最大8人プレイに対応したXbox Game Studiosによるインタラクティブドラマ『As Dusk Falls』が、2022年7月19日よりXbox Series X|S、Windows PC、Steamにて発売される。Xbox Game Pass、PC Game Passでも発売と同時に提供予定だ。

 『As Dusk Falls』は、1998年にアリゾナの小さな町で起きた強盗事件から始まる数十年間の物語が2編にわたって描かれ、プレイヤーの選択が登場人物たちの人生に大きな影響を与えるインタラクティブドラマ。物語中に起こる出来事へのキャラクターたちの決断、行動をプレイヤー自身が決め、多岐にわたる分岐点を経て、結末までが描かれることになる。

 今回、そんな本作の第1章、2章をプレイする機会を得たので、その内容と魅力を紹介していこう。

インタラクティブドラマ『As Dusk Falls』先行プレイビュー。さまざまな視点から描かれる秀逸なサスペンスドラマは息を呑む展開の連続で目が離せない
『As Dusk Falls』Xboxサイト

キャラクターのセリフや行動を決めることで結末が変わるインタラクティブドラマ

 まずは、本作をプレイする際の流れやシステムを紹介していこう。『As Dusk Falls』はジャンルがインタラクティブドラマとなっている通り、展開される物語の内容にプレイヤーが介入できる仕組みになっている。

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 ゲームをスタートすると実写をイラスト風にしたような独特のテイストで、ムービーが流れ出す。このストーリーの最中に表示される選択肢を選ぶことで、話の流れをプレイヤー自身が決めていく。この行動を本作では、“意思決定”と記載していた。

 誰かとの会話中、皮肉を言ったり、真摯に向き合うなど選択肢によって周囲の人間との関係性も変わってくる。操作するキャラクターが嫌味ばかりを言う敵対心剥き出しの人間か、協調性のある人間になるかはすべてプレイヤー次第だ。

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制限時間内につぎにキャラクターが口にするセリフや行動を決める。

 また、セリフ以外にもキャラクターの行動を決めることも。大抵は切羽詰まった場面で、短い制限時間内で咄嗟の判断が求められる。状況によってはこの選択ひとつで、登場人物の生死にかかわることもあるので慎重にならなければいけない。

 よかれと思った行動が裏目に出て、悲惨な結末を生むことだって当然ある。プレイヤー自身が決断するからこそ、その先の結果も重く感じてしまう。

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 その中でも重要な選択をする場面では、分岐点のポップが表示される。これらの選択肢が物語に与える影響は小さなものではなく、選択次第で生き残る人物、死んでしまう者も大きく変化していく。

 強盗事件を起点とするストーリーの性質上、つねに緊張感も漂っているため、この選択肢がとにかく重い。どちらを選んでも不幸な結果が待っていそうな場面などは、決断するのが非常に悩ましかった。

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 意思決定以外には、周囲を探索して手がかりを探す探索や、イベントに最中に表示されるコマンドをタイミングよく押すクイックアクション(いわゆるQTE)なども存在している。クイックアクションは失敗するとろくなことが起きないので、イベント中も目を離さずにプレイしよう。

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 意思決定、探索、クイックアクション。これら3つをくり返し、物語を作り上げていくのが『As Dusk Falls』の遊びかただ。1章ごとに無数の分岐点が存在しているが、最終的にどんな結末をもたらすかは最後までプレイして初めてわかるのだろう。今回プレイした第2章まででも、後半まで影響を及ぼしそうな大きな選択肢がいくつもあった。

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 章が終わるタイミングでは、プレイヤー自身の概要が表示される機能もある。プレイヤーの価値観や特性が明らかになるため、マルチプレイで楽しむときは最後に表示される概要を見比べてみてもおもしろそうだ。

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情報を出すタイミングが絶妙で惹き込まれるストーリー

 ここからは、具体的なストーリーについても紹介していく。第2章までのネタバレを含むため、気になる人は注意してほしい。

 第1章~第2章の範囲では、おもにふたつの視点を交互に操作しながらプレイすることになった。ひとつ目の視点は、とある事情で引っ越しを余儀なくされたヴィンス一家。

 ヴィンスたちはクルマに乗って引っ越しをしている最中なのだが、やけに空気が重苦しい。話の流れから、ヴィンスが会社で起きた事故の濡れ衣を着せられ、仕事を追われる身となったことが読み取れる。

