2022年11月11日にNintendo Switch、プレイステーション5、プレイステーション4、PC(Steam)用ソフト『タクティクスオウガ リボーン』が発売された(※Steam版は11月12日発売)。

 本作の主人公デニム・パウエルを演じるのは声優・前野智昭さん。じつは彼は、『タクティクスオウガ 運命の輪』をとことんやり込んだ大の『タクティクスオウガ』ファンでもある。今回そんな前野さんに“プレイヤー”と“声優”、ふたつの視点で『タクティクスオウガ』の魅力を語っていただいた。

 なお、本インタビューはネタバレを含みますのでご注意ください。

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『タクティクスオウガ リボーン』主人公デニムを演じた前野智昭さんインタビュー。「“その手を汚した”以降のデニムの声は、ほかのルートと違った味があると思います」

前野智昭さん(まえのともあき)

声優。茨城県出身。アニメから洋画や海外ドラマの吹き替えなど幅広く活躍。『うたの☆プリンスさまっ♪』(カミュ)、『刀剣乱舞』シリーズ(山姥切国広)、『アメイジング・スパイダーマン』(ピーター・パーカー)など、代表作多数。

プレイするきっかけはもうひとつの名作タクティクスRPG

――『タクティクスオウガ』をかなりやり込んでると聞きましたが、出会いはいつですか?

前野友だちがスーパーファミコンでプレイしてるのを見たときですね。おもしろそうだけど、少し敷居が高く見えて、あまり遊んだことがないジャンルだったので、けっきょくプレイしなかったんです。

――そうなんですか。

前野それから少し経って『ファイナルファンタジータクティクス』(『FFT』)が発売され、友だちと『ファイナルファンタジーVII』がすごく盛り上がっていたので、「『FF』のおもしろいシミュレーションRPGがある」、「クラウドも出てくる」、と話題になっていたんです。そこでプレイしてみたら……、どハマりしました。エルムドア公爵の“源氏シリーズ”を盗むために何10時間費やしたことか!!(笑)

『タクティクスオウガ リボーン』主人公デニムを演じた前野智昭さんインタビュー。「“その手を汚した”以降のデニムの声は、ほかのルートと違った味があると思います」
『ファイナルファンタジータクティクス』

――ああ、あれですね……。(※1)

※1……ファミ通が出していた攻略本『ファイナルファンタジータクティクス大全』に盗めないはずの装備品が、盗めると書いてあった件。

前野『FFT』はその後もプレイステーション・ポータブル版など、リメイクされるたびにプレイしていたんですが、2010年に『タクティクスオウガ 運命の輪』(以下、『運命の輪』)が発売されるときに、やってみようかなと手に取ったんです。そこからは本当にのめり込んでプレイしましたね。

――実際にプレイしたときの感想は?

前野「『ファイナルファンタジータクティクス』に似てる!(笑)」でした。

 本当は逆なんでしょうけどね。両方ともすごく深い作品だなと。ただ、『タクティクスオウガ』は主人公デニムの選択によっていろいろなルートがありますし、『FFT』より少し難度が高いかなという印象でしたね。そして、部隊編成を自分好みにできることもすごく刺さりました。ユニットを自分好みに育てたり、クラスをプラン通り成長させたりとか、そういう楽しみかたができるところに惹かれました。

――自分の編成が楽しめたとのことですが、前野さんの主力ユニットは誰でした?

前野『運命の輪』のときにオリジナル版から弓が少し弱体化されたみたいですけど、それでも弓は強いなと思いながら使ってました。

 なので、行動力があって高所から攻撃できるカノープスでした。そして、アロセール。ほかにもサラというモブ顔のキャラクターユニットもすごく好きで、毎回愛着を持って育てていましたね。

――カノープスは人気が高いですよね。

前野デニムのことを肯定してくれるキャラクターなので、嫌いな人は多分いないだろうなと思います。そのほかではオリジナル版で最強と言われているハボリムもかっこいいですよね。盲目の剣士で“剣聖”!

――もう、かっこいい要素しかないみたいな。

前野でも、なんだかんだ言っても最終的には、自分の部隊だとデニムが最強になっていました。『FFT』のときから“忍者最強説”がずっと自分の中であるので、大体“忍者”デニムで、二刀流でプレイしていましたね。あと、序盤だと“バーサーカー”デニムもけっこう使っていました。

C、N、Lの3つのルート。最初に選んだのは……やっぱり!?

――『タクティクスオウガ』はChapterが分岐しますが、『運命の輪』では、最初にどのルートに進みました?

