バンダイナムコエンターテインメントより、2021年9月に発売された『テイルズ オブ アライズ』。約5年ぶりとなる『テイルズ オブ』シリーズの家庭用ゲーム機向けオリジナルタイトルとして、“継承と進化”をテーマに掲げて制作された本作は、2021年のすぐれたゲームを称える“The Game Awards 2021”にて“Best RPG”を受賞するなど、国内外で好評を博した。

 ファミ通編集部は、以前ファミ通.comにて実施した同作のユーザーアンケートをもとに、富澤祐介プロデューサーにインタビューを実施。国内外からの反響や、今後の『テイルズ オブ アライズ』、そして『テイルズ オブ』シリーズ全体の展望をうかがった。

 また、アンケートにてユーザーから募集した“富澤氏に聞いてみたいこと”にも、たっぷりと回答してもらったので、ぜひこちらもチェックしてほしい。

※インタビュー内には、『テイルズ オブ アライズ』のエンディングまでのネタバレが含まれています。ぜひ、クリアーしてからお読みください。

富澤祐介氏(とみざわ ゆうすけ)

『テイルズ オブ アライズ』プロデューサー。『テイルズ オブ』シリーズ全体のIP総合プロデューサーも務めている。

約5年かけて、ゲーム開発とブランド定着を進めた

――発売から約3ヶ月が経過しましたが(※本インタビューは2021年12月に実施)、ユーザーからの反響をどう受け止めていますか?

富澤おかげさまで、販売本数はワールドワイドで150万本を超えました。これは、いままでの『テイルズ オブ』シリーズの中でも非常に速いペースで、どんなユーザーに遊んでもらっているのか、評価や反応などもつねに調べています。大きなトピックとしては、「今回初めて『テイルズ オブ』シリーズを遊びました」というプレイヤーの方々が多いこと。当初の狙い通り、新規の方にも遊んでいただける作品にできたのかなと思います。また、『テイルズ オブ ファンタジア』や、『テイルズ オブ デスティニー』以来遊んだという、いわゆる回帰層も、予想以上に多くて驚きました。

――初めて、もしくは久しぶりに「やってみたい」と思える作品になったと。

富澤もちろん、これまでのシリーズファンの方々の評価も大切にしていますし、注目しています。今回、ファミ通さんで実施していただいたアンケートも、しっかり検証していきたいと思っています。

――本作は海外でも同時発売となりましたが、海外ファンの反応はいかがでしたか?

富澤海外市場のリサーチはまだまだ途中なので、ざっくりとしたお話になりますが、海外の方々からも大きな支持を得られたと思っています。海外でも、久しぶりに遊んだ、または初めて『テイルズ オブ』シリーズを遊んだ人たちが多く、そういう面では日本のプレイヤーと似た評価が多いですね。全体的には、“高品質で安定したJRPGらしい体験”を楽しんでいただいている様子に見えます。

――海外では、どのようなユーザーに届けたいと考えていたのでしょうか。

富澤海外にも『テイルズ オブ』シリーズを愛してくださっている、濃いファンの方々がいることは把握しています。ただ、ファンコミュニティが現状では把握しにくいというのが正直なところです。日本と違って、リアルイベントを実施したりしていたわけではありませんから。ですので、『テイルズ オブ』シリーズというよりは、JRPGファンに注目しました。「JPRGは好きだが、『テイルズ オブ』シリーズはやったことがない」という層ですね。その点では日本と同様といえます。

――本作の開発期間は約5年とのことですが、2019年にタイトルを発表してから、長らく音沙汰がありませんでした。RPGファンに向けてアピールできない時間が相当長かったと思いますが、ゲームの完成とリリース時期が見えるまで、あえて情報を出していなかったということですよね。

富澤その通りです。もともと2016年の前作から長らく情報がなかったことと、計画では2020年発売を予定していたため、あのタイミングでプロモーションを実施したわけですが、コロナ禍も重なり年内の発売が困難になりそうという判断をした段階で、プロモーションも一時中断する決断をしました。すごくいい作品ができあがっていく最中、皆さんに開発状況をお伝えできないのは、とても辛いことでしたが、やはり発売に向けて適切な時期や順序を辿ってきちんと世界中の皆さんに期待を持ってもらう事が何より重要でした。実際、ファンの皆さんから「このイベントでなぜ新情報がないのか?」といった苦言もいただきました。申し訳なかったです。

――発売時期が延期された後、新世代機への対応が発表されましたが、これは予定されていたことだったのでしょうか?

