スクウェア・エニックスと Team NINJA(コーエーテクモゲームス)が共同開発した本格アクションRPG『ストレンジャー オブ パラダイス ファイナルファンタジー オリジン』。ダークな雰囲気を持つ高難度アクションという『ファイナルファンタジー』シリーズにとって新たな挑戦になった本作について、企画や原案、メインキャラクターデザインなど多岐にわたって携わったクリエイティブプロデューサーの野村哲也氏へのインタビューをお届け。発売後インタビューのため、多少のネタバレを含みますが、終盤はネタバレ要素が濃いため、未プレイの人はとくにご注意ください。

 なお、本日(2022年4月8日)、Ver1.03へのアップデートが実施され、機能追加や不具合修正、一部のダンジョンのライティングを調整して暗がりなどの視認性を向上させるほか、さまざまな調整なども行われている。

※本稿では『ファイナルファンタジー』を『FF』と略している箇所があります。

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野村哲也氏(のむら てつや)

本作ではクリエイティブプロデューサーを担当。
『FF』シリーズは『FFIV』でデバッグ、『FFV』でキャラクターやモンスターデザインなどを担当。『FFVII』ではメインキャラクターデザインにとどまらず、物語やバトルなどのアイデア出しも行うように。その後も『FFVIII』、『FFX』、『FFX-2』、『FFXIII』などにメインスタッフとして携わる。『キングダム ハーツ』シリーズではディレクターも担当。『FF』や『KH』シリーズ以外にも、さまざまなタイトルを手掛けている。

Team NINJAと共同開発したからこそ生まれた作品

――『FFオリジン』が発売されました。『FF』シリーズとしては珍しくダークで高難度アクションという挑戦的な作品となった本作ですが、ユーザーの反応についてはどうご覧になっていますか?

野村賛否ありつつも、プレイされた方には好評な意見が多いかな、という印象で安心しました。

――Team NINJAとは、アーケード版の『ディシディアFF』やそのPS4版でもタッグを組んでいましたが、そちらとの違いは何かありましたか?

野村ディシディア FF』よりも本作のほうが、Team NINJA色は強くなっていると思います。というのも、PSP版の自社制作作品がベースにありましたので。今回は、Team NINJAさんの得意とする高難度アクションという舞台にこちらが上がっていくという感じでした。

――では、アクション部分は基本的にはTeam NINJAさんが主導で?

野村そうですね。ただ、アクションもそうですが、演出、グラフィック部分なども含め、こちらにも譲れないところがありましたので、そこはせめぎ合いでした。そのぶつかり合いから生まれた結晶のようなものが、この『FFオリジン』です。

――互いが培ってきたものが、ときにはぶつかることもあったと。

野村ぶつかり合いと言ってもネガティブな意味ではなく、そうした双方の意見をぶつけていかないと共同開発をする意味がないですし、そういう意味では『FFオリジン』はスクウェア・エニックスだけでは生まれなかった作品に仕上がったと思います。

『FFオリジン』野村哲也氏インタビュー。開発当初から念頭にあったシーンや『マイ・ウェイ』へのこだわり、追加ミッションの秘密も
『FFオリジン』野村哲也氏インタビュー。開発当初から念頭にあったシーンや『マイ・ウェイ』へのこだわり、追加ミッションの秘密も

大きな方向転換をした異例の作品に

――2021年6月の初披露の後、「ジャックがガーランドになる物語なのでは?」という推測がゲームファンの中で囁かれ、それを受けて「ジャックはなぜカオスになったのか?」という側面を押し出す、という方針転換があったそうですが、そういったことはこれまでの作品でもありましたか?

野村これまで自分が関わった作品ではないですね。そのため、PVで使うシーンも、プロモーション展開なども大きく変わりましたし、これは本当に特殊なパターンです。ただ、本作には以前にも大きな方向転換があったので、今回もアリだな、と判断しました。

『FFオリジン』野村哲也氏インタビュー。開発当初から念頭にあったシーンや『マイ・ウェイ』へのこだわり、追加ミッションの秘密も

――以前の大きな方向転換というのは?

