『Desperados III』(デスペラードス3)はTHQ Nordicより2020年にプレイステーション4、Xbox One、PC(Steam、Epic Games Store)向けに配信されたタイトル。

 西部劇の世界を舞台に、父親の仇を追うガンマン、ジョン・クーパーの物語が描かれる、ステルス(敵に見つからないように、背後から仕留めたりやり過ごすことに重きをおいた)要素の強いストラテジー(戦略)ゲームとなっています。

 最終的な操作キャラクターの人数はクーパーと彼が旅の中で出会う仲間たちを合わせて5人。広大で作り込まれたマップの中、リアルタイムで行動する彼らを操作して敵ユニットを撃破していき、目標を達成すればつぎのミッションへ進める――というのがゲームの基本的な流れです。

Desperados III - John Cooper Trailer(英語)

 タイトルに“3”と銘打たれている通りシリーズの続編ではありますが、物語は1作目『Desperados: Wanted Dead or Alive』の前日譚。過去作を遊ばずとも、問題なく作品世界に没入することができます。

 そもそも筆者もシリーズ作はおろか、こうしたストラテジー自体あまりプレイしてこなかった人間なのですが、本作はそんな自分でも深く熱中できる傑作となっていました。そんなわけで、今回は本作を“ジャンル初心者目線”でレビューしていきたいと思います。

『Desperados III』レビュー。かなり手強い、けれどいろいろな人にプレイしてみてほしい……西部劇の世界が舞台の“ハードコアタクティカルステルスゲーム”
今回はゲームシステムに重きを置いたレビューになるが、ストーリーやキャラクターたちの掛け合いも熱い。いぶし銀的な魅力に満ちたゲームだ。

※この記事はTHQ Nordic Japanの提供でお届けしています。

『Desperados III(デスペラードス3)』(PS4)の購入はこちら(PS Store) 『Desperados III(デスペラードス3)』(Xbox One)の購入はこちら(Microsoft Store) 『Desperados III(デスペラードス3)』(PC)の購入はこちら(Steam) 『Desperados III(デスペラードス3)』(PC)の購入はこちら(Epic Games)

高難度の理由は敵の“視野の広さ”と“配置の絶妙さ”

 公式に“ハードコアタクティカルステルスゲーム”と銘打たれている本作(Steamの紹介文参照)。読んで字の如く、難易度ノーマルでもかなり歯ごたえのあるゲームとなっています。筆者が最初に面食らったのが、“こまめなクイックセーブ”を前提としたゲームデザイン。

『Desperados III』レビュー。かなり手強い、けれどいろいろな人にプレイしてみてほしい……西部劇の世界が舞台の“ハードコアタクティカルステルスゲーム”
難易度はイージー、ノーマル、ハード、DESPERADOの4種類。

 『デスペラードス3』ではゲーム中、1分間クイックセーブをしていないと画面中央に「最終セーブ:(から)◯分◯秒(経過)」と、最後にクイックセーブしてから経過した時間が表示されます。オプションで表示を消すことも可能ではありますが、表示されるのがデフォルトの設定。これはつまり、本作が分単位でのクイックセーブを前提としたゲームということ。

 いくつもの攻略法を検討し、クイックセーブ&ロードを駆使してトライ&エラーをくり返し、思い付く限りの最善手を実行する。本作は、こうした数え切れない試行錯誤を前提とした難度となっているのです。

『Desperados III』レビュー。かなり手強い、けれどいろいろな人にプレイしてみてほしい……西部劇の世界が舞台の“ハードコアタクティカルステルスゲーム”

 これをフル活用した上で、多くのミッションが初見ではクリアーに1~2時間ほど掛かるボリューム。その間、頭脳をフル回転させることになるので、ぶっ続けで遊んでいると脳の疲労でもうヘトヘト……。この手のゲームに慣れていない方は、適度に休憩を取りつつプレイしたほうがいいかもしれません(筆者はそうしました)。

 けれどだからこそ、あらゆる窮地を最高の一手で打開し続け、ミッションクリアーを成し遂げたときの喜びはたまらないものがあります。ゲームにやりがいや達成感を求めている方には、ストラテジーやシミュレーションのジャンルにあまりなじみがなくても、ぜひともプレイしてみてほしいゲーム――それが『デスペラードス3』なのです。

『Desperados III』レビュー。かなり手強い、けれどいろいろな人にプレイしてみてほしい……西部劇の世界が舞台の“ハードコアタクティカルステルスゲーム”

 ではなぜ本作はクイックセーブ&ロードによる最善手の模索が必要なほど難度が高いのか? 大きな理由としては“敵ユニットの視野の広さ”と“ユニット配置の絶妙さ”が挙げられます。

