異形の東京を作り出したふたりのキーパーソンに直撃!

 ベセスダ・ソフトワークスより2022年3月25日発売されたPS5/PC向けタイトル『Ghostwire: Tokyo』(ゴーストワイヤー トウキョウ)。ほとんどの人間が突然消えてしまうという謎の大消失事件が起きた東京・渋谷を舞台に、主人公の暁人とその身に憑依したKKの“ふたり”が二心同体となって戦う、完全新作のアクションアドベンチャーだ。

『Ghostwire: Tokyo』木村雅人プロデューサー&木村憲司ディレクターインタビュー。トライアンドエラーを重ねてたどり着いた、日常と非日常が隣り合わせの世界
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 箱庭型のマップは現実の渋谷をベースに構成。建物の屋上に上れるなど上方向に広がる構造で、それが立体的な探索をより深める一因となっている。

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 人のいない渋谷を闊歩する怪異“マレビト”たちは、多彩かつ個性的なビジュアルとモーションでプレイヤーに襲い掛かる。

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 主観視点のバトルでは霊力を駆使。シンプルながら奥の深い戦略を可能にするシステムによって、中距離特化という独特のアクションを実現している。

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 想像を超える“東京”と“怪異”、そして物語を描く『Ghostwire: Tokyo』はいま、世界中で話題となっている。そんなゲームを生み出したのは、『サイコブレイク』シリーズを制作したTango Gameworksだ。

 そこで今回は、開発の中心となったキーパーソンである木村雅人プロデューサーと木村憲司ディレクターに、この快作が世に放たれるまでの経緯、そして本作に込めた思いを直撃する!

木村雅人(きむらまさと)

Tango Gameworks所属。『サイコブレイク』でプロデューサーを務め、開発マネージャーとしてスタジオをけん引。本作ではプロデューサーを担当した。

木村憲司(きむらけんじ)

Tango Gameworks所属。KONAMIで『メタルギア ソリッド』シリーズに携わる。Tango Gameworksに移籍後、本作でディレクターを担当。プロットも氏が構成している。

Tango Gameworks 三上真司氏インタビュ―記事はこちら

『サイコブレイク』シリーズから新たな“扉”が開くまで

――いきなりしょうもない質問をしちゃうのですが、おふたりの苗字って同じ“木村”ですよね。Tango Gameworks内ではどのように呼ばれているのですか?

木村雅私のほうが先にTango Gameworksに在籍していたので、後から入ってきたほうに“キムケン”というあだ名が付いて、私は「木村さん」、木村憲司は「キムケンさん」と呼ばれています。

木村憲Tango Gameworksに入ってからすぐに代表の三上(※三上真司氏)に「異論がなければ今日から君は“キムケン”だな!」と言われました(笑)。

――木村さんは『サイコブレイク』からプロデューサーを務められていますよね。

木村雅1作目の『サイコブレイク』でプロデューサーを担当して、以降は開発全体を統括するマネージャーとして動いています。本作ではプロデューサーを務めることになりました。

――キムケンさんはどのような流れでTango Gameworksに加わったのですか?

木村憲最初にKONAMIにプランナーとして入社して、2017年にTango Gameworksに入りました。2018年くらいに『Ghostwire: Tokyo』チームが本格的に立ち上がって、ゲームデザイナー兼プロジェクトマネージャーになって、開発を進めていくうちにいろいろあって、ディレクターとなりました。

――では、開発をマネジメントしてきた木村さんにお聞きしたいのですが、『Ghostwire: Tokyo』はどのようにして始まったのでしょうか?

木村雅『サイコブレイク』は、ベセスダ・ソフトワークスというブランドの中で三上真司が贈り出す最初のタイトルとして、やはりTango Gameworksが得意とするサバイバルホラーを出そうと考えて開発したタイトルでした。そして『サイコブレイク』シリーズを開発し続けていく中で、キムケンなどの新しいスタッフが入ってきてくれました。もちろん、会社に合う合わないがあるので、抜けてしまったスタッフもいます。ただ、会社としてようやく向くべき方向性がまとまってきたと言いますか、新しいことにも挑戦しやすい環境になった。そこで“新たな企画を立ち上げよう”という話が上がりました。

――そこが『Ghostwire: Tokyo』の始まりだった。

木村雅はい。ただ当初は、ゲームの内容は固まっていませんでした。最初にビジュアルや世界観を作って、そこからゲーム内容を決めていったんです。最初に作成したビジュアルの見た目はとてもカッコよくて、Tango Gameworksとしても“これまでとは違う、新たな色を見せられるゲームができる”と確信しました。我々としてはずっと「僕たちはこんないろいろなゲームを作るスタジオなんですよ」とお見せしたかったんです。そこから、ゲーム内容を固めていきました。

――最初から現代の東京を舞台にすることは決まっていたのでしょうか?