野村当初は『ストレンジャー オブ パラダイス』という完全新規のタイトルとしてリリースし、プレイした人が物語を追うごとに「これってもしかして『FFI』の話では?」と驚いてもらう、という仕掛けを考えていました。ただ、発表前直前のタイトルロゴを作るという段階で、「タイトルに『ファイナルファンタジー』を入れたい」というプロデューサーの藤原(藤原 仁氏)の意向もあって、いまのタイトルになりました。そういう経緯もあって、タイトル名も長くなってしまいましたが。

――『ファイナルファンタジー』と入っていたほうが、やはり注目度は上がる、ということでしょうか。

野村自分としても迷いましたが、『FFI』と気づいていただける方が少なく、「なんだこれ」で終わってしまうとあまり意味がないな、とも考えたので、最終的に『FF』を入れることを承諾しました。

――たしかに、『FFI』はさまざまなハードでリリースされてはいますが、アクションに興味があるであろう層が『FFI』の物語をどれだけ知っているのか、という懸念は残りますよね。

野村ちなみに、各ダンジョンがナンバリング『FF』のロケーションをモチーフにしているというのを発売直前まで明言しなかったのも、最初は公表する予定ではなかったからなんです。これも「もしかして……?」という仕掛けのひとつでした。

――なるほど。『FFI』だけではなく、『FF』の何かを連想させる要素はいろいろ用意していたのですね。そのナンバリング作品のロケーションをダンジョンのモチーフに、というのは野村さんのアイデアで?

野村はい。PSP版『ディシディアFF』を作り終えたとき、「歴代『FF』のオールスターキャラが登場する作品のつぎは、歴代『FF』のランドマークが登場し、それを攻略していくダンジョンアタックの企画がおもしろいのでは?」と考えて企画を温めていました。ただ、なかなか実現できそうもなく、しばらく寝かせていたんです。

――それがようやく『FFオリジン』なら実現できそうだと。

野村『FFオリジン』にはこれも以前から考えていた“怒れる男の物語”という企画をベースにしていて、その物語とランドマークオールスターのふたつの企画を再構成して企画書を書いてみたんです。

――その時点で高難度アクション、というのは想定していたのですか?

野村いえ、その時点ではまだ決まっていませんでしたが、藤原と井上(井上大輔氏。本作のディレクター)から『ディシディアFF』でタッグを組んだTeam NINJAさんと新しい作品に挑戦したい、という意向もあり、Team NINJAの得意なジャンルと言えばアクションということで、高難度アクションという方向性になりました。

『FFオリジン』野村哲也氏インタビュー。開発当初から念頭にあったシーンや『マイ・ウェイ』へのこだわり、追加ミッションの秘密も
機械遺跡は『FFV』のロンカ遺跡がモチーフ。
『FFオリジン』野村哲也氏インタビュー。開発当初から念頭にあったシーンや『マイ・ウェイ』へのこだわり、追加ミッションの秘密も
白き霊峰のモチーフは『FFX』のガガゼト山。

音楽も『FF』オールスター楽曲に

――先ほど、各ナンバリングのランドマークがダンジョンのモチーフになっているというお話しがありましたが、音楽もその作品のテイストが入っています。そしてこの手のジャンルのわりに、曲数の多さに驚きましたが(すでに発売中のサントラはCD4枚分のボリューム)、野村さんから曲のオーダーはしましたか?

野村最初の1曲の『Jack's Theme』はかなり注文を入れた覚えがあります。サウンドチームに『FFオリジン』の曲をやりたいスタッフを社内でヒアリングしてもらい、手を上げてきてくれたメンバー(水田直志氏、岩崎英則氏、山崎良氏)なので、やる気に溢れていて、修正にもすぐ対応してくれました。


 楽曲については、メインコンポーザーの水田直志氏と井上ディレクターにも回答をいただいたので、以下に紹介。

 『プレリュード』は、あらゆる『FF』タイトルでアレンジされている曲なので、ほかのどのタイトルにも似ていないアレンジにしようと試みました。全体のコンセプトは、原曲ありきのアレンジバージョンというよりは、曲自体はオリジナル曲なのですが、その中にときおり原曲のモチーフがほのかに聴こえてくる、といった感じのものを多く用意しました(水田直志氏)

