スマートフォン向けゲーム『Fate/Grand Order』(FGO)の第2部 第6章“Lostbelt No.6 妖精円卓領域 アヴァロン・ル・フェ 星の生まれる刻”のストーリーの結末まで触れるトーク番組“Spotlight Lostbelt No.6”で公開された、奈須きのこ氏のコメントをすべて紹介する。(※随時更新中

 なお、本記事には第2部 第6章のネタバレが含まれている。未クリアーの人は注意してほしい。

Spotlight Lostbelt No.6

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第2部 第6章の設定面でこだわったポイントを奈須きのこ氏が回答

 第2部 第6章の設定面でこだわったポイントについて、奈須きのこ氏のコメントを紹介する。

【奈須きのこ氏のコメント全文】
 “妖精たちの国”なので、背景美術はあまり奇をてらわず、王道ファンタジーに徹しました。

 人間の生活習慣を模倣して暮らす無垢な妖精たちをテーマに、森、城、牧歌的な空気、人類史ではありえない不思議な法則、あらそいのない、穏やかな世界、と。

 そのうえで“我々とは異なる世界を持つ世界”として、“どうやって世界はリスタートしたのか”、“この世界の土台にあるものはなんなのか”をしっかり煮詰めた後、順当に年表を作っていきました。楽しかったです。

フォウくんが同行しなかった理由

 フォウくんが第2部 第6章に同行しなかった理由が奈須きのこ氏のコメントで明らかになった。

【奈須きのこ氏のコメント全文】
 地元かつ妖精の気配しかしなかったので。

 「行くとイヤなこと思い出すだろうし、なにより妖精といても得るものがない。あいつら中身空っぽじゃん」みたいな。

 この場合のからっぽ、は“精神性が成長しない”ことを指しています。

 フォウはよくも悪くも、人間の精神の在り方・育ち方を糧にする…………なので。

奈須きのこ氏が語る思わぬ活躍をしたキャラクター

 第2部 第6章で思わぬ活躍をしたキャラクターとして名前が挙がったゴブリン三人組とレッドラ・ビットについて、奈須きのこ氏のコメントを紹介する。

【奈須きのこ氏のコメント全文】
 ゴブリン三人組。プロットでは名前しかなかったのにね。

 そして、プロットに名前さえなかったレッドラ・ビット。あまりにも気持ちのいいヤツだったので、執筆中、「こいつこのまま間者やってたら心折れるんじゃないか?」と思っていたら、ほんとにあるタイミングで「もう無理」となって、藤丸たちの会話に自発的に絡まなくなってしまいました。

【ゴブリン三人組について】
 妖精國の妖精はある意味“人間社会を知らない妖精”なので、我々の世界の童話に出てくるようなハイホーハイホーな妖精たちをだしたかったのです。

 あとは、まあ……“元いた社会”でも“いまいる社会”でも爪弾きにされた彼らだからこそ作られるドラマがあるだろう、と。

“失意の庭”で奈須きのこ氏が描きたかったこと

 “失意の庭”で奈須きのこ氏が描きたかったこととは? 同氏のコメントにて明らかとなった。

【奈須きのこ氏のコメント全文】
 2部の舞台が異聞帯になった時点で、“いつかやらなくてはならないこと”として議題にあがっていました。

 第6章でアルトリア・キャスターという“救世(ぐぜ)を背負わされた少女”と知り合い、マシュと別れ、オベロンという友人を得て、“そのタイミング”がやってきたのでしょう。

 “失意の庭”は罪(生き方)を問うのではなく、その人物にとって決して“見たくない/恐れている”ものをみせるもの。

 人それぞれが持つ価値観・道徳・人間性が、いまある意思を折りたたみにくる底なし沼。

 自分がいちばん恐れているものを、自分だけの答えで受け入れ、人間的に強くなる(成長する)ことで霧散するものでした。

 近いようで遠いのが、“ぶっちぎり茶の湯バトル ぐだぐだ新邪馬台国 地獄から帰ってきた男”であった呪い空間。

 あれはいわば社会の価値観で罪を問うてくる“断罪の庭”。客観的に見て罪を犯しているものへの精神干渉だけど、「おまえたちの価値観なんざ知るかバカ、こっちは自分の価値観だけで手いっぱいだ!」といった、罪を背負う覚悟がガン決まっている人間は一刀両断で解決します。

トネリコとモルガンの歩みの年表が公開

 物語の振り返りに役立つ、トネリコとモルガンの歩みを記載した年表が公開された。

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トネリコの歩み

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モルガンの歩み

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モルガンの最期がああなった理由

 モルガンの最期について、奈須きのこ氏のコメントが公開された。

【奈須きのこ氏のコメント全文】
 どれほどの理由、愛情、努力があったとしても、冬の女王として君臨した以上、それ以外はなかったのです。

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描くのに悩んだ展開や想定から大きく変化した展開は?