 敵ユニットの視界は、そのユニットにカーソルを合わせることで扇状の図形として可視化されるのですが、ゲーム中の画像を見ると、かなり遠くまで見通せることがわかると思います。ここで注目してほしいのが、この扇状の視界に“塗りつぶされた箇所”と“縞模様の箇所”があること。塗りつぶされた箇所にプレイヤーが操作するキャラクターが入るとすぐに見つかってしまいますが、縞模様の箇所なら“しゃがんで移動すれば気づかれない”のです。これが本作のステルスにおいて重要なポイント。

『Desperados III』レビュー。かなり手強い、けれどいろいろな人にプレイしてみてほしい……西部劇の世界が舞台の“ハードコアタクティカルステルスゲーム”
遮蔽物の後ろも、見つかりづらい場所。草むらや藁の中は警戒態勢ではないときは完全に安全地帯と思っていい。

 加えて、多くの敵ユニットは、お互いを監視し合うように配置されています。これが“ユニット配置の絶妙さ”です。しゃがんでいる状態からでも敵を殺害したり、気絶させるときは操作キャラが“直立している”扱いになるため、ほかの敵ユニットの視界の縞模様の部分にさえ入っていれば、すぐに見つかってしまいます。通報され、警戒態勢に入られて増員を呼ばれ、多勢に無勢の状況になってしまうと、これを切り抜けるのは至難の業……。

 こうした困難を、どのように打開していくべきか? 状況にあわせた試行錯誤をくり返し、針の穴を通すような攻略法を構築し続けて行くことこそが、本作の醍醐味と言えるでしょう。

『Desperados III』レビュー。かなり手強い、けれどいろいろな人にプレイしてみてほしい……西部劇の世界が舞台の“ハードコアタクティカルステルスゲーム”
“高い場所にいるときは、しゃがんでさえいれば下にいる敵には見つかることがない”というのも、覚えておくべき本作の基本ルール。

時間を止め、複数のキャラを同時に行動させる“対決モード”がキマれば超気持ちいい!

 それでは、どんな方法で数々の難局を切り抜けていけばよいのか? なるべく敵に危害を加えずにクリアーを目指すこともできるものの、そうしたスマートな立ち回りが可能になるのはゲームに慣れてからです。まずは脅威をひとつひとつ潰していく――つまりつぎつぎに敵を抹殺していくのが攻略への近道となります。

『Desperados III』レビュー。かなり手強い、けれどいろいろな人にプレイしてみてほしい……西部劇の世界が舞台の“ハードコアタクティカルステルスゲーム”

 敵によってはあえて音を発したり、痕跡を残すことでおびき寄せて物陰でグサッ! という方法が使えるものの、中には陽動には引っ掛からず、自分の持ち場や巡回ルートを決して離れない敵も。こうした敵に対処するために使用するのが、本作の目玉であり、成功したときの気持ちよさがとにかく最高なシステム、“対決モード”です。

 これはゲーム内の時間を止めて、複数の操作キャラにつぎなる行動を指示。“続行”を選択すると時間が動き出し、“プランを実行”すれば全員が同時に指示した行動を実行に移すというシステム。これを利用すれば複数の敵を同時に仕留め、通報されることなく監視し合う敵を一気に殲滅できるというわけです。

『Desperados III』レビュー。かなり手強い、けれどいろいろな人にプレイしてみてほしい……西部劇の世界が舞台の“ハードコアタクティカルステルスゲーム”

 無事気付かれずに敵を始末しても、油断は禁物。巡回している敵に死んでいる仲間を発見されたら、ここでも警戒態勢に入られてしまいます。死体はその場に放置せず、草むらに隠したり水場に投げ込むなどして痕跡を消すのがセオリーです。然るべき場所へと隠した敵は消滅し、そのミッションの攻略中に復活することはありません。

 ちなみに本作では、ボタンひとつで敵への攻撃手段をナイフや斧による殺傷から素手による非殺傷に切り替えることが可能。非殺傷の場合、完全に無力化するには倒してから手足を縛るアクションを行う必要があり、殺傷するよりやや時間が掛かります。

『Desperados III』レビュー。かなり手強い、けれどいろいろな人にプレイしてみてほしい……西部劇の世界が舞台の“ハードコアタクティカルステルスゲーム”
「手足を縛られた上で水場に投げ込まれた敵は結局死ぬのでは……?」という疑問は湧くものの、この方法ならキル数にはカウントされない模様。非殺傷プレイを目指す人もご安心を(?)。