前野当時は何も調べずにプレイしていたので、カオスルート(以下Cルート)になりましたね。やっぱり自分の手を汚せなかったです。

『タクティクスオウガ リボーン』主人公デニムを演じた前野智昭さんインタビュー。「“その手を汚した”以降のデニムの声は、ほかのルートと違った味があると思います」

――“手を汚す”決断の有無で、Chapterが分岐することは、事前に知っていました?

前野じつは知らなかったんです。ただ、すごく大事な選択なんだろうな……という空気は感じました。やっぱりただ事ではないじゃないですか。なので、僕はそこは自分の意志に従って平和的な選択肢を選んだのですが、結果ヴァイスがあんなことに(笑)。

――ヴァイスの運命はデニムの選択で……。

前野だいぶ変わりますよね、デニムとの関係が。

――Cルートをクリアーしたつぎは、どのルートでプレイしましたか?

前野その手を汚しました(笑)。

 アレに加担してロウルート(Lルート)に行きました。でもLルートはLルートでね、深かったですね。Cルートをプレイしているときはまったく仲間になると思えなかったキャラクターが仲間になったりと、そのあたりもすごく斬新でした。

――確かにどのルートもほかのルートをプレイしたからこその驚きがあります。

前野ニュートラルルート(Nルート)もひと通り遊びましたが、Nルートはデニムの苦悩をより感じたルートでしたね。

――『運命の輪』の3つのルート、どれがひとつ好きなルートを挙げるなら?

前野最初にクリアーしたルートなのでCルートですかね。当時ヴァイスの運命がかなりインパクトがあって、なんてひどいことをするんだと思いました(笑)。

 そのほか、Cルートはヴァイス以外にもけっこうインパクトのあるイベントが多かったイメージです。ハボリムを救出するステージがすごく難しくて、敵に突っ込む彼に「おいっ!」と思いながら何度やり直したことか。

――お前、そこ行くところじゃない、みたいな。

前野そう。強いけどさすがにそれは無理だろうって(笑)。

 LルートはLルートでおもしろかったですし。ルートごとの楽しさはありましたね。だからエンディングの行き着く先が3つのルートではなく、別の要因で変わるということを後から知って驚きました。

――ちなみに最初に見たエンディングはどんな感じでした?

前野「なんて後味の悪いエンディングだ」と思いました(笑)。

 当時は攻略情報などを調べずに1回目のクリアーまで進めたので「どこかで間違えたか?」と、一瞬頭をよぎりましたが『FFT』のエンディングが1種類だけだったので、同じ松野泰己さんの作品だからそういうものかなと(笑)。

――あぁ、確かに最初に『FFT』をクリアーしていると、そういう物語の幕の下ろしかたもありなのかなと受け入れられる土壌はできるかもしれません。

前野もしかしたらこれはこれでグッドエンドなのかと思い、すごく深いゲームだと(笑)。で、2周目プレイで攻略サイトを解禁して、オススメユニットやルートの分岐などを調べてみたら……どうやら違うぞみたいな(笑)。

――『運命の輪』が出たときはもうインターネットが普及していてネタバレがあるのに、あえてそれを見ずに1回クリアーしたんですね。

前野『FFT』のときもですが、友だちと意見交換しながら進めていく楽しさが当時はあったので、いきなり答えだけ先に知ってしまうのは……という気持ちが自分の中で強かったんですね。

――確かに、知らないからこその“驚き”そして“衝撃”が、『タクティクスオウガ』や『FFT』にはいっぱいありますよね。

前野はい。だからこそ友だちとゲームの話をするのがおもしろかったです。

10年前といまで変わる“あの決断”のイメージ

――今回、デニムの声を演じるにあたり、改めて『運命の輪』をプレイしたとのことですが、12年前と現在で印象は変わりました?

前野ゴーレムがすごい硬いなって(笑)、最初に思いました。

 物語的には、この10年、社会でいろいろなものを見てきて、いろいろな経験をしてきて思ったのは、やっぱ理想はCルートかもしれないけど、キレイ事だけでは確かにどうしようもないときは実際あるなぁと。誰も痛い思いをせずにみんなが幸せになるのがもちろんいちばんだけど、それが限りなく現実的ではない場合、非情な決断を行う人が出てくるのは、わからなくはないな、と思ったんですよね。

――では、いま実際に自分が選ぶなら。

前野Cルートです。ただ、Cルート、Lルート、Nルート……どのルートに進むにしろ、自分の意思を明確に持って選択していくことで、まわりの人間たちの人生や生きかたに影響を与えていくんだなというのを『タクティクスオウガ』は学ばせてくれましたね。

『タクティクスオウガ リボーン』主人公デニムを演じた前野智昭さんインタビュー。「“その手を汚した”以降のデニムの声は、ほかのルートと違った味があると思います」

大ヒット映画での吹き替えが目に留まりデニムに抜擢!?