 私からのオーダーとしては「フレーバーとして原曲のイメージをときどき感じられるようにしてほしい」という依頼をしました。『FFオリジン』では、これまでの『FF』をモチーフに世界観を解釈し直すなどを行っているため、あくまで『FFオリジン』用の楽曲なんですが、モチーフ元の香りが感じられるようなイメージになったと思います。なかにはメロディそのものをフレーバーにしているものもあれば、音の作りかたをフレーバーとして解釈して制作していただいた楽曲など、コンポーザーの三者三様の解釈があり、おもしろいものになっています。『FFオリジン』完全オリジナル楽曲に関しては、野村のほうからイメージを渡されており、そのイメージを水田に解釈してもらい、最初に出来たのが『Jack's Theme』になります。荒々しくも、どこかもの悲し気なメロディが出来上がった時に本作の楽曲の方向性が定まったように思います(井上大輔氏)


キャラクターのデザインコンセプトとボイスキャストの起用の決め手は!? ジャックたちの名前は名無しの権兵衛!?

――怒れる男=ジャックは性格的にもかなり尖ったキャラクターですね。仲間にもぶっきら棒だし、コーネリア王にもタメ口だったり……(笑)。

野村当初、自分の企画ではそこまで尖らせてなかったのですが、いろいろな人の手を渡っていくあいだにいまの感じになりました。今回の作品を作るにあたって、ダークなテイストの参考にと、藤原や井上にはあるマンガを読むことを薦めたので、ジャックがあそこまで尖ったのはそれが原因かもしれません(笑)。そのマンガがけっこう暴力的というか、救いのない内容だったりするので。

――そうしたダークなテイスト、というのも最初から考えていたことのひとつなのですか?

野村そうですね。“人の悪意”のようなものを描きたい、というのがありました。そこは今回は実現しきれませんでしたが、物語の終盤で少しそういった部分を少し描くことはできました。

――ここであらためて、メインキャラクターたちのデザインコンセプトとボイスキャストについて起用した理由、決め手を教えていただけますか?

野村基本的にプレイヤーキャラは異邦人ということで、あえてわかりやすく現代的な服装です。極限までシンプルにしているのは今回のゲームが装備を頻繁に切り換えるからです。プレイヤーキャラたちの名前は共通して“名無し”という意味がありますが(たとえば、特定の人ではない男子を総称して“ジャック”と呼ぶことがある)、あまり個性的な格好ではその印象が強くなり過ぎるので、“名無し”というコンセプト通り無個性さを出しています。初出では物議を醸しましたが、これ以外やりようがないと思っています。

ジャック

野村ジャックは“怒れる男”というコンセプトなので、それは表情に現れているかと思います。ただ、あまり個性的にはしたくなかったので髪型もシンプルな短髪にしました。ボイスは猛々しさの中に色気がほしかったということと、『FF』の主人公をやってほしかったということで、津田健次郎さんにお願いしました。

『FFオリジン』野村哲也氏インタビュー。開発当初から念頭にあったシーンや『マイ・ウェイ』へのこだわり、追加ミッションの秘密も

アッシュ

野村アッシュはジャックのよき相棒、チームの参謀、という立ち位置です。最初は豪快なタイプにしようかと思っていましたが、ジャックの個性を引き立たせるためには、このポジションで正解だったかと思います。宮内敦士さんのボイスはその設定にピッタリな大らかさを感じられます。

『FFオリジン』野村哲也氏インタビュー。開発当初から念頭にあったシーンや『マイ・ウェイ』へのこだわり、追加ミッションの秘密も

ジェド

野村ジェドはムードメーカーのイメージですが開発チーム的には想定外だったようです。というのも、今回は従来の『FF』とは違って無骨なパーティにすると自分が言っていたので、若い今時の青年のデザインに驚かれました。たしかに無骨ではないですが、今時の青年をひとり入れても必要以上に華やかにはならないだろうと思い、全体のバランスからデザインしました。ボイスの須田祐介さんは、現代の青年的ではありますが、どこか不器用でピュアさを感じる憎めないキャラにしていただけたと思います。

