構想15年、開発9年。発売前からレジェンド級の話題をかっさらってきた、ゲーム史上例を見ない「まるごと手作り」アドベンチャーゲーム『RPGタイム!~ライトの伝説~』。先行プレイレビューで実際に遊んでみてわかった、“歳月を注ぎ込んだ執念と作り込み”の凄みを伝えたい。

『RPGタイム!~ライトの伝説~』先行プレイ

われわれは、幼き鬼才ゲームクリエイターと出会ってしまった。

本作の作者にしてゲームマスターである小学生のケンタくん。そのゲームへの愛とかわいい狂気すら感じる(?)ほどのクリエイティビティによって、プレイすることで、「ケンタくんといっしょに至高のゲーム体験を作り上げているかのような感覚」があった。

それと同時に、「とにかくこのゲームを所持していたい」と思わせる、どこか「アナログゲームやボードゲームのセットをまるごと買ってきたときのうれしさ」に近い感覚も。

この記事では、そんなケンタくんの「メタフィクションを知り尽くしたクリエイティブ」と、プロローグから第2章冒頭までのゲーム体験をもとに“彼が実際に作ったノートや工作のディティール」”にスポットを当てて解説する。

『RPGタイム!~ライトの伝説~』先行プレイレビュー このゲームは絶対知っておいたほうがいい 狂気すら感じる作り込みの小学生手作りRPG

ゲームスタートからプロローグまで

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放課後、ポイント&クリックでRPGの世界に引き込まれる

 放課後のざわめきが聞こえる中、机の上に描き込まれたレトロゲーム画面のようなラクガキをじっと眺める。
 おや? もぞもぞしてる? ドラゴン動いてない?

 食い入るように見る。『RPG タイム!』のタイトルの下、
終幕の[鐘]鳴りし時、伝説が始まる』の一文が。

 画面を囲むフレームは、何かの機械的な端末を思わせるデザインで、なんだかちぐはぐだけれど、ぐっときてしまう。

 このドラゴンや鐘、時計にカーソルを合わせていくとカーソルが炎、トンカチ、時計回りの矢印アイコンに変化(細かい!)。

 こんなふうに、本作はポイント&クリック的なスタイルで進行する。

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ノートの描き込みと切り貼り紙工作スキルの高さ

 太陽スマイルを浮かべながら話かけてきたのは、マッシュカットの少年ケンタくん。どうやら放課後、遊ぶ約束をしていたのだ。

 「なにして遊ぶ?」とマイペースな少年は、男の子たちに人気の、王道球技のボールを次々と出してくる。しかし、筆者はどちらでもなく、机のラクガキが気になって仕方がない。

 だって、机の持ち主の描き込みが力作すぎるのだもの。すると、少年は鼻の穴を大きくして、青いノートを掲げて見せてくる。

「ジャジャーン! ノートRPG ライトの伝説!」

 は?……ノート?

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 三度見した。

 大変見事なイラストで飾られたハイクオリティの表紙には、ツンツン髪の男の子と、かわいいお姫様。でもって大海の中に浮かぶ島。ファンタジーRPGのパッケージイラストというか、そもそもこれ描いたの?

 モノクロのモニタ画面や、ボタンを意識したデザインなど、往年の携帯ゲーム機にしかみえない。

 しかも! よく見ると描いた絵ではなく、折り紙を切り、アニメ塗風に、アウトラインを使わないタッチを切り張りだけで、表現している……ポップでかわいい。紙工作の精巧さに見入ってしまったほど、絵のセンスだけでなく工作の技量も相当なものじゃないか。

 一体……何者なのだ…?「ゲームマスター けんた」。ただものではない。

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 彼はセルフノリツッコミも巧みであった。サッカーもバスケも、お茶目にしっかり却下。

 そうこうするうち、物理的な準備時間を、ローディングタイムと宣言したケンタくん。彼は準備するひと時すら、楽しみで仕方がない様子。ああ、なんだかすでに微笑ましくなってきた。

