サイゲームスより配信中のデジタルカードゲーム『シャドウバース』(以下、『シャドバ』)。全世界で2500万ダウンロードを突破するなど、いまなお根強い人気を誇り、プロリーグや世界大会など、eスポーツ競技としても大きな盛り上がりをみせている。

 そんな『シャドバ』を原作としたテレビアニメ『シャドウバースF(フレイム)』が、2022年4月2日より放送を開始する。さらに、『シャドバ』を原作としたトレーディングカードゲーム(以下、TCG)『Shadowverse EVOLVE』が、2022年4月28日にブシロードより販売される(開発・制作はサイゲームス)。

 本記事では、ゲーム、アニメ、アナログカードゲームと、3つの柱でより大きな広がりをみせている『シャドウバース』の世界について、キーマンのおふたりにインタビュー。『シャドウバース』プロデューサーの木村唯人氏と、『シャドウバース』シナリオディレクターの磯崎輪太郎氏に、お話を伺った。

【シャドバ】『シャドウバース』木村唯人氏&磯崎輪太郎氏インタビュー。ゲーム、アニメ、リアルカードゲームと広がりを見せる『シャドバ』の世界について訊く

木村唯人(きむら ゆいと)

『シャドウバース』プロデューサーであり、サイゲームス取締役。磯崎氏は木村氏の別人格であるという噂があるがそんなことはなく、別人である。(文中は木村)

磯崎輪太郎(いそざき りんたろう)

『シャドウバース』シナリオディレクター。アニメの脚本から『シャドバ』のメインストーリー、世界観監修などを務める。(文中は磯崎)

新アニメでより深く描かれるシャドバの世界観

木村最初に断っておきたいのですが、たまに『シャドバ』のファンから「磯崎輪太郎は木村唯人と同一人物である」と言われるのですが、それは間違いです。磯崎輪太郎は実在します(苦笑)。過去に間違ってそういった情報をお出ししてしまったのが原因かと思うので、こちらのせいで勘違いさせてしまい申し訳ないのですが……。このインタビューも、ひとり二役で答えているわけではありません。

磯崎個人的には、そこは言わなくていいかと思っていました。同一人物説もおもしろいのかなと(笑)。

――読者の皆さん、磯崎さんはちゃんと実在します(笑)。では、まずはアニメのお話からお聞かせください。1年間放送していたテレビアニメ『シャドウバース』が、2021年で放送終了を迎えました。その後再放送も1年ありましたが、ゲーム『シャドウバース』ユーザーからの反応はどう感じていましたか?

木村前作の主人公である、竜ヶ崎ヒイロの「シャドバ、すっげぇ楽しい!」といったセリフなどを、ファンのあいだで使っていただいているのを見ていて、ファンのあいだにも少しずつ浸透しているのかなと思います。またアニメの中で「このフォロワーで勝つんだ、懐かしいな」というような、昔使っていたカードの活躍に喜んでいる感想もよく聞くことができて、いい形でアプローチできたな、と思っています。

――ゲーム『シャドバ』を制作した当初から、アニメ化したいと考えていたのでしょうか。

木村いえ、サービスを開始して少し経ってからです。最初はそこまでできるとは考えていませんでしたね。

――その時点から低年齢層を狙っていたんですか?

木村それも考えていなかったですね。『シャドバ』自体、大人向けの雰囲気ですし、カードの絵柄も子ども受けを狙っているわけではないですから。また、サイゲームスのタイトル自体が大人向けのものが多いので。そういった土壌がありながらも、あえてプレイヤー層の幅を広げるという意味で、低年齢層を狙っていきました。

――そんな中、今回続編として『シャドウバースF』の放送が開始されます。続編が決まった経緯を教えてください。

木村じつは、前作となるアニメ『シャドウバース』を放送して間もないころすぐに「続編を作りましょう」という話が挙がっていたんです。制作陣も手応えを感じていましたし、僕個人として単純にテレビアニメとしてのクオリティーが高いと、初期段階から感じていました。制作側としても、サイゲームスとしても、続編をやろうというテンションは最初から高かったですね。我々としては、『シャドウバース』がひとつの“文化”になるように取り組んでいます。“文化”にするためには、アニメも続けていくことが大事だと思います。そして、せっかく作った世界観を1年で終わらせるのはもったいないな、とも感じていました。そういった思いもあり、2作目を作るのが早々に決まっていったんです。

――続編を作ろうという段階では『シャドウバースF』の形は見えていたのでしょうか?