 “対決モード”を使っても、仕掛けるタイミングをミスして通報されることもありますし、こちらが把握しきれていなかった別の敵ユニットに殺傷現場を見られても、やはり通報されてしまいます。プレイを続けていると、“対決モード”を仕掛ける直前には条件反射的にクイックセーブを行うことになるはず。

 目論見通りに行かなかったのなら、その戦略の穴を埋めるにはどんな方法が考えられるか? さらに多くの操作キャラクターを動かせば打開できるか? 少しタイミングを遅らせれば、敵の視線が外れた瞬間を狙って気付かれることなく倒せないか? さまざまな要素を加味し、ついに作戦を成功させたときは、天にも昇るような充実感が得られるのです。

異なる個性を持った5人の仲間たち。恐ろしい魔術も味方が使えば心強い

 本作のゲームプレイをより多彩なものにしてくれているのが、プレイヤーが操作できるキャラクターたちの個性的な能力です。プレイヤーは上記のようなさまざまな困難に対して、キャラクターそれぞれの異なる“スキル”や特性を組み合わせて立ち回ることになります。

Desperados III - Character Highlights(英語)

 主人公のクーパーはガンマンですが投げナイフも得意としており、離れている敵を静かに殺すことができます。銃の早撃ちによりふたりを同時に撃ち抜くこともできるものの、銃声はかなり広範囲に響き渡るので、使いどころの見極めが肝心。

 医者でありスナイパーでもあるマッコイは、長距離射撃で音もなくターゲットを暗殺します。ダメージを受けた味方を回復したり、仕掛けが施された鞄で敵をおびき寄せて気絶状態にするなど、テクニカルなスキルも特徴。

 罠師のヘクターは掛かった敵を一撃で絶命させる巨大トラバサミを持っています。力持ちで倒した敵を2体同時に運ぶことができ、ほかのキャラでは一撃で倒せない相手を一発KOするなど、とにかくパワフルで頼もしい存在です。

 ケイトは変装が得意で、条件さえ整えば敵の前を素通りすることが可能。男性の敵ユニットが相手ならば誘惑して視線を逸らさせたり、陽動することもできます。また、彼女が持っている護身用の銃は音が小さく、クーパーのものより使える局面が多いのも特徴です。

 最後に仲間になるのは魔術師の女性・イザベル。ひとつのミッションで3回という回数限定で、敵を洗脳で操って同士討ちなどを狙えるほか、ふたりの敵にタグ付けして“連結”することで、ひとりに与えた効果をもうひとりにも与えることができるように。このときひとりを絶命させたなら、もうひとりの敵も絶命するという恐ろしい能力です。

『Desperados III』レビュー。かなり手強い、けれどいろいろな人にプレイしてみてほしい……西部劇の世界が舞台の“ハードコアタクティカルステルスゲーム”

 プレイヤーはこれらのキャラクターたちの特性を考慮しつつ、最善の戦略を模索していくことになります。とくにイザベルが仲間になってからは、戦いかたはより高度かつ企みが成功したときの“してやったり感”も強いものに。たとえば、“連結”した敵への影響はほかのキャラクターで攻撃した場合でも生じるので、クーパーの早撃ちでふたりを殺害すれば、タグの効果でさらにもうひとりの計3人を一気に絶命させることが可能です。

 対決モードなら、遠くの高台にいる見張りを同時にマッコイで狙撃して、殺傷現場の目撃を防いだり、それでもまだ目撃者が出てしまうなら、ケイトの誘惑で視線を逸らさせて……などなど、絶望的な状況に思えても、仲間たちの能力を組み合わせることで、打開策は必ず見つかります。

 こうして具体的に書いてみると、本作の試行錯誤がどれほどやりがいと達成感に満ちたものか、未プレイの方にもそこそこ伝わるかなと思うのですが、いかがでしょう?

数々の複合的なシチュエーションが、プレイヤーを最後まで苦しめてくれる

 上に書いたのは、状況の打開方法の一例に過ぎません。実際のゲームプレイでは、より複合的なシチュエーションが数多く登場します。

『Desperados III』レビュー。かなり手強い、けれどいろいろな人にプレイしてみてほしい……西部劇の世界が舞台の“ハードコアタクティカルステルスゲーム”
クイックセーブは直近の3つまでが保存される。現在決行しようとしている作戦に大幅な見直しが必要になった場合、2つ~3つ前のデータまで戻ることになるだろう。

 たとえば、ほとんどのマップに複数配置されているリーダー格の敵ユニット“ロングコート”は体力が3つある強敵。ヘクターならばその腕力により一撃で倒すことができるものの、ほかのキャラクターの場合、正攻法では体力をひとつしか減らせません。HPをひとつ削るとしばらくスタン状態になるものの、同じキャラクターでもう一度攻撃しようとすると必ず反撃を受け、逆にこちらが殺されてしまいます。