 ゲームで使用する自分用の鉛筆と消しゴムを、まず机にマークした定位置に置いて…… 次に、ゲーム中のBGMを流すために持ってきた、
音楽プレイヤーもセット。

 今流れてるのは「メインテーマ 始まりの鐘!」自分でBGMの選曲までしているなんて。しかも盛り上がってきたケンタくんの鼻の穴が膨らんでいる(あ、彼は表情変化が豊かなので、後ほどこっそり隠し撮りをまとめたい)。

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 「つづきましてドットビーズで作っておいたステータス画面はココ!」

 ドット??? ドットビーズ?? 軽く言ってるけれど、手先器用……ドット絵って配色センスがもろに問われるやつ。剣なんかは光と反射まで計算して、陰影までつけているし……!

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衝撃のチュートリアル

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説明も遊びにする異常なまでのおもてなし心

 サプライズこそエンターテインメントかもしれない。そんな楽しさのツボを知り尽くしているかのようなケンタくんは、本作にさまざまなサプライズを仕込んでいた。その片鱗がチュートリアルの時点で垣間見えていたのだ。

 ローディングのラストに渡された「説明書ボタン」。一見すると小学生らしさのある、安心・素朴な粘土細工、といった感じの手作りボタンで、これを使うと『ライトの伝説』の説明書が読めるという。楽しい説明書だというし、せっかくなのでゲームを始める前に押しておこう!

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 ……って、いやいやいやいや! 

 これちょっと。とんでもない暴力的な厚みの冊子が現れたよ。待ってほしい。ナニコレ。攻撃力強い。

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 角度変えて見せなくていいからね。ちょっぴりの基準が、恐らく狂っているよ……愛が重いね……!
 
 しかもこの表紙、クレヨンスクラッチ? さすがに刺繡じゃないよね……この複雑なグラデーション、めちゃくちゃ奇麗に出せたね……(白目)。

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 しかもまさかの ボックスタイプ 四 方 展 開 ────っっ!

 
 からの、「オレ様は説明ダンジョンのボスゲーム魔神様だ~っ!」

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 突然のキャラ変、オレ様系小学生? 感情が忙しい!

 そうだ。本作におけるケンタくんは作者であり、GMことゲームマスターでもあるのだった。彼は演じていた。手作りの紙人形と、お面と台本を持って。セルフアテレコ……いや、魔神様となった、演技派クリエイターである。

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 さて、この「説明書ダンジョン」。簡単に説明しますと、『ライトの伝説』の世界を遊びながら、学べるダンジョン。4つのダンジョンから、隠された"スター"を探し出すと案内人のゲーム魔神(CV:ケンタくん)から、宝物をもらえるという作り。文字だらけの説明書とは異なり、常識破りのダンジョン仕立てで、飛び出す絵本のような仕掛けや付箋をめくったり。ギミックを触って動かすことで、隠された情報を知ることができる。

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 見どころが多すぎるため、ぜひ詳細は実際のゲームで見て欲しいのだけれど、ひとつの注目としてキャラクターやストーリー紹介の出来は秀逸なんてものではなかった。

 紙の質感も利用して立体感を際立たせた紙工作や、身近な野外ロケで、紙粘土の人形を利用した、表現豊かなキャラクター紹介。ノート上の2D表現だけにとどまらない、柔軟な発想力で自分で作ったRPGの世界を色鮮やかに表現するなんて、もはや脱帽である。

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 とくに、トレイラームービー(?)の演出には着目してほしくなってしまう。YouTubeっぽい動画を、いわゆるパラパラ漫画で表現した、
シンプルな線画アニメーションだが……ここにケンタくんの、そら恐ろしい、表現者としての非凡さがさりげなく見て取れる。

 ここも詳細は、ぜひ直接見て感動していただきたいので、いちばんどえらい部分は伏せておくけれど、演出からも、彼はメタフィクション視点というものをすでに理解して、使いこなしているのではないかと感じさせられたことだけお伝えしておきたい。メタバースの到来も目前に迫ると、こうした子が現れるというのか……!