木村いえ、見えていませんでした。決定したのがまだ放送開始初期でしたので、ファンや視聴者の反応もわからなかったですし。

――まずは、ファンや視聴者の反応を見て、どんなものにしていくかを検討していったわけですね。本作の『シャドウバースF』というタイトル名ですが、“F(フレイム)”と名付けた理由などはありますか?

木村主人公である天竜ライトの所属する部活が、学校に複数あるシャドバ部のひとつ“セブンスフレイム”という名前でして、その部活名の“フレイム”に由来しています。ただ、本作は絆がテーマのひとつでもあるので、裏には友だちを意味する“フレンド”や、運命を意味する“フェイト”の“F”も含まれています。とはいえ、情熱を燃やすというような意味合いで“F(フレイム)”と名付けたことがいちばんの理由です。

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――前作の舞台もAR技術などが発達した、近未来的な世界観でした。本作の舞台はより未来的な要素が強まっているように見えます。

木村はい、SF的な要素は強めています。全体的にデジタル的な描写や演出は強まっていますが、同じ都市が舞台ですし、世界観自体は大幅に変わっているというわけではありません。

――「せっかく作った世界観を1年で終わらせるにはもったいない」とおっしゃっていましたが、続編を作ると決めた時点から同じ世界観で続けることは決めていたのでしょうか?

木村世界観もそうですし、キャラクターたちの物語もこれで終わらせようとは考えていませんでした。まだまだ描けることがありますし、どんどん世界観を広げていきたい思いがありました。

――前作では物語の中盤以降、“災いの樹”事件が発生し、作品全体がダークな世界観となりました。本作にもそういった要素はあるのでしょうか?

磯崎基本的には王道のカードゲームアニメだと思っていただければと思います。ただ、やはり『シャドウバース』ですし、ダークな雰囲気が好きな方もいると思うので、そういった部分も楽しんでもらえるかと思います。木村さんとも相談して、前作よりも対象年齢を少し上げています。少し前作よりも、大人なストーリーも展開されるかもしれません。

木村もちろんそれだけではなく、本作の舞台も学園がメインですから、学園パートでのワイワイとした明るい雰囲気もあります。

――対象年齢を少し上げた意図というのは?

木村前作を見た子どもたちが成長とともに年齢を重ねているので、そこに合わせた意味もありますし、前作とは違う対象年齢をターゲットにすることで、新たなファン層を獲得したいという狙いもあります。

磯崎あと、描けるストーリーも少し変えられるのではないか? という意図もあります。対象年齢を少し上げることで、物語の味付けや演出などもできることが増えますから。ゲーム『シャドウバース』自体のストーリーって、かなり大人向けですよね。そこにリンクするというわけではありませんが、そこも少しだけイメージしています。

――具体的には、対象年齢を上げることでどのような物語性を持たせることができるのでしょうか?

磯崎たとえば、キャラクターどうしの関係性を複雑に描けるかと思います。対象年齢が低いとどうしても“好き”、“嫌い”と、単調な関係性で描いたほうが物語がわかりやすくなります。ですが、少し大人向けに描くとなると“好きだけど嫌い”、“嫌いだけど好き”など、より人間らしい関係性を描けるかと思います。

――なるほど。共感できるものが、より複雑になるということですね。今回のストーリーは、『シャドバ』のプロプレイヤーの育成を目指す、“シャドバカレッジ”を舞台に物語が進んでいくとお聞きしています。この設定に決めた理由はありますか?