木村雅そうと言えばそうなのですが、『Ghostwire: Tokyo』の大もとになった企画は、じつは『サイコブレイク』シリーズの続編だったんですよ。企画を詰めて行く中で、日本を舞台にしようと決めました。では、日本が舞台ならば、日本人にも世界の人たちにもおもしろそうだ、と思ってもらえる場所はどこだろうと考えたところ、やはり首都である東京がふさわしいのではないか、と。東京は、ビルなどの近代的な建物が並ぶ中でも、ちょっと道を外れれば神社があったり祠があったりして、新旧のいろいろな文化がごちゃまぜに混在しつつ、共存しているところがユニークですよね。この不思議な街を舞台にすれば、きっとおもしろいゲームに仕上がるだろうと思ったのです。そうなると「このゲームは『サイコブレイク』ではないほうがおもしろくなるよね」となり、企画が独立しました。

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――舞台を東京にするというところからゲームの内容を固めていったんですね。

木村憲渋谷を中心とした舞台を考えて、そこからアイデアを膨らませていきました。新しいものと古いものが入り混じり、そして人が消滅してしまった東京という不思議な空間がある。そんな場所で何ができたらいいのかを考えました。となれば、日本に古くからいる“目に見えない存在”が見えてしまう状況はおもしろいだろうな、と。そんなアイデアがすぐに思い浮かびましたね。

木村雅夜の東京って、メインとなる街並みはネオンや看板が輝いていて煌びやかじゃないですか。ですが、ちょっと路地に入ると街灯しかないほぼ真っ暗な道も多くて、コントラストが激しいんですよね。暗い道を歩いていて「もしかしたらそこに何かがいるんじゃないか?」と不安になったことがある人も少なくないと思います。いつもの“日常”の横に、じつは“非日常”が存在していたら? ディレクターであるキムケンのそんな発想から、このゲームのコンセプトが固まっていきました。

『Ghostwire: Tokyo』木村雅人プロデューサー&木村憲司ディレクターインタビュー。トライアンドエラーを重ねてたどり着いた、日常と非日常が隣り合わせの世界
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――そこに妖怪や都市伝説などの要素を取り入れた理由は?

木村憲誰も目を向けないビルの上に見たことのないオカルト的な生物がいたり、暗い路地で妖怪と出会えないかなと、ときどき妄想していたんです。妖怪は古い時代から言い伝えられてきた存在ですが、現代の街にもいて、実際に見えたらおもしろいだろうなと思い、本作に取り入れました。

木村雅多くの日本人が、妖怪や都市伝説などをどこかで読んだり人に教えてもらったりと、自然と何かしらの手段で知っていますよね。そこをゲームに取り込んだのは、キムケンらしいアイデアだなと思いましたね。

木村憲どの妖怪を出すのかを決めて、その妖怪とどのようにたわむれたら楽しいのか、スタッフみんなで話し合いました。河童ならキュウリを使っておびき寄せたらどうだ、とか(笑)。ただ、登場させるだけではあまり意味がないので、出会うことで主人公の成長要素にメリットが生まれるなど、プレイにうまく絡めるようにしています。

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――日本独自の都市伝説は海外の人に伝えるのは難しいと思うのですが、海外からの反応はいかがですか?

