2022年5月7日、東京オペラシティ コンサートホール タケミツメモリアルにて、 “ゲームセンターCXシンフォニー2022”が開催された。本記事では当日2公演が行われたうちの、夜の部をリポートする。

オーケストラ演奏&映像で番組を振り返りつつ、課長は会場限定の“有野の挑戦”に臨む

 本公演は2003年から続くゲームバラエティー番組の代表的存在、『ゲームセンターCX』内にて有野課長(よゐこ有野晋哉さん)がクリアーに挑戦したゲームタイトルのBGMのオーケストラ演奏を堪能しつつ、生演奏を活かした特別な“有野の挑戦”を見守るイベント。平成最後の祝日(2019年4月29日)に開催された第1回からおよそ3年ぶりに開催された今回は、グランドフィルハーモニック東京が演奏を担当した。

 公演は番組のオープニングテーマとしてもおなじみの歓喜の歌(交響曲第九番・第4楽章)の演奏をバックに、有野課長と司会進行を担当する番組の構成作家、岐部昌幸さんが登場して開幕。

 有野課長は「昼の部はクイズも挑戦(ファミコン版『キャプテン翼』のゲームプレイ)も全部成功して……」と話し始めるも、実際は失敗していた模様。そのためか岐部さんからは「(挑戦の時間を取るために)夜の部は巻きでいきましょう!」と提案され、オープニングトークもそこそこにふたりはいったん退場。“名曲で振り返る有野の挑戦”の前半戦がスタートする。

 ここでは『スーパーマリオブラザーズ2』と『超兄貴』のBGMがメドレーとして演奏されるなか、舞台上のスクリーンには番組のダイジェスト映像――『マリオ2』の8-2の“ツル出し”に大苦戦する有野課長、熱に弱いPCエンジンとの戦いでもあった『超兄貴』回の様子など――が流された。

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おなじみ有野課長(写真右)と、イベントでは司会進行を担当する『ゲームセンターCX』の構成作家、岐部昌幸さん(写真左)。

 続いて行われたのは、昼公演、夜公演で内容が異なるお楽しみマル秘コーナー、“名曲多重奏クイズ”。番組で挑戦したゲームのBGMが、最初はドラムのみ、つぎにベースやピアノをプラス、最後にバイオリンなどの弦楽器が追加された状態で演奏されていき、3回目までに有野課長が答えを当てればクリアーというコーナーだ。

 しかし1、2回目の演奏の情報量が少なく(とくに1回目のドラム演奏のみでゲームを特定するのは激ムズ)、かつ番組で取り上げてきたゲームがいまや膨大な数となったため、『ゲームセンターCX』視聴者でもなかなか難しく感じるこのクイズ。有野課長はフル演奏の3回目を聞いても正解の『悪魔城伝説』はまったく頭に浮かばなかったようで、1問目はあえなく不正解に終わった(ちなみに有野課長の解答は『ドンキーコング』、『ツインビー』、『探偵 神宮寺三郎 新宿中央公園殺人事件』)。

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3年前の公演で行われたイントロクイズから、大幅に難易度がアップしたマル秘コーナー、名曲多重奏クイズ。

 2曲目も1回目のドラム演奏だけではなんのBGMか判別するのは難しく、正解を導き出せそうにない雰囲気が漂ったが、岐部さんが出したヒントで状況が好転。岐部さんが本来用意していたヒント、習いたてのピアノ演奏……はほとんど役に立たなかったものの、その後の有野課長との会話が決め手に。ここで出た“史上最弱”というキーワードで有野課長が『スペランカー』という正解にたどり着き、1勝1敗でコーナーを締めくくった。

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岐部さんのピアノの演奏はあまりヒントとして機能しなかったものの、クイズ自体は有野課長が正解。

課長、そしてオーケストラのアドリブ力が試された“世界一ぜいたくな有野の挑戦”

 休憩を挟んでスタートした後半戦は、『ゲームセンターCX』で取り上げられるタイトルとしてはかなり新しめな『スペースチャンネル5』メドレーで開幕。挑戦時の映像、有野課長がリズム感のなさを特別出演のうららに指摘されるシーンや、田原俊彦風(?)コスプレに着替えて強敵に挑む様子が演奏とともに流された。