『FFオリジン』野村哲也氏インタビュー。開発当初から念頭にあったシーンや『マイ・ウェイ』へのこだわり、追加ミッションの秘密も

ネオン

野村ネオンもジャックたちと同じく、この世界観から見ると異質でシンプルな現代的な格好をしています。全身を纏った包帯は、ネオンが姿を現すときにその理由がわかりますが、痛みを伴う状態にあったことを意味しています。ネオン役の岡崎加奈さん(崎はタツサキ)は粗暴なセリフをカバー出来る少女らしく可愛い声でありつつ、真の強さを感じられる方を希望し、音響監督の清水さん(清水洋史氏。東北新社所属。長年、野村哲也氏が手掛ける作品の音響監督を務めている)からの推薦でした。聞いた瞬間に、イメージ通りだと思いましたね。

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ソフィア

野村ソフィアについては、デザインコンセプトを語る前に……。本作は、最初のカオスとなる者を倒したら中身がネオンだったというところまでを自分と井上で考え、そこからは井上と『キングダム ハーツ』シリーズの小説を書かれている金巻ともこさんでプロットを詰めてもらっていたのですが、金巻さんに別の仕事をお願いすることになったのもあって、野島さんにも参加していただくことにしました。井上と野島さんにシナリオ化してもらう段階でジャック主軸の物語になり、かなり変化はしましたが、ソフィアは金巻さんのプロットから生まれたキャラになります。ソフィアを残した大きな理由は彼女が30~40代の大人の女性という設定が魅力的だったからです。どことなく哀しげでもあり、本作にふさわしいキャラですし、パーティ全体を包むような大きな母性も感じます。トレーラーの短いシーンからでも、浅野まゆみさんのボイスによってそれが感じられると思います。

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ガーランド

野村ガーランド鎧に関しては2バージョン登場します。双方でデザイナーが違いますが、ベースはともに『ディシディアFF NT』のガーランドです。中身が違うので最初に待ち構えている方は少し中性的なラインになっています。こちらのボイスは『ディシディアFF NT』と同じく石井康嗣さんですが、声が同じなのは“あの鎧に宿る声”として設定しているからです。OPやメインアートのデザインは、禍々しく、ディティールに拘ってもらいました。ボイスは本編でご確認ください。

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セーラ姫

野村セーラ姫はフェラーリ(ロベルト・フェラーリ氏)のデザインですが、現代的な洗練さもありながら、クラシックなデザインになっているところがジャックたちとの対比として際立たせてもらいました。ボイスはストレートにお姫様の上品さと少し幼さが残る方を希望しましたが、候補に挙がる方がすでに姫役をやられてる方が多く難航していました。そんななか、打ち合わせ中に「以前『キングダム ハーツ』シリーズのほうでお願いした宮本さん(※宮本侑芽さんは『キングダム ハーツ キー バックカバー』などでアヴァの声を担当)を推したいのですが、『キングダム ハーツ』に出てるからダメなんですよね?」と聞かれ……。盲点でした(笑)。「ぜんぜんダメじゃないです!」ということで、声を聴き直すまでもなく決定しました。

『FFオリジン』野村哲也氏インタビュー。開発当初から念頭にあったシーンや『マイ・ウェイ』へのこだわり、追加ミッションの秘密も

アストス

野村アストスは『FFI』のアストスのような醜い容姿になる前をイメージしました。ですが要素としてはかなり原作を踏襲しています。ボイスは「ちょっとふつうの人ではないな」という雰囲気を穏やかな口調の奥に感じられる個性的な声ということで、上田燿司さんを推薦していただきましたが、イメージ通りでした。

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ビッケ船長

野村ビッケ船長も『FFI』にもいた海賊なので、変化球ではなくわかりやすいデザインになっているかと思います。今回はシリアスなキャラが多い中、どことなく愛嬌がある豪快さを求めて、後藤光祐さんにお願いすることになりました。

