2022年8月24日~28日(現地時間)に、ドイツ・ケルンのケルンメッセにて開催のヨーロッパ最大規模のゲームイベントgamescom 2022。

 開催前夜に行われたイベント“gamescom Opening Night Live 2022”にて発表され、注目を集めたタイトルの1本に、『HEAVY RAIN -心の軋むとき-』や『Detroit: Become Human』(デトロイト ビカム ヒューマン)などで知られる、フランスのゲーム会社Quantic Dream(クアンティック・ドリーム)がパブリッシングを担当するアドベンチャー『Under The Waves』がある。

本作は、主人公である石油会社で働くプロのダイバーであるスタンが、深海で孤独に生活しながら不思議な体験をしていくという海洋アドベンチャーだ。まずお伝えしておかないといけないのは、本作のパブリッシングを担当するのがクアンティック・ドリームであって、開発はインディーゲームデベロッパーのParallel Studio(パラレルスタジオ)だということ。

 クアンティック・ドリームが独立スタジオに移行し、セルフパブリッシングを行う意向があることを明らかにしたのは2020年だが、インディーゲームのパブリッシャーとなるのは、その一環かと思われる。

『Under The Waves』クアンティック・ドリームがパブリッシングを担当する海洋アドベンチャーでは、海と海洋生物への共感を持ってもらいたい【gamescom 2022】

 gamescom 2022のビジネスエリアでは『Under The Waves』が試遊可能で、主人公のスタンが、歩いて海洋の拠点内を移動→スキューバで海洋を探索→潜水艇で移動というシチュエーションを体験できた。プレイしたのは1日目だったようで、最後は海底の基地に到着。ここから本格的な冒険の日々が始まる……ということになるようだ。スタンにはエマというガールフレンドがいて、通信によるやり取りが可能。彼女との関係性も気になるところ。「北海の深海に飛び込み、悲しみに包まれた感動的で詩的な水中冒険をお楽しみください」とのことで、いったいどのような物語が展開されるのか……。

『Under The Waves』クアンティック・ドリームがパブリッシングを担当する海洋アドベンチャーでは、海と海洋生物への共感を持ってもらいたい【gamescom 2022】
『Under The Waves』クアンティック・ドリームがパブリッシングを担当する海洋アドベンチャーでは、海と海洋生物への共感を持ってもらいたい【gamescom 2022】
『Under The Waves』クアンティック・ドリームがパブリッシングを担当する海洋アドベンチャーでは、海と海洋生物への共感を持ってもらいたい【gamescom 2022】

 また、本作でユニークだったのが、建物や装飾物などのデザインを、1970年代のテイストで統一していること。当然本作の時代設定は近未来となるが、デザインのテイストを1970年代とすることで、見ていてどこかなつかしいレトロフューチャーな感覚を呼び覚ますのだ。これが、本作に独特なアクセントを添えていると言えそうだ。

 ちなみに本作は、フランスの海洋学者であるジャック=イヴ・クストーの考えの影響を強く受けているという。また、本作は、海洋の環境の保護を目的とした環境保護活動を行なっている国際環境NGOサーフライダーファウンデーションヨーロッパとパートナーシップを結んでいるという。

 試遊後、本作のゲームディレクターであり、パラレルスタジオのCEOでもあるRonan Coiffec(ローナン・コイフェック)氏にお話をうかがうことができた。

ストーリーのテーマは、“もろさ”、“孤独感”、“人生について”

『Under The Waves』クアンティック・ドリームがパブリッシングを担当する海洋アドベンチャーでは、海と海洋生物への共感を持ってもらいたい【gamescom 2022】

ローナン・コイフェック(Ronan Coiffec)

パラレルスタジオ CEO/ゲームディレクター

――本作開発の経緯を教えてください。

ローナン私が子どものころ、父が船乗りだったので海の近くに住んでいました。本作は、15年ほど前に“海にひとりの男がいる”というアイデアから小さなプロトタイプを作り始めたのがベースになっています。

