KONAMIより2021年11月25日に発売予定のNintendo Switch用ソフト『パワプロクンポケットR』(『パワポケR』)。10年ぶりとなる『パワポケ』シリーズの復活作品であり、最新作。

 本稿では、シリーズ全作品をプレイしている『パワポケ』ファンと、逆に『パワフルプロ野球』シリーズは遊んでいたけど『パワポケ』を遊ぶのは本作が初めてという真逆のふたりのライターによるプレイレビューをお届け!

 『パワポケ』をプレイしたことがある人も、今回初めて遊ぼうと考えている人もぜひお読みください。

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涙あり、笑いあり、なんでもありの三拍子は変わらず

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『パワポケ』 is バック!

TEXT by 代打大久保(『パワポケ』ファン)

  タイトルコールで感動してしまうのは筆者だけではないはず。「パワプロクンポケット!」のタイトルコールを子どもたちが一斉に叫ぶのは当たり前のことだったが、10年ぶりに聞くとついに復活したのだ……と感慨深く、 涙が出てしまいそうだった。

 まずは極亜久高校編からプレイしたが、昔と変わらない極悪っぷりに安心。他校の弁当に下剤を入れるゲームはほかに存在するのだろうか。何はともあれ目つきの悪い先輩たちは病院送りになったので仲間集めからスタートするのだが、これがひと筋縄ではいかない。

 1年目以内なら同じミニゲームは何回でも再挑戦できるが、最初は最高難度でミニゲームをプレイさせられるのだ。テニス部の三鷹はミニゲームを失敗すると変なあだ名に変えられてしまい、翌週から幼なじみに「おはよう、負け犬」と挨拶されたときは悔しい反面、「これは悪くない」と思う自分がいたのは心にしまっておこう

 サクセスを語るうえで気になるのは、重いストーリーが変わらず存在するのか。これは安心して大丈夫だ。野球マスクの誕生秘話や、彼女の失踪は変わらず存在した。喜ぶことではないが、裏で暗躍する悪の組織と『パワポケ』はセットでなければ話が成立しない。

 ドリルモグラーズ編、彼女候補が失踪したときは「さすが『パワポケ』」と思ってしまった。アルバムで主人公が佇む姿にここまでやるのかと感心してしまうがその反面辛い。幼少期のトラウマが蘇ってきた。極亜久高校編の幼なじみも、甲子園で優勝したものの、ドラフト2位となり、あえなくバッドエンドを迎えた。甲子園優勝とドラフト1位が条件でグッドエンドがようやく見れるというたいへんさを思い出した。

 昔はよくクリアーできたなと我ながら思ってしまう。つねにバッドエンドと隣り合わせのストーリーに精神がつらくなるが、「つぎこそは大団円を」と挑み続けられるのはストーリーがおもしろいからこそだろう。初回のプレイでグッドエンドが迎えられても、バッドエンドはどうなるのかと、けっきょくアルバム回収に奔走することになるはずだ。

 極亜久高校編は前作とは違いフラグ回収がしやすかったのだが、ドリルモグラーズ編は少し難度が上がったようにも思える。荒井紀香やプロペラ団のランダムイベントがなかなか起きないのだ。回数で言うと10回プレイして荒井紀香は出てこず、プロペラ団のイベントが最後に1回と、ランダムイベントのフラグ回収がかなり難しい。アルバムコンプリートを目指すうえでかなり厄介になる。昔は何度「荒井紀香出てくるな」と願ったことか。彼女に関してはいい思い出は何ひとつ出てこない。デートは決まって凡田の部屋に行き、憂さ晴らしするくらいか。ただ、出ないならこれは気長にプレイするしかないと思うので今後の楽しみとしよう。

 その代わりなのか、ダイジョーブ博士とは多く遭遇した。ふたつのサクセスで必ず登場する。成功率は言わずもがな低く、失敗のたびに絶叫ものだ。 一度でも成功すると、「つぎもいけるのではないか」という思考に陥り、 痛い目を見るまでが1セット。これは昔と変わらないなと思う。

 ここまでサクセスのことばかり話してしまったが、まったく違う要素がひとつある。新たに実装されたサクセスのサイバーバルだ。これは子どもから大人まで、誰でもプレイできる簡単なシステムになっている。『パワポケ10』の裏サクセス、装甲車バトルディッガー編に出てきた戦車のような乗り物で敵を倒しながら野球人形を作るというものだ。