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ルフェイン人

野村ルフェイン人はかなり悩みました。ローブを纏った賢人風にして世界観に馴染ませるか、ジャックたちのように現代風にして白衣を着せるか……とか。最終的にどちらともまったく違う超文明ということにしました。ルフェイン人が実際は何なのか、というのは本編で確認していたきたいのですが、ある意味、神の領域の存在という無茶ぶりに、フェラーリが応えてくれて独創的な姿になりました。ボイスもそれに合わせ、性別不明のような不思議な声にしたいというリクエストでキャスティングしました。

『FFオリジン』野村哲也氏インタビュー。開発当初から念頭にあったシーンや『マイ・ウェイ』へのこだわり、追加ミッションの秘密も

――メインキャラクターだけではなく、以前、井上ディレクターが「モンスターデザインの方向性を迷っているときに、野村がゴブリンのデザインを描いてくれて、それが『FFオリジン』のモンスターデザインの方向性が固まった」とおっしゃっていたのですが、どういった意図を持って描かれたのですか?

野村最初にあがってきたゴブリンのデザインが、さまざまな時代が入り組んだ本作の世界のゴブリンとしてはオーソドックスだったんです。自分はデザイナーでもあるので、具体的に描いてみせたほうがいいだろう、ということで例を示しました。竹谷さん(竹谷隆之氏。『シン・ゴジラ』のゴジラのデザインなどでも知られる造形家)にデザインしてもらったカオスたちも、モンスターデザインの方向性を決める大きなきっかけになっていると思います。

――竹谷さんと言えば『FFVII アドベントチルドレン』のクラウドのバイク“フェンリル”やバハムート震のデザインが思い出されますが、いっしょにお仕事されるのはそれ以来ですか?

野村いえ、何度かごいっしょさせていただいてます。近いものではアーケード版『ディシディアFF』の召喚獣(オーディン、リヴァイアサン)のデザインをお願いしました。竹谷さんに異形のデザインを頼んでおけば「ここをこうしたほうがいい」と思うこともほとんどないので、あがってきたものをそのまま使わせていただいています。

『FFオリジン』野村哲也氏インタビュー。開発当初から念頭にあったシーンや『マイ・ウェイ』へのこだわり、追加ミッションの秘密も
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『マイ・ウェイ』がかかる直前の扉が開くシーンを描きたかった

――主題歌を『マイ・ウェイ』にしたい、というのは野村さんの意向だとうかがいました。たしかに、歌詞はジャックの生き様と合致していますよね。

野村日本語訳の歌詞が残念ながら使用できなかったので、皆さんで調べていただきたいのですが、歌詞の内容が本作の物語にぴったりだと思っていただけるはずです。ついでに言うと、『マイ・ウェイ』がかかる直前の扉が開くシーンは最初から自分のアタマの中にイメージしていました。あの扉が開くシーンを描きたかったから『FFオリジン』を作ったと言っても過言ではないくらいです。あのシーンからの『マイ・ウェイ』のイントロは絶妙にマッチしていて気に入っています。

――フランク・シナトラさんのオリジナル『マイ・ウェイ』にこだわったのは『FFI』同様、原点だからですか?

野村『マイ・ウェイ』は、たくさんの方がカバーされていて、新しい方に歌っていただくこともできたと思います。ただ、自分はオリジナルじゃなければ、『マイ・ウェイ』は使っていなかったかもしれない。耳にいちばん馴染んでいるフランク・シナトラの『マイ・ウェイ』だからこそ使いたいと思っていました。

――そこまで強い思い入れがあったんですね。

野村作り始める前からずっと聴いていたので、これしかないないと決めていました。

――使用許諾の交渉はすんなりと?

野村すごく時間はかかりました。じつは、以前にも別の作品で古い名曲を使おうとしたことがあったのですが、そのときは断念せざるを得なかったので、今回は初期段階から許諾を得られるように動き始めていました。それでも時間はかかったので、代案を考えないと、と思っていた時期もありました。

『FFオリジン』は『FFI』の前日譚!? それとも……

――では、ここからは発売後ということで、少しネタバレ的な質問もさせていただきます。その前に、まだ未プレイの方々へ向けてひと言お願いできますか?

