『ワイルドアームズ』シリーズと『シャドウハーツ』シリーズを手掛けた各クリエイターチームが、自分たちの過去作品から着想を得たふたつの新作大型JRPGの制作を目指す“ダブルキックスターター”キャンペーンが2022年8月30日に発表される。

 本記事では、2作品の概要を紹介するとともに、両タイトルの開発スタッフインタビューをお届け。さらに、ファミ通ドットコム独占のバトル映像も公開するので、ぜひチェックしてほしい。

※8月30日21:50追記。キックスターター開始初日で1億円以上のプレッジ(支援)を集め、正式に開発プロジェクトが始動することが決定した。

『ワイルドアームズ』『シャドウハーツ』の開発スタッフがダブルキックスターターキャンペーンを実施

 新作タイトルのひとつは、ARMと呼ばれる機械兵器を手にした冒険者たちが、荒野に蝕まれていく世界を舞台にドラマチックな冒険活劇を繰り広げるウェスタンパンクRPG『ARMED FANTASIA(アームドファンタジア)』

 『ワイルドアームズ』シリーズの生みの親にして、トータルゲームデザイン・シナリオの金子彰史氏をはじめ、キャラクターデザインの佐々木知美氏、作曲家のなるけみちこ氏と上松範康氏、音楽制作チームElements Gardenら、これまでの開発に参加してきたスタッフが再集結し、新たな世界と物語を描き出す。

【アームドファンタジア開発スタッフ】

  • トータルゲームデザイン・シナリオ:金子彰史氏
  • キャラクターデザイン:佐々木知美氏
  • 楽曲:なるけみちこ氏、上松範康氏、Elements Garden
『ARMED FANTASIA(アームドファンタジア)』

 もうひとつのタイトルが、激動の1920年代を舞台に、闇から襲い来る脅威と対決するダークで凄惨なRPG『PENNY BLOOD(ペニーブラッド)』だ。

 『シャドウハーツ』シリーズを開発した、ゲームデザイナーでシナリオも手がける町田松三氏、個性豊かな人物を描くキャラクターデザイナーの加藤美也子氏、伝説的作曲家の弘田佳孝氏がSTUDIO WILDROSEとして参加し、制作を進める。

【ペニーブラッド開発スタッフ】

  • ゲームデザイン・総監督・脚本:町田松三氏
  • キャラクターデザイン・アートディレクション:加藤美也子氏
  • 楽曲・サウンド:弘田佳孝氏、海田明里氏
『PENNY BLOOD(ペニーブラッド)』

 このふたつのチームがタッグを組み、JRPGファンに向けて“ダブルキックスターター”キャンペーンを打ち出す。どちらのチームも本キャンペーンを通じて、お互いのプロジェクトの支援、新しい機会の創出、より多くのファンに向けて各タイトルの魅力を伝えていくための企画を予定している。

 バッカーは『アームドファンタジア』か『ペニーブラッド』、もしくは両方のタイトルを支援することでリワードを受け取ることができる。

 さらに、これまでのキックスターターのゲームキャンペーンにはなかった珍しい新要素“コンボメーター”を両タイトルで共有しており、ふたつのタイトルの合計プレッジ(支援)が目標に達するごとに、両方に新コンテンツが解放されていくのが特徴だ。

『アームドファンタジア』:カイジュウ災害に脅かされている荒野でARMを携えた“渡り鳥”が冒険する

『ARMED FANTASIA(アームドファンタジア)』

 『アームドファンタジア』の世界観は、西部劇を思わせる乾いた荒野の中に魔法やモンスター、すでに遺失した文明等が存在するウェスタンパンクと呼ばれるジャンルとなる。

 大きな特徴となるのが、ARM(Aether Reaction Maximizer)と呼ばれる機械兵器の存在。使用者の魔力(エーテル)に反応、増幅することで大きな力と変えるこの兵器は、過酷で危険な荒野を生きていくために不可欠であり、そこに秘められた謎は重要なファクターとしてゲーム本編に関わってくるだろう。

