エレクトロニック・アーツのミリタリーFPSシリーズ最新作『バトルフィールド 2042』のオンラインレビューイベントに3日間参加し、製品版をみっちり遊んできたので、その内容をお伝えしよう。

 本作の対応プラットフォームは、プレイステーション5/Xbox Series X|S/PC、およびプレイステーション4/Xbox One(旧世代機版は最大プレイ人数やマップサイズなどが異なる)。今回のレビューイベントはOriginのPC版で行われた。なお2021年11月12日より先行アクセスが各プラットフォームで開始予定で、通常の製品版は19日に発売予定となっている。

全面戦争モード/クソデカマップでドンパチ!

 まずはメインモードである“全面戦争”から。伝統的なルールである“コンクエスト”などが含まれるゲームモードで、今回はバトルフィールドらしい大型マップでの陸・空のビークル(乗り物)を駆使した戦いにかなり振った内容となっている。

  • ローンチ段階でプレイできるのはコンクエストルールとブレイクスルールールの2種類
    • コンクエスト: マップ内各所にある拠点を奪い合ってスコアを稼ぐ(正確には、敵軍の再出撃チケットを削っていく)
    • ブレイクスルー: 攻撃側と防衛側に分かれ、攻撃側は各フェーズでの拠点を占拠して前線を押し上げ、敵本拠地攻略を目指す。防衛側は各フェーズでできるだけ食い止め、相手の再出撃チケットがなくなるまで耐える
  • 全体的にマップがかなりデカい
    • オープンβテストでプレイできたオービットマップは中サイズの部類
    • 大型の“アワーグラス”マップなどは前作『バトルフィールドV』のハマダマップの数倍というレベル
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アワーグラスマップでのコンクエスト。ちょっと霞んでる高層ビル群とかもマップ圏内。
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砂漠地帯とハイテク農業地帯が巨大な壁で分けられた“リニューアル”でのブレイクスルー戦。最初のエリア占拠が完了すると壁に設けられたゲートが「ゴゴゴ……」って開くのが燃える。

OBTのオービットマップはむしろ特殊だった? 全体的にサイズを活かしてメリハリの効いた作り

 ここでお伝えしておきたいのが、オープンβテスト版と今回のレビュー版ではそのサイズの活かし方から受けた印象が結構違うこと。

 オープンβテストで採用されていた“オービット”マップはサイズの割に丘陵部や南部の施設エリアの道が狭かったりしてちょっと窮屈な感じがあったのだが、レビューイベントでプレイできた他のマップはかなり開けたオープンエリアが設けられていたり、(ロケット発射台周辺ぐらいしか高所の攻防がなかった)オービットより上方向を活用していたり、ビークルをしっかり活用しないといけない部分と室内などの歩兵戦をやる部分のメリハリがついていてなかなかいい感じだった。

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カレイドスコープマップはサイズこそ小さめなのだが、超高層ビル間に張り巡らされたジップラインを経由して拠点を取りに行けたり、ダイブして別の拠点を襲撃しに行けたり、高度を活かしたプレイが可能。

 そういった中でプレイするからこそ、いかにビークルを使って攻め込むか、どこでどうスペシャリスト(固有装備や技能を持った今作のプレイアブルキャラクター)の能力を使うかといった戦術の面白みが生まれるし、戦場で銃のアタッチメントを直接交換できる“プラスメニュー”システムなども役に立ってくると言えるだろう。

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スペシャリストの能力は周囲の環境に左右されるものとされないものがある。周囲の敵を透視する“パイク”のスキャン能力は室内や障害物が多いエリアが得意。
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ちなみに、すべてのスペシャリストが最初から選択可能なわけではなく、一部はレベルが上がった時のアンロック対象な模様。たとえばマッケイはレベル15で解禁だった。
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各ビークルも細かいカスタマイズがあったりする。対ビークルの性能が違ってたりするので、他プレイヤーのビークルに乗る時は注意。

