2023年初頭にコーエーテクモゲームスより発売される新作アクションRPG『Wo Long: Fallen Dynasty』(『ウォーロン フォールン ダイナスティ』、プレイステーション5、プレイステーション4、Xbox Series X|S、Xbox One、Xbox Game Pass 、PC(Steam、Microsoft ストア))。開発を手掛けるのは『仁王』シリーズと同じコーエーテクモゲームスのTeam NINJAで、中国の三国時代を舞台にした"ダーク三國死にゲー”となっている。

 本記事では、同作のプロデューサーを務める安田文彦氏と山際眞晃氏へのインタビューを掲載する。

『ウォーロン フォールン ダイナスティ』開発陣インタビュー。『仁王』とは異なる新たな手触りの“ダーク三國死にゲー”

安田文彦(やすだふみひこ)

本作のプロデューサーであり、Team NINJAブランド長。『仁王』ではディレクターを務め、『仁王2』ではプロデューサーとディレクターを兼任した。

山際眞晃(やまぎわまさあき)

Team NINJAに所属する本作のプロデューサー。SIEジャパンスタジオ時代は『Bloodborne(ブラッドボーン)』や『Deracine(デラシネ)』を担当した。

新たな体制で挑むTeam NINJAの意気込み

――2021年10月に配信された“シブサワ・コウ40周年記念番組 秋の陣”という番組内で、シブサワ・コウさんが「『三国志』を舞台にしたTeam NINJA開発のアクションゲームを制作中」とおっしゃっていました。それがまさしく、今回発表された『ウォーロン』なのでしょうか。

安田そうなります。当時はすでに開発が始まっていて「40周年記念番組なので、何かしらの情報を出せないか」となったので、あの場で開発中と発表することになりました。だから予定通りではあるのですが、「Team NINJAなのでどんなゲームかは皆さんもわかりますよね?」というように、けっこう踏み込んだ発言をしていたのにはちょっとだけ驚きました(笑)。

――それだけシブサワさんも期待されているのでしょう(笑)。安田さんは週刊ファミ通での『仁王2』のインタビューで「戦国時代はもう描き切ったので、つぎは別の時代にしたい」ともおっしゃっていましたよね。そういった理由もあって、今回の題材を『三国志』に決めたのですか?

安田じつは『仁王』シリーズで別の展開を検討していて、日本以外を舞台にしようと考えていました。ただ、『仁王』シリーズは戦国時代や侍らしさを大事にしたほうがいいだろうと結論にいたり、その計画は中止したのです。そこで改めてイチから“死にゲー”というジャンルを見つめ直し、新しいゲームを作ろう、新たな『三国志』の世界を描こうと決めたのが『ウォーロン』の始まりでした。

――なるほど。安田さんはプロデューサーという立ち位置ですが、今回はディレクターは兼任されないんですよね?

安田はい。本作ではディレクターは若いふたりに任せています。とはいえ、私も内容はチェックしています。『仁王』シリーズは全部見ていましたが、『ウォーロン』はある程度任せつつ、開発の最初と最後を見ているという形ですね。

――そして開発プロデューサーとして今回、山際さんが参加されています。山際さんは、本作においてどういった役割を担われているのでしょうか。

山際安田はゲーム全体を見ながら、ゲームの責任者といった立場になりますが、私はおもにプロモーションのほうを担当しています。とは言っても完全に切り分けているわけではなくて、棲み分けはしつつも、『ウォーロン』をふたりで見ているという状態です。

――シブサワさんの発表と同じころに、山際さんがTeam NINJAに参画されたとの発表もありました。どんな経緯で、コーエーテクモゲームスに入ることになったのですか?

山際SIE ジャパンスタジオでは『Bloodborne』など、グローバル規模のタイトルのプロデュースを経験させてもらったので、その経験を活かして、つぎの挑戦をしたいと思っていました。Team NINJAはもともと『NINJA GAIDEN』シリーズ、『デッド オア アライブ』シリーズなどでも知られていましたが、『仁王』シリーズが世界中でヒットしたこともあり、さらにステップアップしていくだろうと見ていました。

 また、安田はもともと知り合いだったこともあり、いっしょに仕事をしてみたいと思っていたので、何かできることはないかと相談したのがきっかけです。

――その時点ですでに、『ウォーロン』に参加する前提で話が進んでいたのでしょうか?