磯崎前作よりも、キャラクターどうしの関係性を深く描きたかったからです。前作は全48話ありましたが、その中でキャラクターどうしの関係性については、あまりフィーチャーできなかったなという思いがあります。そこを強化するために、多くのキャラクターがひとつの場所に所属する形にしました。

 そこから、何に所属すればいいのか考えていたのですが、こちらも僕がシナリオを担当した『シャドウバース チャンピオンズバトル』から、ヒントを得ることができました。『シャドウバース チャンピオンズバトル』には“シャドバ部”という設定があります。シナリオを描いていく中で、部活というものを通すことでキャラクターどうしの関係性が強く描けると思ったんです。その要素をテレビアニメにも持ってきて、部活を通して物語を描こうと決めました。

木村eスポーツ的な要素としては、プロプレイヤーを目指す大きな学校で切磋琢磨していくキャラクターたちを、いまの世代の子どもたちにも共感してもらいたい、憧れのアニメキャラクターとして見てほしい、というような思いもあります。『シャドウバース』には実際にプロリーグがありますから、アニメからプロリーグの試合も観戦してほしいですし、アニメからプロ選手を目指すプレイヤーが現れてくれたら、何よりもうれしいですね。

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――本作も最初に、“シャドバ部”の復活を目指すんですよね。『シャドウバース チャンピオンズバトル』の最初も同じような物語でしたが、意図的にオマージュしたような形なのでしょうか?

磯崎いえ、意図的にはしていません。『シャドウバース チャンピオンズバトル』で得た知見を活用して、今回『シャドウバースF』のシナリオを構成しています。“シャドバ”部の復活という要素も、たまたま同じという感じです。

木村『シャドウバース チャンピオンズバトル』の世界では、“プレイヤーである主人公がアニメの世界に入ったときにどんなことをしたらおもしろいだろうか?”と考えた結果、みんなで部活に所属することにしました。『シャドウバースF』は、主人公の天竜ライトが、初めて『シャドバ』を遊ぶところからスタートします。イチから『シャドバ』を学びながら仲間を作っていくには、“シャドバ部”が最適だったんです。

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天竜ライト(声:上村祐翔)
『シャドバ』初心者の少年。ひょんなことからシャドバカレッジに転校し、シャドバ部に入部することになる。クールに見えるが、どこか抜けている。電子機器が苦手。
蜜田川イツキ(声:山村 響)
セブンスフレイムの部長。廃部寸前のセブンスフレイムを立て直すために奮闘している。心やさしく、穏やか。しかし、ここぞというときには、芯の強さを発揮する。
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真壁スバル(声:浦和 希)
ライトの友だち1号。シャドバカレッジの中では珍しく、あまりマジメに『シャドバ』をプレイしていない。明るく元気なムードメーカーだが、ときたま暗い表情を見せることもある。
ジェントルマン(声:森久保祥太郎)
正体不明のアバター。ひょんなことをきっかけとして、ライトたちと関りを持っていく。
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風祭レン(声:武田羅梨沙多胡)
シャドバカレッジ1年生で、ライトたちの後輩。いまはフィフスソードに所属している。ヒーローに憧れを抱いているようだが……。
小鳥遊ツバサ(声:富田美憂)
シャドバカレッジ3年生で、ライトたちの先輩。サードフェザーの部長を務めている。ややダウナーで、いつもテンションが低い。

――なるほど。ちなみに『シャドウバースF』では、前作のキャラクターである、ルシアとアリスの登場が発表されています。ルシアは“セブン・シャドウズ”というものに所属しているようですが、どのようにストーリーで絡んでいくのでしょうか?

木村秘密です!

磯崎秘密ですね(笑)。ひとつだけ言えるのは、ルシアとアリス以外のキャラクターも、もちろん登場しますよ。

木村ええ。成長した彼らの姿を、ぜひ楽しんでほしいですね。ルシアは「僕と対戦すると『シャドバ』辞めちゃうよ」とまで言っていたくらい悪い子でしたが、そんな彼がどんな成長を遂げているのか確かめてみてください(笑)。

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――楽しみにしています(笑)。また、本作から“デジフレ”というものが登場するそうですが、“デジフレ”はどんな存在ですか? また、本作から“デジフレ”というものが登場するそうですが、“デジフレ”はどんな存在ですか?

木村デジタルな友だち、ペット、相棒というような存在ですね。

磯崎バトル中ですと、カードの1枚として使用できます。

木村ライトのデジフレは、ドラグニルと言います。ご覧になっている人もいるかもしれませんが、じつはテレビ東京さんの『おはスタ』に、ドラグニルが以前から出演していまして。これが「かわいい」と評判で、人気があるんですよ。主人公よりも先に有名になっています(笑)。

磯崎そうなんですよね(笑)。ちなみに、言葉をしゃべるのはドラグニルだけです。

木村みんなしゃべれる設定にしたほうがよかったかな……?