富澤いいえ、2020年発売予定で進行していた際は計画されていませんでした。ですが、「2021年に発売するからには、対応するのが必然だろう」という考えで皆が一致し、追加開発を並行して実施することとなりました。結果的には、いい判断だったなと思います。

――開発と並行して、『テイルズ オブ』というブランドを確立するための施策も行われていました。

富澤そうですね。自分がプロデューサーに就任したとき、『テイルズ オブ』にはファンの皆さんとのコミュニケーションや、これからブランドのことを知ってもらう際の十分なチャンネルがありませんでした。そこで、SNSアカウントや動画配信用チャンネル、ブランドロゴを作ったりと、本当に基本的な部分から始めましたね。ゲームの開発も重要ですが、まずはコミュニケーションをしなくてはならないと思っていましたから。

――富澤さんは以前から、コミュニケーションを重要視されていますよね。

富澤これはゲームに限った話ではありませんが、ブランド運用にとってはとても重要なものと捉えています。『ゴッドイーター』シリーズに関わっていた際に培った経験をもとに、『テイルズ オブ』シリーズのファンに、どんなアプローチするべきか考えていったんです。ただ、『ゴッドイーター』は比較的新しい作品ですが、『テイルズ オブ』シリーズの歴史は非常に長い。そして、複数の世界観とキャラクターたちが、すべて『テイルズ オブ』ファミリーとして、いまも生き続けています。それを踏まえて、どうアプローチすべきか悩んでいましたね。

――ブランド戦略を進める中で、参考にしたものなどはあるのですか?

富澤ゲームだけに囚われず、テレビや映画などで展開しているIPでも、同様に長い歴史を経てさまざまなキャラクターのリブートに成功している例が増えてきていましたので、そういったものは大いに参考になりました。『テイルズ オブ』はキャラクターたちの魅力がブランドであり、かつ全員がファミリーです。キャラクターどうしがクロスオーバーすることで魅力が深まりますし、本編の物語が完結しても、さらなる未来を魅せることができますから。その点ではまだまだこれからもユニバースとしての展開は様々なアイデアを考えながら取り組んでいきたいですね。

アンケート結果を受けて富澤Pがコメント!

――では、ここからはアンケートの結果を踏まえて、富澤さんに感想をうかがっていきます。まず、満足度については★4~5が多く、高い評価となりました。

※アンケートはファミ通.comにて2021年12月7日~12日に実施。有効回答数は963。
 回答者の年齢層は、10代以下……21人、20代……439人、30代……409人、40代……53人、50代以上……9人、未回答……32人。
 回答者の性別は、男性456人、女性438人、未回答69人。

富澤ありがとうございます。そして、スタッフたちにも感謝したいです。多くの方に満足していただけたというのは、やはり、RPGとしての総合的な楽しい体験が生んだ結果だと思います。その根底には、スタッフたちが非常に丁寧に作り切ってくれたことが理由としてあると思うんです。スタッフたちの努力が仕上がりに結びつき、それをしっかりとプレイヤーの皆さんに楽しんでいただけて、何よりです。

■回答者の評価
★★★★★495人
★★★★328人
★★★68人
★★33人
★24人

――ただ、ストーリーやバトルに満足しているという意見が多かった一方で、「敵キャラクターたちの掘り下げがほしかった」といった声も少なからずありました。

富澤はい、そこは理解しています。今回はダナ、レナの対立構造が前提としてある中でそれを踏まえてパーティーの中で対立や和解を全編通してじっくりと展開することが、物語の主軸となっています。一方これまでですと、対立構造の背景に敵側にも事情や正義がありそれらとの思想対決として描くことが多かったので、そこに期待されていたファンの方々も多くいらっしゃったのは理解しています。そうしたご意見はしっかり捉えさせていただきつつ、今後もさまざまな語り口の可能性は拡げていきたいと思います。

――実際、敵の過去などを補完するような展開は予定しているのでしょうか?

