2022年6月24日に、コーエーテクモゲームスよりNintendo Switchにて発売される『ファイアーエムブレム無双 風花雪月』(以下、『FE無双 風花雪月』)。本作は任天堂の人気シミュレーションゲーム『ファイアーエムブレム 風花雪月』(以下、『FE 風花雪月』)と、コーエーテクモゲームスの“無双”シリーズがコラボレーションした、タクティカルアクションゲームだ。

 本記事では、事前に製品版相当のバージョンを遊んだプレイレビューをお届け。なお、基本的に物語に関してのネタバレは、序盤のあらすじのみに留めているので、気になる人もご安心を。

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もうひとつのフォドラの姿

 本作は『FE 風花雪月』を題材にしながらも、『FE無双 風花雪月』独自の物語となっているのが特徴。『FE 風花雪月』だと、プレイヤーは主人公であるベレト/ベレスの視点を通して、士官学校の生徒たちに指導しながら、物語を進めていった。ベレト/ベレスがエーデルガルト、ディミトリ、クロードたち3級長と出会い、ガルグ=マク大修道院の先生に任命されるのが、おおまかなあらすじ。

 『FE無双 風花雪月』の主人公はシェズ(名前・姿変更可)。3級長たちとベレト/ベレスが出会うのではなく、シェズが出会ったあたりから物語が始まる。そのため、本作は“ベレト/ベレスと生徒たちが出会わなかった、もうひとつのあり得たかもしれない歴史”が語られるのである。

 そのため、本作は『FE 風花雪月』ファンはもちろんのこと、『FE 風花雪月』を遊んだことがない人でもイチから遊べる“無双”だと感じた。もちろんファンならばわかる、喜べるような要素もたくさんあるが、本作だけでほとんど完結しているため、『FE無双 風花雪月』を遊び、それから『FE 風花雪月』に入る、という流れもアリだろう。

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主人公のシェズ
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ライバルであるベレス・ベレト
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 なお、『FE 風花雪月』では第1部の士官学校編と第2部の戦争編とのあいだで5年が経過していたが、本作のメインの舞台は『FE 風花雪月』の士官学校編から2年後となっている。そのため、キャラクターたちには新たに2年後の姿が用意され、これまでとはひと味もふた味も異なるエピソードが描かれている。

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髪色が変わった姿も登場
fix (1)
ソティスが現れることも
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『FE 風花雪月』ではほぼ喋らない存在だったので、第三者目線でベレト/ベレスの姿を見られるのが新鮮だ

新たな関係性で描かれる登場人物

 傭兵である主人公は、ジェラルト傭兵団の最強剣士“灰色の悪魔”(『FE 風花雪月』主人公、ベレト/ベレスのこと。こちらも名前・姿を変更可)に敗北してしまう。死を覚悟した主人公だったが、突然現れた謎の存在・ラルヴァの力により助けられ、ピンチを免れる。灰色の悪魔にリベンジしたい主人公は、各地を放浪しながら修行しているうちに3級長と出会い、ガルグ=マク大修道院にある士官学校のいち生徒として生活することに。

 プレイヤーは3つの学級の中からひとつを選び、入学する。これはゲーム的に言えば、『FE 風花雪月』と同じくルート選択になっている。『FE 風花雪月』を遊んだことがない人向けだと思われるが、序盤にどんな生徒が学級にいるのか教えてくれるパートもある。自分の好みに合わせて遊びたいルートを選択しよう。

 士官学校編は序章に過ぎず、ゲーム的にはおもにバトル面のチュートリアルを担っており、どのルートでも基本的には同じような体験が待っている。そして分岐する3つの章に突入すると、舞台は2年後に突入。3学級からアドラステア帝国、ファーガス神聖王国、レスター諸侯同盟へと派生し、3つの国の動乱を描く、本作の本編となっている。

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 主人公は気さくで仲間想いだが、どこか抜けているキャラクター。『FE 風花雪月』主人公とは違い、普通にセリフもあるので、ある程度キャラクター付けがされているが、選択肢がかなり極端だったりして、自分好みのキャラクター性を演じることも可能だ。