磯崎それはたいへんです!

木村そうだよね(笑)。ほかのデジフレたちは、登場人物たちともちろん意思疎通はできます。ただ、基本は鳴き声しか発しません。

――今後“デジフレ”は物語のどのような鍵になるのでしょうか?

木村そちらも秘密です(笑)。まあその、つぎつぎとデジフレを仲間にしていって、主人公は最終的に“デジフレマスター”に……。

磯崎なりません!(笑)

木村じゃあ進化して“●●●モン”に……。

磯崎絶対なりません!

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ドラグニル(声:井澤詩織)
ライトのデジフレ。カード名は“ナックルドラゴン・ドラグニル”。ウルフラム・ゼルガに渡されたメモリの中に入っていた。ほかのデジフレとは違い、しゃべることができる。少し生意気な頼れる相棒。
スレイド
イツキのデジフレ。カード名は“ブロッサムウルフ・スレイド”。デジフレの中でもとりわけ人懐っこい性格。
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バケルス
スバルのデジフレ。カード名は“プチゴースト・バケルス”。イタズラ好きで明るい性格。
アミロス
レンのデジフレ。騎士らしくマジメな性格。
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ウィンギー
ツバサのデジフレ。好奇心旺盛で、よく人についていってしまう。
メイティ
ジェントルマンのデジフレ。女王のように気位が高い。
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ガルエル
デモニア

――(笑)。ちなみに、前作の主人公の名前は“竜”ヶ崎ヒイロでした。本作の主人公である天“竜”ライトと、“竜”が引き継がれていますよね。王道カードアニメではよく見る手法ですが、やはり意図的に引き継いだものなのでしょうか。

磯崎はい、主人公らしさを際立たせるために“竜”の文字を受け継ぎました。とはいえ、『シャドウバースF』では天竜ライトだけではなく、ほかのメインキャラクターも、ある意味主人公のように活躍する作品となっています。

木村また、ドラゴンクラスを使用するので“竜”を使用している、という側面もありますね。

――前作より引き続き、ゲームとしての『シャドバ』を知っていたほうが、より楽しめるような内容になるのでしょうか?

木村そういった要素はありますが、前作よりもさらにルールをイチから深く説明するような内容になっています。ですので、『シャドバ』を知らない人でも楽しめる、ゲームルールがわかるような内容ですので、まさに『シャドバ』の入門にぴったりかと思います。ほかにも、キャラクターたちが織り成すドラマや、“デジフレ”の存在など、見どころはたくさんあります。

磯崎前作同様に、過去に人気だったカードの活躍なども描かれます。ですので、もちろん『シャドバ』ファンの皆さんが「おっ」と思うようなバトルの展開もありますし、バトル内容はかなりブラッシュアップしています。前作よりも、より戦略的なバトルシーンが楽しんでもらえると思いますので、ぜひ楽しみにしてほしいです。

木村そうそう、前作よりもさらにバリエーション豊かなカードが登場しますよ。また、『シャドウバースF』のオリジナルカードもあります。

――オリジナルカードは、『シャドバ』にも今後登場する要素はありますか?

木村前作では“イグニスドラゴン”がゲームでカード化されましたし、そういった形で登場することもあるかもしれませんね。

――アニメを通して、『シャドバ』がひとつの“文化”になるように取り組んでいるとおっしゃっていました。アニメとして放送を続けていく意義は、どこにあると考えていますか?