富澤どのキャラクターたちも、描かれなかった部分を含め彼らなりの理由や仁義をもって動いています。また何か表現できる機会があれば、ぜひやりたいですね。ゲームだけでは敵の心情が理解しにくいと感じられた方もいると思います。そこは、ゲームという媒体に限らず、何かしらの形でより広げていきたいですね。現状は具体的な展開をお伝えできる段階ではありませんが、前向きに検討したいと思っています。

――続報に期待しています。また、「もっとやり込み要素が欲しい」という意見もありましたが……。

富澤確かに、過去作では、『アライズ』よりもっと多いやり込み要素が用意されているタイトルもありました。残念ながら、それと同等規模のやり込み要素は用意できなかったというのが正直なところです。その理由のひとつとしては、本作は開発環境含め一から立ち上げたタイトルであることもあり、まずはきちんと作り切る計画を立てて遂行するという点を重視する必要があったことです。やり込みが『テイルズ オブ』の魅力のひとつだと感じている人がいるのもわかっていて、もちろん我々としても、できるなら用意したかったのですが。ただ、アライズでそうした新世代に向けたハイレベルな開発環境の整備にも取り組めたので、次作以降でそうした要素にも改めて目を向けていきたいと思っています。

――では、つぎは人気キャラクターについてうかがいます。“テイルズ オブ フェスティバル”の公式人気投票で1位だったテュオハリムが、今回のアンケートでも1位になりました。

■好きなキャラクター
テュオハリム……214票
シオン……193票
アルフェン……183票
リンウェル……95票
ロウ……72票
キサラ……54票
ジルファ……25票
フルル……17票
ヴォルラーン……7票

富澤アンケートを実施した時期や場所でも結果は変わるとは思いますが、テュオハリムは人気が高いだろうと予想はしていました。今回はパーティメンバー間の丁寧なやり取りや関係性の構築に注力し、全員を愛してもらえるように制作しました。そんな中でもテュオハリムは、開発内で「これまでにないキャラクターの個性が出てきたな」と評されていたんです。とはいえ、まさか歴代キャラクターたちと渡り合い、追い抜くほどに人気が出るとは、予想していなかったですが……。

『テイルズ オブ アライズ』富澤Pインタビュー。アンケート結果を交えつつ、読者の質問に回答! 「30周年に向け、シリーズが盛り上がる状況を作る」と展望も
知的な大人でありながら弱さもあり、内面が成長していくさまが見られたテュオハリムが1位に。

――バトル中にとくに楽しかったメンバーは、アルフェンが1位は予想通りかと思います。2位がリンウェルなのは、ちょっと予想外でした。

■操作していて楽しかったキャラクター
アルフェン……440票
リンウェル……182票
テュオハリム……113票
ロウ……94票
キサラ……36票
シオン……32票

富澤空中戦が得意なことなど、魔法系キャラでありながらかなりアグレッシブに戦えることが要因かと思います。バトルの個性付けは、ディレクター陣が頑張ってくれました。「ハイスピードでアクションゲームのようなバトルがしたい」というプロデュース側の要望をを実現しつつ、その結果としてこれまでなら後衛系のキャラクターにも新たな魅力を搭載してくれたように思います。個人的には、キサラやシオンも操作していて楽しいと思うのですが、やはり積極的に戦えるスタイルのほうが魅力に感じる方が多いのでしょう。アクション性の高さや、コンボをつなげる楽しさの評価と言えるかもしれません。もしクリアーまで「アルフェンしか使いませんでした」というプレイヤーがいたら、とてももったいないですね。どのキャラもアクションバトルとしての楽しさが詰まっていますので、いろいろなキャラクターを使ってみてほしいです。

『テイルズ オブ アライズ』富澤Pインタビュー。アンケート結果を交えつつ、読者の質問に回答! 「30周年に向け、シリーズが盛り上がる状況を作る」と展望も
アルフェンは、ブーストアタックの使いやすさや、リスクはあるが強力なフラムエッジなどを活用した戦いかたが好評で、多くの支持を得た。

