2022年11月11日にNintendo Switch、プレイステーション5、プレイステーション4、PCで発売予定のスクウェア・エニックスのタクティカルRPG最新作『タクティクスオウガ リボーン』。

『タクティクスオウガ リボーン』プレビュー。とにかく遊びやすい現代風なアレンジ。戦略性の高さと骨太なバランスは健在!

 オリジナル版は1995年10月6日にスーパーファミコンにて、2010年10月11日にはリメイク版である『タクティクスオウガ 運命の輪』がプレイステーション・ポータブルにて発売されている。そして本作はプレイステーション・ポータブル版をベースに、グラフィックやサウンド面での表現力向上に加え、キャラクター育成やバトルAIを始めとするバトルデザインがリメイクされるなど、大きく生まれ変わって登場する。

 今回は、オリジナル版から『タクティクスオウガ』に親しんできた記者が、事前に機会をいただいて本作の序盤をプレイ。それをもとに、本作ならではの特徴や印象をお伝えしていく。なお、内容には一部ネタバレが含まれる可能性もあるので、ご承知いただきたい。

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『リボーン』からの追加要素は?

 『タクティクスオウガ』は『伝説のオウガバトル』に続く、『オウガバトルサーガ』シリーズの第2作として登場した。

 クォータービューを採用した高低差のあるフィールドでのバトル、豊富なアニメーションとともに描かれるピクセルアートのキャラクターや背景、道中さまざまに分岐する重厚なストーリーなど、作り込まれた数多くの要素が評価され、長きにわたってファンから高い支持を得てきた作品である。

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 旧作をプレイしたことがない人に向けて、本作がどんなゲームなのかひと言でまとめると“すべてがガチなタクティカルRPG”とでも言えばいいだろうか。

 バトルは高い戦術性と事前準備が求められ、ひとつ間違えれば一気に破綻してしまうこともある骨太なバランス。ストーリーは“民族紛争”をテーマとしており、善悪を超えた組織の論理に振り回されながら、時には主人公も巻き込んだ非人道的な場面も描かれるなど、とにかく重い。ただ、腰を据えて本気で相対すればどこまでものめり込める、非常に完成度の高い作品でもあった。

 そんな作品だけに、手を加えるのも難しいだろうな……という思いを抱きながらプレイを開始したのだが、意外にも随所で変化している部分が見て取れた。

 まずはカットシーン(バトル前後のイベントシーン)がフルボイス化されていたこと。本作の登場人物たちは基本的に意見が合わず、最初は個々の主張をぶつけ合うことになるため、全編にわたって緊張感が高い。そこに声の演技が入ることで、さらに緊迫した雰囲気が味わえるようになっているのだ。

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 とくに“ウォルスタ解放軍”や、個性豊かな敵の指揮官たちのやり取りは必見。ウォルスタ解放軍は主人公と姉カチュア、幼なじみヴァイスという、字面だけ見ると結束力の固そうな面子だが、驚くほどに意見が合わない。そんな彼らが感じている苛立ちが、ボイスではうまく表現されている。敵の指揮官たちにもそれぞれボイスが入っているので、旧作をプレイした人には「こんな声だったのか!」と答え合わせを楽しんでいただきたい。

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 UIや細かいシステムにも変更が加えられている。目立つところでは、公式サイトなどでも紹介されているように、レベル管理が『タクティクスオウガ 運命の輪』でのクラス(職業)ごとからユニットごとに再変更されていたり、ほかにもバトルスピードの変更機能、オートセーブ機能の追加などが行われた。

 クラスごとにレベルアップが行われるクラスレベル制はレベルアップボーナスの運用など初心者にとってわかりにくい面もあったので、ユニットごとになったのは遊びやすさの面でいい改善だと思われる。本作ではバトルAIが一新され、敵の行動も変化しているため全体的なゲームバランスについてはもう少し時間をかけて検証したいところだが、少なくとも序盤のうちはほぼ快適にプレイできた。

 バトルスピード(移動などのアニメーションの進行速度)の変更機能も大きい。とくに出撃ユニットの多いマップでは、速度を上げると目に見えてゲームのテンポが上がってくれた。さらにUIもウィンドウ方式からアイコン選択方式に変わり、より直観的で操作しやすくなっている。記者はSteam版でプレイしているのだが、マウスでも快適にプレイできた。