――『タクティクスオウガ リボーン』のデニム役のオファーはいつごろに来たのでしょうか。

前野けっこう前でしたね。1年半か2年ぐらい前に仮タイトルの段階でお話をいただきました。すでに『運命の輪』を何度もプレイした後だったので、「もう、喜んでやらせていただきます」と、返事をした記憶があります。

――デニム役への起用理由は聞きました?

前野収録初日に松野さんと話をする機会があり、いろいろな話をする中で直接お聞きしました。松野さんはふだんあまりアニメを観る機会がそんなに多くないらしいのですが、洋画はよく観られるみたいで。

 映画『アメイジング・スパイダーマン』(2012年公開)を観たときに、アンドリュー・ガーフィールドさん演じる主人公のピーター・パーカーの“迷える青年というか、やさしいけれどもどこか強さがある。でもまわりに流されてしまう、まだ人間として成長できる部分がある”という人間像がデニムに近いかな、というところで吹き替えを担当していた僕にお願いしたとのことでした。

 僕自身も『タクティクスオウガ』は生っぽいやり取りが多い作品なので、どちらかと言えばアニメ寄りの芝居より、吹き替えの芝居のナチュラルなテイストに近いんだろうなとイメージしていた部分もあったので、その洋画での活動が評価されてオファーをいただけたというのはとてもうれしかったですね。

――デニムの役作りに対して、セガサターン版『タクティクスオウガ』でデニムを演じた佐々木望さんを意識しましたか?

前野意識というか、やっぱり佐々木さんが持つやさしさの中に強さがある声は、僕の中でもデニムそのもののイメージでした。

 だからそういうニュアンスも自分が出せる範囲で出したいなとは思いましたけど、今回キャスティングしていただいた経緯を松野さんにうかがってからは、先輩が作られたデニム像を壊すのではなく「前野がデニムを演じたらこうなるけど、こういうデニムもありだな」とプレイヤーに思っていただけるような気持ちで収録に臨みました。

――松野さんは音声収録に立ち会ったとのことですが、収録時に松野さんから直接演技指導とかは受けました?

前野キャラクターの役作りなどのディスカッションは初回の収録時に行いました。

 あとはその都度「ここはもう少し臨場感強めで」、「遠距離にいるので」といった指示がありましたが、僕たち声優に届く指示は音響監督さんの言葉を通したものなんですよ(※2)。

 これは今回の収録に限った話ではなくどの現場でもそうなので、だから原作者や作者の方がブースの中で僕たちの演技に意見を言う場合もあると思いますが、それは僕らには直接聞こえないんです。むしろ、僕のほうが、松野さんが収録のときにどういった感想を抱かれていたのかと正直ずっと気になっていますね。

※2……声優さんへの指示は、毎回、松野さんと音響監督のあいだで議論された後で専用マイクを通して声優さんへ伝えられたそうです。

――なるほど。では実際に音響監督からはどのような演技指導やプランが出ましたか。

前野『タクティクスオウガ』は、デニムが進むChapterによって物語が違ってきますよね。そこの収録をどの順番で録っていくかは、けっこう話しましたね。

 また、僕のほうも家でPSPを掘り起こして『運命の輪』をまたいちから進めて収録に挑んだのですごくやりやすかったです。ただ、デニムのセリフ量がものすごく多いこともあり、収録自体は5日か6日に分けて行いました。

――確かに1日で撮り終われそうな量ではないですね。

前野セリフの量もそうですが、デニムはけっこう声を荒げるシーンが意外と多くて、よくセリフの最後に小さい“ッ!”がありますよね。

――あぁ、あります、あります。

前野「○○というのかッ!」というセリフが多いから、喉の負担も考えてスタッフの方は多めに収録の日を設けてくれたのかなと(笑)。

――どれくらいのペースで収録を行ったのでしょうか。

前野週1ペースですね。デニムとカチュアはセリフが多いので、収録がほかのキャラクターを演じる声優さんよりも早かったのですが、2回目、3回目と進めていくと、じょじょにデニムと絡むキャラクターを演じる方たちの収録も始まるので、スタッフさんが「(ほかの人が)どういった感じでお芝居されてるか聞きますか?」と聞かせてくれたりもしました。