木村憲ゲームをプレイしていくうちに「日本の都市伝説にはこういうものがあるんだな」と理解できるように説明などを入れているので、知らなくても楽しく遊んでもらえると思います。たとえば、“タクシーから消えた幽霊の客”のような都市伝説は海外にもあって、形は変われど同じような都市伝説は世界各地にたくさんあるんですよ。ですので、海外の人にもそのおもしろさは伝わると思います。

『Ghostwire: Tokyo』木村雅人プロデューサー&木村憲司ディレクターインタビュー。トライアンドエラーを重ねてたどり着いた、日常と非日常が隣り合わせの世界
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――本作を見て特徴的だったのは、雨に濡れたような東京の風景です。あのウェットな感じとネオンの光を反映した地面などを見ると、グラフィックは相当に手をかけているな、と思いました。

木村憲実際、グラフィックには力を入れていて、時間もかかりましたね。本作のプラットフォームはプレイステーション5とPCなので、そのおかげで実現できた要素もありました。とくに意識したのは、ホラーになりすぎないことです。あまりにも暗かったり、汚れた街並みなどにはしないようにしています。

木村雅本作はホラーゲームではありません。ちょっと不気味な空気の流れるアクションアドベンチャーゲームです。キレイな街並みからちょっとした隙間を覗くと、そこに何かがいるような世界です。そのさじ加減を調整するのはたいへんでしたが、うまく表現できたと思います。

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――舞台は渋谷がメインとなっていますが、どれくらいの再現度になっているのでしょうか?

木村憲実際の街並みを完全に再現することは目指していません。あくまでゲームの舞台として、おもしろく遊べる舞台になることを目指しました。実在する店舗をオマージュのような形で登場させていますし、渋谷駅の構内やスクランブル交差点、センター街など、有名な場所も用意しています。でも、ちょっと中心から離れると谷中銀座のような商店街や神社などが登場して、もちろん東京タワーにも行けます。東京の特徴的なスポットを詰め込んで圧縮したようなイメージで、本作の東京を構築しました。

木村雅本当にたくさんの場所をオマージュしているので、ぜひいろいろと探してみてください。

――聖地巡礼とかおもしろそうですね。

木村雅いまの状況が落ち着いたらぜひ! プレイしていたら「ここは、あの場所だ!」とわかると思いますので。

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トライアンドエラーを重ねて生まれた戦闘と探索のシステム

――本作では一人称視点のアクションが展開されますが、いわゆるミリタリー系のFPSとは違うシステムですよね。アクション部分の調整で力を入れた部分は?

木村憲手の動きで何かを発射する、ワイヤーを引っ張る、コアを握りつぶすというアクションのアイデアはすぐに生まれたのですが、それを実際に形にして、プレイヤーが気持ちのいいアクションを楽しめるようにするのには、かなりの時間を掛けました。開発チームの中でもトライアンドエラーを重ねたところです。

木村雅手から放つのがメインの武器となる“エーテルショット”なのですが、近距離で戦うナイフでもなければ、遠距離から攻撃するスナイパーライフルでもありません。本作は中距離での戦闘がキモになっています。この距離で戦う感覚と爽快感は、ほかのタイトルにはない大きな魅力になりました。

木村憲敵となるのは幽霊なので、ふだんは見えないし、そもそも肉体を持たない。そんな異形の者たちをどう倒せば気持ちいいと感じてもらえるのか……かなり悩みました。通常は触わることのできないものに触わるというのは、どんなイメージだろうと。そこで、敵はコアを持っている。そのコアを露出させて、ワイヤーで引き抜いて、コアを破壊するというアイデアが生まれた。これが大きな突破口になりました。

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――タイトルにある“ワイヤー”は、そのワイヤーを意味するのですか?

木村憲じつは、ゲームのシステムを考える前より早いタイミングで、タイトルを『Ghostwire: Tokyo』にしようと決めていたんです。このタイトルからインスピレーションを受けて、戦闘にワイヤーを入れようと思いついたんですよね。

木村雅“魂のつながり”や“この世とあの世のつながり”など、“つながり”というキーワードを意識して、タイトルに“ワイヤー”を入れました。結果的にはゲームの内容ともつながる、すごくいいタイトルになったと思います。

木村憲何かひとつのテーマがつながっているゲームって、わかりやすいですよね。ワイヤーは戦闘でも使いますし、移動でも使えます。そして、暁人とKKの絆のつながりも意味するものになります。いろいろな部分でその要素を感じてもらえたらうれしいですね。

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――探索でもワイヤーを使えますが、天狗を使ってビルに登るシーンも印象的でした。

木村雅街中を歩いていて「あのビルの上には何があるんだろう?」と思ったことはありませんか? 屋上に何らかの施設があるのなら別ですが、ビルの屋上は基本的には一般人が立ち入ってはいけない場所ですよね。でも、本作は人が誰もいない東京ですから、屋上に登ってもオーケーなんです。道路のど真ん中に立っても、誰からも怒られません。そんな非日常を楽しむという面と、探索のおもしろさを広げる狙いがあって、ビルの屋上なども自由に行き来できるようになっています