山際具体的ではなかったのですが、手伝ってほしいタイトルがあるということだったので、ぜひやりたいという感じでしたね。

――安田さんは山際さんが参加したいと最初に聞いたとき、どう思われたのでしょうか。

安田やはり『Bloodborne』などをプロデュースしていた山際の力は頼りになるだろうと思っていました。そのころ『ウォーロン』はコンセプトや世界観が決まって、プロトタイプを作っている段階でしたね。
 
 『仁王2』のころはプロデュースしながらディレクターもやって、さらにTeam NINJA全体も管理していたので、いま考えると仕事を抱え過ぎていました。今回は山際やディレクター陣と分担できているので、より集中してゲーム開発に関われていると感じています。

――山際さんが参加されたことで、どのような相乗効果が生まれるとお考えでしょうか。

安田ゲームを作ることと、ゲームを伝えることの両方が揃わないとゲームはヒットしません。『仁王2』でプロデューサーとディレクターを兼任した際に、ディレクターとしてゲーム作りに注力しながら伝えるところにもしっかり力を入れるべきなのに、ひとりでそれを両立することの難しさを学びました。山際は言葉ひとつひとつをゲーム作りと照らし合わせ、いま何を伝えるべきなのかを選ぶのが丁寧で、うまく伝える力を持っています。ですので、タイトル制作においてすごくいい影響を与えてくれています。

『ウォーロン フォールン ダイナスティ』開発陣インタビュー。『仁王』とは異なる新たな手触りの“ダーク三國死にゲー”

――『仁王』シリーズはシブサワさんや、社長の鯉沼久史さん、副社長の早矢仕洋介さんらがゼネラルプロデューサーやプロデューサーといった形でスタッフに名を連ねていましたが、今回は参加されていないのでしょうか?

安田肩書きとしては入っていません。ただ、「こうしよう」、「ああしたほうがいい」という意見はどんどん飛んでくるので、『仁王』時代と関わりかたはあまり変わりないですね。今回公開されたPVの細かいところなどについても、いろいろな意見をもらっています。やはりそもそも『三国志』が大好きな人たちですから、話が早いし、こだわりも強いです。

――それはなかなかに恐ろしい(笑)。『仁王』シリーズは世界でもヒットしましたが、やはり山際さんが参加したということで、今回も世界でのヒットを狙っているのでしょうか。

山際もちろんたくさんの方にプレイしていただきたいです。とくにアジア圏には『三国志』ファンが多いですから親和性は高いと思います。本作はダークな世界観ではありますが、三国志ファンの方が見ても違和感のないものを目指しています。たとえば開発には中国人のスタッフがいて、時代考証などもしっかり行っています。

安田もちろんゲームなのでアレンジしたり、デフォルメする部分はあります。『仁王』シリーズは妖怪や侍といった、日本人だからこそわかるツボや勘どころがあったのですが、『三国志』となると、なかなか難しく。そこが中国人スタッフたちのおかげで、いいバランスで反映されていると思います。

 とは言え、Team NINJAは「海外でヒットさせるためのゲームを作ろう」とは思っていなくて。

――おもしろいゲームを作って、それを海外にも受け入れてもらう、というような?

安田そうですね。はっきり言って、特定の地域や層にヒットするようなゲームを作るという器用なことは、Team NINJAにはできないんです(笑)。ローカライズをしているので、もちろん意識していないと言うと嘘になりますが、基本はどの国に向けてというよりも、しっかりとおもしろいものを作って遊んでもらうことを大事にしています。

山際ゲームファンの思考はどの国の人でもそこまで違いはないと思うので、Team NINJAの得意とするアクションをしっかりと作り込めば、きっと受け入れてもらえると思います。

――ちなみに本作では、『三国志』のどのあたりの時代が扱われるのでしょうか?

山際プレイヤーは名もなき義勇兵として戦乱の世に巻き込まれていきますが、物語は後漢末期の黄巾の乱ごろから始まり、『三国志』の……ある程度のところまで描かれます(笑)。

 つまり、作中で時代の進行はあります。どこまで描くのか言ってしまうと、『三国志』ファンの方々は「ああ、あの戦いがあるからこうなりそうだな」と展開などを予想できてしまうでしょうから、今回は“ある程度”と言っておきます。これ以上は続報をお待ちください。

『ウォーロン フォールン ダイナスティ』開発陣インタビュー。『仁王』とは異なる新たな手触りの“ダーク三國死にゲー”

バトルは近接戦闘がメインに

――本作は“ダーク三國死にゲー”と銘打たれているところから考えると、『仁王』シリーズの『三国志』版のような内容が想像されます。実際はどのようなゲーム性なのでしょうか?

