2023年にNEOWIZが発売を予定している、ソウルライクアクション『Lies of P』。世界的な童話“ピノッキオの冒険”を原作に、ハードコアな戦闘が楽しめるゲームとして注目されています。

 2022年11月17日~20日に開催された韓国最大のゲーム展示会“G-STAR 2022”にてアジア初のプレイアブルデモを出展。プレイした感触や日本メディア向けのカンファレンスについて、これまで記事をお届けしてきました。

『Lies of P』インタビュー。“ソウルライクの快感”とは一瞬の判断が正しい結果につながること。耽美な世界に秘められた戦闘特化プロデューサーの思惑
『Lies of P』インタビュー。“ソウルライクの快感”とは一瞬の判断が正しい結果につながること。耽美な世界に秘められた戦闘特化プロデューサーの思惑
『Lies of P』インタビュー。“ソウルライクの快感”とは一瞬の判断が正しい結果につながること。耽美な世界に秘められた戦闘特化プロデューサーの思惑
『Lies of P』インタビュー。“ソウルライクの快感”とは一瞬の判断が正しい結果につながること。耽美な世界に秘められた戦闘特化プロデューサーの思惑

 本稿では『Lies of P』統括プロデューサーであるチェ・ジウォン氏へのインタビューをお届け。本作誕生の経緯からゲームシステム、やりこみ要素など、気になる点を伺います!

チェ・ジウォン

『Lies of P』統括プロデューサー。文中ではチェ。

『Lies of P』インタビュー。“ソウルライクの快感”とは一瞬の判断が正しい結果につながること。耽美な世界に秘められた戦闘特化プロデューサーの思惑
インタビューには、チェ氏(中)に加えて、開発元である“Round 8 Studio”スタジオ長のパク・ソンジュン氏(左)とアートディレクターのノ・チャンギュ氏(右)が同席。

日本のゲームに大きな影響を受けて

 インタビューの前に、チェ・ジウォン氏の経歴や『Lies of P』の説明が行われました。

 今回のインタビューにお答えいただいたチェ氏は、子供の頃から日本のゲームのファン。日本のゲームに大きな影響を受けて育ち、中でも『ストリートファイター2』が自身にとって人生を変えたゲームで、ゲーム開発を夢見るきっかけにもなったのだとか。

『Lies of P』インタビュー。“ソウルライクの快感”とは一瞬の判断が正しい結果につながること。耽美な世界に秘められた戦闘特化プロデューサーの思惑

 チェ氏はこれまでに『ダークブラッド』、『Asker Online』、『ロストアーク』などのオンラインRPGに携わり、開発者としてたしかな実績を積んできました。そんなチェ氏にとって『Lies of P』は初めてのソウルライクジャンル。本作でコンシューマー向けの開発に挑戦することとなりました。

 そういった意味でも、チェ氏やNEOWIZにとって大きな挑戦となった『Lies of P』では、より多くの人になじみのある概念(イメージ)を借りて、ユーザーの皆さんに認知してもらうことが重要な戦略だと考えたそう。

『Lies of P』インタビュー。“ソウルライクの快感”とは一瞬の判断が正しい結果につながること。耽美な世界に秘められた戦闘特化プロデューサーの思惑

 そのために選択したのは、世界的童話“ピノッキオの冒険”でした。ゲームのメインプレイヤーである大人のための、残酷童話として解釈。物語を残酷劇へと変更したことに加えて、華やかなベル・エポック時代を再解釈して、闇と狂気の都市へと変貌させたそうです。

 結果、『Lies of P』は2019年の発表時にアメリカのTwitterトレンド総合1位を獲得。韓国ゲーム業界で初めてGamescom award3部門受賞の達成。ユーザーだけでなく、海外メディアの皆さんもからも多くの高評価をいただくことができたと、チェ氏は笑顔でお話しされていました。

『Lies of P』インタビュー。“ソウルライクの快感”とは一瞬の判断が正しい結果につながること。耽美な世界に秘められた戦闘特化プロデューサーの思惑
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ソウルライクの醍醐味を分析し、駆け引きに注力

――『Lies of P』の開発を構想し始めたのはいつ頃でしょうか。

チェ2019年の春頃です。

――ソウルライクというジャンルを選んだ理由は何だったのでしょうか?

チェいまやソウルライクゲームは多くのゲームファンが身近に楽しんでいるジャンルで、販売量も多いです。そういう状況で、韓国を代表するソウルライクのゲームを作りたいと考えました。

――ソウルライクやソウルシリーズをリスペクトし、その結果生まれた本作のオリジナリティや魅力を教えてください。

チェ難易度の設計です。ソウルライクは操作の速さや精密さによって高度なアクションを楽しめるのはもちろんですが、それ以上に「自分がなぜ失敗したか」という経験を蓄積し、それを踏まえた判断を問われるのが醍醐味です。ひとつひとつの戦闘にこれほどの経験と判断力が必要なゲームは、ソウルシリーズが登場する前には存在しませんでしたし、一般的に言われる“ソウルライク=難度が高い”という評価はこのシステムによるところも大きい。『Lies of P』では、そうして生まれたユーザーの判断が正しい結果につながる瞬間に、どのゲームよりも大きな達成感を感じられるように作っています。

『Lies of P』インタビュー。“ソウルライクの快感”とは一瞬の判断が正しい結果につながること。耽美な世界に秘められた戦闘特化プロデューサーの思惑

――これまで関わってきたタイトルと『Lies of P』を比較して、いちばんの違いはどういう点でしょうか?

