テキストアドベンチャーパートとタクティクスバトルパートの2軸で展開する注目作『デジモンサヴァイブ』(Nintendo Switch、プレイステーション4)。2022年7月28日に発売を迎える本作の魅力を開発陣に直撃!

 従来のシリーズ作との相違点や、本作ならではのこだわりが詰まったポイントなどを話してもらった。

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羽生和正 氏(はぶかずまさ)

バンダイナムコエンターテインメント プロデューサー。(文中は羽生)

島田祐輔 氏(しまだゆうすけ)

ハイド ディレクター。(文中は島田)
※祐の字は、正しくは“しめすへんに右”です。

テキストアドベンチャーを軸に、人とデジモンの“絆”を表現

――まずは本作が開発されることになった経緯からお伺いします。

羽生デジモン』シリーズは、これまでさまざまなタイトルが作られてきました。

 そうした中、『デジモンストーリー サイバースルゥース』をリリースした際、シリーズの軸である“育成”要素以外にも、ストーリーに大勢のファンの方が注目してくださったことで、「ゲームでより『デジモン』の世界を広げられるんじゃないか?」と思い、チャレンジ的なタイトルとして、ストーリーを軸にした新作を作ってみよう……というところから、企画はスタートしました。

――テキストアドベンチャーというジャンルも、シリーズにおいては初の試みですよね。

羽生本作は少人数の開発チームでの開発を進めていたことから、「物語に注力するのであれば、デジモンファンの世代になじみのある、シンプルなシステムに落とし込んだほうが遊びやすいものを創り込めるのでは?」という狙いもありこのジャンルに落ち着きました。

 そのうえでバトルの面では、シナリオが複数のキャラクターが全員活躍する群像劇に決まっていたため、複数人数が戦闘に参加できる現状のタクティクスバトルを採用しました。

発売直前の『デジモンサヴァイブ』開発者インタビュー。テキストADV×戦略シミュレーションバトルでひと味違う『デジモン』を創造する、本作に込めたこだわりを直撃!
発売直前の『デジモンサヴァイブ』開発者インタビュー。テキストADV×戦略シミュレーションバトルでひと味違う『デジモン』を創造する、本作に込めたこだわりを直撃!

――本作は、これまでのシリーズ作と比べて雰囲気が大きく異なりますが、キャラクターや世界観を構築するうえでとくに意識されたポイントはどこですか?

島田もっともこだわったのは作品全体を覆う“空気感”ですね。本作はテキストアドベンチャーということもあって、各キャラクターを自由に移動させたり、モーションをふんだんに用意するといったことができなくて。そうした中で「どのようにして会話のテンポや、キャラクター同士の距離感をリアルに見せるか?」という点には、かなり気を使いました。

 試行錯誤の末、キャラクター自体は動きませんが、そのぶん3Dの空間に2Dのキャラクターを配置することで、カメラは自由自在に空間内を動けるようにして。アングルや距離を調整することで、少年少女たちの感情や関係性を表現できるよう、演出を作り込んでいきました。

羽生ゲームシステムとしてはシンプルな2Dベースのテキストアドベンチャーですが、背景を3Dにすることで、キャラクターが横スライドで表示されるような演出は避け、臨場感のある演出を目指したかったのです。こだわった甲斐があり、ワンランク上の表現を実現できたと思っています。

発売直前の『デジモンサヴァイブ』開発者インタビュー。テキストADV×戦略シミュレーションバトルでひと味違う『デジモン』を創造する、本作に込めたこだわりを直撃!
発売直前の『デジモンサヴァイブ』開発者インタビュー。テキストADV×戦略シミュレーションバトルでひと味違う『デジモン』を創造する、本作に込めたこだわりを直撃!

“人間と表裏一体の存在”としてモンスターたちを描き出す

――モンスターたちの設定や描かれかたも従来の作品とはずいぶん異なりますね。

羽生もともとデジモンの設定は、作品ごとにけっこう違っていて、大きく2種類に分類できると私は考えています。ひとつは、初期の液晶玩具で描かれた、コンピュータプログラムやAIとしてのデジモンです。

 もうひとつは、テレビアニメ作品で採用している“異世界の生命体”という見せかたです。多くのファンがイメージされている人間とデジモンのパートナーシップの形は、初期のアニメやマンガで印象付けられたものだと思います。

――たしかにアニメ作品では、命のある生き物として描かれる場面が多いように思います。

羽生以前、アニメ『デジモンアドベンチャー』のシリーズディレクターの角銅博之監督に「デジモンとはどのような存在なのか?」とお伺いしたことがあります。

 「彼らは、人間とは表裏一体の、古来から存在してきたパートナーであり、現代においてデジタルガジェットを通じて観察されていることで、デジタルモンスターとして認識されている幽玄的な存在である」という考えをお伺いし、確かに人間とデジモンの持つスピリチュアルな“絆”を理解しようとした際に、納得できると表現だと感じたことが本作の発想のもととなっています。

発売直前の『デジモンサヴァイブ』開発者インタビュー。テキストADV×戦略シミュレーションバトルでひと味違う『デジモン』を創造する、本作に込めたこだわりを直撃!
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――これまでの作品以上に、人間とモンスターたちとの“絆”に比重を置いた作品になると?