――印象深いシーンに関しては、レネギスへの出発前夜や、第2オープニングが始まるまでの流れを挙げる声が多くみられました。ここは予想されていた結果なのでしょうか。

富澤ある程度は狙い通りです。第2オープニングは、「まだまだ冒険はここからなのか」と皆さんに驚いてほしくて入れたので。レネギス出発前夜は、シオンというキャラクターの感情を中心に、パーティーがひとつの形となるシーンです。『テイルズ オブ アライズ』で描きたかったパーティーのありかたが集約されているシーンでもありますね。

『テイルズ オブ アライズ』富澤Pインタビュー。アンケート結果を交えつつ、読者の質問に回答! 「30周年に向け、シリーズが盛り上がる状況を作る」と展望も
レネギスへの出発前夜のシーンでは、『Hello, Again ~昔からある場所~』が流れる。楽曲ともども人気が高かった。

――長い旅を経て、やっとシオンが心の底から感情を見せてくれたので、感動しました。

富澤ロードムービーのように、物語を淡々と積み上げていく中で生まれる、ジワッとした感情の昂ぶりのようなものを本作では狙っていました。じつは本作は、“ドラマを作る”という面で、ものすごく印象に残る名セリフや、ド派手で記憶に残るシーンで魅せる、といった方法は、あえてあまり採用していないんです。

――そういえば、いかにも「これが決めゼリフだ!」というものはないですね。

富澤また、全体的なセリフや言葉選びは、やや大人向けで硬質な響きを持つものにしています。

――終始シリアスな物語にマッチした描きかただったと思います。一方、サブクエスト&スキットに関しては、コミカルなものも好まれている印象です。滝からダイブしたときのショートチャットも人気ですね。

富澤滝からのダイブが人気なのは、とてもうれしいですね(笑)。というのも、ドラマを描く中では、ジャンプや水へのダイブなんて、本来はなくてもいいわけです。ですが、RPGを通しての体験としては、地味ながらにも重要な要素です。ショートチャットは、その体験を支えるものでもあり、本作ではこれを大量に用意していて、ゲームがほぼ完成してから、最後にさらに追加したものさえあります。すべては冒険を通しての体験と、登場人物の個性を付けるために取り入れたものです。そういった中で、ショートチャット部分も評価していただけているのは、うれしい限りですね。

『テイルズ オブ アライズ』富澤Pインタビュー。アンケート結果を交えつつ、読者の質問に回答! 「30周年に向け、シリーズが盛り上がる状況を作る」と展望も
サブクエスト関連でもっとも人気を集めたのは、パンケーキにまつわるサブクエスト。コミカルなテイストで、仲間たち全員がにぎやかに会話しているので、見ていて楽しい、ほっこりするという意見が多かった。
『テイルズ オブ アライズ』富澤Pインタビュー。アンケート結果を交えつつ、読者の質問に回答! 「30周年に向け、シリーズが盛り上がる状況を作る」と展望も
スキットではなくショートチャットではあるが、多くの票を集めた滝からダイブ。

――印象に残ったバトルについては、やはりボスがほとんどを占めていました。ボス戦は難度が高いので、何度もやり直したことが思い出に残っている人も多くいます。

富澤ボス戦はあえて難しめにしていて、1発でクリアーできるような難度にはしていません。ボス戦で1度敗北したときに、「レベルが足りていない」、「スキルの構成が甘い」などと感じてもらえるような、ひとつの成長指針になる“壁”として設計しています。たとえば最初のボスであるビエゾは、「回避アクションが重要だよ」とレクチャーするためのボスでもあります。そのため、結果的にはどのボスも基本難しくなってしまいましたが、狙い通りではあります。

『テイルズ オブ アライズ』富澤Pインタビュー。アンケート結果を交えつつ、読者の質問に回答! 「30周年に向け、シリーズが盛り上がる状況を作る」と展望も
圧倒的に多くの票を得たのが、シスロディアの領将・ガナベルト。シリーズおなじみの“インディグネイション”を使ってくるのが印象に残った模様。ほか、ストーリー中に何度も戦うヴォルラーンを挙げる人も多かった。

