“Meta Quest 2”発売以降はさらにゲーマーのあいだに浸透していった印象のあるVRゲーム。Metaが2022年10月12日に開催した“Meta Connect”ではVRデバイス“Meta Quest Pro”が発表され、Meta Questストアでの売上が15億ドル(約2249億円)を超えたことなどVRコンテンツの堅調ぶりも報告された。

 今後もVRゲームの台風の目となるであろうMetaのコンテンツエコシステム ディレクターChris Pruett氏(クリス・プルエット)に、Meta Quest 2の成功要因や今後の展開について話を伺った。

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クリス・プルエット

Metaにてコンテンツエコシステムディレクターを担当。流暢な日本語を活かし、日本の利用者に製品の魅力やコンテンツのおもしろさを伝えるコンテンツ・スポークスパーソンとしても活躍する。また、ホラーゲームに精通しており、それに関する記事の執筆や、自身でも@c_pruettというアカウント名で活躍している。

ストア売上15億ドル(約2249億円)突破。Metaのキーパーソンが語る“Meta Quest 2”の成功要因は「完成度にこだわってゲームを配信したから」
オンラインにてクリス氏に取材。

――本日はよろしくお願いします。クリスさんはコンテンツエコシステム ディレクターとしてどういったかたちでMetaの事業に関わっているのでしょうか?

クリスチームはおもにMeta Questストアにて配信されているゲームの制作や資金調達のサポートをしています。私はもともとゲームのエンジニアで、小さな会社のCEOでした。「おもしろい」と思える作品を作ったとしても、ゲームは多くリリースされているのでお客さんの手に渡って利益を得るのはたいへんでした。その苦労を身をもって体験しているので、参加してくれるゲームメーカーさんが配信したゲームで収益を得られるエコシステムづくりを全力でサポートしています。

ーーMeta Connectの発表では、Meta Questストアプラットフォームでの累計の売上が15億ドル(約2249億円)を超えたことがトピックスでした。この成功要因はどこにあると考えていますか?

クリス Meta Quest 2の登場そのものが成功要因のひとつです。まずハードとして、端末さえあればスタンドアローンでプレイできる便利さ、きれいなグラフィックを実現するパワー、リーズナブルな価格の3つの特徴が合わさって、とても魅力的なデバイスとなりました。そのため、初めてのVR体験への敷居が低くなりプレイヤーが増えたかと思います。

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Meta Quest 2

 ふたつめの成功要因として、クオリティーが高いコンテンツを配信したという戦略があります。これは私が決めたポリシーです。VRの体験がほとんどない方がクオリティーの低いコンテンツを体験すると、VRに悪い印象を抱きユーザーとして定着しないと考えるからです。

 Meta Questストアではどのタイトルを選択しても満足してもらえるよう努めているので、ゲームを配信する際の我々の審査基準はけっこうきびしいです。また、ユーザーからも数時間でクリアーできるようなゲームではなく、『バイオハザード 4』のようなやりごたえのあるタイトルを求められる傾向にあります。

――売上増を牽引したタイトルは何でしょうか?

クリス 全世界的に『Beat Saber』。は人気で売上が大きいですね。また、2020年発売の『The Walking Dead: Saints & Sinners』はMeta Questストアだけで5000万ドルを突破しました。ゲームジャンルとしては、音楽ゲームからシューティング、ホラー、フィットネスなどさまざまなジャンルが人気です。全体として世界観が強くて、身体を動かす操作性があるゲームは人気が高い傾向にあります。

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『Beat Saber』。音楽から生み出されるビートを次々と斬って楽しむVRリズムゲーム。

――Meta Quest 2が値上げされましたが、影響はありましたか?

クリス 本体価格の値上げについては担当ではないのでなんともいえませんが、ストアへの売上げには影響はさほどなかったかと思います。

――昔はPC接続のVR体験が主流でしたが、技術の進歩でさまざまなVRゲーム体験ができるようになりました。これまで『Beat Saber』などVRの節目となるようなゲームが出てきましたが、最近のVRゲームでクリスさんが技術や体験が斬新だと思えたタイトルなどはありますか?

クリス VRの初期のころはエンジニアは技術的にVRを理解していてもゲームデザインとして落とし込むのは難しかったと思います。中には、プレイ時間の短かいコンテンツや実験的なものもあり一般的なゲーマーが楽しめるものは少なかったでしょう。年月を経て、VR酔いの対策や操作方法、ゲーム内容など基礎となる部分は大幅にアップデートされました。

 最近プレイして驚いたのは『BONELAB』ですね。死の宣告を受けたプレイヤーが地下に隠れた研究施設を進んでいくというアクションゲームで、Meta Questストア史上最速となる、発売から1時間以内に100万ドルを売上げました。

 開発したStress Level ZeroはこれまでVR空間内での操作などで、先鋭的な研究をしてきた会社です。とにかく自由度が高い操作性が特徴です。フックみたいな武器であればそれで敵を倒すだけでなく、くぼみに引っ掛けて壁を登ることができます。また、敵との戦闘では銃や周りにある箱を投げるといったこともできます。「この道具をこう使える」といった気づきがあるので、おもしろい倒しかたをしたいと思える操作性がすごくいいです。

ストア売上15億ドル(約2249億円)突破。Metaのキーパーソンが語る“Meta Quest 2”の成功要因は「完成度にこだわってゲームを配信したから」

――Meta Connectでハイエンド機“Meta Quest Pro”が発表されました。クリスさんとしてのこのデバイスについての印象を教えてください。

クリス ディスプレイがMeta Quest 2比で1インチあたり1.37倍の画素数向上したり薄型パンケーキレンズなこと、アイトラッキングや自然な表情機能も気になりますね。

 また、コントローラーは、カメラとSnapdragon 662プロセッサで単独で3D空間を把握でき、バイブレーションは高度なハプティクス(触感)表現にも対応してます。コントローラーについてはMeta Quest 2で使えるのもいいですね。

 このMeta Quest Proで開発者の方々がゲームを作ってくれるのかが楽しみです。

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Meta Quest Pro

――Meta Quest Proでまた新しいVR体験の誕生に立ち会えそうですね。

クリス そう! だから私はこの会社にいます。VRは作れる作品の限界がまだ見えない土壌です。だからまだイノベーションが起きますし、それをみるのがすごく楽しいです。

――最後に、今後の展望などを教えてください。

クリス じつは我々はパブリッシャーといったかたちで開発中の100タイトル以上のゲームに技術サポートだけでなく投資もしています。まだ発表されていないゲームがいくつもありますので楽しみにしていてください。

 会社的にも、私個人的にも日本で成功するというのが非常に重要なことです。日本のメーカーさんと協力してこれからも日本のユーザーが楽しめるコンテンツを増やしていきますので、ぜひMeta Quest 2を購入してVRを体験してほしいです。

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