改めて、本作の企画開始からの経緯を教えてください。本作は、どんなゲームを作ろうとしてスタートしたのでしょうか。

荒牧もともと僕たちは『ファイナルファンタジーXV』(以下、『FFXV』)を作ってきたチームです。同作はオープンワールドのゲームでしたし、つぎに「魔女を題材にした魔法主体にしたゲームを作ろう」となったときに、自然とオープンワールドのゲームにしようと決まりました。

 脚本に関しては、『FORSPOKEN』では、海外の脚本家にお願いすることにしました。当時は、我々と海外の脚本家がタッグを組むことで、すごいゲームができるんじゃないかと期待したのを覚えています。

――オープンワールドのゲームを作ることは、最初から決めていたのですね。

荒牧はい。プレイヤーがストーリーに導かれるだけではなくて、自分のやりたいことをしながらアーシアの世界を堪能できる。そういったゲーム体験を味わってもらうために、オープンワールドのゲームにしたかったんです。

――Luminous Productionsのプロジェクトですし、当然ルミナス・エンジンでの開発を前提とした企画だったと思いますが、オープンワールドのゲームはルミナス・エンジンが得意とするジャンルだったのでしょうか?

荒牧そうですね。ルミナス・エンジン自体は、『FFXV』のときから仕組みを作ってきました。本作ではワールドエディターという新しいツールを作成し、新しいフィールドや広大な植生(ある地域に生育する植物の集まり)を生み出すのに活躍しています。また、Direct Storageの技術を使って高速読み込みに対応するなど、エンジンの機能拡張も行っていますね。本作では、ゲームといっしょにエンジンも強化しつつ、これまでにない、すごいものを作っていこうという意気込みで開発を進めていきました。

『FORSPOKEN』インタビュー

寄り道が楽しくなる! 魔法パルクールとフィールドの誕生秘話

――本作最大の特徴は魔法パルクールだと思いますが、魔法パルクールも企画当初の段階から考えられていたのでしょうか?

寺田本作の開発は、「魔法を使ったオープンワールドのアクションゲーム」というところから始まっていて、その段階で魔法パルクールというキーワードは出ていました。

 そもそも魔法パルクールのアイデアは、「現代のニューヨークに暮らすフレイという女性が異世界アーシアに飛び、魔法が使えるようになる」というストーリーがもとにあります。現実世界に存在するパルクールというフィールドアクションが魔法によってカスタマイズされ、成長していくというところから誕生しています。

――魔法パルクールを実際に操作してみて、本当に動画のようにスピーディーに駆け回れることに感動したのですが、この動きを実現するのは相当たいへんだったのでは?

寺田パルクールの速度に合わせて、そのほかの要素を調整するのがいちばんたいへんでした。魔法パルクールはバトルでも回避に使うのですが、高速移動しながらバトルを成立させるためには、なるべくシステムをシンプルにする必要がありました。バトルのスピード感を決めた後、それを実現させるために力を入れましたし、ここも苦労したポイントだと思います。

――魔法パルクールは、モーションのつなぎも自然で美しいですよね。

寺田モーションは、フィールドアクションチームがこだわって作ってくれました。ファンタジーではあるのですが、リアリティーにもこだわっていて、そこのさじ加減がけっこう難しくて。モーションのつなぎかたひとつ取ってみても、クリエイターのこだわりがつまっているので、そこはぜひ注目してほしいですね。

『FORSPOKEN』インタビュー

魔法が銃や剣に!? 魔法バトルのコンセプトデザイン

――続いてはバトルのデザインについていろいろお聞きしたいと思います。攻撃手段はあくまでも魔法ですが、マシンガンだったり、剣や槍だったりと、武器を魔法にしたような意図も感じられました。

寺田魔法を中心にしたゲームを作ろうと決まった後、いろいろアイデアを出す中で、剣や槍といった武器を出そうという意見も挙がりましたが、今回はすべて魔法で作ろう、と決めてデザインしました。

――フレイの魔法は銃器、サイラの魔法は近接武器、というようなわかりやすいイメージがあって楽しいですよね。

光野そうですね。一方、支援魔法に関してはいろいろなものを取り揃えられるように、わりと自由に考えています。また支援魔法は、どの系統の魔法を使っている場合でも、いろいろなシチュエーションに対応できるように調整しています。

――魔法を使ううえで、とくに意識したほうがいいことはありますか?