ハザードゾーン/少しバトロワっぽい要素もありつつバトロワではない、複数チームがそれぞれ各地で激突する変則モード

 第2のモード“ハザードゾーン”は、4人構成の8チーム(最大32人・旧世代機では24人)がマップに降下し、できるだけデータドライブを回収して、2回あるチャンスのどちらかで脱出機に乗り込んで生還するのを目指す、という内容。

 ちょっとバトルロイヤル系のモードと共通する部分もあるんだけども、実際にプレイした感じは結構違っていて、PvPvE系の別モードとして理解した方がよさそう。ここではあえてバトルロイヤル系のゲームとの違いを軸に説明してみよう。

バトロワ系との違いから見る、ハザードゾーンのシステムの特徴

  • 多チームの戦いだが全体の人数が限られており、PvEの要素も大きい
    • 普段は接敵の機会が限られていて、静かに広大なマップを移動していき、データドライブ周辺で戦闘が連鎖的に始まるという独特なテンポ感が特徴
    • フィールドには“占領部隊”と呼ばれるAI操作の中立部隊が登場し、プレイヤー部隊からデータドライブを守ろうとして戦闘になる
      • 占領部隊は、全面戦争モードで人数不足の時に穴埋めで出てくるAI兵士よりややアクティブで強めの印象で、油断していると何人かやられることも
    • 占領部隊と戦っていたら横から別のプレイヤー部隊も出てきて焦る、みたいなPvPvE的な展開が多々
  • マッチ開始時点の降下地点はチームごとに決まっている
    • 出撃前のブリーフィング時にどのマップのどこに降ろされるかが示され、変えたり自分で選んだりはできない
    • 指定された場所に応じて「じゃあ建物多いあたりだからこのスペシャリストで行くか」みたいな準備をする
  • 安全地帯が狭くなったりしない
    • ただしトルネードが発生して迂回せざるを得なくなるようなシチュエーションは起こる
    • プレイヤー部隊どうしの戦いを誘引するシステムはデータドライブと合計2回ある脱出の機会に絞られている
      • 脱出フェーズは2回あり、指定された場所に待機する脱出機に乗り込んでカウントがゼロになれば生還(脱出機は破壊不能)
  • 装備の回収・アップグレード要素がなく、基本的に事前購入制
    • 無料装備もあるが、それ以外はプレイを通じて入手する“ダーククレジット”で購入する
      • 生還した場合は返金されるが、死亡した場合は基本的に失う(死亡した場合でも一部返金する無料の戦術アップグレードが存在する)
      • 無料装備はアタッチメントがショボかったりする
    • データドライブを回収して脱出に成功した場合が一番ダーククレジットを得られる
      • データドライブを回収しても脱出できなかった場合はカウントされない(誰か1人でも仲間が脱出すればその分は得られる)
    • 他プレイヤーおよび占領部隊の撃破でもダーククレジットを得られる
      • 十分なダーククレジットがない場合は、無料装備と占領部隊の撃破報酬ボーナスを得る無料の戦術アップグレードで出撃し、次に繋げるのが基本
    • フィールドにあるのは、弾薬庫や各種アップリンクなど
      • アップリンクは、やられた仲間を復活させたり、小型戦闘ロボットの“レンジャー”や装甲車の“LATV4 リコン”の投下を依頼できる
  • 長く勝っているチームが有利なルール
    • 脱出に成功した場合は、その時の使用キャラに脱出ストリークがつく
      • 脱出ストリークがあると買い物時にディスカウントが受けられ、さらに2個目以降の戦術アップグレードのスロット(最大で合計3個まで)がアンロックされる
    • 脱出ストリークのあるキャラで出撃して死亡するとストリークは失われる。ただしそれ以外のキャラのストリークには影響しない
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オープンβテストで遊べたオービタルマップでの例。コンクエストなら128人戦ができるマップ全体を使って32人が宝探しをする感じになる。
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占領部隊を倒してデータドライブを回収中。
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出撃する前は「なんでドーザー(盾持ち)選ぶんだよ」とネタ扱いされていたのに、脱出フェーズでその存在意義を十分に発揮。

