ディースリー・パブリッシャーの3Dアクションシューティングゲーム『地球防衛軍』シリーズ最新作『地球防衛軍6』が2022年8月25日に発売された。
迫りくる侵略者のから地球を守る“地球防衛軍”となって戦う本作は、発売後、30万本セールスをシリーズ最速で記録するスマッシュヒットを記録。
PS5『地球防衛軍6』(Amazon.co.jp) PS4『地球防衛軍6』(Amazon.co.jp)発売とヒットを記念して、2022年3月に航空自衛隊に新設され、『地球防衛軍』と名前が似ている組織“宇宙作戦群”について話を訊くべくインタビューを実施。
果たして地球防衛軍と宇宙作戦群では何が違うのか。そもそも宇宙作戦群とは何なのか。宇宙の平和を守る宇宙作戦群の隊長と隊員に直撃した。
恩田雄太 2佐(おんだ ゆうた)
航空自衛隊 府中基地 宇宙作戦隊長(文中は恩田)
浦崎大勇 2曹(うらさき だいゆう)
航空自衛隊 府中基地 宇宙作戦隊所属(文中は浦崎)
楠 政太郎 3曹(くすのき せいたろう)
航空自衛隊 府中基地 宇宙作戦隊所属(文中は楠)
宇宙作戦群は衛星を守るエージェント
――まずは“宇宙作戦群”とはどのような組織なのか教えてください。攻めてくる宇宙人と戦うのですか?
恩田いえ、戦いません(笑)。
宇宙作戦群は2022年3月に新編されたばかりの航空自衛隊の部隊です。2年前に創設された“宇宙作戦隊”と、宇宙作戦に関する指揮統制を司る“宇宙作戦指揮所運用隊”のふたつの部隊を取りまとめる形で作られました。人員は現在約70名程度です。
恩田現在宇宙空間には、衛星放送用のものを始め、自然環境の変化を観測する地球観測衛星やGPS用衛星など非常に多くの人工衛星が打ち上げられています。宇宙空間は社会生活だけではなく、経済や科学などの分野においても、常に重要なインフラとなっています。
また、安全保障の観点からも、指揮通信、情報収集などの面で、宇宙への依存度というのは世界的にとても高まっています。
ですが、一部の国では、宇宙空間での自国の軍事的優位性を確保するために、ミサイルによる人工衛星の破壊、通信衛星に対する妨害といった技術開発が進められており、自国の使用しなくなった衛星を目標に実験を行ったりしています。
――確かに、GPSが使えなくなったり気象衛星ひまわりが使えなくなったりしたら困りますね。宇宙の状況を把握する部隊というのはほかの国にもあるのでしょうか。
恩田そうですね。監視する部隊は各国にあります。これまでは陸・海・空が作戦の主たる舞台でしたが、技術の進歩により、宇宙空間、サイバー、電磁波といった分野でも競争が始まっています。
――名前の“作戦群”というのがふだん聞き慣れない組織名ですが、○○部隊、○○戦隊などとはどういった風に違うのでしょうか?
恩田航空自衛隊の部隊名というのは規則性がありまして、任務遂行の最小の部隊が基本的に“○○隊”という名前になります。その隊をふたつ以上組み合わせたものが○○群で、さらに群を複数組み合わせたものは“○○団”という言いかたになります。
そして宇宙作戦群は、宇宙作戦隊と宇宙作戦指揮所運用隊のふたつの隊からなる部隊なので、宇宙作戦群という名前が付いています。
――宇宙作戦群も何かの団の下に編成されているということですか?
恩田例外的に、宇宙作戦群は現状、防衛大臣直轄部隊となっております。
――おお、なんだかかっこいい! 宇宙作戦群にはどういった方が所属されてるのでしょうか? 航空自衛隊に新設されたということは、もともとはパイロットの方が編入されることもあるのかなと思います。
恩田現在宇宙作戦群に所属している隊員にパイロットはいません。宇宙とは関係ないことをしていた隊員が選抜されています。
――そうですか……宇宙空間で宇宙船を操縦して、何かを撃つような仕事があるのかなと思っていましたが……ないですか……。
恩田みんな地上勤務です(笑)。
浦崎と楠も、もともと調達業務や航空機の整備をしていました。ほかの隊員も輸送や警戒管制などさまざまな経験を持つ隊員で構成されています。
――ちなみに、日々どういった任務をされているのでしょうか?