寺田4つの属性はちゃんと使い分けたほうがいいですね。相手が耐性を持っていると、与えるダメージがかなり少なくなってしまうので。有効な属性に切り換えることと、あとはその中でどんどん攻撃魔法を使っていくと、支援魔法のゲージが早く溜まるので戦いやすいと思います。

荒牧魔法パルクールでうまく距離を取りつつ戦うことも重要ですね。攻撃魔法ごとに適切な距離があるので、相手に応じて有利な距離で戦うのがオススメです。

――たくさんの魔法が登場しますが、序盤にとくに使いやすい攻撃魔法というとどのあたりでしょうか?

寺田フレイの魔法がいちばん使いやすいように調整しているので、それをメインに使うのがいいと思います。

荒牧フレイの魔法は、“爆裂の魔弾”で溜めて強力な攻撃をくり出せますし、“連射の魔弾”で連続攻撃もできますから。有効な攻撃は敵によって変わるので、これらをうまく切り換えながら戦ってもらえるといいと思います。

光野フレイの魔法は支援魔法も便利ですよね。僕はアクションゲームが苦手なので、敵を拘束できる“束縛する蔓草”のお世話になっています。

寺田支援魔法でいうと、“咲き誇る射手”も便利ですよ。けっこうダメージを与えてくれますし、とくに空中にいる敵に対して有効な攻撃手段になってくれるので。

『FORSPOKEN』インタビュー

クセモノ揃いな登場人物と心を震わせる感動的なストーリー

――本作は、アクションはもちろん、ストーリーにも力を入れていますよね。オープンワールドなので、もっとフワッとしたストーリーなのかと思いきや、すごく惹き込まれる展開で驚きました。ストーリーはどのようにして考えていったのですか?

光野ありがとうございます。海外の脚本家と初めて打ち合わせしたときは、魔法でファンタジーということぐらいしか決まっていなくて、ほぼ白紙の状態でブレストを重ねていったのを覚えています。

 ジャンルは日本でいうところの異世界モノになるのですが、海外にも“Fish Out Of Water”というジャンルがあります。たとえば『不思議の国のアリス』や『オズの魔法使い』などの、現代の人間が異世界に飛ばされてしまうストーリーですね。本作は、その現代版を作ろうと、物語を考えていきました。

――主人公のフレイをどのようなキャラクターにするのかも悩まれたと思いますが、フレイはどのように作り上げていったのですか?

光野フレイは、よくある王道パターンのキャラクターにはしたくなかったんです。それに、アーシアにもともといたキャラクターではなく、あくまでも現代のニューヨークにいたキャラクターだったので、ユーザーに近しい存在にしたいという考えもありました。それでユーザーと同じような価値観を持っていたり、ユーザーと同じ世界のルールを知っていたりするなどして、共感しやすいキャラクターになっています。その後でキャスティングでベストな方が見つかって、いまのフレイが完成しました。

――けっこう不平不満を漏らしたり、あまり目的に前向きじゃなかったりするあたりは、主人公っぽくなくてユニークですよね(笑)。

光野そうですね(笑)。英語版だと、もっと悪い言葉や汚い言葉も使うんですよ。周囲にいそうなキャラクターではありますが、主人公っぽくはないので、新鮮だったと思います。

――そういったフレイのキャラクターは、企画の当初からブレずに決まったのですか?

光野キャラクターはブレていませんね。これからの人生どうしよう、というところから物語が始まって、異世界アーシアに飛ばされてしまう。いろいろ悩みながらも成長していく姿が描けていると自負しています。

――ストーリーは海外の脚本家が手掛けているとのことですが、日本人にも響くように、もっとこうしてほしいといったリクエストをしたことはありましたか?