チーム内での装備構成と目的意識が重要

 マップで装備やアイテムを拾って強くなるという要素が(ほとんど)ない分、重要なのがスペシャリストの選択も含めたチーム全体の装備構成だ。出撃スタンバイ画面では、各メンバーのスペシャリストとメイン武器、そしてガジェットとタクティカルアップグレードが一覧で表示され、調整しやすくなっている。

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チーム内で同スペシャリストのかぶりは許されないので、装備構成とも合わせてバランスを取っていく必要がある。

 まずチームにほぼ必須なのが、データドライブの方角を示してくれる“データスキャナー”(ガジェット扱い)。これがないとデータドライブを狙いに行けないので、最低1個は持っておくべきアイテムだ。

 また通常のモードのように1試合の間に何度も死んで再出撃してナンボという内容ではないので、回復や弾薬の補給も普段以上に大事。回復銃を持つファルック弾薬を補充できるエンジェルがいないチーム構成の場合、せめて医療箱弾薬箱(いずれもガジェット)を運ぶ人間がいるといいだろう(どちらも有料なので、ダーククレジットが少ない時はスペシャリスト選択で解決した方がいい)。

 そして死亡した仲間を全員パラシュート降下で復活させられる“再出撃アップリンク”も当然優先度が高い。タクティカルアップグレードとして購入する場合は有料だが、1回で全員復活なのに2回も使える。フィールドで回収する自信がなければ、誰か持っておくに越したことはない。

 このモードでは、こうした装備構成の連携と、いつどれぐらいの投資(買い物)で勝負をかけるかといった目的意識の共有が大事になってくる。できれば知ってる仲間とボイスチャットでコミュニケーションを取りながらプレイしたい。

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再出撃アップリンクは持っていればどこでも復活を行えるので大事。

サブモードとしてプレイするのに丁度いいかも

 というわけでハザードゾーンは、バトロワ系ともBF本来の全面戦争モードとも異なるプレイ感のモードとなっている。遊んでみた感想としては、この「どちらとも異なる」というのがポイントだと思う。

 面白かったのは面白かったものの、ぶっちゃけこれが単体のゲームだったとして熱心にプレイするかといったら微妙なのだが、コンクエストなどは1試合も長いし、延々と爆発まみれのカオスなドンパチが続く。そんな時にサブモードとして気分転換的にプレイできるのはいいんじゃないだろうか(プレイヤーの経験値などはモード共通で得られるし)。

BFポータル/自作のバカルールや懐かしマップで遊び放題!!

 3つめの“バトルフィールド ポータル”は、本作に加えて旧作3作品のマップや兵士などの要素をミックスし、プレイヤーコミュニティが独自の試合セットを作れるというモード。ちょっとした旧作リメイクとルールエディターモードがついてくるようなものだ。

  • 参戦作品は『バトルフィールド 2042』(全マップ)、『バトルフィールド1942』(エルアラメイン、バルジの戦い)、『バトルフィールド バッドカンパニー2』(Arica Harbor、Valparaiso)、『バトルフィールド3』(Caspian Border、Noshahr Canals)
  • プレイ可能なルールは、コンクエストラージ(2042マップのみ)、コンクエスト(全マップ)、ラッシュ(旧作マップのみ)、チームデスマッチ(全マップ)、フリー・フォー・オール(全マップ)
  • ルールはWebのビルダーで作成・共有可能。ビルダーは日本語対応
    • プレイリストの使用マップや、使用勢力/武器/ビークルなどを絞り込め、ダメージ倍率や移動速度などのパラメーターも設定可能
    • フリー・フォー・オールとチームデスマッチではビジュアルプログラミング的なノードエディターを使い、さらに細かくルールを作り込める
  • 人数が足りなくてもAI兵士を参戦させることができる
  • 少し低めだが経験値も入る(※AI相手の経験値稼ぎを防ぐため)
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2002年発売の『バトルフィールド1942』のマップ“エルアラメイン”が最新テクノロジーでリメイク。
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プレイ人数やダメージなどが不均衡なモードも作れる。
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変数なども使ってルールを作り込んでいける。ただしこちらは現状ではチームデスマッチかフリー・フォー・オール系のベース限定というのが少し残念なところ。