野村『FFオリジン』は、幅広い層に遊んでいただきたいと思って作った作品です。昔ながらの『FF』ファンの方も難易度“STORY”なら、問題なく進められると思います。ゲームの性質上、従来の『FF』のようにじっくりとストーリーを描いていくわけではありませんが、エンディングまで到達すればきっと満足していただける自信があります。一方で、『FF』を知らない方には、ゲームシステムがかなり刺さるんじゃないかなと思います。歯応えがあるゲームが好きな方は最初から“HARD”で挑んでいただくと、きっと楽しめますし、ハクスラ要素やジョブチェンジなどの仕組みも遊び応えがあります。遊んでいただいた方からは「遊んでみたらおもしろかった」という意見をいただくことが多いので、迷っている方はまずは体験版を触ってみていただけたらと思います。

以下はネタバレを含みますので、エンディングを見ていない方はご注意ください。

――『FFオリジン』は『FFI』の前日譚のようでもありますし、アストスやルフェイン人の変わりっぷりなど素直にそう感じられないところもあります。長い年月が経つうちに変わっていったという解釈もできるし、別の世界線の出来事、という推測もできますが、実際はどういう位置付けなのでしょう?

野村どう捉えるかはプレイヤーに委ねるところです。『FFI』に繋がっていると考えていただいてもいいですし、別の世界線の話だと思ってもらっても構いません。

――ダンジョン内で見つかる“愚者の手記”や“ルフェインレポート”から、物語の詳細がわかってきますが、そもそもジャックたちは何者なのか、という解釈もひとつではないような……。

野村今回は、ジャックに絞った物語なので描いてはいませんが、じつはそこにも裏の設定はあります。ちなみに、ネタバレになってしまいますが、『FFI』の最後に“光の戦士はじつはプレイヤーだった”ということがわかります。本作でもそれを踏襲していて、ジャックたちは現代人の格好をしているのは、それが理由です。

――ああ、なるほど! 『FFI』の要素を可能な限りなぞっているんですね。ほかにもお聞きしたいことはいろいろあるのですが、発売からまだ1ヵ月足らずなので、このへんで……。今後はシーズンパス購入者に3つの追加ミッションの配信が予定されていますが、これらは順次配信されていくのですか?

野村そうですね。一度に3つが配信されるわけではなく、ひとつずつ順次追加されていきます。エンディングの扉が開いた後の光の戦士との戦いや武器種が追加されるミッションもあるのでご期待ください。

――おお! “DIFFERENT FUTURE”では、別の結末が描かれたりするのでしょうか!?

野村さあ、どうでしょう(笑)。じつは、このタイトルには“DFF”と“NT”の文字も含んでいます。ただ、このミッションのボスは誰にも予想できないと思いますが(笑)。

――なんと! 3対3のチーム戦があったり!? なんていう妄想も膨らみますが(笑)。どのミッションも楽しみです。ところで、『FFI』発売当時、野村さんは高校生だったと思うのですが、そのころにはどんな思い出がありますか?

野村ゲームソフトも売っているおもちゃ屋でバイトしているときに『FFI』が発売されたのでよく覚えています。発売当時、自分はプレイしていなかったのですが、毎日のようにお店にやって来る中学生の子たちから『FFI』の話をいろいろと聞いて、「おもしろい作品なんだな」と思ってました。

――そんな野村さんが『FFI』に再び光を当てるゲームクリエイターとなっているのがおもしろいですね。ところで『FFオリジン』の後の今年のご予定は? 直近では『キングダム ハーツ』の20周年記念イベントがありますが。基本的には仕込みの年になりそうですか?

野村いえ、その両方ですね。新しい仕込みもありますし、リリースの準備をしているものもあります。今年はかなり忙しくなる予定ですが、来年以降もこの状況はしばらく続きそうです。

――相変わらずご多忙ですね……。楽しみにしています。今回はありがとうございました。