 このサイバーバルは野球に興味がない人でも楽しくプレイできるように作られ、ボタンひとつで簡単に弾が撃つことができる。最大4人までプレイできるので友だちとぜひプレイしていただきたい。野球とサクセスはもちろん、新しい要素が加わった『パワプロクンポケット』はさらにおもしろくなって復活した。原作ファンのみならず、多くの人が楽しめる“野球バラエティ”だ

遊べば“パワポケらしさ”はすぐに理解できる

『パワプロクンポケットR』プレイインプレッション。涙あり、笑いあり、なんでもありの三拍子は変わらず。原作ファンのみならず多くの人が楽しめる“野球バラエティ”

こだわりから生まれる“らしさ”

TEXT by ヴァニラ近藤(『パワポケ』シリーズ初プレイ)

 なんでこれまで『パワポケ』をやってこなかったんだろう?

 これが、これまで『パワプロ』シリーズは遊んできたけど『パワポケ』をやっていなかった自分の最初の感想。考えてみれば、自分はサクセスばっかり遊んでいたんだから、サクセスが主体である『パワポケ』が楽しくないわけがない!

 いわゆる“表サクセス”は、基本的な内容は『パワプロ』のサクセスと大きく変わらないけれど、シナリオのはっちゃけっぷりは、さすが『パワポケ』。それはもう、ウワサ通りでした。ひとつ例を挙げると、主人公がうんこを踏んでしまうシーン。バカにされてやる気が下がる……このくらいなら『パワプロ』でもありそうだけど、ニックネームを強制変更して、ゲーム中で呼ばれる名前を“うんこマン”と表示させる必要ってありますかね?(笑)

 彼女候補である小料理屋の女将さんに「あら、うんこマンさん」って言われたときには、家でひとりでプレイしているのに、思わず声を出して画面に向かってツッコミを入れちゃいました。わざわざ開発の工数をかけてやるところじゃないでしょと思いつつも、こういうところをしっかり作るからこそ、『パワポケ』の味がにじみ出てくるってことなんでしょうね。

 もうひとつ、『パワポケ』を語るうえで、外すことができないのが、闇が深いと名高いシナリオ。ドリルモグラーズ編では、もしかしたら死んでしまっているであろう幼なじみの失踪といった展開もあったりして、どこで選択肢を間違えたのかなと、自分の行動を省みることもあったり。『パワプロ』と比較すると、バッドエンドや選手育成に失敗したときに、どこからともなく死の匂いがするブラックな展開で物語が終わることが多い印象ですね

 以前のインタビューで、原作のシナリオを担当した西川直樹氏が「ブラックではなくリアル路線」と言っていたので、ブラックと感じているのはプレイヤーだけかもしれないけれど(笑)。

 シナリオに注目が集まりがちな『パワポケ』ですが、サクセスのシステムも注目ポイント。サクセスモードの性質上、何度も同じことをくり返して選手を育成するという行為は、ややもすれば“作業”と感じる人もいるかもしれないですね。

 でも、実際は発生するイベントは毎回同じではなく、ランダムという振れ幅の中で最適解を選んでいくことになるわけです。そのときに必要になるのが、己の中に蓄積された知識や経験。選手の成長だけでなく、自身の成長も必要になり、強い選手ができるとそれを実感できる。

 そして、成功体験を得たことで、さらなる選手を育成したくなる、というのがサクセスの普遍性であり中毒性というわけです。本作の“裏サクセス”である戦争編がその最たるもので、まったく野球をすることなく戦場で200週生き残ることが目的で、 淡々と任務をこなしていくわけですが、自身の成長なくしてクリアーできない仕組みになっています。完全に運に左右される部分もたくさんあるので、それも相まって何度もくり返し遊んでしまうこと請け合いです!

 というわけで、“野球バラエティ”として至高の作品と言っても差支えない『パワポケ』シリーズの原点となった『1』と『2』が楽しめる本作。『パワポケR』の野球システムは、本家『パワプロ』を流用していて、野球もシナリオも存分に楽しめる1本になっているので、 原作ファンだけでなく、自分と同じように『パワポケ』未経験者もぜひ手に取って遊んでみてもらえればと!

ちなみに

 週刊ファミ通2021年12月9日号(2021年11月25日発売)では、『パワプロクンポケットR』の発売記念特集を掲載! 藤岡謙治氏の描き下ろしイラスト表紙が目印なので、ぜひ手にとってみてほしい。

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