“空に落ちる”、重力使いの少女キトゥンの物語

 2012年(平成24年)2月9日は、プレイステーション Vita用ソフト『GRAVITY DAZE(グラビティデイズ)』が発売された日。本日で同シリーズは発売10周年という節目を迎えたことになる。

『GRAVITY DAZE』シリーズが発売10周年。唯一無二の重力アクションが味わえるPS Vita初期の名作。田中公平氏が手掛けた楽曲も最高だった【今日は何の日?】

 『GRAVITY DAZE』は、ソニー・コンピュータエンタテインメント(当時)から発売されたアクションアドベンチャーゲーム。正式なタイトルは『GRAVITY DAZE/重力的眩暈:上層への帰還において彼女の内宇宙に生じた摂動』と言い、じつは長い。シリーズはこれまでに2作品発売されていて、2017年1月19日発売の続編『GRAVITY DAZE 2/重力的眩暈完結編:上層への帰還の果て、彼女の内宇宙に収斂した選択』のDLCまでで一連のストーリーは大団円を迎えている。

 シリーズの主人公を務めたのは通称“重力姫”こと、キトゥン(子猫という意味)。金髪に褐色の肌と見た目は非常にエキゾチックでかわいらしいのだが、作中ではあまりモテない設定の模様。天真爛漫で疑うことを知らない彼女は簡単に言えば“ちょろイン”で、そのうえ下水の排水管近くに住んでいるせいかちょっと臭うらしい。とまあ欠点もいろいろあるのだが、そこも含めて魅力的だ。

『GRAVITY DAZE』シリーズが発売10周年。唯一無二の重力アクションが味わえるPS Vita初期の名作。田中公平氏が手掛けた楽曲も最高だった【今日は何の日?】
『GRAVITY DAZE』シリーズが発売10周年。唯一無二の重力アクションが味わえるPS Vita初期の名作。田中公平氏が手掛けた楽曲も最高だった【今日は何の日?】

 物語は記憶を失ったキトゥンが人気のない公園で目を覚ますところから始まる。重力猫ダスティとの出会いを経て“重力使い”の能力を手に入れた彼女は、重力嵐に伴って出現した謎の怪物“ネヴィ”から人々を守りながら成長を遂げていく。当然ながらやがては自身を取り巻く驚くべき秘密へと迫ることになる。

 ユニークなのは要所にあるストーリーイベントがコミックとアニメが融合したような独創的な演出で描かれる点。コミック風に読み進めながらも場面に合わせてコマの中身が大きく動くので、かなりの迫力を体感できたのがおもしろい感覚だった。そして何より、多彩な楽曲で物語を盛り上げてくれる田中公平氏のサウンドが最高にイカしていた。ヨーロッパの古い町並みのような風景の中にレトロフューチャーなメカが混じり合う、本作の独特な世界観ともマッチしているので誰しも強く印象に残っているのではないだろうか。

『GRAVITY DAZE』シリーズが発売10周年。唯一無二の重力アクションが味わえるPS Vita初期の名作。田中公平氏が手掛けた楽曲も最高だった【今日は何の日?】
『GRAVITY DAZE』シリーズが発売10周年。唯一無二の重力アクションが味わえるPS Vita初期の名作。田中公平氏が手掛けた楽曲も最高だった【今日は何の日?】

 そして忘れてはならないのが、キトゥンの重力を操る多彩なアクションだ。重力使いと言えば、異能者バトルの物語においては相当な強者のポジションになることが多い能力。筆者は小説『マルドゥック・スクランブル』のボイルドが好きだったので、設定を聞いただけでもワクワクした覚えがある。

 壁に張り付いて歩いたり、物を浮かせて投げ付けたりするのはもちろん、地面を高速移動したり、落下距離が長いほど威力を増す“重力キック”をかましたりと、キトゥンはこれだけでも期待以上のアクションを披露してくれた。しかし、『GRAVITY DAZE』では加えて空まで飛ぶことができたのだから素晴らしい。まあ、正しくは“空への落下”なのだが。

『GRAVITY DAZE』シリーズが発売10周年。唯一無二の重力アクションが味わえるPS Vita初期の名作。田中公平氏が手掛けた楽曲も最高だった【今日は何の日?】
『GRAVITY DAZE』シリーズが発売10周年。唯一無二の重力アクションが味わえるPS Vita初期の名作。田中公平氏が手掛けた楽曲も最高だった【今日は何の日?】

 キトゥンの能力は指定した方向へ重力を向けること。ゆえに重力を真上に向ければ自ずと空へと落下を開始する。逐一、行きたい方向へ重力を調整すれば空を自由に落ちることができるというわけだ。空を飛べるゲームは数あれど、空へ落ちていく感覚は本作でしか味わえない独特なもの。この何とも言えない気持ちよさにハマってしまったユーザーは多かったはずで、誰しもオープンワールドの世界を端から端まで落ちまくったに違いない。PS Vitaのジャイロセンサーを使った操作方法も、当時は非常にぶっ飛んだ発想に感じたんじゃないだろうか。

 いま『GRAVITY DAZE』で遊びたいならプレイステーション4版がおすすめだ。ちなみに、続編の『GRAVITY DAZE 2』は完全な続き物のストーリーになっているので、両作品プレイすればキレイに完結してスッキリできる。

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