チェ私はおもにアクション中心のRPGを開発してきた、言わば戦闘に特化した開発者です。最近だと『ロストアーク』で戦闘開発を総括しています。そういう意味で、本作はもっとも差別化された戦闘システムとストーリーを持った作品です。

――作品作りで苦労している点はありますか?

チェ日本と異なり、韓国はコンシューマーゲームの歴史がほとんどありません。そのため、コンシューマーゲーム制作の経験が豊富な開発者を集めるのは本当に困難で、制作過程で発生するすべての問題点を直接ぶつかって解決するしかありませんでした。幸い、コンシューマーゲームへの憧れと希望を持った仲間が多く、うまく乗り越えられています。仲間にこの場で感謝の言葉を贈りたいです。

――以前、別のインタビューで、ソウルライクのアクションはこれまでとはまったく考えかたが違うので、挑戦するのがたいへんだったとお話しされていました。逆に、いままでの開発経験が生きた部分はありますか。

チェ戦闘は攻撃をする側と守備をする側、双方の駆け引きにおけるアクションに絶妙なタイミングがあります。そういった部分でいままでの開発経験が活きました。戦闘でキャラが死亡しても、「自分がちゃんとできなかったから死亡した」と納得できるような状況を作ることが大事ですし、戦闘していくうちに、「自分がうまくできたら勝てるんだ」とプレイヤーに考えさせるのも大事だと思います。また、打撃感は世界最高のレベルです!

――開発陣の熱量は、G-STAR 2022で50機もの試遊台が用意されたブースからも感じられました。ユーザーのみなさんがプレイをされているのを見た感想を教えてください。

チェ多くの人が『Lies of P』で遊んでいるのを見られて、本当に感慨深かったです。感動していますし、ひとりひとりに「ありがとう」と伝えたいです。

『Lies of P』インタビュー。“ソウルライクの快感”とは一瞬の判断が正しい結果につながること。耽美な世界に秘められた戦闘特化プロデューサーの思惑

『Lies of P』ならではの魅力と遊びかたを追及

――今回の試遊ではチャプター2と3を選ぶことができました。それぞれステージの特性が異なりましたが、これらのステージは行き来ができるのでしょうか?

チェ本来はステージがすべてがつながっています。試遊版では、ゲームを体験しやすいようにチャプターを分けていたんです。

――プレイを通して、ベル・エポック時代を背景にした世界観は本当にすばらしいと感じました。実際に参考にした都市はあるのでしょうか? ロケハンには行かれましたか?

チェはい。モンマルトル近郊街や市庁舎前の広場街、シテ島近郊街、南部地域モンサンミシェルなどを見て、インスピレーションを得ました。

『Lies of P』インタビュー。“ソウルライクの快感”とは一瞬の判断が正しい結果につながること。耽美な世界に秘められた戦闘特化プロデューサーの思惑
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――ダークで退廃的な禍々しい雰囲気を作るうえで、いちばん大事にしたことは何でしょうか?

チェ“ベル・エポック時代をダークな雰囲気に表現した創作物はほかにないと思います。ディテールを細かく表現することによって、私たちが目標にした“奇怪だが、美しい世界観”を表現できるようがんばりました。

――武器の柄と刃を組み合わせる武器合成システムは本作の大きな特徴だと思います。一般的なゲームでは、まったく違う武器をクリエイトして使うことが多いですが、どういった意図でこのシステムを採用したのでしょうか?

チェ従来のゲームでは、新しい武器を選ぶとき、これまで使用していた武器と性能を比較して悩んでしまいますよね。その悩みをより楽しいものとするために、武器の長所だけを取り、欠点を解消するという概念を取り入れることで、プレイヤーに肯定的な変化を与えるという趣旨で制作しました。

『Lies of P』インタビュー。“ソウルライクの快感”とは一瞬の判断が正しい結果につながること。耽美な世界に秘められた戦闘特化プロデューサーの思惑

――武器種はいくつあるのでしょうか? また、武器合成の組み合わせは何通りくらいを想定されているのでしょうか。

チェ約30種類以上の個性あるオリジナル武器セットがあり、刃と柄に分離して組み合わせることで100種類以上の武器を楽しめます。具体的には、剣、刀、両手の槍、盾と剣、ハンマー、斧だけでなく、奇妙な形の武器も用意しています。できるだけプレイヤーに多様な個性を感じてもらえるデザインにしました。

 武器だけでなく、(主人公・Pの)左手の義手に組み込んだギミックも戦闘のバリエーションを豊かにする要素です。こちらの種類は8つ。さまざまな形で攻撃できるように考案しました。強化によって新しいスキルも使用可能になります。

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プレイすればするほど楽しめる奥深さ

――ストーリーにおいては嘘をつけるシステムがとても新鮮です。“Pが嘘をつくと人間性を獲得する”と伺っていますが、嘘をつくことはプレイにどの程度の影響を与えるのでしょうか?