一発ネタモード、ワンオフの配信者VS視聴者用モード、実験的モードなど可能性は無限大

 じゃあBFポータルで実際どんなことができるのか? まずは“旧作のリメイクマップを普通に遊べる”というのが地味に大きい。レビューイベントで一緒になった海外メディア陣も「このマップ(Valparaiso)マジで好きだったんだよね」とか「ここのポジションがオイシイんだよ」といった感じに昔話で盛り上がっていた。

 もうひとつはもちろん、“ゲームに正式採用するのは難しいトリッキーなバカルールを作れる”ことだ。

 レビューイベントで遊べたサンプルでは“装備は近接武器とロケットランチャー一発のみ、5回ジャンプしたら1発だけ支給”というものと、海外の有名配信者のCouRageJDによる“両軍ともひとりだけVIPが指定され、壁越しでもいる場所が透けて丸わかりのVIPを倒してスコアを稼ぐ”という変則チームデスマッチをプレイできた。

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お互いロケラン外してナイフ戦をやってる所に容赦なく発射してスラムダンクだぜ。

 どちらも笑いながらめちゃくちゃ楽しんだのだが、特に前者はこれが正式に新ルールとして採用されていたら「正気か?」と思う、一発ネタがゆえの面白さなのがポイントだ。公式では難しい面白さ重視のモードを世界のBFプレイヤーが気軽に作って共有できるのはいろいろと可能性を感じるし、CouRageJDのモードのように配信者が視聴者との対戦を意図して作るのも面白そうだ(配信者チーム4人 VS 視聴者60人とか)。

 今後、対応コンテンツやモードの拡充なども検討しているそうなので、アップデートとコミュニティ側のアイデア勝負の両方にめちゃくちゃ期待したい。

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VIPプレイヤーはウォールハック状態で常時丸見え。要は死亡時の攻撃者表示やパイクのスキャン能力に使ってるシルエット表示をうまく応用してるわけですな。

まとめ: バカ騒ぎやネタプレイも含めて“BFらしさ”の詰まった作品

 どちらもミリタリーテーマの超大作FPSということでアクティビジョン・ブリザードの『コール オブ デューティ』シリーズと並べて語られることも多い『バトルフィールド』シリーズだが、両方遊んだことがある人はご存知の通り、プレイ感は結構異なる作品だ。

 そんな中で『バトルフィールド 2042』は、原点である第二次世界大戦テーマに立ち返った前作『バトルフィールドV』を踏まえつつ、歴史モノの束縛を離れてさらに“バトルフィールドらしさ”とか“バトルフィールドならではの面白さ”の根本を追求した作品になっていると思う。

 その本質とは、大規模なマップで火薬たっぷりに暴れまくるカオスと、プレイヤーがアイデアを活かした自由なプレイをすること。たとえば、トリッキーなプレイが可能なスペシャリスト制を導入する一方、従来の兵科制にあった兵科ごとの武器制限を撤廃していることなんかも、単に伝統を引きずるよりシリーズの本質を再解釈した上でプレイヤーにもっと自由を与えようということだろう。

 そしてそこにはネタプレイも含まれる。発表時の公式動画に“ビルの屋上に持ち込んだ4輪バイクを攻撃ヘリに突撃させて撃墜”とか“ジェット戦闘機から飛び出してロケランで敵機を撃墜して元の機体に戻る”(元ネタは昔のスーパープレイ動画)なんて描写が堂々と出てくるのにも、そんなスタンスがあらわれていると思う(『コール オブ デューティ』シリーズが新作の発表動画にそういうネタを入れてくることはあまりないだろう)。

 『バトルフィールド 2042』では、基本となる全面戦争モードに加えて、BFなりに複数チーム同士の戦いを描くハザードゾーン、そしてプレイヤーが完全にネタモードを作れるBFポータルまで揃っているというわけだ。これは面白いし、それぞれのモードの今後のアップデート展開なども非常に楽しみだ。

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“キャスパー”の偵察ドローンは結構遠くまで飛ぶ。念の為、全然別のところから操作して仲間の襲撃を支援。