 第2部 第6章の展開について、悩んだことや想定外だったことについて、奈須きのこ氏のコメントを紹介する。

【奈須きのこ氏のコメント全文】
 第6章開発が始まる前に提出したプロットから大きく変わったところはありません。

 ただ、直前までマシュを第四の妖精騎士としてモルガンの配下にするか、いまの形にするか、はギリギリまで悩みました。

 想定から外れたところはシナリオ容量が多くなったことくらいです。

 文庫本3冊が終わるかな? と思ったら4冊かかった。みたいな。

スチル(イベントCG)が多い理由

 第2部 第6章のスチルの量がこれまでの章よりも多かった理由、そしてスチル化を諦めなければなからなかったシーンを奈須きのこ氏が明かした。

【奈須きのこ氏のコメント全文】
 じつのところ、イベントスチルは前編・後編・崩壊編、を3つの章と考えるとそこまで多くはありません。本来、ひとつの章にスチルは3~6枚くらいの規模です。

 前編と後編はスチル数を減らして、崩壊編にそのぶんのリソースを回した結果、スチルがたくさんある!という印象になったのだと思います。

 前編はノリッジで群衆をかきわけて走るマシュとか、冒頭での村正とランスロットの空中戦とか、スチルでやりたかったのですがそこは我慢。村正とランスロットのシーンはスチルでは断念したので、CMアニメのほうで実現してほしい、とアニメスタッフにお願いしてあありました。

 後編では燃える秋の森で佇むオベロンとか、狼に餌をあげながら待っているグリムとか、ノクナレアとのチョコ対決とか、モルガンの最期とか、どこまでも落ちていくあの娘の亡骸とか、いっぱい断念しました。

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声優キャスティング意図

 モルガン役の声優・石川由依さんが、どうして自分をキャスティングしてくれたのか、と奈須きのこ氏に質問したところ、以下のような回答があった。

【奈須きのこ氏のコメント全文】
 6章のサーヴァントは立ち位置がはっきりしていたので、キャスティングもすんなり決まりました。

 例外はメリュジーヌで、TYPE-MOON世界で重要な立ち位置であること、自分がいままで扱ったことのない性格であることもあり、“透明感があり、プライド高く、人の心わかってなく、少女漫画チックなキラキラ感があって、それでいて凛々しい王子様ができて、寂しがり屋”といった要素をふまえて、最終的に高野さん(高野麻里佳さん)にいきあたりました。

 キャラ的に難しかったのはモルガンで、“悪の女王”という肩書きだけど、それは表面的なもので、モルガンの成り立ちを説明するのはそれこそ早口で何時間も語らなくてはならなかった。

 ですが収録時、キャストさんに“設定語り”をすればするほどキャラのイメージを曖昧にしてしまうので、それはNG。なので、最小限の説明でガッチリとモルガン/トネリコの声が返ってくるキャストさんが必要だった。

 幸いなことに石川さんは『Fate/EXTRA』シリーズでお仕事をしていたとき、“クールな役であっても、芯の部分に少女の可憐さ、柔らかさを持つ”というボイスをきかせてもらっていたので、石川さんであればモルガン/トネリコを演じてくれると考え、オファーをださせていただきました。結果は言うまでもありません。

 石川さんからボイス台詞をいただいて、シナリオ執筆時、第6章におけるモルガンの物語の強度は増したと思います。

第2部 第6章は“全員が片思いの物語”だった?