木村憲探索という意味では、建物の中にも異界につながっている場所が登場したりします。エレベーターを降りたら、なぜか森が広がっていたり。いろいろなシチュエーションを用意したので、ぜひ風景も楽しんでほしいですね。最初にアートを作って、後からゲーム的な要素を考えて盛り込んだスポットがたくさんあります。アートそのものからすごく作り込んでいるので、見栄えもよく、ゲームとしてもユニークな場所が登場します。

木村雅メインストーリーのクリアーを目指してガンガン進めるのもいいのですが、探索して霊魂を集めたり、出会う幽霊や妖怪たちとの物語も楽しんだりしてほしいですね。ある程度の目標は決まっていますが、どのように遊ぶのかはプレイヤー次第ですので、自由に進めてください。

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――敵となる“マレビト”のバリエーションも豊富ですが、とくに好きなマレビトはいますか?

木村憲ゲーム序盤から出現する、傘を持ったマレビトは開発初期から存在していたので、思い入れがありますね。個人的に好きなのは、てるてる坊主のマレビトです。どのマレビトも、見た瞬間には「あ、敵だ」とすぐに思われないようにデザインしています。見慣れた物のに中に異常性を発見すると、プレイヤーが「敵だ」とわかるようにすることをコンセプトにしているんです。その究極系がてるてる坊主なのかな、と。

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木村雅マレビトは、日常では感じないけれど、客観的に見ると感じる違和感をモチーフにしています。たとえば、日本の伝統的な花嫁衣裳を着たマレビトが登場するのですが、一般的に花嫁衣装はキレイなものと認識されていると思います。ですが、よく見るとちょっとそこに怖さを感じることはありませんか? スーツを着たサラリーマンのマレビトを採用したのも、日本ではスーツ姿の男性が並んでいるのは日常の風景ですが、海外からは「怖く感じる」という意見もあるからです。そんな違和感やわずかな恐怖感を敵に取り入れているのが、本作の特徴のひとつです。

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木村憲童謡のような楽曲を取り入れているのも、そういった理由からですね。

――音楽で言えば、本作は音にもこだわっていますよね。たとえば、何かにぶつかったときの音であるとか、主張は強くないけれど些細な音にも気を使っているのがわかります。

木村憲音にも注力したので、うれしいですね。人が消えたとき、街にどんな音が残ると思いますか? 

――確かに、繁華街などではあまり想像できないですね。でも、何かしらの音が聞こえると思います。

木村憲なので、実際に人がいない時間を狙って環境音を録音したりして、人の消えた東京に流れる音を表現しました。プレイステーション5版は3Dオーディオにも力を入れていて、ちょっとした音でも臨場感を楽しめます。地面に空き缶がちょくちょく落ちているのですが、あれは本作の音に対するこだわりを感じてほしいからですね(笑)。また、この世のものではない違和感を表現するために、現実では聞こえないような音も散りばめています

木村雅サウンドチームのこだわりは本当に強くて、音を聞くために人のいない深夜に街中へ出かけていましたね。でも、少なからず人がいたりクルマも通りますから、非現実の東京に流れる音の感覚をつかむために何度も調査を重ねていました。

『Ghostwire: Tokyo』木村雅人プロデューサー&木村憲司ディレクターインタビュー。トライアンドエラーを重ねてたどり着いた、日常と非日常が隣り合わせの世界
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ついに到達したTango Gameworksならではの作品

――プレイステーション5版では、ハプティックフィードバックなどのDualSenseコントローラーの機能をうまく活かしています。

木村憲印を結ぶような動作など、手を使って攻撃するアクションゲームなので、手にまとう自然の力を感じてもらえるように調整しました。ワイヤーを引き抜く感覚は、ぜひとも味わってもらいたいですね。すごく「引っこ抜いた」感が味わえると思います(笑)。ハプティックフィードバックとすごく相性のいいゲームになりました。

――手の動きはどこかで見たことがあるようで、かと言って明確な答えがあるわけでもないように見えますが、純粋にカッコいい。何か参考にされたものはありますか?