■お気に入りのブーストストライク
ジェネシックオレオーラム(リンウェル&テュオハリム)……164票
灼熱のバーンストライク(シオン&ロウ)……109票
衝破十文字(アルフェン&テュオハリム)……104票
焔の一振り(アルフェン&シオン)……99票
岩砕襲覇撃(ロウ&キサラ)……74票
襲爪雷斬(アルフェン&ロウ)……55票
S・エレメンツアルター(アルフェン&リンウェル)……52票
超魔閃光牙(リンウェル&ロウ)……43票
コチコチハンマー(リンウェル&キサラ)……39票
スマラドゥグスグラディオ(キサラ&テュオハリム)……38票
エクステンドゲート(シオン&リンウェル)……36票
飛燕双天脚(ロウ&テュオハリム)……22票
獅凰爆旋陣(アルフェン&キサラ)……20票
ヴォルケーノインパクト(シオン&テュオハリム)……10票
セルシウスフューリー(シオン&キサラ)……10票

『テイルズ オブ アライズ』富澤Pインタビュー。アンケート結果を交えつつ、読者の質問に回答! 「30周年に向け、シリーズが盛り上がる状況を作る」と展望も
『テイルズ オブ アライズ』富澤Pインタビュー。アンケート結果を交えつつ、読者の質問に回答! 「30周年に向け、シリーズが盛り上がる状況を作る」と展望も
多種多様なブーストストライクについては、リンウェルとテュオハリムが光と闇の星霊術を放つ“ジェネシックオレオーラム”が1位に。ちなみに、サブクエストに関するアンケートでは、このふたりが関係するサブクエスト“さよなら、魔法使い”を挙げた人も多かった。ダナとレナの共存という、メインストーリーで描かれてきたテーマを感じられるからこその人気なのかもしれない。

――最後に、“今後に望むこと”についてです。やはり追加ストーリー、続編などを望む人が多かったほか、「アトモスシェーダーで過去作をリメイクしてほしい」という意見もありました。いかがでしょうか?

富澤アトモスシェーダーはこれまでにない表現の方向性と、高いクオリティーを実現できました。今後タイトルを作る際にもベースになると思います。一方過去作をアトモスシェーダーでリメイクするとなると、かなりの労力がかかりますので、「ぜひすぐに!」とは簡単には言えませんが、今後もアトモスシェーダーでの表現は研究し続けていきます。その研究結果が採用されるのが後日談なのか、それとも次回作なのか、現状はまだ決まっていません。そんな中でもファンの皆さんの声は、今後我々がどう動くべきなのかの大事な指標になるので、ぜひこれからも意見を聞かせてください。

みんなが気になるアレやコレに富澤Pが回答! ファンからの質問コーナー

 今回実施したアンケートでは、“富澤Pへの質問”も募集。数が多かった質問や、ユニークな質問をピックアップして、富澤氏に答えてもらった。

※質問文は編集しています

――本作の開発において、“最初から決まっていたこと”と、“当初は違う方向性を目指していたが、途中で変わったこと”はありますか?

富澤どちらもたくさんあります。とくにいちばん変えなかったのは、最初の企画書に書いた“これなら自分でも遊べる『テイルズ オブ』シリーズだ”と思ってもらうという、企画の軸です。というのも、思っていた以上に、「『テイルズ オブ』シリーズは知っているが遊んだことはない」、「RPGは好きだけど、まだ遊んだことがない」、「昔遊んでいたけど、最近のは遊んでいない」という人が多かったのです。『テイルズ オブ』には、シリーズが継承してきた“型”がありますが、そういった方々に「これなら遊べる」と思ってもらうために、型を変化させる必要がいくつかありました。その“変化の度合い”は、つねに議論していましたね。「これじゃ『テイルズ オブ』とは呼べないよ」と言われないよう、綿密に打ち合わせし、実際に試しながら基準を決めていきました。

――“継承と進化”を掲げた本作だからこそ、変化させたり、カットしたりした要素もあるかと思います。とくに悩んだ部分はありますか?