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 また、バトルAIも一新されているようで、少なくとも序盤のうちは敵がバフスキルをくり返して使うなどの変な行動を採ることはなくなった。そのぶん、攻撃意欲が強くなってより戦いが激しくなった気もするのだが、全体的には『タクティクスオウガ 運命の輪』よりも遊びやすくなっているのではないだろうか。

ゲームの基本要素をチェック

 『タクティクスオウガ』は発売された当時、クォータービュー方式のマップでユニットを操作して戦う、ウェイトターン制タクティカルRPGの先駆け的存在のひとつでもあった。

 ウェイトターン制というのは、敵味方関係なく“ウェイト(WT)”の数値がゼロになったユニットから行動できるようになるというもの。非リアルタイムながらリアルタイムバトルの要素も味わえる、斬新なシステムだった。バトル中は画面下部に敵、味方すべてのユニットの行動順が表示されているので、それらを参考にしながら行動を決めることができる。

 前述したようにかなり骨太なバランスにはなっているものの、“C.H.A.R.I.O.T.”という、いわゆるUNDO機能が用意されていて、バトル中はいつでもさかのぼって以前のターンをやり直せる(最大50ターン前まで)。とくに使用制限もなく、セーブ&ロードをくり返さずに簡単にやり直しが可能なので、初心者にうれしい機能だ。

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 また、ウェイトはクラスやユニットのレベル、装備によって変動するため、バトル中だけで亡く準備段階でもプレイヤーを大いに考えさせることになった。

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 一方、マップ内では高低差や地形の概念の影響が大きくなっていて、とくにそれらの影響が強い弓矢はChapter1から大活躍する。高所からスタートして低所にいる敵軍に襲いかかるマップなどではその活躍ぶりに笑いが止まらない。ただし、『運命の輪』のときほどの猛威を振るう感じではなく、調整がされているようだ。

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 なお、フリー移動中は“演習”コマンドで模擬戦を行うことができ、それを通じて自軍ユニットのレベルを上げることが可能(ストーリー進行によって上限が解放される)。ストーリーバトルの敵レベルは固定なので、苦戦する場合は演習でレベルを上げて挑むといいだろう。

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 また、本作から導入された“バフカード”は、攻撃力アップやスキル発動率アップなど、その戦闘中にかぎりさまざまな恩恵をもたらしてくれるもの。このバフカードは戦闘中に驚くくらい頻繁に出現する。取得すれば目に見えて効果があるので、優先して取得するか、敵に取らせないようにするか、取らずに距離を詰めるかなど、新たな戦略を楽しめる。

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 ピクセルアートのグラフィックや演出も注目要素のひとつ。ドットで描かれていたオリジナル版の当初から、キャラクターのアニメーション(動き)のパターンは非常に細かく用意されていた。たとえば会議のシーンでは、終了後に椅子から立ち上がってその椅子を机に入れる動作まで描かれているのだ。ピクセルアートだからこそ醸し出される味わいをぜひ感じ取っていただきたい。

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 ルートによって内容が大きく異なるマルチストーリー&マルチエンディング方式を採用している本作では、Chapter1から展開を分岐させる選択肢が登場する。ただし、選択肢のすべてが分岐に影響しているわけではなく、展開を分岐させるものと作中に登場する3つの民族(勢力)の主人公に対する印象を左右するもの、2種類あるようだ。

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 分岐したルートによって、ストーリーだけでなく仲間となるキャラクターや生存者なども変わってくるため、何度でも楽しめるという寸法だ。なお、一度観たイベントは、ゲーム内での出来事や人物、ヘルプなどさまざまな情報をまとめた“ウォーレンレポート”というコマンドからいつでも再生が可能になる。

 ウォーレンレポートの内容は、ゲームの進行によって少しずつ変わっていくこともあるので、ただチェックしているだけでも楽しめると思う。

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 本作ではBGMも、新たに生演奏による再レコーディングがすべての楽曲において行われている。ストーリーに負けないほど重厚なサウンドが、さらなる高音質に。もちろん、SEも再構築されていて、新規書き下ろしの楽曲もあるようだ。なお、BGMもウォーレンレポートからいつでも再生できる。

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 すべてがガチなタクティカルRPG『タクティクスオウガ リボーン』。基本的な要素はそのままに、現代の技術力を遊びやすさの改善に注ぎ込んだ作品という印象だ。つまりハズレなし。久々に遊んでみようかなという人にも、「伝説の作品ちゅうもんはどんなもんなんだい?」と初めて遊ぼうという人にも、オススメしたい。