 プレイヤーは、ARMを携え荒野を行き交う冒険者”渡り鳥”となって、秘密と刺激に満ちた物語へと飛び込んでいく。

『ARMED FANTASIA(アームドファンタジア)』

【あらすじ】

 舞台は、ゆっくりと、それでも確実に進行する荒野化現象に加え、頻発するカイジュウ災害に脅かされている明日無き大地――ロンデニアム。

 祖父を失くした17歳の少年イングラムは、各地を放浪し、自分の腕を頼りに生きていく流浪の冒険者“渡り鳥”になることを決意。再会した幼馴染と、かつて交わした小さな約束を胸に故郷を旅立つこととなる。だがこのとき、旅路にて繰り返される出会いと別れが、やがてロンデニアムに隠された大いなる謎にいざおうとは、知る由もないイングラムであった。

 『アームドファンタジア』では広大なワールドマップを採用しており、ここで体験できるダッシュやジャンプといったアクションや謎解きがセールスポイントとなっている。冒険の舞台は陸地だけに留まらず、乗り物を使って海や空にも広がっており、JRPGならではとなる壮大な冒険心を満たしてくれる。

 ダンジョンの探索でポイントとなるのは、キャラクターごとに設定された“ガジェット”と呼ばれるアクションアイテム。行く手を阻む仕掛けに合わせてガジェットを切り替え、知恵と指先のテクニックで困難を乗り越えることができたなら、大きな達成感を味わうことができるだろう。

『ARMED FANTASIA(アームドファンタジア)』

 バトルは、“クロスオーダータクティクス”と名付けられたターンベースのコマンドバトルとなっている。

 同一のターゲットに連続的に攻撃を行うことで、威力や効果を高める緻密な戦術“オーダーチェイン”と、タイミングを見つつ、素早く反応することでリアルタイムに行動順を無視した割り込み攻撃をする“フォースブレイク”。このふたつの基本コンセプトがバトルに奥深さと緊張感をもたらしてくれる。

【独占公開】『アームドファンタジア』バトル映像

 トータルゲームデザイン・シナリオを手掛ける金子彰史氏は「ダブルキックスターターという提案に、これからのゲーム開発に新しい選択肢が作れるかもしれないと惹かれ、久しぶりにゲーム開発現場の陣頭に立つ事を決めました。後に続く道を創るためにも、ぜひ力を貸してください」とコメントしている。

『ペニーブラッド』:怪物を倒すために怪物となった男が闇に包まれた謎の解明に挑むゴシックホラーRPG

『PENNY BLOOD(ペニーブラッド)』

 『ペニーブラッド』が見せるのは、JRPGでは珍しいゴシックホラーと悪夢が織り成す狂気の物語。“狂騒の1920年代”を舞台に、BOI捜査官マシューが猟奇的な事件を捜査し、闇に包まれた謎の解明に挑む。

 悪意に満ち混乱に歪んだ世界の中で、プレイヤーはアメリカからアジア、そしてヨーロッパをめぐり、不安定な情勢下で巻き起こるおぞましい戦いの数々を体験していくことになる。

 ストーリーは、捜査局に雇われた私立探偵マシュー・ファレルが、ある晩ニューヨークの精神病院で発生した怪事件の捜査を任されたところから始まる。駆けつけた現場で彼が目にしたのは、暴れまわる異形の集団だった。危機に陥ったマシューは自ら怪物へと姿を変え、からくも敵を撃退する。

 怪事件の裏に隠された真実を解明するため、マシューの捜査はアメリカに留まらず、遠く離れた日本や中国といったアジアから、遙かヨーロッパの国々へと広がっていく。彼は長い旅の中で信頼できる仲間たちと出会い、運命に導かれた強敵と対峙する。

 本作は、怪物を倒すために怪物となった、ひとりの男の物語である。

『PENNY BLOOD(ペニーブラッド)』

 フィールドマップは、人々で賑わう通りや呪われた墓場などを3Dで表現し、いまから百年前の1920年代の世界をリアルに描き出している。

 プレイヤーは細部まで作り込まれた舞台の中で、超自然的な事件の調査、異界の怪物との戦闘、クエストに必須なアイテムの獲得のために探索を行う。

『PENNY BLOOD(ペニーブラッド)』

 バトルは、“サイコシギル”と呼ばれる戦闘システムが特徴で、従来のターン制JRPGの戦略性と素早い反応が求められるアクション性が組み合わさっている。ルールはシンプルだが、敵に効率的に攻撃を与えるためには相応の鍛錬が必要だ。