 主人公が先生と生徒という関係ではなく、生徒どうしの関係性ゆえに、『FE 風花雪月』とはまた違ったキャラクターたちとの関係性が描かれているのが本作ならではの魅力。また、2年後だということもあり、まだまだ若々しい部分や経験の浅い部分を持っている場合もある。“ベレト/ベレスと出会わなかった”からこその登場人物もいるので、新たな一面を見られることだろう。

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 ……といった感じで、このあたりの物語までは配信中の体験版でも味わえるので、ぜひともご体験を。各物語の内容について感想を述べたいが、述べた時点でネタバレになるので「まあよかった」と、魅力ステータス0みたいなコメントだけ残しておこう。

 なお、プレイアブルキャラクターは基本の学級の生徒のほか、イエリッツァやシャミア、ロドリグなども存在し、かなり多い。ゲームを進めていけば、学級の生徒以外のキャラクターも使用できるようになる。

 『FE 風花雪月』のダウンロードコンテンツで登場した“灰狼の学級”の生徒たちも登場し、こちらは比較的楽な条件で仲間になる。

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戦略性の高い無双アクション

 アクションは“無双”シリーズらしく、ド派手かつ爽快な一騎当千のバトルが楽しめる。『FE 風花雪月』の上品なイメージとはかなり離れているので、もしかしたら超人すぎるキャラクターたちの姿に度肝を抜かれる人もいるかもしれないが、そこは“無双”なので……。

 バトルは通常の敵兵士(いわゆる雑魚)は、ほぼ賑やかし程度の存在で、おもに将兵(『真・三國無双』でいうところの武将)との戦いがメインとなっている。敵兵士の数を減らして戦局に影響を与えるというよりは、将兵どうしのぶつかり合いがメインという具合。

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 本作は『FE無双』などのように、各キャラクターにアクションが紐づいている、“無双”シリーズのオーソドックスなシステムではない。アクションのほとんどは兵種(クラス)に紐づいており、各キャラクターが自由に兵種を変更できる。また、一部キャラクターのみ専用兵種を持っている。

 「それだと個性が薄いのでは?」と思われるかもしれないが、各キャラクターには個人スキルがあり、アクション、戦術、補助と3つの固有スキルを持っている。個人スキルと兵種アクションを組み合わせることで、そのキャラクターならではの性能となるのが、本作の魅力だ。

 基本システムは『FE無双』を踏襲しつつ、シンプルなアクションがメイン。キャラクターどうしでコンビを作る“副官”も本作らしく取り入れているのが、うまいなと思った要素。

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あのジェラルトと戦う場合も

 攻撃方法は弱攻撃や強攻撃のほかにも戦技・魔法や兵種アクション、さらにはキャラクター固有アクションまであるので、最初は戸惑うかもしれない。ただ、アクション的な狙いは“スタンゲージを削ること”のひとつに絞られているので、次第に慣れていくだろう。

 スタンゲージは将兵全員に用意されており、特定のアクションや行動中に攻撃することで表示される。ゼロまで削りきると、絶大なダメージを叩き出せる“必殺の連撃”がくり出せる。ただ攻撃してHPを削り切るのではなく、“必殺の連撃”を狙ったほうが効率よく攻略できるのがポイント。戦技・魔法は当てるだけで必ずスタンゲージを表示できるので、切り札のひとつなのだ。さらにスタンゲージを削りやすくする“覚醒”もある。

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敵の頭上に現れる盾のようなものがスタンゲージ
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すべて減らすと必殺の連撃を放てる

 兵種相性で有利に立つと、スタンゲージがより削りやすい。また、“重装特効”などを持つと、特効対象の兵種に対してはどの攻撃でもスタンゲージが削れるようになる。これらのスタンゲージにまつわる関係性が、戦術面と絡んで本作独自の無双アクションとして楽しくしている要素に感じた。

 もうひとつの切り札である“無双奥義”、または“連携奥義”は、必殺の連撃レベルの絶大なダメージを誇る。『FE無双』同様、威力が高すぎると感じるほどに強く、準備すれば比較的溜まりやすい。便利かつ使っていて気持ちいい要素だった。

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シミュレーション的要素もあり

 『FE無双』同様に、マップ画面では仲間に指示を出すことができ、『FE』シリーズとまではいかないが、さながらシミュレーション的な要素も楽しめる。“無双”シリーズは基本的に仲間はあまり活躍せず、むしろ苦戦して敗走するなど邪魔になることもしばしば。