木村『シャドウバース』というブランドに限らずですが、ブランドにとって映像作品があるというのは、それがあるだけでも意義があると思います。また、海外に発信するには、いちばん伝えやすいプラットフォームです。

 たとえば、動画配信サービスなどから「ちょっと観てみようかな」と思っていただくだけでも、『シャドウバース』の存在を知ってもらえますよね。また、『シャドバ』は今後も、より広いプレイヤーに遊んでほしいと思っています。そのため、低い年齢層の入門としても、アニメの意義は大きいと思っています。

――それではテレビアニメ、『シャドウバースF』の見どころを改めて教えてください。

磯崎前作同様の魅力を持ちながらも、キャラクターどうしの関係性と、強化されたバトルが魅力です。前作と大きな違いは、ライトが『シャドバ』初心者ということです。『シャドバ』を知らない人は、ライトとともに『シャドバ』を学びながら楽しんでほしいです。

木村新たな要素も増えていますし、ストーリーもさらに壮大な物語になっています。第1話を見れば、「今回もおもしろそうだぞ」と感じてもらえるはずです。前作とのつながりなども、ぜひ楽しみにしていてください。

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リアルカードだからこそ味わえる『シャドバ』体験

――続いては、実物のトレーディングカードゲームである、『Shadowverse EVOLVE』のお話をお聞かせください。リアルカードで遊べる、TCGを制作しようと思ったきっかけを教えてください。

木村ゲーム『シャドバ』はデジタルカードゲームで、デジタルならではの良さはたくさんあります。ただ、アナログのカードゲームと違って、どうしても実現できないこともあります。ひとつは、手元にカードが存在しないことです。もうひとつは、基本的には対戦相手と対面して遊ばないことです。

 ゲーム性にはまったく関係しない要素ではありますが、運営していく中で、デジタルとアナログのカードゲームはまったく違うジャンルだなと感じました。そんな中、『シャドウバース』という“文化”を広めるうえで、アナログカードゲームも必要になると思い始めたのがきっかけです。

――ほかのタイトルですと、アナログカードゲームがデジタル化したことで、多くの人に触れてもらえるようになることもありますよね。

木村そうですね。アナログカードゲームをデジタルのゲームにして、プレイヤー層が増えたり、またアナログカードゲーム自体のプレイヤーが増えたりすることもあるでしょう。『シャドバ』はもとからデジタルカードゲームですし、どうしてもアナログの体験ができない側面があります。それがダメというわけではないですが、今回アナログカードゲーム用のルールも用意することで、できることもさらに増えるんじゃないかと思います。

 たとえば、これまでもカードショップの皆さんが、『シャドバ』の大会を開催してくれることもありました。それはとてもありがたいことなのですが、大会を開いてもショップで販売するものがほぼ何もない状態でしたので、せっかく大会を開いてくれたショップさんの利益になりにくいんですよ。アナログカードゲームがあるからこそ、今後そういった部分に影響が出てくるのではないかな、と思います。

――なるほど。カードゲーム業界全体を見据えている企画でもあるわけですね。今回、販売をアナログカードゲームなどでよく知られるブシロードさんが担当しています。どのような経緯でブシロードさんに販売をお願いすることになったのでしょうか?

木村リアルカードゲームの構想していたころに、たまたまブシロードの木谷高明会長とお話する機会がありまして。そこで「ぜひやりたい」と仰っていただき、そこからとんとん拍子に話が進んでいきました。ブシロードさんは全国に公認ショップもあり、大会運営の実績もあります。サイゲームスの足りないところを補って余りある会社さんですので、非常にありがたいことでした。

――なるほど。アナログのカードゲームになることによって、コレクション性なども重視しているのでしょうか。

木村アナログになったことによって、ゲームは遊ばないけれども、カードは集めたいという人もいると思います。そういった人たちも楽しめるように、コレクション性というのは意識しています。

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――ゲームのルールは基本的には同じなんでしょうか?

木村 少し伝えかたが難しいですが、ルールの基本は同じながらも、基本的な部分が違うという感じです。プレイしている感じは『シャドバ』に近いのですが、アナログじゃないと実現できないおもしろさを盛り込んで、それを活かすカードゲームになっています。

 たとえば“クイック”という、相手のターン中に相手の盤面に効果を発動できるカードがあります。相手ターン中に手札からカードを発動するのは、アナログカードゲームの真骨頂です。僕はアナログカードゲームは、相手と対話するコミュニケーションゲームでもあると思っています。一方でデジタルカードゲームは、コミュニケーションはほぼなく、ゲームとしての戦略がすべてになっています。そういう意味で、ジャンルが違うな、と感じているのです。