富澤もっとも議論したのは、スキットを3Dにしたことです。3Dにすることを提案、決断するにあたり、開発のコアメンバーとも、じっくり話し合いをしました。その変化によって生まれるメリットもあれば、デメリットもあり、すべてを見据える必要がありました。最悪、スキットをなくしてしまう選択肢すらあったとは思いますが、そうしようとはまったく考えていなかったです。スキットは、『テイルズ オブ』のプレイ体験の中で特別なものですから。それを踏まえて、今回は3Dに変化させることを選びました。

――今回、アニメ表現が少なくなり、少し寂しい気持ちもあります。今後の『テイルズ オブ』はどのような表現になっていくのでしょうか?

富澤アニメと3Dグラフィックのバランスは、たしかに過去作から変えています。今回は、ゲーム全体に統一性と没入感を持たせるために、一部の表現をアニメから3Dに置き換えました。また、歴史的な経緯をお話ししますと、『テイルズ オブ』シリーズは、以前はCGの表現技術がまだまだ足りなかったことを受けて、アニメの技術を応用しながら独自進化していったタイトルです。そのおかげで、これまでの作品でもドラマティックな物語を味わえましたよね。でも、『アライズ』では、キャラクターの3DCG技術の進化も見せていきたいと思いました。今回は、統一性を重視して3Dやイラストの比率を上げるアプローチをあえて取ってみました。とはいえ、もちろん2Dアニメにも、独自の演出として代わりのきかない持ち味というものがあります。オープニングアニメはそのひとつとして伝統芸能のような立ち位置にあるものですから、スキット同様、なくすことは考えていませんでした。何なら、オープニングを2種類取り入れて、むしろ従来よりも尖らせていたりします。「アニメ絵が少ない」と思われるのは、ごもっともな感想だと思います。今回のグラフィック表現は、『アライズ』という作品における個性、バランスによるものだと考えていただければと思います。今後、そのバランスがどうなるのかは、個々の作品のスタイルや、皆さんのご意見も踏まえつつ変わってくるものと考えています。

『テイルズ オブ アライズ』富澤Pインタビュー。アンケート結果を交えつつ、読者の質問に回答! 「30周年に向け、シリーズが盛り上がる状況を作る」と展望も

――ゲーム内のアニメのキャラクターデザインと、3Dモデルのキャラクターデザインが違うように見えますが、意図的なものですか?

富澤本来、ゲームとアニメのキャラクターデザインにおいて、ベストな形はそれぞれ別だと思うんです。本作では、ゲーム内モデルは、最新の3DCG技術に振り切ってデザインしています。それは、アニメで描くのはとても難しいデザインなんです。細かい装飾などもあり、アニメで動かすのが大変なんですね。ufotableさんはそんな中でも、可能な限りデザインを汲み取ってくださいました。『アライズ』は、アニメと3DCG、この関係性を自分たちでももう1度見つめ直すきっかけにもなりました。今回の結果を踏まえて、このふたつの表現をよりよくするにはどうすべきかは、現在も議論しているところで、まだまだ道半ばという認識です。皆さんのご意見を受け止めつつ、さらなる次世代の表現方法を研究中ですので、ご期待いただければと思います。

――“心の黎明を告げるRPG”というキャッチコピーの意味は?

富澤『アライズ』のタイトル名は、これまでの法則に囚われず、強い意志を持って“立ち上がる(アライズ)”というイメージで付けました。そこに付随して、本作のキーワードは黎明・夜明けであるというイメージが、チームのみんなの中にあったように思います。暗い闇や、厳しい支配の中にいるようなキャラクターたちの姿が描かれていますが、冒険する中で得られる何かしらの気づきや前向きさのようなものを、“心の黎明”と表現しました。決して明快な答えを持ちえない世界でも広い意味で伝わるように付けたものですので、人それぞれの解釈で“心の黎明を告げるRPG”を感じていただきたいです。

――奴隷の主人公が5つの国を解放するストーリーは、どう作られたのでしょうか。アルフェンというキャラクターが先に生まれたのでしょうか、それともストーリーが先に生まれたのでしょうか。

富澤ストーリーから先に考えました。まず、辛い状況を明確に打破していく物語にしたいというのは、初期から決まっていました。現実でも、辛い思いをする経験は誰にだってあると思いますし、そこを明確に打ち破っていく爽快なストーリーというのも、共感しやすく、想像しやすいだろうと思いましたので。アルフェンの主人公像は、後からゲーム体験とともに固まっていきました。プレイヤーがアルフェンの視点から、その物語をどう経験するのかをメインに、特異な環境でも共感しやすいキャラクターとして作り上げていきました。

――シオンは、いつダナに来たのでしょうか?