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 もうひとつの視点は、タイラーとデール、ジェイという若者たちのもの。第1章ではジェイを操作することになる。彼らはよほどお金に困った状況なのか、保安官の家に忍び込み大金を盗み出そうとしていた。リーダー格のタイラーが指示を出し、デールとジェイが忍び込みお金を盗む計画のようだ。

 一見接点がなさそうなヴィンス一家とタイラーチームは、ある出来事をキッカケに否応なく関わり合うことになる。互いに抱えている事情はあるが、それらをキャラクターたちは知る由はない。しかし、プレイヤーは両方の視点を追っているため、彼らの行動原理をある程度理解できている。

 その中でキャラクターにどんな決断をさせるのか。いわゆる神視点に近い情報量で物語を作り上げられるのだ。

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 ストーリーはまず、ヴィンスの操作から始まる。ヴィンスは濡れ衣を着せられた仕事の件で悪夢を見るほど悩んでおり、妻のミシェルともややギクシャクしている状態。娘のゾーイの前では明るい父として振る舞っているのだが、クルマの中は妙に気まずい雰囲気に包まれている。

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 その微妙な関係をさらに難しくしているのが、ヴィンスの父親であるジム。彼はかつてヴィンスと母親を捨てて飛び出した過去があるようで、与えられた情報だけで推察するなら、ろくでなしの父親だ。

 ヴィンスとも長年連絡を取っていなかったのだが、病気が見つかると突然家族の前に姿を見せた。これまで放っておいたくせに、病気になったら家族の傍にいたいと言い出す。身勝手な考えかたの人物のようなのだが、それ以外にも何やら裏がありそうな人物だ。

 ただでさえ仕事のことで悩んでいるヴィンスだが、そこに父親の問題まで転がり込み、家族の関係はさらに複雑になっていく。妻、娘、父親。誰を優先し、誰を守るべきなのか。ヴィンスは度々苦しい選択を迫られることになる。

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 一方のジェイの視点では、デールとともに保安官の家に忍び込むところから操作が始まっていく。保安官が1時間は留守にしているという情報の元、隠された金庫から大金を奪い取るのが彼らの目的だ。タイラーが外で見張り、デールとジェイが忍び込むという作戦で行動を開始する。

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 しかしまだ若いからか、彼らの行動にはどうにも無計画さが目立つ。家に侵入するや否や覆面を外し、冷蔵庫を漁ったと思ったら中にあった飲み物に排尿するなどやりたい放題だ。証拠をみずから残していくデールの行動からも、彼らが軽率な行動を取りがちな人物であることが読み取れる。

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 そうして探索を続けていると、ジェイは保安官の夫人と部屋の中で遭遇してしまう。家族構成を事前に把握していない辺り、強盗計画は突発的な行動だったのかもしれない。

 夫人に発見されたことが原因で保安官も予定より早く帰宅し、金庫から大金を奪うことには成功したものの彼らは発見されてしまう。ここはジェイの咄嗟の行動で切り抜けるのだが、彼らは保安官に追われる立場になってしまった。

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 そうして逃亡したジェイたちが隠れる場所として選んだのが、ヴィンス一家が宿泊しているモーテル。運悪くその場に居合わせただけのヴィンスと、追っ手を撒くためにモーテルに逃げ込んだタイラーたちが出会うことで、物語は複雑に動き出す。

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 タイラーたちは銃を持っており優位に見えるのだが、もとより計画性に欠ける若者たち。人質としてモーテルにいた人物を集めるものの、銃を奪われて反撃されたりと事態は二転三転していく。

 ヴィンスが銃を奪う場面では、降伏するか、タイラーを撃つかを決める選択など後々の展開を大きく変えそうな意思決定も存在していた。

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 人質を集めて立てこもったタイラーたちだが、つぎつぎと新たな問題も浮上していく。当初は追っ手を撒いたらモーテルを離れるつもりだったのだが、いつもモーテルで飲み物を買う警察が偶然立ち寄るという、サスペンスではお決まりの展開も訪れる。

