ファミ通.comの編集者＆ライターが年末年始のおすすめゲームをひたすら紹介する連載企画。ライターのタワラがおすすめするタイトルは『Thymesia』です。
【こういう人におすすめ】
- ソウルライクなハードアクションを求めている
- プレイヤーの実力重視な手に汗握るボス戦を体験したい人
- シングルプレイで短期間でスッキリ終われるゲームを探している人
タワラのおすすめゲーム
『Thymesia』
- プラットフォーム：Nintendo Switch、プレイステーション5、Xbox Series X|S、/PC（Steam）
- 発売日：2022年8月18日発売
- 発売元：Game Source Entertainment（アジア/日本）、Team17（グローバル/DL版）
- 開発元：OverBorder Studio
- 価格：4818円［税込］、ダウンロード版/3499円［税込］
- 備考：Nintendo Switch、Xbox Series X|S、PC（Steam）はダウンロード専売 Nintendo Switch版は『Thymesia - Cloud Version』として配信
テンポよく攻撃を跳ね返すのが気持ちいいハイクオリティな高難度アクション
名作アクションゲームをクリアーした後、記憶を消してもう一度遊びたいと思うことがある。高難度のボスは初めて撃破できた際に代えがたい達成感を味わえ、それは同じボスをもう一度倒しても得られないからだ。
とはいえ都合よく記憶を消すことはできないので、あの感覚を味わいたくて似たようなゲームを探すわけだが、本記事で紹介する『Thymesia』はまさに求めていた感覚を満たしてくれるゲームだった。
『Thymesia』のジャンルは高難度アクションRPGで、開発者が『ダークソウル』シリーズに強く影響を受けた作品。ただ、実際にプレイしてみるとソウルシリーズというよりは『SEKIRO：SHADOWS DIE TWICE』の影響が大きいように思える。
リズムに合わせるように敵の攻撃を弾き、一瞬の隙を見つけて反撃に転じる。最初は手も足も出なかったボスに何度も負けながらパターンを覚えて勝利する、あの絶妙な心地よさや達成感を強く味わえるアクションゲーマーにはぜひプレイしてほしいクオリティに仕上がっていた。
ソウルライクなゲームはシステムが似ていてもアクションに満足できなかったり、ボス戦が簡単であっさりと終わるものも多いが、『Thymesia』であれば手に汗握る戦闘を渇望している人も納得できるはずだ。
プレイヤーは、疫病が蔓延し世界中に怪物が蔓延る時代を舞台に、世界を救う鍵を握る謎の人物“コルヴス”として自身の失われた記憶を集める旅に出る。ペスト医師のような外見で、両手に剣を持っているのが特徴のキャラクターだ。ちなみに本作はキャラクリエイトや武器カスタマイズの要素はなく、探索や発見よりもとにかく敵との楽しい戦闘を味わうバトル重視の内容になっている。
操作方法については、アクションゲームでおなじみの形式で特殊な操作もほぼない。移動やダッシュなどを使いつつステージを進んでいき、道中現れる敵を倒しつつボスのいる場所を目指していくという流れだ。多少の寄り道やアイテム収集要素はありつつも、基本的にはほぼ一本道で先に進むのに迷う場面はまったくなかった。
肝心のバトルシステムについては、文句なしのおもしろさだ。やや特殊な戦いかたが求められるのだが、システムに慣れてくると飛躍的に戦いが楽しくなってくる。基本攻撃は剣による連撃で、初期時点では最大3連撃の攻撃をくり出すことが可能。攻撃のスピードも速く、軽快なアクションで戦える。基本は敵の隙を見つけて剣を振りダメージを与えるのだが、この攻撃だけではほぼ敵を倒せないのがポイント。
剣でダメージを与えると敵のHPバーの白いゲージが減っていき、緑色の体力ゲージが見えてくる。白のゲージが体勢ゲージ、緑が体力ゲージとなっており、両方が0になることで初めて敵を撃破できるという仕組みだ。くり出しが早くほぼ隙のない剣攻撃はリスクは少ないのだが、この攻撃で減らせるのは体勢ゲージのみで、トドメを刺すことができないのだ。
この緑のゲージを減らすために爪攻撃を使うのだが、こちらは剣攻撃とは違いやや発動までに時間がかかり、攻撃後の隙もある。いわゆる弱攻撃が剣、強攻撃が爪のイメージで、そのどちらも使用しないと敵を倒せないのが戦闘のキモだ。
また、剣で削った体勢ゲージは一定時間の経過で自然回復するため、慎重すぎる立ち回りでは敵にダメージを与えにくい。逃げながら少しずつダメージを与えるのではなく、とにかく攻めて攻めて攻めまくる泥くさいファイトスタイルがよく似合う戦闘システムは、高難度アクションが好きな人ならすぐに気に入るはずだ。
剣攻撃以外にも、敵の攻撃をタイミングよく跳ね返すことで体勢ゲージを削る、いわゆるパリィや弾きに近いアクションも存在。こちらは剣攻撃をするよりも削れる体勢ゲージの量は多いが、もちろん失敗すれば敵の攻撃を防げずにダメージを受けることがある。
ただ、跳ね返しのアクション後はすぐに回避動作を取れるため、狙うのにそれほどリスクは感じなかった。アクションのくり出しも早いため、回避で逃げつつ確実に跳ね返しを狙える攻撃だけ弾くといった戦法も使え、とくにボス戦では剣攻撃より安定して使える印象だ。