安田『仁王』シリーズではなく、新規タイトルの『ウォーロン』ですから、新しいものを目指しています。実際に触ってもらえれば、大きな違いを感じられるはずです。ただ、『仁王』で培ってきたアクションのおもしろさはしっかりと継承していますし、どういった感情で遊んでもらいたいのかなどは『仁王』と通じている部分も多いです。

――RPG要素もあるということで、キャラクターのレベルアップや装備選びといった要素も用意されていると?

安田そうですね。ただ、『仁王』シリーズよりもRPG要素はやや薄く、その代わりにジャンプができるようになるなど、アクション性を高めた作品になっています。高いところにジャンプで登ったり、戦いの中で敵を踏みつけたりといった活用が考えられますね。純粋なアクションゲームとまではいきませんが、しっかりとしたアクションを楽しんでいただけます。

山際アクションがうまくないと楽しめない、というわけではなく、アクション自体の手触りがさらに研ぎ澄まされているので、行動の選択肢が広がるイメージです。うまい人なら育成せずとも攻略できるでしょうが、成長の要素がありますから、アクションが苦手な人はレベルを上げて挑むことも可能です。

――なるほど。『仁王』は死にゲーでありながらも、装備などでビルドを組む、いわゆるハクスラ要素も魅力でした。これは本作も踏襲されているのでしょうか?

安田装備品を集めるよりは、アクションの幅で攻略していくイメージです。装備品に特殊効果が付いていたりする要素は同じなのですが、『仁王』ほど装備品がたくさん拾えるようなゲームではないですね。さまざまなアクションやシステムが用意されているので、それを組み合わせて戦う側面のほうが強いです。

――まだまだシステム面は判明していませんが、さらに多彩なアクションが楽しめると。

安田はい。先ほども言ったようにジャンプがありますし、まだ発表していないアクションもたくさんありますので、それらをどう駆使するのかがメインになるでしょう。

――ステージについてですが、こちらはステージクリアー型ですか?

安田そうなります。中国が舞台なのでステージのスケール感はより大きくなっています。ジャンプもあるので、上下を行き来するような立体的なステージ探索も用意しています。

『ウォーロン フォールン ダイナスティ』開発陣インタビュー。『仁王』とは異なる新たな手触りの“ダーク三國死にゲー”

――よりステージ攻略が楽しみになりますね。バトルについてですが、PVなどを見ると中国武術や、“武狭”と呼ばれる中国のファンタジージャンルのエッセンスを感じました。

山際武狭については、一部は参考にしていますが、たとえばワイヤーアクションのような要素は取り入れていません。本作で目指しているのは、緩急のある流れるような動きや、攻防一体の華麗な剣さばきといった、いわゆる中国武術の達人のような剣戟アクションです。

安田映像で見ると、カンフーのような手数の非常に多いアクションもカッコいいのですが、それをゲームにそのまま落とし込むと、プレイヤー操作とのギャップが生まれてしまいます。実際に操作した際の手触りは大事にしたいので、重力やリアリティーをしっかり感じられる範囲で、超人的な技をくり出せるようにしています。

――早く操作してみたいです! ゲームスピードは『仁王』と比べてどうですか?

安田早いと思います。もちろん武器にもよりますが、より近接戦闘の攻防が激しくなっているので、全体として早く感じると思います。

――近接戦闘がメインというところで、武器は中国刀ですとか、槍や方天画戟など、『三国志』らしい武器が使えるのでしょうか?

安田皆さんが想像するような、『三国志』らしい武器は使えますよ。

山際『仁王』と形は違いますが、武器を鍛えることで成長する要素もあります。

――ほかにも『仁王』でいうところの陰陽術的なものはありますか?

山際はい、そうした要素は本作でもあります。基本は近接戦闘がメインになりますが、困難を乗り越えるためには、やはりRPG的なといいますか、いろいろなからめ手も必要です。それ以外にも、まだ明かせないのですが『三国志』らしい戦略と、死にゲーのレベルデザインを組み合わせた本作らしい要素も用意しています。

――三国時代ということで、たとえば軍師による軍略などが使えたりとか……?