 裏で銃を突きつけるタイラーたちがいる中、平静を装って警察官に対応するヴィンスたちの絶妙な緊張感はまさにドラマそのもの。ヴィンスに話しかけたり、モーテルの従業員であるポールと雑談したりと、警察官もなかなか帰ってくれない。

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 早く帰ってくれとプレイヤーも、きっと登場人物一同も思うこの場面。床には異常事態を知らせるある証拠が残っており、これをどうするかはヴィンスの意思決定で決断できる。選択次第ではタイラーたちに気づかれることなく、警察官に助けを求められた。

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最初は仕事をさぼっているダメ警官かと思いきや、意外と有能……?

 モーテルでの対立、警察官の来訪と緊張感が続く中、ついにはタイラーたちの立て籠もりにまで発展。その後も突入を試みる警察官たちや人質解放の交渉、食料の受け渡しにヴィンスが選ばれるなど、つぎつぎと問題が起こっていく。

 人質をひとりだけ解放できる場面では、負傷した妻のミシェルか、娘のゾーイを選ぶという重すぎる決断が強いられることも。すぐにでも治療を受けないと命を失いそうなミシェルか、危険な状況から娘を遠ざけるか。ヴィンスにはつねに苦しい決断が待ち受けている。

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 こういった展開の続く本作で見事だと感じたのが、情報を出すタイミング。ストーリーの途中には過去の回想が入ることがあり、それまで明かされなかったキャラクターの背景などを知ることができる。

 ヴィンス一家がギクシャクしているのは、てっきり仕事が原因かと思っていたのだがじつはほかにも問題が……。という過去が明らかになったタイミングで、ミシェルとゾーイどちらを助けるかを決めることになる。

 重要な決断をするタイミングで、プレイヤーに強く訴えかけるような情報を提示してくるストーリー展開には驚嘆させられた。ほかにも裏がありそうなキャラクターが複数いるので、誰を信じていいのか疑心暗鬼になるほどだ。

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 また、ヴィンス一家に加えてジェイを操作してタイラーサイドの視点も見ているからこそ、おもしろくなる展開もある。それが、保安官ダンテとの関係だ。ダンテはタイラーたちが盗んだ黒い本を執拗に取り返そうとしており、ヴィンスはポケベルを通じて黒い本を探すように命令される。

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 しかし、ジェイを操作してダンテの家に忍び込んだプレイヤーなら違和感を覚えずにはいられない。黒い本なんてものは、ストーリー中に一切登場していないのだ。探索や意思決定で見つけるルートもあるかもしれないが、2回プレイした範囲では黒い本をダンテの家で見かけることはなかった。

 少なくともジェイが盗んだ描写はなく、同じく家に侵入していたデールも知らない様子。では、誰が盗んだのか? そもそも、本当に黒い本なんてあったのか? ふたつの視点を見ても正体のわからない不気味な存在が、物語をかき回していく。

 保安官の家にある黒い本と聞くとなにやら不正の匂いがするが、ともかくダンテはそれを人質救出以上に重視しているようだ。第2章までではその正体はわからなかったが、物語に大きく関わってくる要素になるだろう。

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 第2章が終わるタイミングでは、意思決定の結果次第で早くも死人が何人も出ることになる。平凡な一家と、強盗をした若者グループ。小規模な範囲に見えた物語は、黒い本の存在によって複雑で闇が深い内容へと変貌していく。

 結末がまったく予想できない展開の連続に強く惹き込まれ、発売されるのが待ち遠しくなった。サスペンスドラマやクライムアクションが好きな人には、とくに注目してほしい。

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 本作にはリプレイモードも実装されており、やり直しが楽なのもありがたかった。一定の分岐点からストーリーをやり直せるので、気軽にべつの選択肢を試せるのだ。何度もやり直して楽しめるタイプのゲームなので、リプレイモードも駆使してすべての結末を見届けたい。

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