富澤本編の中では描いていませんのでここで具体的には語れないのですが、ほかにもこの世界で起きたであろうことはたくさんありますね。たとえば300年前のアルフェンはどんな生活していたのか、ですとか。わからないところ、描いていない部分は多いです。それは、「描かないほうがいい」と思っているわけではなく、ゲームはゲームとして、全体を通してのトータルの体験を優先した結果です。皆さんが背景や細部を知りたいと思ってくださるのは、この世界観全体を通して楽しんでくれたからこそ、だと思っています。僕がここで、「じつはこうでした」と答えることは可能ですが、それよりも何らかの“形”にしてお返事したほうが、皆さんに喜んでいただけると思っています。すべての謎や裏側をお出しできるかは、お約束はできませんが……。

――誘拐された後のシオンは、黒い服を着ています。あれはヴォルラーンが着替えさせた、もしくは用意させた服なのでしょうか?

富澤ええと……。これも今は“謎”にしておいてください(笑)。

――ヴォルラーンの過去や背景などを教えてください。

富澤こちらも、現段階ではシオンの過去に関することと同じ答えになります。彼はピーキーな言動が特徴的なキャラクターでもありますが、その背景を描く機会があれば個人的にも見てみたいですね。

『テイルズ オブ アライズ』富澤Pインタビュー。アンケート結果を交えつつ、読者の質問に回答! 「30周年に向け、シリーズが盛り上がる状況を作る」と展望も

――アルフェンは、某カレー店の“〇辛”までイケますか?

富澤僕の勝手な答えですが、10辛くらい余裕なイメージです。痛覚が戻ったあとも、アルフェンは激辛カレーを食べられますよね。おそらく、痛覚がない期間に食べていくうちに、辛さへの身体的耐性が鍛えられたのでしょう。シナリオ班には別の答えがあるかもしれないので、あくまでこれは自身も辛党である僕の妄想です。

『テイルズ オブ アライズ』富澤Pインタビュー。アンケート結果を交えつつ、読者の質問に回答! 「30周年に向け、シリーズが盛り上がる状況を作る」と展望も

――本作は恋愛描写が多く、主人公とヒロインが結婚することに驚きましたが、どのような意図で恋愛要素を取り入れたのでしょうか。

富澤描写については、チームでも議論はありました。王道の展開を目指していた中で、どこまで描くのかも悩みましたが、アルフェンとシオンに関して決め手となったのは、ふたりの関係性です。ふたりは、ある意味運命的な立場で協力関係を結ぶ間柄です。その結果、結婚というひとつの絆を結ぶことに、僕は違和感がありませんでした。必然的に、といいますか、アルフェンとシオンのことを考えたら、最後はふたりで幸せな形になるのが自然だよね、と判断した感じです。もちろん、キャラクターどうしの関係に想像の余地を残すのもいいと思いますが、『アライズ』に関しては、パーティー内での深い関係性をメインとして描く物語の中で、どういった結末を迎えるのかベストかを考えた結果、このような表現をとりました。

2022年3月下旬に発売予定の書籍集“『テイルズ オブ』シリーズ25周年記念集 ~25th Anniversary Box Set~”(※)には、『テイルズ オブ アライズ』単独の設定画集も含まれている。その表紙は、岩本稔氏が“あのシーン”をモチーフに描き下ろしたもの!

※アソビストア専売商品になります

――声優さんのキャスティングは、オーディションで行ったのですか?

富澤はい。オーディションの様子を録音したものを、何度も何度も聴いては、みんなで議論しました。スッと決まる配役もあれば、議論を重ねてようやく決まった、というキャラクターもいますね。あとはバランス感や、“テイフェス”などに出演していただけるかどうか、などを考慮しました。過去作のメインキャラクターと配役がかぶらないようにもしています。ただ、サブキャラクターに関してはその限りではありません。

――『Hello, Again ~昔からある場所~』が作品にとてもマッチしていました。この歌の起用が決まってから、ストーリーを考えたのでしょうか?