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プロローグ 手描きと創意工夫に圧倒される

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 説明書ダンジョンだけでも仕掛けと発見が満載で、しかも説明書なのにクリアーしたら、ノートに自由にラクガキができる鉛筆がもらえるというご褒美まで。こんなリスクとリターンを完全に理解したケンタくんの導入部の作りに、完璧につかまれてしまったからか、驚きを更新していくケンタくんへの関心が高まっていく。

 そんななか、ついにノートが開かれて本編がスタート! プロローグの幕開けなのだけれど……!

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手描きと工作 ノートの存在感

 物語が始まる期待感と同じくらいに心を動かされるのが、手作りのノートや工作の存在感。なにしろ開かれていくノートのモニタ部分にあたる場所は丁寧にカッターなどで切り抜かれてクリアシート仕様。ここにタイトルロゴを描いた紙を張り付けているのかな……と思って見てしまったけれど、ノートが捲られてロゴとノートが陰影となると……動くんですよ、タイトルの影(とノート)!!
 
 か、かっこいい……っ!!

 表紙を捲るだけで、こんなかっこいい演出が決まるなんて、ずるい。しかもノートの裏側も、ばっちり描きこまれている。崖上からは光の国の城や、街の人々の活気が見下ろせる。絶景だ。ちなみにノートの欄外には、光の国の人口や、特産に国旗の設定まで書いてある。社会の教科書かい……!

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手描きが動く そして描き変えられて変化!?

 表紙をめくっただけで心掴まれている最中に、ケンタくんのナレーションとともに幕を上げていく物語。さらに、ゲームマスターであるケンタくんは、状況変化に応じてその場で鉛筆を使い、物語の進行部分を描き加えていく。

 魔物の襲来で青空は暗雲が立ち込めていく……!

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 そして、主人公たる“勇者ライト”の登場!

 そういえば「アニメーション」という言葉は、「命を吹き込む」って意味だった。まさに命が込められていくかのようだ。描きながらも、なんだか楽しそうなケンタくん。描く場面に感情移入して、無意識なのか表情がつられてしまっているところとか、妙にリアル。

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 次のページをめくると、光の城の城門が見開き、大暴れする魔王の軍勢というパノラマの迫力よ! 

 カメラアングルが左下の骸骨兵に固定されてズームしたかと思うと、驚いた骸骨兵に、勇者が勇ましく斬りかかったり。全体の背景は固定されているが、アングルやカメラのインとズームを使い分て動きを見せるなど……ノートの手描きでありながら、ケンタくんの匠の技がここでも惜しみなく炸裂。ちなみに登場キャラのアテレコも、すべてケンタくんだ。

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手法・ジャンルを問わない怒涛のエンタメ

 効果音を手にしたシンバルで盛り上げるケンタくん。激しく揺れるアクションシーンでは、机ごと揺れるのに気がついた。これって机ごとにケンタくんが揺らしてるってことなのでは? だとしたら、プレイヤーを絶対に楽しませたいと考えているゲームクリエイターとしても、役者魂と黒子としても優秀……!(尊敬の眼差し)

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 さらわれた姫を追いかける勇者の様子はマンガ風演出。しかも一コマ一コマ、付箋で隠されていて、何が起こるかはめくるまでわからない。もはや勇者ライトが細々としか進めない、焦りともどかしささえ演出で完璧に表現しているかのよう。

 そしてここで突如としてケンタくんから渡されたのは、方向パッドと剣のボタン!? かっこよく必殺技コマンド入力を、決める! 格闘ゲームかい!

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 しかし、勇者の剣が…! ! 折れた???

 装備画面のドットビーズの剣を確認すると、ちゃんと折れた剣になって攻撃力がダウンするという、大 ピ ン チ! 容赦なくどんどん追い込むの上手いよ。ケンタくん。

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 勇者、絶体絶命の瞬間! ケンタくんの演技も心なしか高揚気味?(絶対楽しそう) 「さらばだ、勇者よ!」と、手作り紙人形の魔王が回転し、尻尾での強烈な一撃がライトを襲う……!