――進化は“エボルヴ”という別の形で登場するんですよね。

木村はい。“進化”は『シャドバ』に欠かせない要素ですので、絶対に登場させようと思いました。ただ、アナログだと再現しにくい要素です。“エボルヴ”は進化デッキからカードを出すという形で、進化を再現しています。雰囲気は同じなのですが、ほかの要素と違って大きく違う仕様になっています。当初はカードを両面印刷して、1枚のカードで進化を再現することも試しましたが、なかなかに難しく、“エボルヴ”という形になりました。

――また、クラスにはネクロマンサーとヴァンパイアが合体した“ナイトメア”が登場するそうですが、なぜ合体させたのでしょうか。

木村『シャドバ』は基本的に、ほかのクラスと混合してデッキを制作することができません。『シャドバ』ですと最初から初期デッキなどが揃っていますが、アナログになるとイチからカードパックを購入して、かつそのクラスのカードを集めなくてはいけません。となると、ゲームを遊び始める敷居が高くなってしまいますよね。そのため、クラスを減らすために合体させました。もちろん、スターターデッキもありますので、スターターを購入すればゲーム自体はすぐに遊べます。また、“ネメシス”クラスはその固有ギミックがデジタルでしか再現できないことから、登場しないことにしました。

――発表されている情報を見る限り、『シャドバ』初期の環境を再現したようなカードが揃っているように思えます。今後も『シャドバ』の歴史を沿いながら『Shadowverse EVOLVE』は展開されていくのでしょうか。

木村歴史を沿いながらも、『Shadowverse EVOLVE』ならではのオリジナルパックも予定しています。ファンの皆さんが楽しめるように、驚いてもらえるような仕掛けを考えています。

――対面だからこそ楽しめる要素もあるとは思いますが、昨今の情勢的には、対面しての対戦ではなく、リモートでの対戦も流行しつつあります。カードとの連動アプリの発表もありますが、リモート対戦用のアプリを予定していたりしますか?

木村いまのところは考えていません。とはいえ、ウェブカメラなどを使用してのリモート対戦はふつうにできると思うので、そういった楽しみかたもできると思います。ただ個人的な気持ちとしては、できれば対面で対戦してほしいですね。コロナが収束したら、皆さんでワイワイと集まって遊んでみてほしいです。

――デジタルで『シャドバ』を遊んでいる人たちにも、『Shadowverse EVOLVE』を遊んでほしい思いがあるのでしょうか。

木村『シャドバ』は随時新弾カードパックが登場しますが、とはいえ新カードパックが登場するまではあいだが空いてしまいます。ある程度デジタルの『シャドバ』が落ち着いたらアナログの『Shadowverse EVOLVE』を遊んだりというように、さまざまなスタイルで遊んでほしいですね。そうすれば、一生『シャドウバース』で遊んでもらえるのかなと(笑)。

――たしかに、そうすれば『シャドバ』漬けの日々になりますね(笑)。磯崎さんは『シャドバ』のフレーバーテキストも担当されています。『Shadowverse EVOLVE』でも一部カードにフレーバーテキストがあるようですが、アナログカードゲームだからこそ描ける世界観なども盛り込まれているのでしょうか。

磯崎リアルカードに採用できるフレーバーテキストは、『シャドバ』よりも文字数が少ないです。そのため、“限られたスペースの中でどうやってテキストをユーザーさんに楽しんでもらえるか”というところは、アナログカードゲームならではの要素かと思います。TCGは現物として手元に残り、いつでもカードを眺めることができます。ふとした瞬間にカードを手に取って“読んでみたくなるテキスト”を模索していきたいです。

――『Shadowverse EVOLVE』では、初心者向けの講習会も予定されているそうですが、さらにすでに大会も予定されているんですよね。

木村はい。2022年秋に、全国6ヵ所で大会を開催します。

――『Shadowverse EVOLVE』を期待されている方々に向けて、メッセージをお願いします。

木村『シャドバ』をやったことがある人もない人も、楽しめるように作っています。ぜひ1度プレイしていただければ、そのよさをわかってもらえると思います。

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より広がるゲーム『シャドバ』の遊び

――最後は、ゲーム『シャドウバース』のお話をお聞かせください。現在は根強いコアなユーザーが遊んでいるイメージですが、テレビアニメを観て始めた人や、『シャドウバース チャンピオンズバトル』から始めた、というプレイヤーも少なくないのでしょうか?