 また、怪物と対決することでマシューたちのサニティポイント(正気度)は影響を受ける。サニティポイントが減少すれば狂気に呑み込まれて理性を失っていくが、その反面、戦闘力は増大していく。戦いの流れを変えるためには、あえて狂気に身を任せる戦術を取り、生き残る可能性を高める必要もあるだろう。

『PENNY BLOOD(ペニーブラッド)』

 ゲームデザイン・総監督・脚本を手掛ける町田松三氏は「PENNY BLOODはとても大きなセカンドチャンスです。このチャンスを生かすため、ぜひご支援ください!」とコメントしている。

キックスターターキャンペーンのコンボメーター

 『アームドファンタジア』と『ペニーブラッド』の両方で、開発プロジェクトが確定する共通の最低ゴールは75万ドル。しかし本キャンペーンでは、両タイトルのストレッチゴールに関わる“コンボメーター”が導入されている。

 バッカーからの支援によってストレッチゴールメーターが上昇し、一定の目標に達するごとに新コンテンツが解放されるのは普通のキャンペーンと同様。しかし他のキャンペーンと異なるのは、支援金額が共有のコンボメーターにも同額分反映される点で、どちらか1タイトル、または両タイトルに支援すると、それぞれのタイトルのストレッチゴールだけでなく、2タイトル共有のコンボメーターも同時に上昇していく。

 コンボメーターが上昇して一定の目標を満たすごとに、両タイトルに影響するコンテンツが解放されていくという。

 どちらか一方への支援がそのタイトルへの支援となるだけではなく、共有する“コンボメーターコンテンツ”への貢献、さらにもう一方のタイトルの支援にもつながる。互いのバッカーどうしで協力し、ふたつのタイトルのコンテンツをさらに拡充していけるのが、本キャンペーンの最大の特徴となっている。

インタビュー:金子彰史氏&町田松三氏にプロジェクトの立ち上げ経緯や作品コンセプトを訊く

金子彰史(かねこ あきふみ)

『ワイルドアームズ』シリーズや、アニメ『戦姫絶唱シンフォギア』などを手掛けたゲームクリエイター。『ARMED FANTASIA(アームドファンタジア)』のトータルゲームデザイン、シナリオを担当。(文中は金子)

町田松三(まちだ まつぞう)

『シャドウハーツ』シリーズを手掛けたゲームクリエイター。『PENNY BLOOD(ペニーブラッド)』ではゲームデザイン・総監督・脚本を担当。(文中は町田)

――それぞれのプロジェクトの立ち上げ時期や経緯を教えてください。

金子今回、ダブルでキックスターターを行う『ペニーブラッド』のクリエイターである町田さんとは以前から交流があり、何となくの流れで以前に携わっていたようなJRPGを、テイストはそのままに現代にアップデートしたいねと話していたのがきっかけになります。

 ただ、その話が持ち上がった当時の自分には、いくつかのテレビアニメの仕事があり、それなりに月日が流れてしまったのですが……協力してくれるスタッフたちが実際に動き始めたのは、だいたい一年くらい前だと思います。

――ダブルキックスターターキャンペーンを実施するに至った経緯を教えてください。

金子町田さんとJRPGについて熱く語る機会があったのですが、そのときに両者とも温めていた新規JRPGに挑戦してみようと機運が高まりました。しかし、いくつかのパブリッシャーにアプローチしたのですが、いまどきターン制JRPGのニーズがどこまであるのか証明してほしいと言われてしまいまして……。

――2020年に同じターン制JRPGの『百英雄伝』がキックスターターで多額の支援を得て開発に至りましたが、その影響はありましたか?

町田はい。まさに『百英雄伝』がうまく行ったケースもあって、クラウドファンディングの道を選ぶことにしました。

――共通の最低ゴールは75万ドルとのことですが、2タイトルの開発プロジェクトの確定には合計150万ドルが必要ということですか?