 と、魔王の裏側に姫の絶叫シーンのコマが描きこまれているという、これもはや天才の発想……! 吹き飛ばされていく勇者。迫りくる緊張感。迫力を殺さず見せる演出が、もうすごい。

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ダンボールで作られた立体造形のワールドマップ

 空高く吹き飛ばされた勇者は、冒険の舞台であるダンボール大陸のスポット“はじまりのどうくつ”に落下。ここまでが本作のプロローグとなっており、ここからが第1章“はじまりのどうくつ”がスタートする作りだ。

 それにしても、このダンボールや色紙で手作りした立体ワールドマップ……作り込みがまたえぐい……。しかもさりげなく、吹き飛ばされた勇者の様子を追いかける形でこれから大冒険が待っている広大な世界をプレイヤーにちら見せしちゃうという。考え抜かれている。

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第1章 はじまりのどうくつ

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 紙芝居の第1章がはじまる。そんなわくわく感覚を引き出しつつ、1章が開幕。ケンタくん、気持ちを切り替えさせるのも上手いなぁ。本格的な冒険が文字通り始まるわけだけれど、吹っ飛ばされて落下したのは、地底の洞窟だった。

 見開きいっぱいにびっしりと描きこまれた洞窟のマップのページが広げられる。最初のエリアでは、上下の二層に道が分かれ、川が流れているようだ。ページをめくるたびに、描かれた新しいエリアの探索が進んでいくのかと思うだけでもゾクゾクしてくる……!

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文房具を駆使したUI HPゲージはメジャーで表現

 落下した勇者、地面に激突した分のダメージ計算もしっかり行われるのだけれど、HPバーは、なんと文具のメジャーを使って表現!

 勇者や敵のライフをノートに描くのではなくメジャーの伸縮を利用して視覚化するという、ユーザーインターフェースを知り尽くしたような小学生。なんたる100均(?)アイディアマンか。

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ゲームマスターが世界を描き変える

「ゲームマスターのボクが 突然イベントを起こすことがあるよ!」と、さらにケンタくんが重要な役割を宣言。鉛筆や消しゴムで何かを足したり消したりすることは今までの流れで想像がついていたけれど、地形も描き変えたり消したりして、ルートとレベルデザインもその場で変更。このライブ感はどこかテーブルトークRPGを遊んでいるときの感覚と似ているようなワクワク気分がそこはかとなく漂う。

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 ケンタくんは、ダンジョン探索の危機すら手段を選ばずに再現してみせる。落石注意のエリアでは、ちょっとした謎解きで勇者ライトの頭部を守りながら進まなくてはいけないのだけれど、なんと実物の石を持ち出した演出も!

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弱点に太刀筋を描きこむ バトルシステム

 落石から逃れて次のページに進むと、最初の敵となる“ファイヤーマン”とのバトルが発生! RPGの華であるバトルだけれども、本作ではノートに太刀筋を描きこんで斬りつけることで攻撃を行う。斬りつけるために、鉛筆にお手製の鍔をつけてくれた剣を渡してくれる(どうでもいいが、こちらに鉛筆を渡すときに、柄の方を持たせるように、向きをくるっと変えて渡すところ……めっちゃジェントル)。

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 だが、どんな魔物も一筋縄では倒せない。ポイントは、敵の弱点を見極めて、的確に斬りつけることだ。ファイヤーマンは、体が燃えているので普通に切りつけても攻撃が通らない。

 火を弱めれば、あるいは……。その方法はないか考えてみる謎解きが重要な要素となっている。また、ノートを隅々まで目を通してみると、弱点につながりそうな情報がこっそり載っていたりと、ケンタくんのぬかりない情報配置にもあらためて感心してしまうところ!

