『ハッピーダンガンロンパS』レビュー。Switchで『ダンガンロンパ』が蘇る。作品の垣根を越えた交流イベントはファン必見！

　スパイク・チュンソフトは、2021年11月4日にNintendo Switch向けソフト『ダンガンロンパ トリロジーパック ＋ ハッピーダンガンロンパS 超高校級の南国サイコロ合宿』を発売する。

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　本作は、『ダンガンロンパ』シリーズのナンバリングタイトル3作品を収録した『ダンガンロンパ トリロジーパック』と、新作のボードゲーム『ハッピーダンガンロンパS 超高校級の南国サイコロ合宿』がセットになったお得な作品。ダウンロード版なら各タイトルを個別に購入することもできるので、新作だけを遊びたい人はダウンロード販売を利用するのもアリだ。

　本記事では、記事担当ライターのジャイアント黒田による、ネタバレなしのプレイレビューをお届け。ちなみに、『ハッピーダンガンロンパS 超高校級の南国サイコロ合宿』にはナンバリングタイトルのネタバレがキャラクターの名前などにも含まれている。シリーズ未体験の方は、1作目から順番にプレイして最後に新作を遊ぶようにすると、ネタバレなしで楽しめるだろう。

ナンバリング3作品のおさらい

　まずは『ダンガンロンパ』シリーズについて紹介しよう。ナンバリングタイトル3作品は以下の通り。

• ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生
• スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園
• ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期

　本作だけで、外伝の『絶対絶望少女 ダンガンロンパ Another Episode』を除く、すべてのナンバリングタイトルが遊べてしまう。本作に収録されたナンバリング3作品はスマートフォン版がベースになっているためギャラリー機能が充実していて、キャラクターのボイスや表情、ゲーム内のイラスト、設定資料を閲覧できる。

『ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生』

　2010年11月25日にプレイステーション・ポータブル（以下、PSP）で発売された記念すべきシリーズ1作目。物語の舞台は、超高校級の才能を持った生徒たちが集う希望ヶ峰学園。主人公・苗木誠たちの希望に満ち溢れた学園生活は、学園長を名乗るモノクマの登場によって突如終わりを告げる。

　閉鎖された学園内で、コロシアイを強要される苗木と同級生たち。最初はモノクマに抵抗するも、やがて 殺人事件が起きてしまう……。事件の犯人を探し出す“学級裁判”や、証拠を“コトダマ”として撃ち出して相手を論破する“ノンストップ議論”など、代表的なシステムは本作で誕生。『ダンガンロンパ』シリーズの礎となった作品である。

　『クロス探偵物語』をプレイして以降、ミステリーアドベンチャーに目がない筆者は、『1』の発売を心待ちにしていた。後輩のライターと、「『ダンガンロンパ』はおもしろそうだよね」とワクワクしていたのをいまでも覚えている。

　実際にプレイして、すぐに唯一無二の世界観の虜になったのだが、とくによかったのは先の読めないストーリーと、クセが強すぎるキャラクター。そして、推理ゲームにアクション要素を盛り込んだ斬新なシステムの3つだ。これらは、後の作品にも受け継がれていくシリーズの魅力でもある。

　シリーズモノの場合、前作を超えられるどうかが評価のポイントになると思うが、『ダンガンロンパ』シリーズは、筆者が魅力的に感じた要素に関して、確実に前作超えをしてくるのがすごい。ストーリーや事件のトリックには毎回驚かされるし、魅力的なキャラクターがどんどん登場する。ゲームシステムも着実に進化を遂げてきた。3作品がセットになった本作なら、そんなシリーズの進化を如実に体験できるだろう。

　ちなみに、1作目でなにかと驚きだったのは、超高校級の格闘家こと大神さくらちゃん。筋骨隆々の肉体は“オーガ”とあだ名されるほどだが、こう見えてもれっきとした女子高生。その見た目と男らしい立ち振舞に興味を持ち、中学生時代の意外な姿のギャップにやられた。プレイする際はぜひ注目して！

『スーパーダンガンロンパ２ さよなら絶望学園』

　2作目は、2012年7月26日にPSPで登場。物語の舞台は、閉鎖された希望ヶ峰学園から、開放感のある南の楽園ジャバウォック島へと移行。この地に修学旅行のため訪れた日向創たち希望ヶ峰学園の生徒が、新たなコロシアイに巻き込まれる。

　学級裁判は、前作のシステムを踏襲しつつも、相手の意見に賛同したり、反論を受けたりする新要素が追加され、議論の臨場感が増している。また、おまけモードも充実していて、コロシアイのない平和な世界でキャラクターとの交流が楽しめる“アイランドモード”や、人気小説家の成田良悟氏が前作のIFストーリーを描いたノベルモードが収録された。