金子いいえ、キックスターターではそれぞれのタイトルごとにゴールを分けられませんので、75万ドルを達成できれば、『アームドファンタジア』も『ペニーブラッド』も開発が確定、実際のプロジェクトがスタートします。

 それ以上のファンディングが入った場合、用意したストレッチゴールに対応したコンテンツを拡充し、よりリッチなゲーム内容にしていきます。

――最低ゴールに到達した場合、両作の発売時期は? また、どのプラットフォームを想定されていますか?

金子『アームドファンタジア』については、全体のボリュームや仕様に関してはキックスターター終了後に集まった資金次第で決まっていきますので、まだ全体の作業量は確定していません。作業に要する時間もわからないため、発売時期も現時点ではお答えできません。

 対応するプラットフォームは、まずSteamからとなります。その後、キャンペーンの結果次第でPS5やXboxシリーズといったコンソール機への対応を視野に入れています。

 ユーザーの方々には申し訳ありませんが、数年後と予想される本作の完成時期を考慮するとSwitchへの対応は考えていません。ただ、今後に任天堂の次世代ハードの情報が公開されましたら、そちらへは検討する予定です。

町田『ペニーブラッド』は、発売時期は2025年の春ごろを想定しています。最低ゴールをクリアした時点でのプラットホームはSteamになります。

――両タイトルのコンセプトを教えてください。

金子今作のコンセプトのひとつに、1990年代のJRPGのアップデートというのがあるのですが、それについて極私的にもう少しだけ深掘りすると、言わば“金子彰史の原点回帰”でもあります。

 おかげさまで、高卒のチンピラみたいのでもすっかりキャリアを積ませていただき、いまなお最前線でいろいろなエンタメ仕事をさせてもらっているのですが、この先の身の振り方を考えると、どこかの機会で自分の原点を見つめ直したいという思いが強くありました。

 またテレビアニメの仕事をしているあいだにも、「新作のRPGは作らないのか」という声を日本だけでなく海外からも多くいただいてきましたので、それに応えたいという思いもあり、そういった経緯で『アームドファンタジア』の企画を構想していきました。

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金子『アームドファンタジア』は荒野を舞台にしたRPGであり、自分や、その他の参加スタッフたちに共通項があるため、過去作である『ワイルドアームズ』に近しい雰囲気はありますが、本作は舞台も物語も連続性のないまったくの新作です。

 空想に満ちた西部劇は、広く括るとウィアードウェストと呼ばれる普遍的なジャンルのひとつであり、個人的な思い入れもすごく強いジャンルですので、いくつかある自分の原点のひとつとして今回ふたたび選んでみました。

町田『ペニーブラッド』のコンセプトは、近代を舞台にしたダークホラーRPGです。ペニーブラッドとは19世紀のイギリスで流行った大衆小説のことなのですが、日本語に置き換えたら三文小説という意味になります。

 タイトルロゴにあるアルファベットのOを模ったコインは、死者に手向けられる冥銭を表しています。

『PENNY BLOOD(ペニーブラッド)』

――『ペニーブラッド』は“狂騒の1920年代”が舞台となりますが、町田さんが過去に手掛けた『シャドウハーツ』シリーズの中では空白の年代となります。この年代を舞台にした理由を教えてください。

町田鋭いご指摘のとおり空白の年代だからです。というのと、この時代は世界的にもいろいろな出来事がありました。

 たとえばアメリカでは禁酒法が施行されたり東欧では世界初の社会主義国家が誕生したり。以前のシリーズものでは描けなかった物語の舞台にするにはピッタリだと考えました。

――“フュージョン”や“マリス”といった過去作を彷彿するキーワードがありますが、本作の世界は過去作と関係があるのでしょうか。

町田私が作る近代を舞台にしたゲームなので世界観は似ていますが、過去作とはまったく関係ありません。

――『ペニーブラッド』の世界観やキャラクター設定などを拝見すると、大人向けの真面目なRPGという印象を受けます。『シャドウハーツ』シリーズはリングの魂などのギャグやコメディ部分も魅力的でしたが、本作にもコメディ要素は用意されているのでしょうか。