 ヘクター以外でこのユニットを倒すには、一撃を加えて怯ませたあと、別のユニットで死角からトドメを刺すという連携プレイが必要不可欠。実際にやってみると、ほかの敵ユニットの視線もある中でこれを成し遂げるのは、なかなか骨が折れます。

『Desperados III』レビュー。かなり手強い、けれどいろいろな人にプレイしてみてほしい……西部劇の世界が舞台の“ハードコアタクティカルステルスゲーム”
ロングコートはケイトの変装も見破るし、陽動にもほとんど引っ掛からない。イザベルの洗脳を掛けるときもスタン状態にする必要があるなど、とにかく厄介。ヘクターがいるミッションならば脅威度は下がるが……?

 銃は弾数が限られており、ミッションの途中で補充できることもあるものの、安易に使うと大事な局面で苦しくなるかもしれません。こうした点も考慮に入れて、いろいろな選択肢を検討しておくべきでしょう。

 逆にこちらに有効に働くのが岩や貨物を落とすなどして敵をまとめて葬ることができる“環境キル”のシステム。うまく事故死に見せかけられれば警戒態勢に入られることもないので、使える場所を見つけたら積極的に利用したいところです。

 プレイヤーが「こうすればいいんだ」と学びを得るたびに、新たな難題が登場。ミッションによっては離脱するキャラクターもいるため、同じシチュエーションというのはまったくないと言っていいでしょう。マンネリというものを感じる暇など与えず、このゲームは最後まで僕らを苦しめてくれます。

『Desperados III』レビュー。かなり手強い、けれどいろいろな人にプレイしてみてほしい……西部劇の世界が舞台の“ハードコアタクティカルステルスゲーム”
警戒態勢に入られてしまっても、うまく増員を各個撃破したりまとめて始末する方法が見つかれば打開は可能。そうならないのがベストではあるが、どんなときも諦めてはいけない。

数え切れない試行錯誤の末、自分だけの戦略で勝利をつかむ快感を

 各ミッションをクリアーした際のリザルト画面では、そのミッションでキャラクターたちが取ったすべての行動がマップ上に可視化されます。一手一手死に物狂いでプレイした軌跡をひとつの流れとして見ることができると、自分が行った積み重ねが実感できて、グッとくるというもの。

『Desperados III』レビュー。かなり手強い、けれどいろいろな人にプレイしてみてほしい……西部劇の世界が舞台の“ハードコアタクティカルステルスゲーム”

 これに続いて、初回プレイでは条件を満たした上でクリアーすることで獲得できるいくつもの“バッジ”の獲得条件が開示されます。本作のやり込みプレイでは、各ミッションでのバッジのコンプリートを目指すことになるわけですが、ほとんどのミッションには「◯◯分未満でクリア」というスピードランにより獲得できるバッジが設定されており、このタイムは20分台以下がほとんど。筆者の腕前では何をどうすればそんなスピードで攻略できるのか検討も付きません……。逆に戦略ゲームの上級者なら、かなり奥深いやり込みが堪能できるのではないでしょうか。

『Desperados III』レビュー。かなり手強い、けれどいろいろな人にプレイしてみてほしい……西部劇の世界が舞台の“ハードコアタクティカルステルスゲーム”

 最後に本作の問題点としてひとつ挙げておきたいのは、字幕などの文字が小さく、読みづらいこと。サイズ変更もできないので、視力が低い人や、大きめのモニターを持っていない人には勧めづらいゲームになってしまっているのが現状です。

 この点が問題にならなさそうな人には、ぜひプレイしてみてほしいゲームです。追加コンテンツでさらなる戦いに身を投じることもできます。最初から追加コンテンツまで遊び尽くす気概があるのなら、デジタルデラックス版を購入するのがお得(※セール時は別々に購入するほうがお得な場合もあり)。

 2年前のゲームですが、いまプレイしても新鮮な楽しさが味わえるはず。数え切れない試行錯誤の末、自分だけの戦略で勝利をつかむ快感に、ぜひとも酔いしれてみてください。

『Desperados III(デスペラードス3)』(PS4)の購入はこちら(PS Store) 『Desperados III(デスペラードス3)』(Xbox One)の購入はこちら(Microsoft Store) 『Desperados III(デスペラードス3)』(PC)の購入はこちら(Steam) 『Desperados III(デスペラードス3)』(PC)の購入はこちら(Epic Games)
THQ Nordic通