安田どうでしょうね? ちなみに、羽扇からビームを出す予定は現状ありません(笑)。

――軍師ビームはないと(笑)。ところで、『仁王』は侍の世界ということで“残心”というアクションが軸になっていましたよね。『ウォーロン』ではきっと残心はないと思うのですが、どんなアクションを軸にしているのでしょうか。

安田残心はないですが、本作の軸になるアクションがあります。まだ明かせませんが、こちらも続報をお待ちください。

『ウォーロン フォールン ダイナスティ』開発陣インタビュー。『仁王』とは異なる新たな手触りの“ダーク三國死にゲー”

武将たちに加えて妖魔も登場

――今回、主人公は名もなき義勇兵とのことですが、キャラクタークリエイトシステムを採用しているのですよね?

安田はい、プレイヤー自身が制作した主人公で遊んでいただく形です。『仁王2』でも非常に好評だったので、踏襲しました。これは企画の最初から決めていた部分でした。

――劉備など『三国志』の武将を主人公にすることもできたけれど、しなかったと。

安田初代『仁王』は三浦按針をモチーフにした主人公にしていて、それはそれで、歴史ロマン溢れる物語が描けました。ただ、主人公をひとりに固定すると、その視点でしか物語を描けなくなってしまいます。歴史の影に隠れた存在であれば、何をするにしても自由度が増すので、さまざまな視点から『三国志』の世界をより濃密に描けると考えたのです。

――タイトル名と主人公、または世界観に何らかのつながりはあるのでしょうか?

安田『ウォーロン』というのは、“臥龍”のことを指します。伏せた龍、つまり“まだ世に知られていない逸材”というような意味があり、それが本作の主人公のことを表しています。物語は黄巾の乱にまつわる時代から始まりますが、『三国志』でのちに名を歴史に刻むことになる数々の武将たちもまだ世に出ておらず、彼らもまた臥龍として描かれます。

――タイトルについてもうひとつ、英名のタイトルにした理由と、“Fallen Dynasty”の意味も教えてください。

安田『仁王』は海外での名前も『Nioh』で、ワールドワイドで同じ名前にしていたので、今回もそれは踏襲したいと思いました。それに加えて、パッと見て『三国志』が舞台だと伝わってほしかったので、“Fallen Dynasty”という古代中国らしさを感じられる副題を付け加えています。

――『三国志』の武将たちが数々登場するようですが、イメージ的には『仁王』のように、武将たちと絡みながら、さまざまな敵と戦っていく感じですか?

安田はい、イメージ通りかと思います。『三国志』といえば、やはり武将たちのドラマだと思います。武将どうしの関係性や、主人公との共闘なども楽しめます。

――武将のデザインについては『三國志』や『真・三國無双』シリーズがある中で、本作ではどういった方向性を目指したのでしょうか。

安田ひと目見て「これはあの武将だよね」とわかるようなデザインにはしています。ただ、ダークな世界観ですので、色鮮やかに武将を描くというよりは、本作ならではの褪せたカラーリングなどをデザインの際には意識しています。

『ウォーロン フォールン ダイナスティ』開発陣インタビュー。『仁王』とは異なる新たな手触りの“ダーク三國死にゲー”

――『仁王』では妖怪との関わりも特徴でした。中国にも妖怪が多数いるので、やはり登場するのでしょうか?

安田むしろ妖怪の元祖と言っても過言ではないですから、黄巾賊などに加えて、古来の妖怪たちと戦うこともあるでしょう。

山際本作では“妖魔”と呼んでいます。山海経をはじめとする中国に古くから伝わる伝説の妖怪などがモチーフとなっています。

――『三国志』の途中までを描くとのことで、気が早いですがヒットすれば続編なども?

安田可能性としてはあります。『三国志』としての話の続きはもちろんですし、登場させるのを諦めざるを得なかった武将や逸話も多かったので、もしヒットした際には光を当ててあげたいな、と。とはいえ、まずは本作に全力を尽くします。

――『仁王』シリーズではオープンベータなどで意見を募って制作していましたが、本作では実施予定はあるのでしょうか?

安田プレイヤーの方とのコミュニケーションは、制作の励みにもなりますし、タメになることばかりですから、ぜひ検討したいです。

――期待しています。まだ謎は多いですが、『ウォーロン』の続報が楽しみです。

山際今後、SNSなどでも情報を出していきますので、ぜひチェックしてください。

安田今回は初報ということでお伝えできる情報が少なくて申し訳ないのですが、これからどんどん出していきます。ご期待ください。

『ウォーロン フォールン ダイナスティ』開発陣インタビュー。『仁王』とは異なる新たな手触りの“ダーク三國死にゲー”