町田それはもう。不気味なダークホラーの皮は被っていても私の作るゲームですから、コメディ要素は入っています。その辺のテイストは『シャドウハーツII』とまったく同じです。ただ、ストーリーは基本的に全編シリアスな、もの悲しくも切ない物語になります。真面目な話です。

――『アームドファンタジア』の舞台となるロンデニアムはどのような世界なのでしょうか。

金子本当にここだけの話というか、どこにも話す機会のなかった裏話になるのですが……(嘘です。町田さんはちょっとだけ知っています)、以前に自分が携わっていたテレビアニメ『戦姫絶唱シンフォギア』というのがありまして、その『シンフォギア』の制作に着手する直前まで新作のオリジナルRPGの開発準備を進めていました。

 ですが、『シンフォギア』の仕事が先に決まり、いきなり大忙しになったので事実上の放置、つまり休眠状態となっているのですが……今作の舞台であるロンデニアムは、“そのとき構想していたRPGの主人公たちが敗北して、敵による統治が完了した”世界線、その遥か彼方の未来世界を舞台にしています。

 なので、荒野成分多めの見た目ではありますが、『ワイルドアームズ』の物語の続きではありませんし、『ワイルドアームズ』からのキャラクターも再登場しません。「もしかして!?」と期待された方には先に謝っておきますが、トニーに始まり、ラギュ・オ・ラギュラで終わることもありません。それは絶対に絶対です。

――“渡り鳥”や“ARM”などのキーワードが出てきますが、関係ないのですね。

金子ARMとは、本作用に新造された機械兵器の名前である“Aether Reaction Maximizer”の略称です。使用者の持つ魔力(エーテル)に反応し、増幅させた後、攻撃の威力へとベクトル転換するというのが共通性能と設定されています。

 いまはまだ多くを語れませんが、タイトルにもなっている以上、ただの武器ではありません。物語の根幹にかかわる重要なキーアイテムであり、主人公たち以外にもARMの使い手たちはたくさん登場する予定です。

――キービジュアルなどで公開されているイングラム、ユークリッド、アリシアについて、それぞれどのような人物なのか教えてください。

金子イングラムは駆け出しの渡り鳥(冒険者の意)でありますが、わりとちゃっかりした性格の持ち主で、仲間たちを振り回す役どころを担っています。バトルにおいては、現在公開中のキャラクターの中では素早い想定としています。バトルシステムの担当には「器用貧乏にしないで!」とお願いしている最中です。

 ユークリッドはイングラムの幼馴染です。幼いころにイングラムと交わした“とある約束”を果たすため、久しぶりの再会となっています。バトルにおいては、属性魔法の使い手と位置付けています。最終的なバランス調整次第ですが、現時点ではダメージディーラーの一角となる予定です。

 アリシアは、イングラムやユークリッドと異なって自由な渡り鳥ではなく、過酷な荒野に生きる人々を助ける“教会”所属の少女騎士です。バトルにおいては防御を担うタンク職ですが、手にした長大な槍型ARMが示すように、一般的なタンクと異なる高い攻撃力も備えています。

『ARMED FANTASIA(アームドファンタジア)』
『ARMED FANTASIA(アームドファンタジア)』
『ARMED FANTASIA(アームドファンタジア)』

――仲間は3人固定でしょうか? それとも4人以上存在し、パーティメンバーを自由に入れ替えられるのでしょうか。

金子イングラム、アリシア、ユークリッドは、いわゆる初期メンバーというか、物語の序盤に出会ってパーティを結成する3人です。訊かれたので答えちゃいますが、この3人以外にもパーティインする仲間キャラクターは想定しています。

 ある程度物語が進行すると、パーティメンバーを入れ替えつつの進行になると思いますが……選択から外れたキャラクターも、さまざまな形で戦闘支援できるようなシステムを準備しています。現状、思い描いている理想ですが、ラスボスにはフルメンバーで挑んでほしいです。自分は“全員野球”って言葉が大好きですので。