羽生はい、そうですね。ただ、いつものデジモンですと“少年少女たちとモンスターがいろんな苦難を乗り越えて、絆を深めていき、強く成長していく”という明るいヒーローの物語だと思いますが、本作ではモンスターたちは“人間と表裏一体の存在”という設定だからこそ、暗い部分も描く必要があると考えました。

――と言いますと?

羽生人は誰しもが強く健全な心を常に持ち続けることが出来るわけではありません。心が弱っていると自分を嫌いになったり、危機的状況に陥ると自分勝手な行動をとってしまう場合もあります。

 そんな人間たちと接していく中で「モンスターはどのような進化を遂げていくのか?」、そうした“選択肢によって変化していく関係性”を取り入れています。明るく元気な物語を想定してプレイされると、面食らってしまうかもしれないですね。

発売直前の『デジモンサヴァイブ』開発者インタビュー。テキストADV×戦略シミュレーションバトルでひと味違う『デジモン』を創造する、本作に込めたこだわりを直撃!
発売直前の『デジモンサヴァイブ』開発者インタビュー。テキストADV×戦略シミュレーションバトルでひと味違う『デジモン』を創造する、本作に込めたこだわりを直撃!

ルート分岐や相棒の進化など、選択によって生じる“派生”が醍醐味

――選択によって、パートナーモンスターの進化後の姿だけでなく、ストーリーそのものも変化するそうですね。

島田アドベンチャーパート内で、どのような行動をしたか? 誰とどのような会話をしたか? そうした選択の積み重ねでストーリーは変化するので、1回のプレイではすべてのエピソードを見ることはできません。大まかな流れとしては、それまでの選択の蓄積により、全12章の中の9章でルート分岐が発生します。

――ルートの総数を教えていただけますか?

島田3つのルートが用意されていて、9章から終盤に向かって、それぞれ異なるストーリーが展開していくことになります。また、2周目のプレイ時には既存の3ルートに加え、裏ルートも解禁されますので、そちらも合わせて全ルートをプレイしていただくことで、本作で描かれた異世界の真相をご理解いただけるのではないかと思っています。

発売直前の『デジモンサヴァイブ』開発者インタビュー。テキストADV×戦略シミュレーションバトルでひと味違う『デジモン』を創造する、本作に込めたこだわりを直撃!

――少年少女たちに加え、教授というキャラクターも登場しますが、こちらは作中でどのような役割を担うのでしょう?

島田異世界で唯一の大人であり、子どもたちにとっては保護者的なポジションのキャラクターになります。“ケモノガミ”という昔から語られてきた伝承を調べている人物なので、異世界でも読み書きができたり、謎解きのヒントをくれたりと、さまざまな面で攻略の手助けをしてくれます。

 とはいえ、教授自身も研究バカといいますか、大人になりきれていない未成熟な部分があるので、モンスターたちとの出会いを経てどう変わっていくか……というところにも注目していただきたいです。

――主人公たちのパートナー以外にも、作中には野良モンスターが登場しますが、こちらはどういった存在なのでしょう?

島田ストーリー面では、主人公たちとパートナーのモンスターのつながりを丁寧に描いていて「物語が主軸である」という考えはブレてはいませんが、その方針でタクティクスバトルのパートに突入してしまうと、特定のルートではデジモンの属性などが偏ってしまい、戦略を練る楽しさを存分に味わえなくなってしまっていたんですね。

 そこで何か一手を考えなければ……というところから導き出したのが、野良モンスターを仲間にするシステムです。

羽生シミュレーションRPGの醍醐味は、さまざまな特性を持ったユニットが登場して、それらをいかにバランスよく編成するか、というところにあると思いますが、シナリオの都合上、仲間と別行動をとるシーンもあったりし、パートナーのモンスターたちだけではバトルパートでバランスのいい構成ができなくなる状況がちらほら発生します。

 そうした矛盾を埋めてくれる存在なので彼らもきちんと育ててあげてください。

発売直前の『デジモンサヴァイブ』開発者インタビュー。テキストADV×戦略シミュレーションバトルでひと味違う『デジモン』を創造する、本作に込めたこだわりを直撃!
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探索と戦闘、各パートに詰め込んだこだわりとは?

――各章は、アドベンチャーパートとバトルパートが交互に展開していく……という流れで間違いないでしょうか?