 その後私は、Don't Nodやユービーアイソフトなどでキャリアを重ね、『Life is Strange』に携わり、『Remember Me』ではカプコンとも仕事をしていたりもします。

 2015年に私はパラレルスタジオを創設しました。スタジオの1作目はモノクロのサバイバルホラー『White Night』です。その後、何か意義のあるプロジェクトに取り組みたいと思い、昔考えていたアイデアを復活させたのです。それが、『Under The Waves』ですね。開発期間は、プロトタイプから数えると3年ほどです。

『Under The Waves』クアンティック・ドリームがパブリッシングを担当する海洋アドベンチャーでは、海と海洋生物への共感を持ってもらいたい【gamescom 2022】

――海を舞台としたゲームを作る上で注力したポイントは?

ローナンビジュアルの部分やライティングに時間をかけました。深海を構築する際、リアリズムを追求しすぎると深海にはほぼ何もないので、アーティスティックディレクションが必要であり、そこがたいへんでした。ジャック=イヴ・クストーから刺激をもらったのも、その理由からです。

――海が舞台ということで、プレイヤーにはどんな感情を味わってほしいですか?

ローナン海と海洋生物への共感を持ってもらいたいというのが私たちのアイデアでした。このゲームでは、海はキャラクターのようなもので、主人公のスタンにとっては友だちなのです。このような感情から詩が生まれ、それが深く、時には暗く、スタンを惹きつけることになります。

――登場人物はスタンのみなのですか?

ローナン序盤はそうですね。ティムというオペレーターとの通信のやり取りがあるくらいです。本作では、いろいろなものの“もろさ”を表現したいと思っています。スタンは地表から離れたところにいて、エマというガールフレンドとのコミュニケーションにも難しさを感じていて、そのあたりも掘り下げています。

 ストーリーのテーマは、“もろさ”、“孤独感”、“人生について”などですが、とくに“もろさ”にフォーカスをあてています。ストーリーを進めていくと、ほかのキャラクターにも会うことになりますが、まだお話しできません。

『Under The Waves』クアンティック・ドリームがパブリッシングを担当する海洋アドベンチャーでは、海と海洋生物への共感を持ってもらいたい【gamescom 2022】

――本作は、クアンティック・ドリームがパブリッシャーを担当しますが、どのようなサポートを受けているのですか?

ローナン彼らはパブリッシャーというだけでなく自身がデベロッパーでもあるので、テクニカルな面で大きなサポート受けています。たとえば、モーションキャプチャー、ボイスレコーディングでサポートしてもらっています。テクニカルスペシャリストからフィードバックをもらっています。リードライターなど、ナラティブサイドでもフィードバックを受けていますね。ローカライズのサポートも受けていますよ。

――本作は日本でリリースするのですか?

ローナンもちろんです!

――最後に、日本のゲームファンにひと言お願いします。

ローナン日本は島国で海に囲まれていますので、このゲームにある自然へのメッセージが、日本のプレイヤーの皆さんに届くことを願っています。

 『Under The Waves』は、2023年にプレイステーション5、プレイステーション4、Xbox Series X|S、Xbox One、PC向けに発売予定だ。

『Under The Waves』クアンティック・ドリームがパブリッシングを担当する海洋アドベンチャーでは、海と海洋生物への共感を持ってもらいたい【gamescom 2022】
『Under The Waves』クアンティック・ドリームがパブリッシングを担当する海洋アドベンチャーでは、海と海洋生物への共感を持ってもらいたい【gamescom 2022】

 ところで、なぜクアンティック・ドリームはパブリッシャーとして展開することになったのか、そのへんの経緯もうかがいたかったのだが、お話しいただける担当者が不在とのことで、かなわなかった。ただし、東京ゲームショウ2022に合わせて、関係者が来日するとのことで(『Under The Waves』の出展はない模様)「そのときまでお待ちください」とのなので、いずれお伝えできそう。

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