光野それはなかったですね。今回は、海外の脚本家たちに自由にストーリーを考えてもらっています。もちろん、開発の都合に合わせてちょっとした修正をお願いしたことはありましたが、意図的に日本人に響きやすい物語にしたりとか、海外テイストのストーリーにしたり、といった意識はしていません。

――喋る腕輪の“カフ”との軽妙な掛け合いも、本作をプレイする楽しみのひとつになりそうです。掛け合いはかなりのパターンが用意されていそうですが、セリフ量は相当多かったのでは?

光野めちゃくちゃ多いですね(笑)。本作はパーティーを組んで冒険するタイプのゲームではありません。プレイヤーやフレイがひとりぼっちにならないように、カフは相棒という立ち位置になります。ただ、カフの存在も謎に包まれています。そもそもブレスレットだったりするのですが、もうひとりの主人公みたいな形でも考えています。軸は、あくまでもフレイの成長物語とはいえ、ふたりの関係性の変化なども楽しんでもらえるとうれしいですね。

寺田ちなみに、フレイとカフの掛け合いの頻度は、設定画面で変更できますよ。カフ機能設定の中に、“セリフの発生頻度”という項目があって、ふだんは“普通”に設定されていますが、“最少”、“少なめ”、“多め”に変えられます。“最少”にすると、必要最低限の会話にとどまるので、バトルに集中したい方は利用してみてください。逆に掛け合いを楽しみたい方は、“多め”に設定するのがオススメです。“多め”でしか聞けない掛け合いも用意していますよ。

――カフとの掛け合いのほかに、シパールの街で暮らすNPCとのやり取りも多彩ですね。

光野街の外の世界は、ブレイクの影響でフレイしか冒険できないので、街には登場人物をたくさん登場させて、NPCとのやり取りが楽しめるように設計しています。

寺田物語が進めばシパールの状況も変化していきますし、いろいろなやり取りを通して、NPCがこの世界でどのように生活しているかも見えてくると思います。

――街中ではサブクエストもたくさん発生しますが、進めておいたほうがいいサブクエストはありますか?

寺田サブクエストは基本的にナラティブ(物語)に振っているので、ゲームの攻略という意味では、とくに重要というものではないですね。どちらかというと、イベントに登場するキャラクターの内面だったり、エピソードだったりを知ってもらうためのものなので、サブクエストをやっていないと攻略できないわけではありません。

『FORSPOKEN』インタビュー

――サブクエストと言えば、猫を追いかけるものが多いのも印象的でした。このあたりは、何か狙いがあったり……?

寺田それは、開発チームの中に猫好きが多かったからです(笑)。せっかくホーマーのモデルを作ったので、ほかにも活かしたいということもありましたね。じつは、最初は雑種の猫しかいなかったのですが、猫好きが高じていろいろな種類の猫が登場しています。

――猫好きにはたまりませんね(笑)。それでは最後に、本作の発売を心待ちにしていたファンや読者にメッセージをお願いします。

荒牧発売を延期して申し訳ありませんでしたが、やっと皆様のもとに届けることができました。フレイの物語をしっかり描けていると思いますし、オープンワールドを探索する要素もふんだんに用意していて、いろいろな遊びかたができるゲームになっています。これまでにないゲーム体験が実現できたので、ぜひお楽しみいただければと思います。

寺田PS5の能力をいちばん発揮できるゲームに仕上がったと自信を持っています。本作を通して、ユーザーの皆様に、PS5やHDゲームのすばらしさを改めて体感してもらえればと思いますので、ご期待ください。

光野ストーリーやアクションだけではなく、本作は音楽にも力を入れています。ストーリーに合わせて、心や感情を揺さぶられるような音楽や仕掛けをいろいろと用意していますので、できるだけ多くの方に遊んでもらえるとうれしいです。

『FORSPOKEN』インタビュー