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“うらら歩き”で登場する有野課長。

 『スペースチャンネル5』メドレーが終了すると、有野課長と岐部さんがふたたびステージ上に登場し、“世界一ぜいたくな有野の挑戦”がスタート。このコーナーでは有野課長がファミコン版『キャプテン翼』のクライマックス、南葛中vs東邦学園戦をプレイする中、グランドフィルハーモニック東京は試合の展開に合わせた楽曲や効果音をリアルタイムで演奏するという、ゲームセンターCXシンフォニーでしかお目にかかれない“有野の挑戦”が展開された。

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対東邦学園戦に挑む有野課長。南葛中の面々のパラメーターは、10年前に番組で挑戦した際とまったく同じ状態。

 昼の部の「翼くんのガッツの使いすぎがよくなかった」という反省を活かして(2-3で有野課長率いる南葛が敗北)、夜の部では有野課長は翼くんのドリブルに頼らないパスサッカーで東邦のゴールに迫るというゲームプランで試合に入る。しかしこの選択は演奏を担当するオーケストラチームにとってはなかなか骨が折れる展開で、パスカットやクリアーボールの奪い合いでボールを保持するチームが南葛→東邦→南葛……と入れ替わるたびに、演奏すべき曲が目まぐるしく変化していった。

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ボールを蹴った際の音を再現するためにサッカーボールを持ち込むなど、演奏側の創意工夫も目立った今回の挑戦。

 有野課長が担当する試合のほうは、前半の早いうちに東邦がカウンターからのゴールを決めると、その後は一進一退の攻防が続き、とくに両チームのゴールキーパーが躍動。南葛のキーパー、森崎くんがタイガーショットを止めるというミラクルを見せると、東邦の若島津くんも負けじと翼くんのオーバーヘッドやドライブシュートを何度も弾き返す……という展開になり、有野課長の南葛は東邦にリードを許したまま時間を消費していく。

 後半なかばを過ぎたあたりになると、南葛のほうがボールを保持する時間が長くなり、同点、そして逆転の機運が高まっていく。しかしいざ決定機を迎えてコマンドを選ぶとなぜかゴール前に翼くんがいない不運や、そして試合の最初から最後までスーパーセーブを連発した若島津くんの活躍が重なり、試合は0-1のまま終了。有野課長の2連敗で、世界一ぜいたくな有野の挑戦、『キャプテン翼』編は幕を閉じた。

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昼の部はガッツ切れ、夜の部は謎のポジショニングで有野課長を悩ませた翼くん。

 有野課長の『キャプテン翼』への挑戦が終わると、“名曲で振り返る有野の挑戦”の後半パートが始まり、公演全体は終盤戦に突入。ここでメドレーが演奏された『ラフワールド』、『月風魔伝』は、どちらも定時(番組の収録時間の限界。だいたい夜の12時)までに有野課長が自力でゲームクリアーしたタイトルということで、曲が終盤に入るとステージ上のスクリーンにはエンディング画面が映し出され、公演の最後を飾るパートらしい、音と映像の組み合わせを体感できた。

 全プログラムが終了すると、有野課長と岐部さんがステージ上に登場。有野課長は「(コロナ禍などが)いろいろ収束したら、さいたま(スーパーアリーナ)でもやりたいね」と今後の番組イベントへの意欲を見せたのち、「3年ぶりのイベントは楽しかった。でも家に帰ったらふつうのゲームをやります。カービィ(『星のカービィ ディスカバリー』)とか」と、課長流の別れのあいさつを済ませて公演はお開き……と思いきや、エンディングテーマの演奏が終わると、有野課長は番組内ユニット、メッセメッセクラブの一員であるディレクターの楠田さん(『スペースチャンネル5』の回で活躍。本公演で使われた映像でもかなり目立って映っていた)とステージに再登場。来場者全員が写真を撮れる撮影タイムが設けられ、課長自身もステージ上から記念撮影。その後にアンコール曲“「剣を抜け! GCCX MAX」オーケストラバージョン”が演奏され、公演は締めくくられた。

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“ゲームセンターCXシンフォニー2022”夜の部 セットリスト

1.『スーパーマリオブラザーズ2』メドレー
2.『超兄貴』メドレー
3.名曲多重奏クイズ(2問。答えは『悪魔城伝説』と『スペランカー』)
4.『スペースチャンネル5』メドレー
5.世界一ぜいたくな有野の挑戦『キャプテン翼』
6.『ラフワールド』メドレー
7.『月風魔伝』メドレー
アンコール.「剣を抜け! GCCX MAX」オーケストラバージョン

※演奏はすべてグランドフィルハーモニック東京が担当

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