 本作は『FE無双』よりもさらに仲間が活躍するようになっており、しっかり育成していればちょこっと指示をするだけで拠点をすぐ制圧してくれたりと、かなり頼もしい。半面、兵種相性の影響はかなり受けやすく、うまく指示してあげる必要がある。

 各クエストも二手に分かれたり、突発的な防衛ミッションが始まるなど、部隊を分けて戦うイベントが多く、これが忙しくも楽しいところ。マップ画面は時間が止まるが、バトルは時間経過で進むので、さながらリアルタイムストラテジーを遊んでいるかのような感覚も味わえた。

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 とはいえ“無双”作品ゆえに、効率よく攻略するために使える程度で、やはりプレイヤーの大活躍で戦局が大きく変わる。ただ、各ステージにはクリアー時にランク評価があり、Sランククリアーで報酬アイテムが貰えるため、その条件を満たすためには使いこなす必要があるというのが、なんともうまい塩梅。

 相性を見て仲間へ指示を与えるというのは、『FE無双』にもあった要素ではあるが、兵種変更のおかげでそれがより際立って戦略性につながっていると感じた。『FE無双』は各『FE』シリーズのキャラクターたちが勢ぞろいのクロスオーバータイトルということもあり、剣装備キャラクターが非常に多く、不利なまま戦闘せざるを得ないシーンも多々あった。

 騎馬、ペガサスなどの男女差はあるが、本作は一部専用兵種を除いて、誰でも全兵種を使用できるため、より自由に戦略を練れるのだ。そのぶん、しっかり対策を考慮しないと攻略しにくくなっているところからも、よりやり応えがアップしている。

 なお、メインクエストでは事前に選ぶことで発動できる“作戦”というものも存在する。設定して発動することで、多彩な効果を発揮できる。作戦は、事前にサブクエストをクリアーし、調査によって解放される場合もある。

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スタイル変更について

 本作にはゲーム開始時に難易度変更とスタイル選択があり、“カジュアル”にすると一般的な“無双”と同じく、仲間がやられてもステージ終了後には復活するスタイル。“クラシック”は、『FE』シリーズ伝統のスタイルで、倒されると“ロスト”し、仲間が出撃できなくなり、完全に育成も不可となる。

 もちろんカジュアルで問題ないが、より手に汗握る戦いが楽しみたい人には、クラシックがオススメ。単純なる仲間の苦戦が、マジで怖いものに変化するため、ときには拠点へ撤退させるなど、より盤面戦術が重要になってくる。基本はリアルタイム進行ゆえに、気づいたらヤバい状況になっていることも。物語やキャラクター性がさらに深まる要素でもあるので、ぜひともクラシックをお試しあれ。アクションが苦手な人はもちろんカジュアルで!

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育成の要となる軍備パート

 ゲームの主要拠点となるのが、“前哨基地”。戦いの準備をする、軍備パートとなっている。前哨基地ではアイテムの購入や武器の強化など、さまざまなことが行える。各施設は素材を消費することで、さらに機能が拡張されるなどの強化もできる。前哨基地内は施設や人物などにワープが可能で、移動が面倒になることはなかった。

 とくに頻繁に使用するのが、訓練場。訓練場では兵種の獲得のほか、各キャラクターたちをコンビでトレーニングさせることができ、指定した兵種の経験値と、コンビどうしの支援値(いわゆる友好度)を稼げる。『FE 風花雪月』よりも、かなり気軽にポンポン兵種を変えられるのがポイントだ。専門以外の全兵種獲得も、比較的ハードルは低いだろう。

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 また、前哨基地内には資料が点在しており、軽い探索要素もある。また、各エピソードの進行に応じて仲間との会話を楽しむことができる。もしキャラクターたちをより知りたい、物語を深く楽しみたい人は忘れずに読んでおこう。読んでいないと、各キャラクターに未読アイコンも付くのが便利。

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 施設内では食事を振る舞ったり、作業を手伝うなどしてキャラクターたちと触れ合いながら、支援値を高める要素もある。なお『FE 風花雪月』にあった“お茶会”は、馬に乗って草原などを訪れる“遠乗り”という要素に変わっている。中身自体は、選択肢を選んでよりよい会話をくり広げることを目的としており、だいたい『FE 風花雪月』のお茶会と同じだ。