木村いてほしいとは思いますが、正直パッと見だといるのかどうかわからないので、何とも言えないところです。ただ、最近は昔人気だったカードの復刻版みたいな形で登場した際に、「昔やっていたけど、また遊んでみよう」という人が増えていますね。いろいろな施策をやる中で「また遊んでみよう」という人が増えているのは見えています。

――賞金大会や、プロリーグの盛り上がりはどう見られていますか?

木村プロリーグはいい試合ばかりでつねに盛り上がっていますし、ファンの皆さんもどんどん増えている印象です。2021年末に開催した“Shadowverse World Grand Prix 2021”は、賞金が1億5000万円と、日本のeスポーツ史上、賞金最高クラスの大会でした。そちらも大きな盛り上がりをみせてくれましたね。今後もeスポーツとしても盛り上げていきたいです。

――“ガントレット”や“クロスオーバー”といった新しい遊びかたが立て続けに追加されましたが、どんな狙いで追加したのでしょうか?

木村デジタルカードゲームとしての遊びかたは、つねに模索しています。そんな中、たまたま“ガントレット”と“クロスオーバー”がうまくまとまったので、立て続けに実装できた、というのが実際の理由です。また、長いあいだ新しい遊びかたを提供できておらず、今回お待たせしてしまい申し訳ありませんでしたが、新イベントや新フォーマットでどんどん遊んでほしいです。

――追加されたふたつのイベントの魅力を教えてください。

木村“ガントレット”は、クリスタルを消費して参加できる、本格的な大会モードのようなものです。クリスタルを使うぶん、勝ち上がれば報酬も非常に豪華なものがもらえます。ふだん大会に参加しないユーザーでも本格的なeスポーツ感が味わえるコンテンツとなっていますので、一戦一戦の重みを楽しんでほしいですね。まさに人間の本能に訴えかけてくるイベントだと思います。

 “クロスオーバー”は、ふたつのクラスを選んでデッキを決めて戦うフォーマットです。『シャドバ』ユーザーなら誰しも1度は思い描く夢のクラスコラボデッキで戦えるので、いままでとは大きく違うバトルが楽しめるでしょう。

――“新たな遊びかたはつねに模索している”、とのことでしたが、今後も新たな遊びかたがどんどん追加されていくのでしょうか?

木村はい、完成してまとまり次第、随時実装していきたいと考えています。

――新たな遊びかたというのは、どのようにして考えられているのでしょうか?

木村それぞれ、きっかけなどは異なりますね。たとえばほかのカードゲームの遊びかたを参考にしたりですとか、カードゲームの根本の魅力がどこにあるのか深堀りして考えることもあります。

――メインストーリー新章“天象旅籠編”も実装されますが、具体的にはどのようなものになるのでしょうか。

磯崎まったく新しい世界観で、新たなキャラクターたちが展開されます。“旅籠(はたご)”と呼ばれる、オリエンタルな世界観を楽しんでほしいですね。ネタバレになってしまうので詳細な解説は避けますが、心機一転して、これまでとは全然違う雰囲気になっています。新たな『シャドバ』の一面を味わってみてください。

――磯崎さんは『シャドバ』のメインストーリーにおいて、どのような点に注力してシナリオを制作しているのでしょうか。

磯崎“見たことがあるけど、食べたことがないもの”をテーマに制作をしています。たとえば“運命相克編”は西部劇という見たことがある舞台を扱いつつ、キャラクターや設定などで特色を出すように心がけました。また、カードゲームのストーリーですから、活躍することで“そのキャラクターを実際にカードとして使ってみたくなる”という狙いも含めています。

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――では最後に『シャドウバース』全体の、今後の展望や目標などを教えてください。

磯崎シナリオとしては、アニメもゲームも、今後も魅力的なキャラクターやカードたちがより活躍できるような物語を展開できればと思います。アナログカードゲーム、アニメ2作目と、さらに『シャドウバース』の世界観がどんどん広がっています。それらも併せて、ぜひ楽しんでみてください。

木村デジタルカードゲームでは、新たな遊びかたをこれからも追加していきます。アナログカードゲームも、テレビアニメも含めて、今後の展開も楽しみにしていてください。