木村憲どんな手の形や動きならカッコよく見えるのか、実際に手を動かしたりして決めていきました。もしかしたら何かに影響を受けた手の形はあるかもしれませんが、カッコよさを重視して決めたので、それを再現しようと固定して参考にしたようなものはとくにないですね。

木村雅日本で育ってきたからこそ、陰陽師をテーマにした作品や、幽霊や妖怪退治、はたまた忍者を題材にした作品などを見てきたと思います。それらがすべてミックスされて、Tango Gameworksの思うカッコイイ手の動きになりました。それで「何だか見たことがあるけど新しいぞ」と感じてもらえたのではないでしょうか。

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――日本人はマンガやアニメを通して“印を組む”という動作になじんでいるのかもしれませんね。メインストーリーはキムケンさんが考えられたものですか?

木村憲はい。プロットを僕がすべて考えて、あとはシナリオ班が脚本にしていった形です。

木村雅最初に上がってきたプロットを読んで「少年マンガ的でわかりやすくておもしろい」と素直に思いましたね。人の絆と戦いの果てに到達するストーリー展開は少年マンガらしくて、世代的にも腑に落ちました。

――オカルティックな世界観に少年マンガ的な展開……王道じゃないですか! 物語ではあまり設定などが語られないところもありましたが、あえてそうしているのでしょうか。

木村雅そうですね。都市伝説と同じで、あまり深く語りすぎると、思考がそこに固定されてしまいますから、あえて想像の余地を残しています。不思議なところや違和感をテーマにしているので、正解を知ってしまうとおもしろくなくなることもありますし。もちろん、ストーリーを進めていくことで判明する事実も多いので、物語にもぜひ注目してほしいですね。

木村憲暁人とKKのバディ感のある会話も少年マンガ的で、ぜひ楽しんでほしいところです。ちなみに、KKを演じる声優さんは「井上和彦さんがいいなぁ」と思っていたらすぐに決まりましたね(笑)。

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――ちなみに、本作に関して三上真司さんからのアドバイスはありましたか?

木村憲要所要所でいろいろと教わりました。先のビジョンを見据えて話されることが多くて、後で振り返ると「ああ、このことを言っていたんだな」と気づくこともありました。「ああしろこうしろ」という指示ではなく、その道筋を指し示してもらえたと思います。

木村雅三上さんのすごいところは、スタジオの命運がかかっているような作品でも、「これはキムケンがディレクターなんだから任せるよ」と本気で言えるところだと思います。三上さんが何よりも大事にしているのはユーザーのことで、ユーザーの感情をどうやって動かせるのか、どうすれば遊ぶモチベーションを持ってもらえるのかをすごく考える。なので、そこから外れるようなことがあればアドバイスをしてくれますが、基本的にはキムケンに任せていました。これができる人はなかなかいないと思います。完成前には三上さんも何度もプレイしていて、最後にはめちゃくちゃうまくなってました(笑)。

木村憲何度もプレイしているからこそ、「ここはもっとカジュアルにしたほうがいいのでは?」という意見が出てくるんですね。難度のバランスはものすごく気をつけたので、本作は幅広い方に楽しんでいただけると思います

『Ghostwire: Tokyo』木村雅人プロデューサー&木村憲司ディレクターインタビュー。トライアンドエラーを重ねてたどり着いた、日常と非日常が隣り合わせの世界
『Ghostwire: Tokyo』木村雅人プロデューサー&木村憲司ディレクターインタビュー。トライアンドエラーを重ねてたどり着いた、日常と非日常が隣り合わせの世界
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オブジェクトや敵など視認できる霊視は無制限で使用可能で、高所から一定時間は滑空できるグライドなど、探索のストレスを軽減するシステムが豊富。霊体をこまめに集めていれば、レベルアップで自身のHPも順調に上がるだろう。全体的に、ユーザビリティーが非常に高い印象を受ける。

――本作を楽しみにしている方々にメッセージをお願いします。

木村雅オリジナリティーがあって、キムケンにしかできない、いまのTango Gameworksならではの作品ができました。ここから、もっともっとそういうタイトルをたくさん出していきたいですね。まずはぜひとも『Ghostwire: Tokyo』を楽しんでみてください。

木村憲チーム一丸となって、全力で取り組みました。ただ東京を歩くだけでも楽しいゲームですし、アクションも新しい体験が味わえると思います。

Tango Gameworks 三上真司氏インタビュ―記事はこちら
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