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独特な進軍パート

 進軍パートは、簡潔に言ってしまうとステージ選択画面。エピソードを進めるためのゴールである“メインクエスト”が、従来の“無双”シリーズのような、大型ステージ。そこに辿り着くためにクリアーする必要のある“サブクエスト”は、最短5分前後で終わるようなショートステージとなっている。

 進軍マップではサブクエストをクリアーすると、建物などを調査できるようになる。調査ではおもに、前哨基地の施設を強化するアイテムが貰えるほか、基礎ステータスの強化などその効果はさまざま。ときには戦闘ステージとなっている場合もある。

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 時限式クエストもあり、「どちらを攻略するのか?」という若干の選択はあるシチュエーションもあるが、基本的には全サブクエストを踏破してから、メインミッションに進むので、進軍パートにおける戦略的要素は薄め。もちろん、さっさとメインミッションに挑みたい人はある程度無視してもいいが、育成的にはかなり損だ。

 また、“外伝”というサイドクエストもある。こちらは特定の仲間の組み合わせがいる場合、エピソードに応じて任意で選択できる。本編は基本的にシリアスなムードで進んでいくが、外伝は“無双”らしい戦闘特化のステージになっているほか、雰囲気も“無双”らしくお祭り的ななごやかなムードなものが多く、こちらも遊んでいて楽しい要素だった。

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マップのアンナに遭遇すると、そのエピソード中の限定ショップが開放される。

育成がやり応えバッチリ!

 といった感じで、軍備パートで準備し、進軍パートでステージを選択して、戦闘パートでバトルに挑む。そしてまた軍備パートで強化して……というのが、本作のサイクル。この育成が非常におもしろく、かつやり込み要素のひとつになっている。筆者としては、この育成要素がとくにおもしろい要素だった。

 レベルを上げればキャラクターが強化されるのはもちろんのこと、兵種レベルを上げていけば、武器レベルの上昇によりアクションが増えたり、スキルを習得できる。さまざまな兵種をマスターしていけば、兵種に紐づいた習得スキルをほかの兵種にも装着できるため、多彩なスキルを組み合わせて何かに特化させる、いわゆる“ビルド”を楽しめるのだ。

 また、武器やアクセサリ類の変更もある。武器にもさらに特殊な効果が付与されている場合があり、それらを付与したり強化するなど、装備にまつわる構築もあって、『FE』シリーズが持つ、RPGらしさがより楽しめた。なお、騎士団はほぼ装備アイテムのようなもので、メインの性能としては特定兵種への対抗策となっている。

 好きなキャラクターをとことん育成するもよし。部隊全体のバランスを見ながら育成するもよしと、自由度の高い育成が楽しめるようになっている。

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あり得たかもしれない物語を楽しもう

 一般兵士はちょくちょく消えたりするが、瞬間表示数はかなり多く、一気に多数の敵を吹き飛ばすのは、やはり爽快。さすがにド派手すぎる画面になると処理落ちの目立つところもあるが、遊んでいてとくに気になるほどではなかった。また、戦闘開始時のロードがメチャクチャに早かったりと、かなりストレスフリーに遊べるようになっている。

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敵味方入り乱れてさらに連携奥義をくり出したりすると、処理落ちする場合もあるが、まあそれはそれでワチャワチャ感が気持ちよかったりする。

 物語、バトル、育成とさまざまな要素が盛り込まれており、やり込み要素も充実。1周(1ルート)のプレイ時間は昨今のゲームと比べるとさほど長くないが、本作はさまざまな観点から見て最低でも3周以上を攻略する前提の作りになっているので、総ボリュームが薄いというわけではない。周回プレイで、何周も楽しめるように設計してあることが多彩な要素から垣間見えた

 主人公・シェズの性能はメチャクチャに高く、超高速移動を持ち、超お手軽な専用兵種“フリューゲル”が最初から使えるほか、物語の途中からは戦闘中にワープできるようにもなる。アクション初心者の人でも難なく物語を進められるため、その点はご安心を。

 『FE 風花雪月』ファンには、新たな一幕を。本作から初めて遊ぶ人は、やり込み度とシミュレーションRPGらしさに溢れた“無双”の世界を楽しめるだろう。もうひとつのフォドラの世界を、ぜひご覧あれ。