恩田宇宙作戦指揮所運用隊は、宇宙作戦に関する指揮統制を実施します。宇宙作戦隊は、宇宙状況把握がおもな任務です。レーダーや望遠鏡を使って、人工衛星及びスペースデブリの状況を観測します。現在はその運用試験や訓練、制度を作成しているところですね。
――なるほど。組織が新編される際、「実際はどういうことをやるんだろう?」とわからない状態で始まったかと思いますが、実際に動き出してみて想像と違うところはありますか?
恩田そうですね。宇宙というものをリアルタイムで把握するというのが難しいんです。
観測するデータを集め、それを数値化し、軌道情報を算出することで将来の位置を予測して、必要な対応をとるということになるため、リアルタイムではなく将来を予測するという点が、我々の任務の特徴で、これまでとは変わっている点かなと思います。
楠扱う数字のスケールが非常に大きくて、感覚がぜんぜん異なることに驚きましたね。
たとえば、人工衛星とデブリとの衝突確率をシミュレーションで計算する場合、人工衛星までの距離が数1000キロ、デブリの軌道誤差も数10キロ~数100キロで、数日後に0.0001%の確率で衝突するかもしれません……というような。このくらいの数字でも可能性としては無視できないものなので、該当の衛星を運営する母体に通知したり、軌道変更の相談をしたりします。
このような数値の感覚は、この部隊で仕事を始めてから感じたものになりますね。
浦崎目に見えないものを相手にするという点がやはりいままで経験がなかったことです。
我々の任務に必要な数値を導き出すということは、非常に数学的かつ科学的理論を必要とするものですので、やり甲斐を感じます。
ゲームの攻略にもつながる(!?)協力が必要不可欠
――スペースデブリの監視なども業務に含まれるということで、日本で宇宙の話と言うと、やはりJAXA(宇宙航空研究開発機構)が最初に出てくるかと思うのですが、JAXAとも連携して業務されているのでしょうか?
恩田我々が行う宇宙状況の把握も、まさにJAXAとの連携をベースとした体制になっています。
さらに防衛省でもより遠方の宇宙空間を観測するためのレーダーを研究中で、JAXAが持つセンサーと防衛省が持つセンサーの情報を一括して集約することにより、宇宙状況を把握する計画です。現在はJAXAと連携しながら、いかに効率よく宇宙状況を把握できるかという点を調整しています。
――宇宙作戦群では、さまざまな組織で手に入る宇宙情報を一元的に把握し、管理できるということですね。
恩田そうですそうです。これまでは宇宙情報を横断的に扱う組織がなかったのですよね。
――ちなみに、宇宙人が攻めてきた場合は自衛隊、宇宙作戦群は戦うのでしょうか?
恩田非常に夢のない話で申し訳ないのですが、自衛隊が活動するためには法的な根拠が必要でして、現状、「宇宙人が攻めてきたときは自衛隊が対応するのか?」という点に関しては法的な整理がなされておらず、「出動する法的根拠が現状ない」という回答になります。
ただ一方で、自衛隊全体に、我が国の平和と独立を守る使命がありますので、攻められたら守るという気概は持っていることはお伝えしておきます。
――法整備が待たれますね。『地球防衛軍6』では人類の9割が滅亡している中、敵性宇宙人と戦う絶望的な闘いを強いられることになるのですが“辛い環境や職場で一生懸命奮闘する”には日々どのような努力が必要ですか?
恩田大事だと思っていることがふたつあります。
ひとつは目的を見失わないこと、もうひとつは仲間を見捨てない。自分が辛い状況に追い込まれると、まわりが見えなくなってしまうことがありますよね。それはほかの人も同様だと思います。
ひとりでできることは限られているので、仲間を見捨てず、お互いがお互いを助け合いながら、協力して対応していくことが必要だと思っています。
いまから宇宙作戦群に入るには?
――この記事を読んだ読者がもし「宇宙作戦群に入りたい!」と思った場合、どのようにすれば作戦群のメンバーになれるのでしょうか?
恩田宇宙作戦群に入るためにはまず、航空自衛隊に入隊する必要があります。航空自衛隊入隊後、本人の希望と適性等により選抜され、宇宙作戦群に配置されます。採用基準、採用方法は何種類かありますので、詳しくは航空自衛隊や府中基地の公式サイトをご覧になっていただければと。
――最後にひとつお聞きしたいのですが。
恩田何でしょう?
――“宇宙”作戦群が“府中”基地にできた理由は“うちゅう”と“ふちゅう”で似ているから……?
恩田・浦崎・楠違います(食い気味に)。