――『ペニーブラッド』に登場するマシュー、エミリア、スセリについて、それぞれどのような人物なのか教えてください。マシューの私立探偵という設定がジョニーを、父からフュージョンの力を受け継いだという設定がウルを彷彿とさせますが。

町田言われてみるとその通りですね(笑)。しかし、マシューはもっと別の観点から生まれたキャラクターです。これまでの巻き込まれ型の主人公とは違い、彼は最初は私立探偵ですが、やがてFBIの前身であるBOI(捜査局)の捜査官になります。組織に属している人間で、仕事柄猟奇的な事件に自分から首を突っ込んでいくタイプの男なんです。

 エミリアは強い女性を描きたくて作ったキャラクターです。文字通り戦闘でもいちばん強い存在になると思います。最後のスセリですが、彼女はそんなエミリアとは対照的な奥床しい大和撫子です。

『PENNY BLOOD(ペニーブラッド)』
マシュー
『PENNY BLOOD(ペニーブラッド)』
『PENNY BLOOD(ペニーブラッド)』
エミリア
スセリ

――ここからはバトルについてお聞きします。まず、『アームドファンタジア』はランダムエンカウントとシンボルエンカウントのどちらでしょう。ランダムエンカウントの場合、エンカウントキャンセルはできますか?

金子基本はランダムエンカウントです。ついでに言うと、ターンベースのコマンドバトルです。もうひとつ重ねると、正しい意味でのオープンワールドでもありません。

 こう言うと忌避されがちなのは理解していますが、今回我々がやりたいのは、あのころのJRPGのアップデートであり、前述したランダムエンカウントやターンベースのコマンドバトル、ストーリードリブンな進行で展開する物語の醍醐味や楽しさを大真面目に追求したいのです。一般的なパブリッシャーではなかなか通らない企画だからこそ、キックスターターで始めたいと考えています。

 ちなみにですが、個人的にはシンボルエンカウントも直感的なアクションバトルも大好きなので、今回とは違ったコンセプトでゲームを作る機会があれば、ぜひトライしてみたいです。

 最後にエンカウントですが……エンカウントをキャンセルするだけでなくもっと別のシステムとして考えていますので、情報公開のタイミングをお待ちいただけたらと思います。

――バトルシステム“クロスオーダータクティクス”について教えてください。

金子補足の画像説明なしに、インタビューでクロスオーダータクティクスを解説するのはかなり困難ではありますが……オーダーチェインを端的に説明すると、味方の行動順を繋げていくことで、攻撃の効果や威力を高めつつ、敵の行動は繋がらないよう連携を阻害する……というのが基本にあります。現段階では、それなりに緻密な戦略を要する箇所と想定してデザインしています。

 そのうえで、行動順に関係なくゲージさえ溜まっていれば、どこにでもインターセプトできるのが“フォースブレイク”になります。敵の行動に先んじた威力の高い攻撃で殲滅するもよし、敵から受けた大ダメージを即時回復するもよしと、戦況のちゃぶ台返しを可能とするかなり乱暴なシステムです。

 バトルの担当者は、オーダーチェインの緻密さとフォースブレイクの乱暴さをいい塩梅に組み立てるべく、現在、頭をひねっている最中です。バトルには、この他にも軸となるいくつかのシステムを想定しています。“クロスオーダー”とは“交差する行動順”という意味ですが、文字通り、敵味方が入り乱れるようなバトルシステムを目指しています。

『ARMED FANTASIA(アームドファンタジア)』

――ありがとうございます。それでは『ペニーブラッド』の戦闘システム“サイコシギル”について教えてください。アクション性が組み合わさっているとのことですが、“ジャッジメントリング”のような特殊な戦闘システムになるのでしょうか?