 そこでイメージを膨らませることもあったのですが、いちばん最初に聞いたのがヴァイスを演じる杉山紀彰さんの「やめろ殺さないでくれぇー」という、あのセリフ(笑)。すごい渾身のお芝居をされていて、いきなりそのシーンを聞くのもあれだなと思ったのですが、臨場感たっぷりな命乞いに僕のほうも気合が入りましたね。

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“C”と“N”と“L”で異なるデニムの感情を表現

――タクティクスオウガは、Chapterが大きく3つに分岐しますが、シナリオ収録の順番などはどのような形だったのでしょうか?

前野基本ルートごとだったと思います。「今日はこのルートのここからここまで録ってから、つぎ何を録るか考えましょう」という形で進行したので、ルートごとの感情の切り換えは、それほど難しくなかったですね。

――収録の順番は、Cルートからですか?

前野収録自体がかなり前なので、はっきり覚えてはいないのですが、Lルートからではないことは確かです。なぜならLルートを演じたとき、「あれ、さっきまでと真逆なこと言ってる」と違和感を抱いたのを覚えているので(笑)。

――ルートによるデニムの演じ分けはやはり難しかったのでしょうか。

前野もちろん難しいですけど、やはりルートごとにデニムは変わっていくキャラクターなので、収録日を区切っていただいたぶん、このルートだからこういう精神状態なんだという形で収録に臨め、演じ分け自体はしやすかったかな。

 とは言え同じ人物を演じているので、Cルートと真逆なことが起きていくLルートに入るシーンはとくに胸も痛みましたし、演じていて不思議な感じがしましたね。「皆殺しにするんだ!」というセリフがあってそれは本当に難しかった(笑)。

 デニムも選択肢によっては、こういうことを言わなければいけないことはわかっているのですが、Lルートに入った直後ぐらいがいちばん演じていて難しかった気がしました。

――“その手を汚した”者としてどういうところに気をつけましたか?

前野デニム自体の性格がガラッと変わるわけではなく、そういう選択をした中でも成長していかなければいけないキャラクターでもあるので、やってしまったことに対して“ひとかけらの後悔”的な面をどのぐらいお芝居に乗せるか、現場で調整しながら演じましたね。

 姉のカチュアもデリケートで難しい役だと思うんですけど、デニムもデニムでけっこうデリケートで葛藤するシーンが多いんです。しかも、迷っているうちに戦闘が始まってしまうみたいな。で、その戦闘が終わって、いろいろなことにちょっとずつ気づいて少し前に進んでいく。一気にガーンと成長するタイプではないと思うので、その少しずつ成長するというさじ加減が難しかったなという印象ですね。

――物語後半の成長したデニムというゴールを見据えて少しずつ近づけていく感じでしょうか。

前野そうなれたら理想だと思って演じていたんですけどね。なれたかどうかは、実際に皆さんにゲームをプレイしていただいて感じていただければと思います。

――Lルートが難しかったということですが、Nルートはどうでしたか。

前野Nルートは、流されたらそうなってしまいましたみたいな感じのルートですよね。なので優柔不断というか、煮え切らない“何か”みたいなものを意識して演じたと思います。その辺も音響監督が松野さんときっと打ち合わせをしたうえで、プランを作って指示してくださったので、すんなり収録は進んだかなと思います。

――3つのルートで異なるデニムを演じたうえでChapter4を演じるわけですよね。すべてのルートをフォローする演技、難しかったのでは?

前野そうですね。でも、Chapter4は逆にいちばんフラットな状態で演じた気がします。もう後悔とかそういうものがあまりなく、進むだけだ、というデニムの精神状態を意識して演じた気がします。

――なるほど、Chapter4のデニムは、すべてを乗り越えて成長した姿に近いのでしょうか。

前野『タクティクスオウガ』をプレイしたことがある人ならわかると思いますが、ただ、そこからまた大きな事件があって(笑)。とは言えやはりLルートが難しかったですね。

『タクティクスオウガ リボーン』主人公デニムを演じた前野智昭さんインタビュー。「“その手を汚した”以降のデニムの声は、ほかのルートと違った味があると思います」

――デニムのセリフで印象に残っているのは?

