ゲーム大好きライターが古今東西のインディーゲームを紹介。本日お届けするのはNintendo Switch、プレイステーション5、プレイステーション4、Xbox Series X|S、Xbox One、PC用ソフト『パラダイスキラー』。

Text by:戸塚伎一(インディーゲームキラー捜査官)●記事一覧
2022年も『マイクラ』の仕事が中心になりそうなフリーライター。最近やっとXbox Series Sを買えました。めでたい。

【ここが推し】

  • 動物やロボットたちのかわいいドット絵に癒される!
  • ダイナーが発展し作れる料理が増えるのが楽しい!
  • 時折見られる“終末”の世界観がスパイスのように刺激的
03 のコピー
過去の過失により“パラダイス”から追放された犯罪捜査官。アシスタントコンピュータ“スターライト”を駆使して島に隠された真実を暴く。

レディ・ラブ・ダイ 300万日の放逐から帰還した捜査官

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舞台となる島を見下ろしながらスカイダイブするオープニング。正直ここのカッコよさだけでもとを取れる!?

 昔遊んだ懐かしのゲームは増えていく一方で、それらはときにダウンロード専売タイトルとしてリリースされたり、ミニチュアサイズのゲーム機の収録タイトルとしてラインアップされます。手が勝手に動いて購入したものはひとまずプレイして、あーコレ、あったあった、などとひとしきり感慨にふけります。

 ほかに何ができるかというと、“スコアのオンラインランキング◎◎位内を目指す”? “追加された便利機能を駆使して当時できなかったノーミスクリアーを目指す”? 少なくとも筆者にとってそれらは、そのゲームを心の底から最高だと思っていた当時の“決着のつけかた”ではありません。

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 そんなおっさんゲーマーの乾いたハートに、インディーならではの“尖り”の部分がグサグサと刺さったゲーム、それが今回紹介する『パラダイスキラー』です。銘打たれたジャンルは推理アドベンチャー。古代の神々(宇宙人)の復活を目的に作られては放棄される島で起きた政府高官大量殺人事件の真相を探る……というよくわからないバックストーリーは、初回プレイ時は結構進めてもやっぱりよくわからないままでしょう(笑)。

 プレイヤーは3Dフィールドを一人称視点で移動。証拠品を発見したら島内に点在する嫌疑者たちに見せて回り、新たな情報を得たらそのネタでさらに聞き込み……のくり返しが基本のルーチンとなります。証拠品は、そのへんに落ちているものもあれば、ふつうに歩いていたらまず見つからない場所に潜んでいるものも。かといって高度なアクション操作や難解なパズルが要求される場面はなく、ひたすら徒歩orファストトラベルでマイペースに探索できます。

 道しるべのひとつとなるのが、島のあちこちに配置されたゲーム内通貨“ブラッドクリスタル”。特定キャラに渡す情報料や、移動系の特殊能力を身につけられる施設“足湯”の利用料などに必要なのですが、使い道を持て余すほどの量があるため、中盤以降は、視界に入ったブラッドクリスタルをただ意地でゲットすることになります。「あんなヘンな場所にあるモノをどうやって……」という試行錯誤の過程で思いがけず貴重なロケーションを発見したりと、かなり変則的な形ながら“推理捜査の醍醐味”を味わえるのです。

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 ゲーム内通貨が余りまくることを筆頭に、本作はゲームならではのあらゆる制約から解き放たれています。“◎◎までに××しなければならない”といったタイムリミットや、地形落下によるデスペナルティーはなし。3Dフィールドにはリアルタイムで攻撃してくる敵や謎のアスレチック設備は一向に登場せず、ただ状況とそれに付随する事実が点在するのみ。極めつけは、証拠不十分でもこれだと決めた人物を有罪認定&処刑可能……という法廷パートのユルユルぶりです。

 もはや推理アドベンチャーの体を成しているかすら怪しいわけですが、『パラダイスキラー』が仮に“自分なりに観測した事実で自分なりの決着をつけるプロセスの体験”そのものを重視した作品だとしたら、いろいろと腑に落ちる点があります。

 時間や空間の前提が恣意的に歪められた難解なバックストーリー、21世紀以降に顕在化した音楽ジャンル“ヴェイパーウェイヴ”の世界観に基づくサウンド&ビジュアルは、本作の世界が“打ち捨てられた理想・かつてそこに完璧を見たものの残骸”であることを表現しているのだろう、とか。そんなものにさっさと見切りをつけ、新たな理想に飛び移りたくなるのが人のつねですが、あえて留まり、徹底的に検証し、たとえ完璧ではなかったとしても決着をつけることが“人生を自分のものにすること”ではないだろうか、とか。

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 本作を制作したイギリスのゲームスタジオ、Kaizen Game Worksの主要スタッフはゲーム業界歴23年のベテランふたり組とのこと。かつてAAAタイトルの開発にも携わった彼らが自身のキャリアへの決着法のひとつとしてこのようなスタイルのゲームを“選んだ”と考えると、世の中も捨てたものではないなと思います。理想の残骸たる『パラダイスキラー』の舞台は、かつて好きだったレトロゲームを他者に与えられるがままに満足できないひねたおっさんゲーマーにとっては、ムードやロマン以上のものが感じられる場所なのです。

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“インスタント・シャングリラ” リリースとともに新要素追加とでも形容すべき怪しげな世界の中でひときわ異彩を放つのが、主人公につきまとう低級悪魔・シンジ。彼の軽口や甘言には、ときにハッとさせられる“真実”が隠されているから油断ならない。

広大な“密室” を隅々まで調査しよう

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PS5、4 版、XSX|S、XB One 版リリースとともに新要素追加

 2022年3月16日には従来のSteam、Nintendo Switch版に加えプレイステーション5、4版、Xbox series X|S、Xbox One版も発売。それにともない、従来版に証拠品やサイドクエスト、BGMが追加される無料アップグレードが行われた。島に忘れ物があると感じるプレイ経験者は再度挑戦を。

パラダイスキラー

  • メーカー:レオフル
  • 開発:Kaizen Game Works
  • プラットフォーム:Nintendo Switch、プレイステーション5、プレイステーション4、Xbox Series X|S、Xbox One、PC
  • 配信日:Nintendo Switch版は2021年8月20日配信、PS5版とPS4版は2022年3月17日配信、Xbox Series X|S版とXbox One版は2022年3月17日配信、PC版は2021年8月20日配信
  • 価格:Nintendo Switch版は2500円[税込]、PS5版とPS4版は各2530円[税込]、Xbox Series X|S版とXbox One版は各2350円[税込]、PC版は2050円[税込]
  • ジャンル:アドベンチャー
  • CERO:17歳以上対象
  • 備考:ダウンロード専売 ※Xbox Series X|S版とXbox One版はFellow Travellerより配信
『パラダイスキラー』ニンテンドーeショップサイト 『パラダイスキラー』PS Storeサイト 『パラダイスキラー』Microsoft Storeサイト 『パラダイスキラー』Steamサイト
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