　ちなみに、2作目でもっとも印象に残っているキャラクターは、いい意味でも悪い意味でも狛枝凪斗。ネタバレになってしまうので多くは語れないが、彼が活躍（？）するチャプター “君は絶望という名の希望に微笑む”は、シリーズでも屈指のエピソード。できることなら、記憶をリセットしてもう一度プレイしたい。

『ニューダンガンロンパV3 みんなのコロシアイ新学期』

　2017年1月12日に、プレイステーション4とプレイステーション Vitaで発売されたシリーズ3作目。“ニュー”のタイトル通り、舞台や登場人物を一新しており、才囚学園に閉じ込められた16人の生徒たちが、新たなコロシアイ学園生活に挑む。

　発売当時の最新ハード向けに作られた本作は、前作までと比べて演出やシステムが大幅に進化。作品への没入感が向上している。

　また“嘘”がテーマとなっていることから、学級裁判時に嘘をついて議論を進める“偽証”のシステムが追加された。おまけモードも4つ収録されており、ますます大ボリュームになったのもうれしい。

　3作目で印象に残っているのは、チャプター1と5の事件。チャプター1“私と僕の学級裁判”は物語の冒頭からいい意味で期待を裏切る展開に。チャプター5“愛も青春もない旅立ち”は混乱するほど先の読めない展開となり、どちらも忘れられないシナリオ。これらも、記憶をリセットしてもう一度プレイしたいチャプターだ。

　そして忘れられないと言えば、ファンのあいだで賛否を巻き起こした作品のオチ。登場人物はもちろん、プレイヤーにとっても予想外すぎる内容は、作品の題材が“嘘”であるだけに、真相すら疑われて混乱に拍車をかけた。あまりにも衝撃的すぎて、クリアーした後、しばらく放心したのを覚えている。後にも先にも、こんな経験ができたのは3作目だけ。本作をプレイするのなら、この体験はぜひ味わってみてほしい。

新作ボードゲーム『ハッピーダンガンロンパS』も収録

　新作『ハッピーダンガンロンパS 超高校級の南国サイコロ合宿』は、3作目に収録されていたおまけモード“超高校級の才能育成計画”をベースに開発された。

メインは育成ボードゲーム

　南国リゾートのジャバウォック島を舞台に、育成ボードゲームに挑むのが本作の目的だが、メインストーリーも用意されている。育成が終わると育てたキャラクターの“希望のカケラ”を入手でき、この希望のカケラを10個集めるたびに物語が進行していく仕組みだ。

　また、育てたキャラクターで絶望の塔のバトルに挑戦し、報酬で入手したモノクマメダルを購買部で使って、育成可能なキャラクターを開放していく楽しみもある。

　ボードゲームは、ナンバリングタイトル3作品と『絶対絶望少女』に登場した60人以上のキャラクターを育成できるほか、新たに書き下ろされた1000個以上の交流イベントや、新規収録の水着姿の立ち絵が楽しめるなど、ファン必見の内容になっている。

いろいろな組み合わせが見られる交流イベント

　交流イベントは、期待通りの組み合わせはもちろん、意外な組み合わせも用意されているのが好印象。内容が気になってしまい、育成そっちのけで交流イベントが発生する仲良しマスを目指してしまった。ちなみに、仲良しマスに止まると能力値が上がるので、育成面においても決して損はしないのでご安心を。

水着姿の新規立ち絵　

　水着姿の立ち絵が新規で楽しめるのも本作ならではの魅力。キャラクターごとにいろいろな水着を着ているので観ていて飽きないし、入手方法がいわゆるガチャになっているのも収集欲を刺激される。水着姿のキャラクターカードはレア度が高く、入手しにくいのもミソ。集めるのはたいへんだが、手に入れたときの感動はひとしおだった。

気軽に遊べるのがうれしい

　肝心のボードゲームによる育成は、サイコロを振って出た目の数だけ進むシンプルな作りながら、強敵とのバトルが用意されているなど戦略性は高め。育成を助ける多彩なプレゼントアイテムや装備品、カードなども用意されており、これらをうまく活用することで理想のキャラクターを育てられる。

　言葉にすると簡単だが、運も絡んでくるのでなかなかうまく育成できない。慣れてくると30分程度で育成できるのも相まって、つぎこそはと時間を忘れて熱中してしまう中毒性があった。育てたキャラクターを使って絶望の塔を攻略するという、明確な目標があるのもリトライする気持ちを後押ししてくれた。

　『ダンガンロンパ』シリーズのファンはもちろん、ナンバリング3作品がセットになった本作は、初めてプレイする人にもうってつけの内容になっている。欲を言えば外伝作品の『絶対絶望少女』も収録されているとよかったが、こちらはプレイステーション Vita版のほかに、プレイステーション4版やPC（Steam）版でプレイできるので、興味のある方はセットでぜひ。プレイするのは、ネタバレを気にせず遊べる1作目→2作目→『絶対絶望少女』→3作目→新作の順番がオススメ！