数多の手作りボタンで多様なアクションが可能

 この洞窟の中では勇者の剣によるバトル以外にも、スコップでの探索なども行えた。

 スコップボタンで地中を掘ってみると、ネコにクツやら、バスケットボールまで…様々なものがざっくざくでるわでるわ。学校の身近な用具などは机上へ直接そのものが置かれたりするなど、ノートの世界とリアル世界を織り交ぜた演出がメリハリとなって非常におもしろい。

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 ほかにも「解説ボタン」を使えば、ノートに描いてあるさまざまな絵についての解説を聞ける。ケンタくんのラクガキを、作者自身の語りと共にじっくり堪能できるという、もはやご褒美に等しい(?)機能である

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 ちなみに、説明書ダンジョンのクリアー報酬である“ラクガキ鉛筆”を使えば、自分でもラクガキを描いたり消したりすることが可能。自由度については不明だが、プレイヤーもノートに干渉できるのは、なんだかうれしい要素。教科書の偉人に髭を書いたりしたように、魔王に落書きしてやりたい気持ちが芽生えそうだ。何にせよ、ケンタくんと先々いっしょに、ラクガキの楽しさを共有できるかもしれない。

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リトライとヒントのやさしさ

 本作は、ゲームオーバーすら楽しいのであった。気絶している勇者を、ビンタ連打や水をかけて起こす! 殺伐とせず、なんとも微笑ましい。何から何までケンタくんの優しさと遊び心で作られているゲームなのだ。バトルなどで負けてしまったとしても、基本的には丁寧にヒントを教えてくれる。ゲームが得意ではない方でも、楽しく広く大冒険の楽しさが体験できるゲームバランス。ケンタくんは、ゲームマスターとしての才能も非凡……!

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予測不能+ジャンル不問のイベント満載

 と、ここまで順調に勇者のダンジョン探索というファンタジーの王道展開を進めてきたものの、スコップが出てきたあたりから、展開が予測不能に。スコップでモグラを掘り出してしまったことで、モグラたちとの仁義なき抗争へと突入していく。

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 さらに、彼のイマジネーションは子どもらしい超展開に! モグラと野球をしていたと思ったら、なんと戦車が登場! そして気がつけば、ミミズを戦車で栽培収穫している自分がいた! カオスである。もうなんでもありな、モグラ兄弟たちとユニークバトルにもつれ込むのが、このはじまりのどうくつの冒険だったのだ。

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 そして、さらに上を行く、たまげたことが起こった!

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 ゲームの世界へ、ご招待された!

 戦車に乗った勇者が、モグラの作った8bitゲームの世界に閉じ込められて、ドット絵になってしまったのだ。音源も懐かしいチップチューンに。もはや劇中劇の、さらに劇中劇みたいなメタのマトリョーシカ状態だが、あることに気づく。

 これ、方眼用紙の青い升目内に、8×8の細かなラインが見える? 全部ケンタくんの、究極の手作りドット絵なのか……(激震)。方眼紙に……アナログで?

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 ケンタくん……神か……? そう思わないと、もはや納得できないスペックだ。

 この「TANK TIME」は、なんとかの伝説的なレトロゲーム風味の謎解きゲームとなっている。戦車のドット絵も往年の作品を彷彿とさせるものだけれど、ケンタくんはもしかするとレトロゲームにも精通しているのかも……!

 RPGであることを忘れるほどの完成度のこのゲームには、きちんとスタッフロールまで用意されていたりもするのだが、これ以降のページでは、いろいろあって無事に洞窟に戻ってくることに。

 そこでも、洞窟もののお約束で、勇者がトラップの鉄球に跳ね飛ばされる場面も用意されている。この怒涛の演出には、アゴが外れそうになってしまう。ちなみにその時の演出がすごい。勇者が顔面からモニター画面の方へ跳ね飛ばされるのだから。

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 ガラス越しに顔を押し付けたように唇のあとが生々しく残される。これってもしかして、何度も失敗したら画面中が唇だらけになるのでは?