チェお話しの通り、嘘を選択すると人間性ポイントを得られます。しかし、単純な会話を通じた嘘がすべてではなく、人形であるPが人間のように嘘をつく瞬間が、人間性ポイントを得るきっかけになります。具体的な内容はネタバレになるので、ここまでしかお話しできません。

――嘘をつくことでペナルティが課せられたりするのでしょうか?

チェ嘘はペナルティにはなりません。嘘をつくことでシナリオが変化するため、物語の展開を知りたくて選択するプレイヤーに不利な状況を作らないためです。Pが嘘をつくことで段々と人になっていく……。その中で生まれる物語が本作の魅力でもあるので、ぜひ楽しみにしていてほしいです。

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――主人公以外のキャラクターもたくさん登場します。嘘をつくことで、彼らの物語も変化をしていくのでしょうか?

チェ本作はマルチエンディングを採用しており、嘘をつくことで物語は大きく変わります。ですので、主人公の選択によって主要なキャラクターやNPCの運命も変化します。

 マルチエンディングは3種類。エンディングによっては隠された真実に近づき、黒幕なども判明していくでしょう。物語を進める中で、主人公である“P”が見せるさまざまな姿は大きな見どころになるはずです。

『Lies of P』インタビュー。“ソウルライクの快感”とは一瞬の判断が正しい結果につながること。耽美な世界に秘められた戦闘特化プロデューサーの思惑

――想定しているプレイサイクルを教えてください。

チェ戦闘と成長に関わる要素をたくさん用意しており、これらの奥深さを知れば知るほど、プレイが楽しくなる仕組みになっています。自分の知る情報が増えれば、楽しい悩みも増えていくでしょう。クリアー後は成長したままより高い難度に挑戦可能です!

――レベルアップのほかに、どのような成長要素がありますか?

チェ“Pの機関”という要素を活用し、さまざまな成長を楽しめるシステムを採用しています。また、義手や武器を強化できます。

――オンラインマルチプレイ機能はありますか?

チェ残念ながらオンラインマルチプレイ機能の搭載予定はありません。我々も初めて挑戦するジャンルですから、ゲームの難易度、アクション、レベルデザイン、探索性など、純粋なゲーム性のクオリティアップに全力を注いでいます。

――ゲーム内にイースターエッグ(隠し要素)はありますか?

チェイースターエッグはたくさんあります。詳しくはお話できませんが、プレイヤーがその要素を見つけるのも、ひとつの楽しみになるはずです。

――ブースでは8Kでの展示もありましたが、製品版もこの解像度でプレイをすることができるのでしょうか?

チェプレイ環境をご用意できる方ならば、8Kでもプレイ可能です。

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――現在の完成度を教えてください。

チェ開発のほとんどは終わっていて、バグチェックやクオリティアップなど、最終的な部分を整えている段階です。

――日本語版は字幕だけなのでしょうか? また、日本人が遊べるタイミングはグローバルと同じなのでしょうか?

チェ世界観を維持するために本作は英語がベースで、日本語を含むほかの言語は字幕です。今後、開発が進んだところでの言語も導入できたらいいとは考えています。リリースは全世界同時予定ですので、お楽しみに!

――『Lies of P』をとくに誰に体験してほしいですか?

チェ欲を言ってしまえば、大尊敬する宮崎英高さん(フロム・ソフトウェア代表取締役社長)にぜひ遊んでみていただければと思います。フィードバック、お待ちしております(笑)。そして、アクションゲームの宗主国と言える日本のゲーマーの皆さんからもいい評価を受けられるよう最善を尽くします。ぜひご期待ください!

『Lies of P』インタビュー。“ソウルライクの快感”とは一瞬の判断が正しい結果につながること。耽美な世界に秘められた戦闘特化プロデューサーの思惑

 チェ・ジウォン氏らの熱量やG-STAR 2022でのブースから、開発陣が『Lies of P』にかける本気度と夢をうかがえた。インタビューに同席された開発元“Round 8 Studio”スタジオ長のパク・ソンジュン氏は「日本はコンシューマゲームの歴史が長く、多くのタイトルがあります。これから日本のいろいろな開発者や企画者とコラボしたり、協同開発できる機会があれば、ぜひ一生懸命作りたいと考えています」と仰っていた。「ぜひお声がけください!」とも。

 多種多様なアクションが楽しめる戦闘や育成要素、個性的なキャラクターや“嘘”が大きく関わる物語など、『Lies of P』には気になる要素がまだまだ多数。日本への上陸を心待ちにしよう!