町田サイコシギルもタイミングに合わせてボタンを押して成否を判定するシステムです。

 ターン制のバトルなのでコマンドを選んでからアクションに移るのですが、アクションの最中に入力が始まります。状況によっては、ここから特別な行動にシフトしたり連携攻撃に発展したりします。連携攻撃は仲間が順番に行動するのではなく、同時に攻撃を行う特別な演出を用意しています。

――サニティポイント(正気度)について教えてください。ポイントがなくなると暴走状態になるのでしょうか。

町田『ペニーブラッド』ではサニティポイントの扱いは大きく変わりました。

 バトルでサニティポイントがゼロになって暴走してもプレイヤーがコントロールを失うことはありません。かわりに攻撃力が上昇し、暴走状態でないと使えないスキルが出現します。ただしガードや逃走といった防御系のコマンドは選択できなくなります。

 狂気と正気の狭間で戦う、私たちは“Melee of Madness(狂気の戦いシステム)”と呼んでいるんですが、『ペニーブラッド』では暴走してからが本当の戦いのはじまりなんです。

『PENNY BLOOD(ペニーブラッド)』

――『アームドファンタジア』のダンジョン探索ではキャラクターごとに設定された“ガジェット”が重要となるとのことですが、例えばどのようなものが用意されるのでしょうか? また、ガジェットはキャラクターごとにひとつですか?

金子個人的には、1キャラクターあたり複数のガジェットを持たせたいし、ガジェットの使用効果がひとつの対象に対して複数持たせたいと夢見ているのですが……。

 ぶっちゃけますとガジェットの数は、キャラクターやダンジョンの開発工程に大きく作用する部分でもあります。なので、キャンペーンの結果次第としか言いようがない現状です。せっかくのインタビューなのに、世知辛い回答ばかりで申し訳ありません。

 でも、操作していて楽しいキャラクターになるようには、何としてでも目指したいと考えています。

――最後に読者へ向けてメッセージをお願いします。

金子お世話になっております。金子です。わりと最近までアニメのお仕事をしていましたが、このたび、いい出逢いや機会に恵まれて、久しぶりにゲームのお仕事に帰ってきました。

 『アームドファンタジア』は荒野を舞台にしたJRPGではありますが、その中身はまったくの新作です。なので、金子のそれっぽい過去作を遊んでなければ楽しめないということはありません。

 おもしろそうだと感じていただければ、夢の実現のためにも、ぜひキャンペーンへのご支援をお願いしたいところですが……「イマドキ、1990年代っぽいJRPGじゃなあ」と食指の動かない方も、ぜひキャンペーン終了までの1ヵ月間は、このダブルキックスターターという、あまり例のない“お祭り”に参加してみるのもアリではないでしょうか。

 2、3日に一度は新しい情報が開示される予定です。それなりの頃合いには新しい絵や楽曲の公開もあったりなかったりです。っていうか、町田さん家の『ペニーブラッド』がスゲェいいのです。 いっしょに盛り上がっていければと思いますので、よろしくお願いいたします!

町田ファミ通をご覧のみなさん、こんにちは。『ペニーブラッド』の総監督と脚本を務める町田です。この度の私たちの挑戦に世界中のファンの方々から熱い声援をいただき大変感謝しています。

 さらに洗練されたダーク・ホラーのドレスをまとい、新たな“愛と涙とお笑いのRPG”がいまここに誕生します! どうぞ、ご支援のほど、よろしくお願いいたします!

協力コミュニティゲームも

 毎週それぞれのタイトルから登場キャラクターがひとり選ばれ、モンスターと対決する協力コミュニティゲームも登場。キャンペーンのフォロワーには5つのソーシャルメディアを用いた達成条件が提示され、その達成状況によって、攻撃、大技、防御の行動をキャラクターが行う。

 各モンスターを撃破するには、必要な攻撃数を満たさなくてはならない。モンスターを撃破することで“コミュニティのストレッチゴール”が達成され、支援時に選択したリワードがアップグレードされる。

 この協力コミュニティゲームの結果は両方のタイトルに影響し、片方のチームが十分な攻撃を与えられずにゴールを達成できなかった場合(十分なコミュニティチャレンジを達成できていない、という意味)、もう一方のタイトルによる攻撃数や達成済みのゴールが引き継がれ、チャレンジに加算される。

 『アームドファンタジア』と『ペニーブラッド』のキックスターターは以下のリンクからウィッシュリストに登録できる。バッカーは早期コンボリワードの支援で、両ゲームを高い割引率で購入することが可能だ。

キックスターターキャンペーンはこちら
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