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ギミック満載のボスバトル

 その後も、とんでもないサイクロプスとのボス戦があったり、姫からのメッセージがあったりするのだけれど、気づけばあれよあれよいう間に、1章も大詰めに。

 ここの展開も、非常にわくわくするので、ぜひ自分の目で体験してほしい……けれど、ちょっとだけここだけは伝えておきたい!

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 ボスバトルのとどめは、特別な勇者の“必殺技”が発動するのだけれど、なんと手作りのスロットマシンで必殺技の名前が決定するんです! 小学生らしい意味がよくわからないけれど、ハートが燃える熱いシステムだ!

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第2章 旅立ちの町

 はじまりのどうくつを見事突破すると、紙芝居でストーリーが語られたのちに、続く第2章へと展開。

 先行プレイは、この第2章“旅立ちの町”の冒頭までの範囲の体験だったため、2章の詳細はわからないものの、“町”での探索がメインになったり、仲間との出会いがありそうな感じのチャプターのようだ。でも、これまで見てきた1章の展開を考えると、2章の展開を予測するのは不可能かも。

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クエストや会話も解禁に

 先が読めない第2章では、町の住人との会話のほかに、頼み事があったりするのか、クエスト方式で展開するイベントもあるのかもしれない。ダンジョン探索、バトルにボスバトルと続いてきただけに、こうした要素はケンタくんの考えるRPGの醍醐味や思想が込められているのだろうか。何にせよ、遊んでいるプレイヤーとしては続きが気になって仕方がなかった……!

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手作りとメタフィクションの可能性

 と、プレイできたのはここ2章の最初までだったけれど、最後にもうひとつだけ、本作がメタ表現について熟考していることを感じた場面もご紹介させてほしい。それは、1章のラストで、洞窟から脱出すべく、折り紙の船で勇者が川を渡っていくシーンだ。

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 画面をよく見て欲しいのだが、折り紙の船はノートの外に出ていくが、線画の勇者はノートからは出ていないのである。勇者だけが、舞台袖に消えるような演出になっている。これは、きっとケンタくんの、ノートRPGに対してのこだわりを感じられるところではないだろうか。

 あらかじめ作られた、紙人形など立体物で表現された媒体はノートの枠外で自由に動かせるけれど、ノート内に描かれたキャラはモニタ(?)から
でることが出来ないという世界の理をしっかりと敷いているかのよう。

 ゲーム(ノート)の空間と現実の空間が区別されていることは、プレイヤーに「これはノートの中のゲームなのだ」と、ふとした瞬間に思い起こさせる……ケンタくんが狙っているのかはわからないけれど、こうした絶妙なメタフィクション表現の数々もまた、本作の矜持かもしれない。

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 ケンタくんがいつから、「ライトの伝説」を作り始めて、どれだけの時間を、費やしたのだろう。

 それが虚構であっても、ゲームを愛する熱量は本物。きっと手の内側も、消しゴムも、鉛筆で真っ黒に汚れるまで描き込んだことは、想像に難くない。ケンタくんの情熱は、ゲームクリエイターの枠に留まらない。クリエイターであり、アクターであり、エンターテイナーもこなせる。

 エンターテインメントは誰かを楽しませようとすること。それこそが原動力だとしたら。身近にこんな友達がいたら、絶対ファンになってしまう。
もしかしたら、このケンタくんのゲームに触れて、新たなクリエイターを生み出す影響力なんてものにも期待してしまうほど!

未来の巨匠、天才ゲームクリエイターだよ、ケンタくん!

 そんな彼のデビュー作にして超大作は、現実世界ではアニプレックスよりXbox SeriesX|S、Xbox One、Windows用ソフトとして今冬リリース予定。開発を手がけるのは、開発会社デスクワークスの藤井トム氏と南場ナム氏の二人。彼らが本当に15年の構想期間と、9年の制作期間を費やして、一生懸命に作り続けてきた作品として、ついに! もうすぐ! 世に送り出されようとしている。

 きっと思い出に残る、ケンタくんといっしょに作り上げるRPGの時間が待ちきれない。 

 ※ケンタくんは実在しません。ねんのため。