富澤いえ、シナリオ制作の進行中に、この歌を起用することを決めました。大半のキャラクター設定や筋は見えていた段階で決めたので、歌があったから展開をこうした、ということはありません。シリーズ1作目の『テイルズ オブ ファンタジア』と同い年である1995年の楽曲の中から、どんな曲が合うのか探したところ、奇跡的にたまたま物語とリンクする歌を見つけられました。

――パッケージデザインは、これまでは白背景のものが多かったですが、今回、夜明けのような背景を採用した理由を教えてください。

富澤『アライズ』のパッケージでは、キャラクターとともに、舞台となる世界におけるキャラクターの立ち位置を見せたかったのです。いままでのイメージに囚われず、パッケージから伝わる情報を最大限に伸ばそうと考えたのが、最初の発想でした。アルフェンとシオンのドラマが中核となる物語ですから、ふたりの関係性が見えること。そして黎明というキーワードが伝わるよう、夜明けを背景に落とし込みました。ちなみに販促ポスターなどは、夜明けがまだ遠いということで、パッケージよりも暗めの色調のバージョンもあります。

『テイルズ オブ アライズ』富澤Pインタビュー。アンケート結果を交えつつ、読者の質問に回答! 「30周年に向け、シリーズが盛り上がる状況を作る」と展望も

――フォトモードや、ショートチャット振り返り機能がほしいです。

富澤ショートチャットは、あまりにも膨大に用意されていて、その量はスキットの比ではないんです。難しいとは思いますが、皆さんのご要望があることは把握しています。フォトモードも、アトモスシェーダーが美しいと評価をいただいているからこそ、欲しいと思ってくださるんですよね。個人的にも何かしらの形で欲しいなとは思いますが、申し訳ありませんが、現時点でお伝えできることはありません。

――アニメ化の予定はあるのでしょうか?

富澤本作はゲームとして楽しい体験や物語に注力してきましたので、同じストーリーをアニメとして語る計画はしてはおらず、いまのところお伝えできることはありません。アニメビジュアルというところでは、もうすぐ公開間近のufotableさんの新アニメPV(※)のハイクオリティーな映像に、是非ご期待ください。

※インタビュー実施時は未公開だったが、2022年2月1日に公開となった。迫力の2分強をぜひ楽しんでほしい。

――開発秘話を英語でも公開してほしい(フランスの方からの質問)。

富澤ファミ通さんが全部翻訳してくだされば(笑)。というのは冗談で、我々もYouTubeチャンネルにて、伝えるべき情報は翻訳をしながらお伝えしていこうと取り組んでいます。開発の経緯を知りたいと思っていただけるのは本当にうれしいことで、この取り組みを通して、より世界中のファンの方々に我々のことを知っていただけたらと思います。

――以前、シリーズ30周年に向けて動いているとおっしゃっていました。それは『テイルズ オブ』シリーズの新作になるのでしょうか? それとも、過去作品のリメイク作品だったりしますか?

富澤2025年に、シリーズは30周年を迎えます。そのとき、30周年記念タイトルが出ていなかったら、僕は何の責任も果たせていないことになってしまいます。「30周年だから、記念作品を作る」というより、“まさにファンの方々が求めているもの”を作りたいと思います。また、『テイルズ オブ ベルセリア』から『テイルズ オブ アライズ』が発売されるまでは、たいへんお待たせしてしまいました。家庭用ゲーム機での『テイルズ オブ』シリーズの体験を、より幅広くご用意すべきだと、つねづね思っています。定期的に新作を開発していくことはもとより、過去作への移植やリメイクを望む声を無視する気も、もちろんありません。いつどの順番で、どのような形で提供すべきかというのは難しいところですが、30周年に向かって『テイルズ オブ』全体が盛り上がるような状況を絶対的に作る、とお伝えしておきたいです。現状ですとあいまいな答えが多く申し訳ありませんが、『アライズ』の物語の補完も、何かしらの形でぜひ実現したいと思っていますので、楽しみにしていてください。2022年もさまざまな情報をお届けできるよう頑張ります。

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