 オベロンのキャラクターデザインを担当した羽海野チカさんが、“第2部 第6章は全員が片思いの物語だったのでは?”という考察をしていた裏話が明かされ、それについて奈須きのこ氏が回答した。

 なお、全員が片思いの物語は奇しくも羽海野チカさんの代表作である『ハチミツとクローバー』と同じシチュエーションだ。

【奈須きのこ氏のコメント全文】
 夏コミのプロット本でもあったけど、初期案が目に見えない啓示的な秩序、人々を束ねる(集める)磁力のようなものがない世界なので、誰もが利己的な生き方をしている。善人も悪人も社会正義より、自分の愛(やりたいこと)をいちばんに行動する。

 なので、どんな善人でも当然のように他人を傷つけ、どんな悪人でも恋人のために自分を捧げる。その先にあるのはすれ違いが連鎖する悲劇なのです。

なぜオベロンは刀が欲しかったのか?

 オベロンが刀を欲しがった理由についての奈須きのこ氏のコメントを紹介する。

【奈須きのこ氏のコメント全文】
 かっこいいから! どんなにひねくれていたりやさぐれていたりしても根はわんぱくな男の子なんですね。

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オベロンがコヤンスカヤを嫌っていた理由とは?

 オベロンがコヤンスカヤを嫌っていた理由を奈須きのこ氏が明らかにした。

【奈須きのこ氏のコメント全文】
 ふたりとも、一発で「こいつ嘘つき!」と見抜いたからです。同族嫌悪!

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開発中や仕事中に奈須さんは嘘をついたことはある?

 オベロンに迫る企画の中で、“開発中やお仕事中に嘘をついたことはありますか?”という質問が奈須きのこ氏に向けて寄せられた。質問に関する奈須氏の回答は以下のとおり。

【奈須きのこ氏のコメント全文】
 つかなくてもいい嘘は、この歳になってもしてしまいますね。ミエをはって平気なフリをしてしまいます。

 あとは……「だいじょうぶ。そんなに長くならないよ」「だいじょうぶ。そんなに(絵にするのが)難しいシーンにはならないよ」とスタッフさんに言うのですが、なぜか結果的に嘘になってしまう、という現象が多々起きます。おっかしいなぁ。リラックスして仕事を受けてほしかっただけなのになぁ。

羽海野チカさんがオベロンのデザインで気に入っていること

 オベロンのデザインについて、羽海野チカさんのコメントが紹介された。以下で全文をお届けする。

 なお、オベロンの再臨第1段階の羽根はフェイクで、あえて絨毯(じゅうたん)ぽい質感で描かれている。ベースはアゲハ蝶だが、実在しない蝶の模様になっているという。虫に詳しい人であれば、偽物であると気付いたかもしれない。

 ちなみに、オベロンで本格的にデジタル作画に挑戦することになった羽海野さんは、iPadにて作業を行ったそうだ。そして、オベロンのレイヤー数はたったの14枚だったという。

オベロンのキャラクターデザインで気に入っているポイントは?

【羽海野チカさんのコメント全文】

  • ゲームのキャラクターデザインを担当させていただいたのが初めてだったこと
  • デジタルで絵を描くのがほぼ初めてだったこと
  • 子どものころ“ジャポニカ学習長”の表紙の写真を見ただけで気を失えそうなほど苦手だった昆虫を拡大して観察することができるようになったこと

 初めてだらけの出来事の中を、生まれたてのオベロンとよちよち歩けたことが一生忘れられない想い出になりました。

 気に入っているポイントはうまく言えないのですが、ただただオベロンが大事に思えてなりません。オベロンを描かせていただけて本当に幸せです。

絵を描く中で感じたこと

 ゲームでしかもファンタジー寄りのキャラクター。やったことのない仕事で最初はどう描いていいかわからなかった。

 しかも性格もつかめない難しいキャラクターということもあり、彼がこの世に生まれた瞬間からの気持ちを想像して、どんな心境になっていくのか自分なりに想像をふくらませて、とにかく大量のラフ(スケッチブック3冊ぶん)を描いた。

メモリアルイラストのオベロンについて

 第2部 第6章を通して、目に焼き付いたのは、こらいくらいに美しい黄昏の空です。

 最初のラフでは“ブランカの眼に最後に映った、幻”。この世でいちばん美しい、空と、秋の森と、そしてこの世界でいちばん大切な王さまが微笑んで手を延ばしてくれている情景でした。