そのほか、遠距離攻撃ができる羽を飛ばすアクションがあるのだが、こちらは攻撃用というより敵アクションに対するカウンターがメイン。一部の敵は跳ね返しができないクリティカル攻撃を仕掛けてくるのだが、この攻撃は発動前に羽を当てることで発動をキャンセルできるのだ。
羽以外にも、レベルが上がり技能を習得するとクリティカル攻撃の跳ね返しが可能になったり、踏みつけてジャンプをする新たな発動キャンセル手段も習得できる。敵にもよるが、羽によるキャンセルよりはジャンプのほうを多用する場面が多かった。
紹介した剣、爪、羽の3つが基本アクションになるのだが、そのほかにも疫術という魔法のようなアクションも使用できる。疫術はややユニークな要素として、朦朧状態の敵から奪うことも可能だ。爪攻撃を長押しすると溜めは長いのだが、敵から疫術を奪うアクションをくり出せるので、周囲にほかの敵がいない場合は積極的に奪ったほうがお得。
疫術は敵から奪うと一回のみ使えるほか、あらかじめセットしておいたものを気力ゲージを消費して発動することも可能。敵を撃破した際にドロップする素材を集めると新たな疫術を習得でき、一部ボスの技も扱えるようになる。
疫術を一切使わずに攻略も可能だが、弱い敵が集団で襲ってきた際などはとくに役立つ。ボスの印象的だった技をコピーして使えるというのも魅力のひとつで、武器に変わるカスタマイズ要素として機能している。くり返し敵を倒して素材を集めることでアップグレードもできるため、気に入った疫術の強化目当てでステージを周回するやり込み要素にもなるだろう。
以上のアクションを駆使して強敵を屠っていくのだが、本作はステージ道中からボス戦までとにかく気持ちのいいアクションを体験できるデザインになっているのが見どころ。
通常の弱い敵は脅威性はほぼなく、一方的にサクッと倒せる。ただ、道中では通常の敵より圧倒的に強い、いわゆる中ボス的な立ち位置の相手が定期的に登場して、高難度アクションに相応しい壁として立ちはだかるのだ。
中ボスは体力の多さはもちろん攻撃アクションも豊富で、跳ね返しを駆使して体勢ゲージを削らないと撃破が難しい。加えて隙を見つけて爪攻撃で体力も削らないといけないので、敵の攻撃パターンを把握するまでは何度も敗北することになった。
敗北すると当然経験値はロスト、セーブポイントからやり直しになるのだが、ありがたいことに道中の敵が弱いのでテンポよく中ボスにリトライできる。定期的にセーブポイントもあるためやり直しが苦にならず、何度もチャレンジして少しずつ勝ちに近づいていくのが楽しい。
ボスだけでなく道中の強い個体も中々にクセが強く、連撃の最後だけ微妙にタイミングをずらしてきたり、奇抜な動きで惑わしてくる。そういった敵の攻撃パターンをすべて覚え、完璧に跳ね返しをして撃破できた時の爽快感は何物にも代えがたい。
本来ボス戦で得られる爽快感を道中も定期的に提供してくれるので、新しい強固体が登場するたびにワクワクさせられた。
そして当然、ボス戦はそれを上回る手応えを提供してくれる。最初のボスからして攻撃タイミングが掴みにくく、蹴りなどのアクションも織り交ぜてくる難敵で、最初はほぼダメージを与えられずに敗北してしまった。
しかし、何度も挑むうちに跳ね返しの成功率も増え、最終的にはリズムゲームのような気分でテンポよく攻撃を跳ね返せるようになる。最初は理不尽にも思える攻撃で絶対に勝てないと思った相手に、最後はほぼノーダメージで撃破できたときの達成感は格別だ。
登場するボスのほとんどは跳ね返しを駆使して撃破を目指すタイプなので、上手く戦えるほど気持ちよくなれる。全体的に良ボスが多く、撃破後の満足感も大きいので、強敵との戦いに飢えている人にはぜひチャレンジしてほしい。
本作はステージ攻略式で、チュートリアルの負けイベントを除けばメインストーリーで戦うボスは4体しかいない。ただ、ボスが全部で4体しかいないわけではなく、メインストーリー攻略後に解放されるサブクエストでさらなる強敵が待ち構えている。
サブクエストでは新たな敵と戦えるほか、落ちている日記などを拾うことでその場所でどんな悲劇が起こったのか、より深い世界の設定などを知ることができる。5つのエンディング分岐の条件を満たすためにも、サブクエストの攻略は欠かせない。
ハードな戦いを存分に楽しめる難敵も登場するので、跳ね返しのアクションに魅了された人は全ステージのコンプリートを目指してほしい。
各種アクションの手応えは良好で、ボス戦のクオリティーは高難度アクションのジャンル内でもトップクラスのおもしろさに仕上がっている『Thymesia』。武器は固定で探索系の要素も薄いものの、とにかく強い敵との戦闘を楽しみたいという人なら間違いなく満足できるクオリティーだ。
レベルが上がると技能でのアクションも追加され、さらに戦いかたの幅も広がっていく。防御寄り、攻撃寄りと自分で技能を選んで習得できるため、跳ね返しのアクションが苦手な人も技能次第でクリアーが可能だ。全ステージを攻略しても11時間程度で終わるボリュームなので、気軽に遊べる高難度アクションを求めている人には強くオススメしたい。