前野PVでも使用されている「僕にその手を汚せと言うのか」ですね。

 やはり、作品のひとつのテーマみたいな意味があるセリフだと思うので印象に残っています。あとは、先ほども言いましたが、語尾の“ッ!”というのは、「『オウガ』ぽいな」、「“ 松野節”だな」と、ひとつひとつ思いながら演じさせていただきました。

――声優から見て、松野さんが手掛けるセリフは、ほかの作品とは違うのですか?

前野『FFT』のときも感じましたが、「なンとかなンだよ」の「ん」がカタカナだったりとか。その独特の表現がものすごく印象に残ってます。

 あとは、「姉さーんッ!!」と、よく叫んだ気がします(笑)。実際にさまざまな状況での「姉さん!」というセリフがたくさんあるし、よく叫びました。なので、その使い分けを観てもらえれば。

――確かにデニムは、カチュアとの絡みが多いですね。

前野そうなんです。

――カチュアはデニムに対してすごくべったりなイメージですが、デニムとしてはどのような距離感で演じたのでしょうか?

前野デニムは姉さんのことはずっと大事に思っているけれども、どこかしらですれ違いが起きてきてしまうわけじゃないですか。それでも最初から最後までカチュアのことを大事に思っているというひとつの筋は持っていたと思います。

 デニム的にはそうなんですけど、ひとりのユーザーとして考えたときにカチュアは難しい女性だなと。どう扱えばいいんだろうみたいな(笑)。

――腫れ物にさわるみたいな。

前野そういう難しさがあるキャラクターですよね。なので、カチュアを演じたLynnさんもけっこうたいへんだったんじゃないのかなと。

――プレイヤーに注目してほしいデニムのシーンはどこでしょうか?

前野やはり“その手を汚した”以降のデニムですね。葛藤しながらもやるしかないという決意というか、そのあたりの声はちょっとほかのルートとはまた違った味があると思うので、自分も収録のときもけっこう熱が入ったイメージでしたね。

 あとは、カチュア姉さん絡みの叫ぶところ(笑)。それがどこの「姉さーんッ!!」なのかっていうのは……。

『タクティクスオウガ リボーン』主人公デニムを演じた前野智昭さんインタビュー。「“その手を汚した”以降のデニムの声は、ほかのルートと違った味があると思います」

――いっぱいありますしね。やはり同じ「姉さん!」でも全然違います?

前野違いますね。カチュアとデニムの関係やカチュアの置かれた状況によって、デニムの声のかけかたとか気持ちの入れかたが違ってくるので。そういうニュアンスもフルボイスならではの要素なので、ぜひ楽しんでください。

――そう言われるとがぜん気になりますね。確かに、今回ボイスが入ったことでイベントで受ける印象も変わってきます。

前野そうですよね。スキップされる方もいるとは思いますが、急いでいない方はぜひ聞いてもらいたいですね。

デニム以外を演じるとしたら? 選んだのはあの“騎士”たち

――デニム以外に前野さんが演じたいキャラクターはいますか?

前野カノープスですね。どのルートでもかなり気持ちいいキャラクターに描かれているので。あとレオナールもいいですね。

――悩みが深い彼ですが……。

前野デニムと立場が異なりますが、レオナールも理想のために葛藤しながら邁進して、ルートによっては……。難しくもやりがいがある役どころだなとは思います。あと、自分がもし女性だったらデネブとかね。ちょっとミステリアスだけど憎めない、そういうところも気になりますね。でもやっぱりひとりを選ぶとなるとランスロットじゃないですかね。

――聖騎士のランスロット・ハミルトン、暗黒騎士のランスロット・タルタロスのふたりがいますが、どちらですか?

前野聖騎士のほうです。自分の中の理想像というか、もう理想的な存在です。

前野さんが語る『タクティクスオウガ』の魅力

――最後に、ファンの方々にメッセージをお願いします。

前野『タクティクスオウガ』は、タクティカルRPGの原点と言ってもいい作品で、本当にいろいろなプレイスタイルの戦いが楽しめます。

 物語も選択肢によって多くのキャラクターたちの運命やデニムの行き着く先がそれぞれ変わっていくので、何度も楽しめます。僕がそうだったように、子どものころはわからなかったけれども、いまだったら何となくこの登場人物の思想や行動もわかるというシーンも多々あると思うので、プレイしたことがある人も手に取っていただきたいです。

 また、プレイしたことがない人も、初心者用のわかりやすい説明もついてるので、僕が子どものころ、最初に感じた“敷居の高さ”はないと思うので、ぜひ手に取ってください。

 そして、デニムをぜひ皆さんの手でよいエンディングに導いていただければなと思います。

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