 けれど、いまの私の力量では、どうしてもうまく描くことができなかったのと、王さまとブランカ“ふたりが居た”風景を描きたくなり、この絵になりました。

 本当のことを言えないオベロンが何を言わなくてもいい(嘘をつかなくていい)ただひとつの存在。それがブランカだったのだと思います。

 秋の森が燃え、唯一残ったブランカが王さまとともに最後の幕を引くために飛び込んできたところを想い、描きました。本当はもっと、傷だらけだったと思うのです。

 でも私の気持ちです。真っ白な姿のままの“秋の森の女王さま”を描きました。

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奈須きのこ氏がオベロンのデザインを見て感じたこと

 オベロンについて、羽海野チカさんが形にしていく中で、新たに生まれたもの(設定やセリフ)があったのか?という質問について奈須きのこ氏が回答した。

【奈須きのこ氏のコメント全文】
 物語における立ち位置、要所要所の決め台詞などは設定とともにおわたししていたので、追加された設定などはありません。羽海野さんがおひとりで文字だけの設定に向き合い、戦い、育んでくれたものです。

 ザ・妖精王、ともいえる霊基第一がまずこちらに送られてきて、「文句なし、イメージ通りのオベロンだ。これならいくらでもシナリオが書けるぞう!」と喜んでいたら、こちらが想定していなかった“マントを捨てた、飾らない妖精王”が霊基第二としてやってきて、トドメにあの霊基第三がやってきました。

 “手足が異形の、暗い沼の王子”といったリクエストはしたのですが、「羽海野チカが描くどろどろの魂をもった男子がほしい」とは言ったけど、「ここまですさまじいのが来るなんてコトある!? こんなの完全に奈落の虫じゃん!」「いや、奈落の虫とかオレ見たことなかったけど!」みたいな。

 オベロンはテーマも設定も複雑なキャラなので、正直、自分の力で書ききれるのか、という不安があったのですが、羽海野さんの完成稿を見たときに不安は消し飛びました。

 「書けるか、じゃない。このオベロンに相応しい最期を書けば、自然にそうなるはず」と。そういった意味では第6章のラストは羽海野さんとの合作かもしれません。オベロンのいろんな台詞も、あの立ち絵を見ていれば自然に浮かんできたものですし。

疑い続けると出る赤い選択肢について

 オベロンを疑い続けることで最後に出現する赤い選択肢について、奈須きのこ氏が回答した。

【奈須きのこ氏のコメント全文】
 オベロンに対する選択肢はオベロンの動向と、アルトリア・キャスターの動向をよーく見ているといろいろと不審なところがあるはずなので、友人としてそこにちゃんと向き合っていた場合だけ、最後の最後で本音を言いあえる仲になる、という仕掛けが必要だったのです。

 そこをちゃんとやらないとオベロンの真実は語っていけないな、と感じたので。

奈須きのこ氏による第2部 第6章の総括、そして第2部 第7章へ

 番組の最後に、奈須きのこ氏から届いた手紙を川澄綾子さんが朗読した。以下、コメント全文。

【奈須きのこ氏の手紙全文】
 長く作家業をしていると、まれに「自分の力以上の仕事ができたな」と思える瞬間に出会えますが、6章はまさにそれでした。

 一度はやってみたかった群像劇。異聞帯というひとつの世界の終わり。そして、TYPE-MOONが20年かけてやってきた、アルトリアというキャラクターの最後の答え。

 それを、多くの方の協力でなしえたのが、第6章でした。ゲーム作りには、多くの人たちの才能と時間が費やされています。

 第6章を形にしてくれたラセングルのチームスタッフ、サーヴァントをデザインしてくれたクリエイターさんたち、声で命を吹き込んでくれたアクターの皆さん。広報やリアルイベントで盛り上げてくれるアニプレさん。そして、信じて待ち続け、プレイしてくれたユーザーの皆さん。

 作り手側も受け手側も、ゲームに対して熱心な心をもっていたからこそ、『FGO』はここまで続いたのだと思います。その事実に、何より深い感謝を。

 この旅がどこに行く着くか、開発陣とともに期待と不安を胸に、最後までお付き合いくださいませ。

 と、いうわけで、続く第7章は第6章とは毛色を変えて、単純明快な冒険ものです!

 みんなー! 自分の部屋で秘境探検してみたいかー!(したいしたーい!)
 インフレの極致を味わいたいかー!(味わいたい味わいたーい!)
 地球大統領と戦いたいかー!(それはあんまりー!)

 よーし全部盛りだ、覚悟しろラセングル。予定よりオーバーしたシナリオ量に震えやがれー!

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