島田基本的にはその流れになります。

 アドベンチャーパートは、ただ物語を体験するだけでなく、周辺エリアを探索したり、仲間たちと会話をしたりと、能動的に動けるようになっているので、さまざまな行動を起こして、各キャラクターとの関係値を掘り下げていきます。その合間に、歯応えのあるタクティクスバトルも楽しんでもらえる構成になっています。

羽生アドベンチャーパートには探索行動と自由行動という、ふたつのシチュエーションが用意されています。

 探索行動では現実世界に帰るためのシリアスな冒険シーンが展開するのに対し、自由行動はいわゆる日常シーンで、仲よくなりたいキャラクターを選んで、会話をしたり、悩みを解決するのに協力したりします。そうして関わりを持つことで親密度が上がり、仲間のパートナーモンスターが進化し、バトルパートの戦局を左右する結果につながっていきます。

 仲間との会話は1周では全員ぶんすべてを見ることはできませんので、周回プレイ時の楽しみのひとつだと思って、気になるキャラクターから親密度を上げてください。

――仲間との交流が、仲間のモンスターの進化に影響してくるのはおもしろいですね。

島田自由行動ではそれ以外にも、マップ上をカメラで調べることでアイテムが手に入ったり、野生のモンスターを見つけてフリーバトルに挑み、レベルアップに励んだり。限られた時間の中でさまざまな行動を楽しめます。

発売直前の『デジモンサヴァイブ』開発者インタビュー。テキストADV×戦略シミュレーションバトルでひと味違う『デジモン』を創造する、本作に込めたこだわりを直撃!
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――続けて、バトルパートの見どころも教えていただきたいです。

島田バトルパートも、アドベンチャーパートと同様に3D空間で展開するのですが、リアルさよりもミニチュアっぽい表現になるよう意識しました。力強さや派手さに加えて、かわいらしさも感じていただけるビジュアルになっているので、ご期待ください。

 それと、ストーリーを進めていく中で深めた絆は、連携であったり、追加効果の発動といった形で、戦闘面にも反映される仕様になっているので、そういったところからも、ふたつのパートがつながっていることを感じていただけるのではないでしょうか。

――『デジモン』シリーズといえば、“進化”も重要な要素ですが、バトルパートにおいては、どのような描かれかたになっているのでしょう?

島田アドベンチャーパートで進化が可能になったモンスターは、以降の戦闘において、いつでも自由に進化できるようになります。ただし、そこにはメリットとデメリットがあるので、「いつ進化させるか?」、「どの敵に対してどの技を使うか?」など、試行錯誤しつつ、戦略的にバトルを展開していく必要があります。

――シミュレーションRPGが好きな人にとっては、何とも惹かれるポイントですね。

羽生タクティカルバトルを盛り上げる要素は詰め込んであります。そのうえで、“仲間やパートナーとの絆”という『デジモン』ならではの魅力も体感していただけるようになっているので、ご期待いただければ。

発売直前の『デジモンサヴァイブ』開発者インタビュー。テキストADV×戦略シミュレーションバトルでひと味違う『デジモン』を創造する、本作に込めたこだわりを直撃!
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『デジモン』シリーズの新たな可能性を感じてほしい

――ストーリー面でも、強調しておきたいポイントなどはありますか?

羽生前述のとおり、本作はこれまで『デジモン』のゲームシリーズと異なり、新たな方向性といいますか、これまでになかった形で“人とモンスターの関わり”を提示している作品なので、従来のシリーズの延長線上だと思って遊ばれると違和感があると思います。

 そこをご理解いただいたうえで、「こういう『デジモン』もアリだよね」、「こういう物語があってもいいよね」といった、シリーズの新たな可能性を感じ取っていただけますと幸いです。

――貴重なお話をありがとうございます。最後に、本作の発売を心待ちにしているファンの皆さんに向けてひと言お願いします。

島田本作は、これまでのシリーズ作とは異なる切り口で『デジモン』の世界を描いた意欲作になっています。

 ジャンルやシステムそのものは、ゲームファンの皆さんにとってはなじみやすいものですので、『デジモンサヴァイブ』の世界にどっぷりと浸りつつ、キャラクターたちとパートナーモンスターの心の機微や、成長の過程を楽しんでいただけますと幸いです。

羽生何度もお話してしまい恐縮ですが、本作はこれまでの『デジモン』シリーズでは主軸だった育成要素よりも、物語に重きを置いたテキストアドベンチャーゲームになっています。

 ドラマを楽しんでいただきつつ、自由度の高いタクティクスバトルも満喫していただきたい、新しいデジモンのゲームになっていますので、本作ならではの体験を存分に堪能していただきたいです。

 もちろん、物語は新しい見せかたにこだわってはいますが、『デジモン』シリーズの本質は変わらずに描き盛り込んでいますので、ぜひいちど遊んで確かめてみてください。

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